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東京エレクトロン(8035)の企業分析|コーター/デベロッパー世界シェア90%超、営業利益1兆円が射程のAI半導体装置最大手

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東京エレクトロン(8035)は、半導体製造装置で世界第3位のシェアを持つ日本最大の半導体装置メーカーです。フォトリソグラフィ工程に不可欠なコーター/デベロッパーでは世界シェア90%以上(EUV向けは100%)という圧倒的な独占的地位を確立しています。

2026年3月期は売上高2兆4,435億円、営業利益6,249億円で着地。AI半導体向けの旺盛な設備投資を背景に、2027年3月期はアナリスト予想で売上高3兆2,500億円(前期比+33%)が見込まれ、経営陣も「営業利益1兆円が視野に入った」と言及しています。

この記事では、東京エレクトロンの事業構造と製品別シェア、業績推移、中期経営計画、投資判断のポイントを個人投資家の視点からわかりやすく解説します。

会社概要 — 世界第3位の半導体製造装置メーカー

東京エレクトロン(TEL)は1963年に設立された半導体製造装置メーカーです。当初は輸入商社としてスタートしましたが、1970年代から自社開発に転じ、コーター/デベロッパー、エッチング装置、成膜装置、洗浄装置などパターニング工程の4つの連続工程すべてに装置を持つ世界で唯一の企業に成長しました。

項目

内容

会社名

東京エレクトロン株式会社(Tokyo Electron Limited)

証券コード

8035(東証プライム)

本社

東京都港区赤坂五丁目3番1号

代表取締役社長

河合 利樹

従業員数

20,812名(連結、2026年3月期末)

業種

電気機器(半導体製造装置)

決算期

3月

時価総額

約25.7兆円(2026年9月時点)

2024年(暦年)の半導体製造装置メーカー売上高ランキングでは、ASML(24.7%)、アプライド・マテリアルズ(22.4%)に次ぐ世界第3位(15.3%)に位置しています(各社公表の売上高をもとにした第三者集計。東京エレクトロン自身は世界順位・シェアを開示していません)。

売上構成比(2026年3月期実績)

出典:東京エレクトロン 2026年3月期決算短信

売上の約73%を占めるSPE(Semiconductor Production Equipment=半導体製造装置)事業は、コーター/デベロッパー、エッチング装置、成膜装置、洗浄装置などの新規装置販売を担います。残り約26%のフィールドソリューション事業は、既設装置の保守・改造・アップグレードサービスで構成される安定的なストック型収益です。

事業別売上推移

出典:東京エレクトロン 2026年3月期決算説明会資料 p.8・p.9(FY2024〜FY2026)、2024年3月期決算説明会資料 p.8・p.9(FY2023)。2027/3(予)はアナリストコンセンサス(楽天証券、2026年8月時点)をベースにSPE+41%成長・FS+16%成長で按分

製品ポートフォリオと競争力を理解する

東京エレクトロンの最大の強みは、半導体製造のパターニング工程に必要な4つの連続工程すべてに装置を持つ世界唯一の企業であることです。半導体製造では、ウェハにレジスト(感光材)を塗布→露光→現像→エッチング→成膜→洗浄というプロセスを繰り返します。TELはこのうち露光以外のすべての工程をカバーしています。

出典:東京エレクトロン 公式サイト「半導体を知る」

コーター/デベロッパー — 世界シェア90%超の独占的製品

コーター/デベロッパーは、ウェハ上にレジストを塗布(コート)し、露光後にパターンを現像(デベロップ)する装置です。フォトリソグラフィ工程においてASMLの露光装置と対になる存在であり、TELは世界シェア90%以上(会社開示)、EUV向けでは100%という圧倒的な独占的地位を握っています。

エッチング装置 — 世界シェア23%

エッチング装置は、露光・現像で形成されたパターンに沿ってウェハの薄膜を削る(エッチングする)装置です。この分野ではラムリサーチ(約50%)、アプライド・マテリアルズ(約20%)に次ぐ世界第3位(約23%)のポジションにあります。TEL自身は絶縁膜エッチングでマーケットシェア50%以上と開示しており、2027年3月期のエッチング装置売上は前年比25%以上の成長を見込んでいます(出典:東京エレクトロン 2026年3月期決算説明会資料 p.16)。

成膜装置 — 世界シェア27%

成膜装置(CVD・ALD等)は、ウェハ上に薄膜を堆積させる装置です。TELは世界シェア約27%で、アプライド・マテリアルズ(約30%)と並ぶポジションにあります。AIデータセンター向けのHBM(High Bandwidth Memory)やアドバンストパッケージング向けの需要が急拡大しており、会社は2027年3月期のアドバンストパッケージング向け売上を前年比70%以上の成長と見込んでいます(2026年4月時点の+60%以上から上方修正。出典:東京エレクトロン 2027年3月期第1四半期決算説明会資料 p.16)。

フィールドソリューション — 安定成長のサービス事業

フィールドソリューション事業は、世界中に設置された約90,000台のTEL装置に対する保守・メンテナンス・アップグレードサービスを提供しています。2026年3月期の売上高は6,260億円(前期比+16.3%)で、装置の設置台数が増えるほど売上が積み上がるストック型の収益構造が特徴です。

半導体製造装置メーカー世界ランキング

2024年(暦年)の売上高に基づく半導体製造装置メーカーのグローバルシェアは以下の通りです。

順位

企業名

シェア

主力製品

1位

ASML(オランダ)

24.7%

EUV/DUV露光装置

2位

Applied Materials(米国)

22.4%

CVD・PVD・エッチング

3位

東京エレクトロン(日本)

15.3%

コーター/デベロッパー・エッチング・成膜

4位

Lam Research(米国)

12.3%

エッチング・成膜

5位

KLA(米国)

8.1%

検査・計測

出典:各社の2024年暦年売上高をもとにした第三者集計(東京エレクトロン自身は世界順位・シェアを開示していません)。

TELの製品別グローバルシェア

東京エレクトロン 製品別グローバルシェア

塗布・現像(コーター/デベロッパー)は会社開示の「マーケットシェア90%以上」、エッチングは絶縁膜エッチングで「50%以上」と開示(2026年3月期決算説明会資料 p.16)。ウェハプローバ・成膜装置・ドライエッチング全体のシェアは第三者調査に基づく推計値

業績推移と財務分析

東京エレクトロンの業績は半導体設備投資サイクルに連動し、好不況の波が明確に現れます。直近では2024年3月期に売上高が前期比17%減少しましたが、2025年3月期以降はAI半導体向けの設備投資拡大で急回復しています。

通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率)

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成。2027/3(予)はアナリストコンセンサス(楽天証券、2026年8月時点)

2024年3月期の減収(▲17%)— メモリ不況の直撃

2023年後半から2024年にかけて、世界的なメモリ半導体の在庫調整が深刻化しました。DRAM・NAND価格の急落を受けてSamsung、SK Hynix、Micronなど主要メモリメーカーが設備投資を大幅に削減。TELのSPE事業はメモリ向け比率が高く(当時約4割)、新規装置の受注が急減しました。半導体製造装置業界全体がシリコンサイクルの谷に入った局面であり、業界2位のApplied Materialsも同期に減収を記録しています。

2026年3月期の横ばい(+0.5%)— 対中規制による成長相殺

2025年3月期はAI半導体向けの設備投資拡大で前期比33%の急回復を達成しましたが、翌2026年3月期は売上高2兆4,435億円とほぼ横ばいに留まりました。背景には米国による対中半導体装置輸出規制の段階的強化があります。中国向け売上比率はQ2の40.3%をピークにQ4には26.8%まで低下し(通期34.1%)、AI向けの先端ロジック・HBM需要の拡大(台湾・韓国向け)を中国向けの減少が相殺した形です。なお、2027年3月期はアナリスト予想で3兆2,500億円(前期比+33%)と再び大幅な成長が見込まれています。

注目すべきは2026年3月期の営業利益率低下(28.7%→25.6%)です。これはR&D費の増加(2,778億円、+11.1%)が主因で、1nm世代の装置開発に向けた先行投資が利益率を押し下げました。2027年3月期はR&D費をさらに3,300億円(+19%)に引き上げる計画ですが、売上成長がこれを上回る見込みです。

EPS・配当金の推移

EPS・1株配当金の推移

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成。EPS・配当金は株式分割(2023年4月、1:3)調整済み

SPE用途別構成

2026年3月期のSPE新規装置の用途別構成は以下の通りです。非メモリ(ロジック/ファウンドリ)が59%と最大シェアを占め、AI向け先端ロジックの設備投資が売上を牽引しています。

SPE用途別構成比(2026年3月期)

出典:東京エレクトロン 2026年3月期決算説明会資料

地域別売上構成と中国リスク

TELの地域別売上では中国が34.1%(2026年3月期通期)を占めます。ただし四半期ベースでは、中国比率はQ2の40.3%をピークにQ3 31.8%、Q4(2026年1-3月期)26.8%まで低下し、韓国・台湾へのシフトが進みました。台湾はQ4に22.0%まで上昇しています。これは米国の対中輸出規制の影響でもあり、今後の規制強化リスクは注視が必要です(出典:東京エレクトロン 2026年3月期決算説明会資料 p.5)。

中期経営計画(目標年度:2027年3月期)

指標

2026/3実績

中期計画目標

売上高

2兆4,435億円

3兆円以上

営業利益率

25.6%

35%以上

ROE

29.6%

30%以上(会社評価:On Track)

R&D投資(2022年度から5年間)

1兆円以上

出典:東京エレクトロン 2027年3月期第1四半期 決算説明会資料 p.14。目標年度は2027年3月期。売上高3兆円以上の目標に対し、2027/3のアナリスト予想は3.25兆円で、会社自身も「On Track」と評価しています。一方、営業利益率35%以上は「In Progress」とされ、達成はチャレンジングとの認識が示されています。R&D投資の目標は2022年6月8日発表の新中期経営計画(5年間で1兆円以上の研究開発費)によるもので、実績ベースでは2023年3月期〜2027年3月期の累計が約1兆2,500億円となる見込みです。

熊本R&Dハブの新設

2025年10月、TELは熊本県合志市に約470億円を投じたプロセス開発棟を竣工しました。会社資料によれば同棟が担うのはコータ/デベロッパと洗浄装置の開発です。延床面積27,000㎡で開発能力を4倍に増強し、TSMCの熊本工場との連携を視野に1nm世代の装置開発を推進すると報じられています(出典:東京エレクトロン 2026年3月期決算説明会資料 p.19日本経済新聞)。

投資家が注目すべきポイント

強み① コーター/デベロッパーの独占的シェア

世界シェア90%以上(EUV向け100%)のコーター/デベロッパーは、TELの最大の競争優位性です。この装置はASMLの露光装置と必ず対で使われるため、世界中の最先端半導体工場に新規ファブが建設されるたびにTELの装置が導入される構造になっています。数十年にわたるレジストメーカーとの共同開発実績が参入障壁を形成しており、この独占的地位が崩れる可能性は当面きわめて低いと考えられます。

強み② AI半導体スーパーサイクルの恩恵

生成AI・データセンター向けの半導体設備投資は、従来のPC・スマートフォンサイクルとは異なる構造的な成長ドライバーです。TELの製品ポートフォリオは、先端ロジック(TSMC 2nm/1nm)、HBM用DRAM、アドバンストパッケージングのすべてに対応しており、AI半導体投資の恩恵を幅広く受ける立場にあります。2027年3月期にはコーター/デベロッパーで前年比50%超、アドバンストパッケージングで70%超の成長を見込んでいます。

強み③ 過去最高のFCFと積極的な株主還元

2026年3月期のフリーキャッシュフローは4,332億円で過去最高を記録。配当性向50%を基本方針とし、2026年3月期は1株628円の配当に加え1,499億円の自社株買いを実施しました(総還元性向76%)。中期計画ではROE30%以上を目標とし、資本効率を重視した経営姿勢を明確にしています。


リスク① 中国売上比率34%と地政学リスク

2026年3月期の中国向け売上は全体の34.1%を占めます。米国は半導体製造装置の対中輸出規制を段階的に強化しており、先端装置の販売制限がさらに拡大すれば収益への影響は避けられません。TELはQ4時点で中国比率を26.8%まで下げ台湾へのシフトを進めていますが、成熟ノード向け装置にまで規制が及ぶ場合のインパクトは大きいと言えます。

リスク② 半導体設備投資サイクルの反転

半導体製造装置業界は景気循環性が高く、売上高が1年で17%減少した実績があります(2023/3→2024/3)。現在のAIスーパーサイクルは構造的な成長とされていますが、ハイパースケーラーの設備投資方針の変更やPER約44倍(2026年9月1日時点)の現在の株価水準では、成長期待の剥落が大きな下振れリスクとなります。

リスク③ R&D投資の先行負担

営業利益率は2023年3月期の28.0%から2026年3月期には25.6%に低下しています。これは1nm世代の装置開発を含むR&D費の増加が主因です。2027年3月期のR&D費は3,300億円(前期比+19%)、設備投資は1,900億円を計画。熊本R&Dハブへの投資も含め、中期計画の営業利益率35%目標と現状25.6%のギャップ(約10ポイント)は、達成ハードルの高さを示しています。

まとめ

東京エレクトロンは、コーター/デベロッパーでの圧倒的なシェア(90%以上)を軸に、AI半導体向けの設備投資拡大という構造的な追い風を受けている日本を代表する半導体装置メーカーです。

パターニング工程の4連続工程すべてに装置を持つ世界唯一の企業としてのポートフォリオの幅、フィールドソリューションによるストック型収益、そして配当性向50%+自社株買いの積極的な株主還元は、長期投資家にとって魅力的な要素です。

一方で、中国売上比率34%の地政学リスク、半導体設備投資の景気循環性、PER約44倍の高バリュエーション、そしてR&D投資増による利益率の低下は、投資判断において慎重に考慮すべきリスク要因です。

中期経営計画(目標年度は2027年3月期)の売上3兆円・営業利益率35%の目標に対し、2027/3のアナリスト予想は売上3.25兆円で、会社は売上目標を「On Track」、営業利益率目標を「In Progress」と評価しています。利益率の回復が伴えば、株価のさらなる上昇余地がある一方、AI投資サイクルの転換点には注意が必要です。

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東京エレクトロンは世界有数の半導体製造装置メーカーです。半導体プロセス用の製造装置を開発・製造し、世界の大手半導体メーカーに提供。国内製造の装置を米国・韓国・欧州などの子会社を通じて販売・保守。次世代デバイス技術の研究開発に積極的に取り組み…

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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