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旭化成(3407)の企業分析|LIBセパレータ「ハイポア」と3領域ポートフォリオの全容

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旭化成(3407)は、化学・繊維のマテリアル事業、「ヘーベルハウス」ブランドの住宅事業、医薬・医療機器のヘルスケア事業の3領域で多角化した総合化学メーカーです。

2026年3月期は売上高3兆745億円・営業利益2,312億円と過去最高益を更新。2027年3月期も売上高3兆2,540億円・営業利益2,480億円と3期連続の営業最高益を見込んでいます。第1四半期(2026年4〜6月、7月31日開示)は営業利益813億円(前年同期比+51.5%)と好発進しました。リチウムイオン電池用湿式セパレータ「ハイポア」は民生用途を中心に高いシェアを持ち、400億円の増産投資を実行中です。

会社概要 — 「昨日まで世界になかったものを」

項目

内容

会社名

旭化成株式会社(Asahi Kasei Corporation)

証券コード

3407(東証プライム)

設立

1931年(創業:1922年)

代表取締役

工藤 幸四郎(代表取締役社長)

従業員数

47,895名(連結、2026年3月31日現在)

本社

東京都千代田区有楽町

会計基準

日本基準

セグメント別営業利益構成比(2026年3月期)

セグメント別営業利益構成比(2026年3月期)

出典:旭化成 2026年3月期決算短信よりKabuGraph算出(報告セグメント3区分の合計に対する比率。その他・全社費用等を除く)

旭化成は「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3領域で事業を展開しています。売上高ではマテリアルが最大ですが、営業利益ベースでは住宅(998億円、利益率9.3%)とヘルスケア(835億円、利益率12.6%)が高収益を支えています。

旭化成の事業・製品ページ — ヘルスケア、住宅、マテリアルの3領域
旭化成の事業・製品ページ

業績推移 — V字回復から過去最高益へ

旭化成 売上高・営業利益の推移

出典:決算短信各期よりKabuGraph作成。2027/3は会社予想(2026年5月12日公表、7月31日の第1四半期決算でも据え置き)

2023年3月期は石化市況の悪化に加え、2015年に買収した米Polypore(乾式LIBセパレータ・鉛蓄電池用セパレータ事業。鉛蓄電池用は2025年12月に譲渡済み)ののれん・無形固定資産について1,864億円の減損損失を計上したことから、最終損益は913億円の赤字に転落しました。しかしその後はV字回復を遂げ、2025年3月期・2026年3月期と2年連続で営業利益が過去最高を更新。2027年3月期も増収増益の見通しです。

旭化成 純利益・1株配当の推移

出典:決算短信各期よりKabuGraph作成

配当は2023年3月期の赤字時にも減配せず、前期の34円から36円へ増配。その後も増配を続け、2026年3月期は42円(2026年9月15日終値ベースの配当利回り約2.7%)まで引き上げ、2027年3月期は44円(2円増配)を予想しています。配当性向は業績に連動しますが、安定配当姿勢は評価できます。

2027年3月期 第1四半期 — マテリアルが牽引し営業利益+51.5%

2026年7月31日に開示された第1四半期(2026年4〜6月の3ヶ月)は、売上高8,262億円(前年同期比+11.9%)・営業利益813億円(同+51.5%)と大幅な増収増益でした。純利益は538億円(同+172.7%)で、MMA等の事業撤退損失を計上した前年同期から大きく改善しています。

項目

2027年3月期 1Q(3ヶ月)

前年同期比

売上高

8,262億円

+11.9%

営業利益

813億円(営業利益率9.8%)

+51.5%

親会社株主に帰属する四半期純利益

538億円

+172.7%

セグメント営業利益:マテリアル

388億円(前年同期149億円)

+160.4%

セグメント営業利益:ヘルスケア

298億円(前年同期227億円)

+31.4%

セグメント営業利益:住宅

202億円(前年同期224億円)

−9.7%

第2四半期累計予想(新規公表)

売上高1兆6,860億円・営業利益1,450億円・純利益890億円

営業利益+34.9%

通期予想(据え置き)

売上高3兆2,540億円・営業利益2,480億円・純利益1,600億円・年間配当44円

営業利益の1Q進捗率 約33%

出典:旭化成 2027年3月期第1四半期決算短信・決算説明資料よりKabuGraph作成。セグメント営業利益は全社費用等の配賦前

住宅は建築請負の平均単価上昇があった一方、北米事業の需要減少と価格対応で減益でした。ヘルスケアは2026年4月17日に買収を完了した独Aicuris(抗ウイルス薬、買収額1,431億円)の新規連結でのれんが446億円増えており、2027年3月期はのれん償却・ライセンス導入費用が医薬事業の利益を圧迫する見込みです。

マテリアル事業 — LIBセパレータ「ハイポア」が成長の核

マテリアル領域は旭化成の売上高の約4割を占める最大の事業で、基礎化学品から高機能素材まで幅広い製品群を展開しています。2026年3月期の営業利益は683億円(営業利益率5.2%)。

主要製品ラインナップ

分野

主要製品

特徴

エナジー&インフラ

ハイポア(LIBセパレータ)、イオン交換膜

湿式セパレータは民生用途でトップクラスの実績。イオン交換膜は食塩電解プラント向けで、アルカリ水電解(水素製造)にも展開

エレクトロニクス

感光性絶縁材料「パイメル」、ガラスクロス、電子コンパス・ホールIC

AIサーバー・半導体パッケージ向け電子材料と、スマートフォン・自動車向け電子部品。パイメルは富士市で能力増強中(2027年度完工予定)

エッセンシャルケミカル

AN(アクリロニトリル)、スチレン等の基盤化学品

汎用化学品で市況変動の影響を受けやすい。MMA・CHMA・アクリル樹脂・SBラテックスの4事業は2025年5月に撤退を決定(MMAは2026年9月に生産・販売終了)

パフォーマンスケミカル

エンジニアリング樹脂、機能性コーティング

自動車・電機向けの高機能樹脂・塗料原料。構造転換中(2027年4月にヘキサメチレンジアミンの生産終了予定)

マテリアル事業の課題は、汎用化学品(AN・スチレン等)の市況変動リスクです。2023年3月期には石化市況の急落で大幅減益となり、2027年3月期第1四半期の急増益も石化市況上昇の在庫効果によるところが大きく、市況次第で利益が振れる体質は変わっていません。会社は構造転換を進めており、ハイポアや電子材料など高付加価値品の構成比を高めることで利益率の安定化を目指しています。

  • 2025年5月:MMA・CHMA・アクリル樹脂・SBラテックスの4事業からの撤退を決議(川崎製造所。MMAは2026年9月に生産・販売終了、2026年3月期に事業構造改善費用を計上)

  • 2025年12月:鉛蓄電池用セパレータ事業(Polypore傘下のDaramic)を譲渡

  • 2030年度めど:三菱ケミカル旭化成エチレン(水島)のエチレン製造設備を停止し、水島製造所の一部誘導品事業を生産終了または供給体制の再構築へ

住宅事業 — 「ヘーベルハウス」のストック収益モデル

住宅領域は2026年3月期に営業利益998億円(営業利益率9.3%)を計上し、全社利益の約4割を稼ぐ安定収益源です。旭化成ホームズが展開する「ヘーベルハウス」ブランドは、鉄骨造・ALC(軽量気泡コンクリート)パネルを特徴とする高耐久住宅で、首都圏を中心に高い認知度を持っています。

新築住宅事業は国内の着工戸数減少の影響を受けますが、ヘーベルハウスは1棟あたり平均約5,000万円(2025年度の戸建系。引渡ベース約4,900万円、受注ベース約5,200万円)と高価格帯に位置し、富裕層・二世帯住宅需要に強みがあります。建材事業(旭化成建材のALC「ヘーベル」・断熱材「ネオマフォーム」等)や豪州のMcDonald Jones Homes(2017年に40%出資、2021年に80%を取得し子会社化)も住宅領域に含まれます。

ヘルスケア事業 — 最高利益率のディフェンシブ領域

ヘルスケア領域は2026年3月期に営業利益835億円(営業利益率12.6%と3領域で最高)を記録しました。医薬・ライフサイエンス・クリティカルケアの3分野で構成されます。

分野

主力製品

概要

医薬

テリボン(骨粗鬆症)、Envarsus XR(腎移植向け免疫抑制剤)、Tarpeyo(IgA腎症)

国内は旭化成ファーマのテリボンが最大製品。海外は米Veloxis・スウェーデンCalliditasの製品が成長ドライバーで、2026年4月に独Aicuris(抗ウイルス薬)を1,431億円で買収

クリティカルケア

ZOLL AED Plus

ZOLL Medical社の除細動器(AED)で北米シェアトップクラス

ライフサイエンス

プラノバ™(ウイルス除去フィルター)

バイオ医薬品の製造支援。CRO/CDMO事業も展開(血液浄化事業の旭化成メディカルは2025年4月に株式80%をインテグラル傘下へ譲渡)

2012年4月に約22.1億米ドル(当時の為替で約1,800億円)で買収した米ZOLL Medicalがヘルスケア事業の成長ドライバーです。除細動器・AEDと着用型自動除細動器「LifeVest」で北米市場でのプレゼンスを確立しており、景気に左右されにくいディフェンシブな収益源として全社のポートフォリオ安定化に貢献しています。

投資指標 — バリュエーションと株主還元

指標

数値

コメント

PER

13.4倍

2026年3月期実績EPS 116.97円ベース。化学セクター平均並み〜やや割安

PBR

1.02倍

2026年3月期末BPS 1,539.66円ベース。東証PBR1倍基準をわずかに超える水準

ROE

7.3%(KabuGraph算出。会社公表の自己資本当期純利益率は8.0%)

改善傾向。中期経営計画2027ではFY2027にROE 9.0%、2030年に12%以上を目標(会社定義ベース。2026年度予想は7.7%)

配当利回り

2.7%(2026年3月期実績42円ベース。2027年3月期予想44円では2.8%)

赤字時も減配せず安定配当姿勢。2027年3月期は2円増配の44円を予想

時価総額

約2.1兆円

化学セクターで国内大手の一角

出典:東証株価・決算短信よりKabuGraph算出(2026年9月15日終値1,568円時点。PER・PBR・ROEは2026年3月期実績ベース)

株主還元 — 増配に加え400億円の自社株買いを完了

  • 配当:2026年3月期42円(中間20円・期末22円)→2027年3月期予想44円(中間22円・期末22円)。2024年3月期の36円から3期連続の増配見通し

  • 自己株式取得:2025年11月5日決議の上限4,500万株・400億円(取得期間2025年11月6日〜2026年10月31日)を、2026年8月13日までに累計2,285万9,400株・399.99億円で取得完了(8月17日開示)。取得分は消却予定

(投資指標は2026年9月15日終値時点の数値です。最新の株価情報は旭化成の銘柄ページをご確認ください。)

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3407素材・化学

旭化成

旭化成は、346社の関係会社を有する総合化学・建設企業。ヘルスケア領域(医薬品、ライフサイエンス、クリティカルケア)、住宅領域(戸建・集合住宅、建材)、マテリアル領域(化学品、繊維)で事業展開。医療従事者向け除細動器やAED等の心肺蘇生関連…

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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