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東京エレクトロン(8035)の企業分析|コーター/デベロッパー世界シェア91%、営業利益1兆円超えを見込む日本最大の半導体装置メーカー

2027年3月期 第2四半期決算まで反映

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東京エレクトロン(8035)は、日本最大の半導体製造装置メーカーです。フォトリソグラフィ工程に不可欠なコーター/デベロッパーでは世界シェア91%(CY2025、Gartner調べ。会社は「90%以上」と開示)という圧倒的な地位を握っています。2024年(暦年)の半導体製造装置メーカー売上高ランキングでは、ASML・アプライド・マテリアルズ・ラムリサーチに次ぐ世界第4位です。

2026年3月期は売上高2兆4,435億円、営業利益6,249億円で着地。AI半導体向けの旺盛な設備投資を背景に、2027年3月期上期(2026年4〜9月の累計)は売上高1兆6,674億円(前年同期比+41.3%)・営業利益5,067億円(同+67.2%)と半期として過去最高でした。同時に初めて開示した通期予想では営業利益1兆1,690億円(前期比+87.1%)を見込んでいます。

この記事では、東京エレクトロンの事業構造と製品別シェア、業績推移、中期経営計画、投資判断のポイントを個人投資家の視点からわかりやすく解説します。

会社概要 — 日本最大の半導体製造装置メーカー

東京エレクトロン(TEL)は1963年に設立された半導体製造装置メーカーです。当初は輸入商社としてスタートしましたが、1970年代から自社開発に転じ、コーター/デベロッパー、エッチング装置、成膜装置、洗浄装置などパターニング工程の4つの連続工程すべてに装置を持つ世界で唯一の企業に成長しました。

項目

内容

会社名

東京エレクトロン株式会社(Tokyo Electron Limited)

証券コード

8035(東証プライム)

本社

東京都港区赤坂五丁目3番1号

代表取締役社長

河合 利樹

従業員数

20,236名(連結、2026年3月末)

業種

電気機器(半導体製造装置)

決算期

3月

時価総額

約22.3兆円(2026年10月30日終値時点)

2024年(暦年)の半導体製造装置メーカー売上高ランキングでは、ASML、アプライド・マテリアルズ、ラムリサーチに次ぐ世界第4位とされています(CINNO Research・TechInsightsの集計。東京エレクトロン自身は世界順位・シェアを開示していません)。日本勢では最大手で、装置メーカー上位5社で市場の約85%を占めます。

売上構成比(2026年3月期実績)

出典:東京エレクトロン 2026年3月期決算説明会資料 p.8・p.9よりKabuGraph作成。同社は「半導体製造装置」の単一セグメントで、この3区分は決算説明会資料の開示に基づく

売上の約73%を占めるSPE(Semiconductor Production Equipment=半導体製造装置)事業は、コーター/デベロッパー、エッチング装置、成膜装置、洗浄装置などの新規装置販売を担います。残り約26%のフィールドソリューション事業は、既設装置の保守・改造・アップグレードサービスで構成される安定的なストック型収益です。

事業別売上推移

出典:東京エレクトロン 2026年3月期決算説明会資料 p.8・p.9(FY2024〜FY2026)、2024年3月期決算説明会資料 p.8・p.9(FY2023)よりKabuGraph作成。会社は2027年3月期のSPE新規装置売上を、上期実績1兆2,657億円と下期予想1兆5,600億円で前期比+59%と見込んでいる(2027年3月期第2四半期決算説明会資料 p.17)。フィールドソリューションの通期予想は開示していない

製品ポートフォリオと競争力を理解する

東京エレクトロンの最大の強みは、半導体製造のパターニング工程に必要な4つの連続工程すべてに装置を持つ世界唯一の企業であることです。半導体製造では、ウェハに薄膜を形成する成膜→レジスト(感光材)の塗布・露光・現像→エッチング→洗浄というプロセスを繰り返します。TELはこのうち露光以外のすべての工程をカバーしています。

出典:東京エレクトロン 公式サイト「半導体を知る」

コーター/デベロッパー — 世界シェア91%の独占的製品

コーター/デベロッパーは、ウェハ上にレジストを塗布(コート)し、露光後にパターンを現像(デベロップ)する装置です。フォトリソグラフィ工程においてASMLの露光装置と対になる存在であり、TELの世界シェアは91%(CY2025、Gartner調べ。会社は成長ドライバー資料で「マーケットシェア90%以上」と表現)という圧倒的な独占的地位を握っています。

エッチング装置 — 世界シェア23%

エッチング装置は、露光・現像で形成されたパターンに沿ってウェハの薄膜を削る(エッチングする)装置です。ドライエッチング装置でのTELの世界シェアは23%(CY2025、Gartner調べ)で、コーター/デベロッパーのような独占的地位ではなく複数社が競合する市場です。ただしTEL自身は絶縁膜エッチングでマーケットシェア50%以上と開示しており、2027年3月期のエッチング装置売上は前年比25%以上の成長を見込んでいます(出典:東京エレクトロン 2026年3月期決算説明会資料 p.16)。

成膜装置 — 世界シェア27%

成膜装置(CVD・ALD等)は、ウェハ上に薄膜を堆積させる装置です。TELの世界シェアは約27%(CY2025、Gartner調べ)で、内訳はCVD 38%・酸化/拡散 31%・ALD 15%です。なおこのシェアはTube CVD・ALD・酸化/拡散炉・Nontube LPCVDを合わせた範囲での数値で、PVDや枚葉CVDは含まれない点に注意が必要です。AIデータセンター向けのHBM(High Bandwidth Memory)やアドバンストパッケージング向けの需要が急拡大しており、会社は2027年3月期のアドバンストパッケージング向け売上を前年比70%以上の成長と見込んでいます(2026年4月時点の+60%以上から上方修正。出典:東京エレクトロン 2027年3月期第1四半期決算説明会資料 p.16)。

フィールドソリューション — 安定成長のサービス事業

フィールドソリューション事業は、世界中に出荷された86,000台以上(会社公表)のTEL装置に対する保守・メンテナンス・アップグレードサービスを提供しています。2026年3月期の売上高は6,260億円(前期比+16.3%)で、装置の設置台数が増えるほど売上が積み上がるストック型の収益構造が特徴です。2027年3月期上期(4〜9月の累計)も約3,790億円(前年同期比+26%)と伸びが続いています(四半期の値の合計からKabuGraph算出。出典:東京エレクトロン 2027年3月期第2四半期 決算説明会資料 p.9)。

半導体製造装置メーカー世界ランキング

2024年(暦年)の売上高に基づく半導体製造装置メーカーの世界ランキングは以下の通りです。TELは第4位で、上位5社の合計が市場全体の約85%を占めます。

順位

企業名

2024年売上高の前年比

主力製品

1位

ASML(オランダ)

+1.3%

EUV/DUV露光装置

2位

Applied Materials(米国)

+5.3%

CVD・PVD・エッチング

3位

Lam Research(米国)

+13.2%

エッチング・成膜

4位

東京エレクトロン(日本)

+17.0%

コーター/デベロッパー・エッチング・成膜

5位

KLA(米国)

+15.8%

検査・計測

出典:CINNO Research調べ 2024年の半導体製造装置メーカーランキング、TechInsights調べ 2024年半導体製造装置売上高ランキングよりKabuGraph作成。各社の会計年度ではなく暦年(2024年1〜12月)ベースで、両調査とも順位は同じです。東京エレクトロン自身は世界順位・シェアを開示していません。

TELの製品別グローバルシェア

東京エレクトロン 製品別グローバルシェア(CY2025)

出典:東京エレクトロン 2026年3月期決算説明会資料 p.28(CY2025)よりKabuGraph作成。コータ/デベロッパ・成膜装置・ドライエッチング装置はGartner「Market Share: Semiconductor Wafer Fab Equipment, Worldwide, 2025」(2026年4月2日)、ウェーハプローバはTechInsights(2026年4月)に基づき同社が算出した数値。会社は成長ドライバー資料(p.16)で塗布・現像を「マーケットシェア90%以上」、絶縁膜エッチングを「50%以上」と表現している

業績推移と財務分析

東京エレクトロンの業績は半導体設備投資サイクルに連動し、好不況の波が明確に現れます。直近では2024年3月期に売上高が前期比17%減少しましたが、2025年3月期以降はAI半導体向けの設備投資拡大で急回復しています。

通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率)

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成。2027/3(予)は2026年10月30日に初めて開示した会社予想(東京エレクトロン 2027年3月期第2四半期決算短信)

2024年3月期の減収(▲17%)— NAND在庫調整の直撃

2023年後半から2024年にかけて深刻化したのは、NAND(不揮発性メモリ)の在庫調整です。SPE新規装置の用途別売上を見ると、この期に落ち込んだのは不揮発性メモリと非メモリで、DRAM向けはむしろ増えています。

SPE新規装置の用途

2023/3

2024/3

金額の増減

DRAM

14%(約2,370億円)

27%(約3,706億円)

+56%

不揮発性メモリ(NAND)

20%(約3,385億円)

7%(約961億円)

△72%

非メモリ(ロジック/ファウンドリ等)

66%(約11,172億円)

66%(約9,060億円)

△19%

SPE新規装置 計

16,927億円

13,727億円

△18.9%

出典:東京エレクトロン 2024年3月期決算説明会資料 p.8(構成比は会社開示、金額は構成比から算出したKabuGraph概算)。会社は「DRAM:中国顧客の旺盛な投資の結果、売上高、構成比ともに増加」「不揮発性メモリ:顧客の在庫調整に伴う設備投資の抑制が続き、売上高・構成比ともに減少」と説明しています。

メモリ向け(DRAM+不揮発性メモリ)の比率は2023年3月期・2024年3月期ともに34%で、「メモリ向けが約4割」という水準ではありません。半導体製造装置業界全体がシリコンサイクルの谷に入った局面で、同時期にはラムリサーチも2024年6月期(FY2024)の売上高が前期比14.5%減(174.3億ドル→149.1億ドル)となっています。なお同じ時期のアプライド・マテリアルズは2024年10月期が過去最高の271.8億ドル(+2%)で、業界全社が一斉に減収したわけではありません。

2026年3月期の横ばい(+0.5%)— 対中規制による成長相殺

2025年3月期はAI半導体向けの設備投資拡大で前期比33%の急回復を達成しましたが、翌2026年3月期は売上高2兆4,435億円とほぼ横ばいに留まりました。背景には米国による対中半導体装置輸出規制の段階的強化があります。中国向け売上比率はQ2の40.3%をピークにQ4には26.8%まで低下し(通期34.1%)、AI向けの先端ロジック・HBM需要の拡大(台湾・韓国向け)を中国向けの減少が相殺した形です。なお、2027年3月期は会社予想で3兆7,000億円(前期比+51.4%)と再び大幅な成長を見込んでいます。

注目すべきは2026年3月期の営業利益率低下(28.7%→25.6%、△3.1pt)です。内訳を見ると、R&D費の増加だけが理由ではありません。

  • 売上総利益率の低下:47.1%→45.3%(△1.8pt)。会社は原材料の高騰や人件費の増加等の影響と説明しています

  • 販管費率の上昇:18.5%→19.8%(+1.3pt)。うちR&D費の比率が10.3%→11.4%(R&D費2,778億円、+11.1%)

つまり最大の要因は売上総利益率の低下で、R&D費増の寄与は△3.1ptのうち約1.1ptにとどまります。2027年3月期はR&D費をさらに3,350億円(+20.6%)に引き上げる計画ですが、通期予想は売上総利益率47.9%・営業利益率31.6%と収益性の改善を見込んでいます(出典:東京エレクトロン 2026年3月期決算説明会資料 p.6、2027年3月期第2四半期決算説明会資料 p.16)。

2027年3月期上期 — 売上+41%・営業利益+67%で半期の過去最高

2026年10月30日に開示された2027年3月期上期(2026年4〜9月の累計)は、AI向けの先端投資を背景に大幅な増収増益となり、半期として過去最高の業績でした。7〜9月の3か月だけでも売上高9,350億円(前年同期比+48.4%)・営業利益2,953億円(同+86.4%)と、第1四半期からさらに伸びています。

項目

2026/3 上期(4〜9月累計)

2027/3 上期(4〜9月累計)

前年同期比

売上高

1兆1,796億円

1兆6,674億円

+41.3%

売上総利益率

45.7%

47.4%

+1.7pt

営業利益

3,031億円

5,067億円

+67.2%

営業利益率

25.7%

30.4%

+4.7pt

親会社株主に帰属する中間純利益

2,416億円

3,769億円

+56.0%

1株当たり中間純利益

105.46円

166.13円

+57.5%

出典:東京エレクトロン 2027年3月期第2四半期 決算説明会資料 p.4・p.6、1株当たり中間純利益は同 第2四半期決算短信 p.1。1株当たり中間純利益は前年同期も含め、2026年10月1日の株式分割(1株→5株)調整後の値です。

上期の実績は、7月30日に上方修正した上期予想(売上高1兆6,200億円・営業利益4,580億円)も上回りました。会社は10月30日の決算発表で、2027年3月期の通期予想を初めて開示しました(カッコ内は前期比)。

  • 売上高:3兆7,000億円(+51.4%)

  • 営業利益:1兆1,690億円・営業利益率31.6%(+87.1%)

  • 親会社株主に帰属する当期純利益:8,650億円(+50.6%)・1株当たり381.69円

  • 配当:年間191円の予想。分割後の株数に換算した額で過去最高。中間は分割前の株数で415円と、中間純利益が予想を上回ったため7月予想の384円から増額し、期末は分割後の株数で108円を予定

  • SPE新規装置売上:上期実績1兆2,657億円に対し、下期は1兆5,600億円を見込む。通期では前期比+59%

出典:東京エレクトロン 2027年3月期第2四半期決算短信 p.1・p.3、剰余金の配当(2027年3月期中間配当)に関するお知らせ、2027年3月期第2四半期決算説明会資料 p.16・p.17・p.19よりKabuGraph作成。

WFE(前工程製造装置)市場の見方もさらに引き上げられました。7月時点は「CY2026は1,500億ドル以上、CY2027は1,900億ドル以上」でしたが、10月時点ではCY2026は1,600億ドル程度、CY2027は2,100億ドル以上に変わり、生成AIに加えてエージェント型AIの普及が先端半導体の需要拡大を加速しているとの認識が示されています(出典:2027年3月期第1四半期決算説明会資料 p.12、第2四半期決算説明会資料 p.13)。なお2026年7月には最高執行責任者(COO)を新設し石田博之氏が就任、CEOは河合利樹氏、CFOは川本弘氏という体制になりました。

EPS・配当金の推移

EPS・1株配当金の推移

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成。EPS・配当金は株式分割(2023年4月、1株→3株/2026年10月1日、1株→5株)調整後。配当性向は決算短信の値

SPE用途別構成

2026年3月期のSPE新規装置の用途別構成は以下の通りです。非メモリ(ロジック/ファウンドリ)が59%と最大シェアを占め、AI向け先端ロジックの設備投資が売上を牽引しています。

SPE用途別構成比(2026年3月期)

出典:東京エレクトロン 2026年3月期決算説明会資料 p.8よりKabuGraph作成

地域別売上構成と中国リスク

TELの地域別売上では中国が34.1%(2026年3月期通期)を占めます。ただし四半期ベースでは、中国比率はQ2の40.3%をピークにQ3 31.8%、Q4(2026年1-3月期)26.8%まで低下し、韓国・台湾へのシフトが進みました。台湾はQ4に22.0%まで上昇しています。これは米国の対中輸出規制の影響でもあり、今後の規制強化リスクは注視が必要です(出典:東京エレクトロン 2026年3月期決算説明会資料 p.5・p.27)。

ただし低下が一本調子で続いているわけではありません。2027年3月期の中国比率は第1四半期に30.4%、第2四半期(7〜9月)に36.4%(3,399億円)と再び上昇しています。第2四半期は韓国20.4%(1,907億円)、台湾19.3%(1,804億円)で、地域構成は四半期ごとに大きく振れる点に注意が必要です(出典:東京エレクトロン 2027年3月期第2四半期 決算説明会資料 p.7)。

中期経営計画(目標年度:2027年3月期)

指標

2026/3実績

中期計画目標

売上高

2兆4,435億円

3兆円以上

営業利益率

25.6%

35%以上

ROE

29.6%

30%以上(会社評価:On Track)

R&D投資(2022年度から5年間)

—

1兆円以上

出典:東京エレクトロン 2027年3月期第1四半期 決算説明会資料 p.14(売上高・営業利益率・ROEの3目標と進捗評価)および2022年6月8日発表の中期経営計画(R&D投資5年間で1兆円以上、設備投資4,000億円以上)。目標年度は2027年3月期。

10月30日に開示した通期予想は売上高3兆7,000億円・営業利益率31.6%で、売上高は目標を上回る一方、営業利益率は35%に届かない見込みです。会社は2026年7月時点で売上高とROEを「On Track」、営業利益率を「In Progress」と評価し、営業利益率の達成はチャレンジングとの認識を示していました。R&D投資は2023年3月期〜2027年3月期の累計が約1兆2,600億円(2027年3月期は計画値。KabuGraph算出)となる見込みです。

熊本R&Dハブの新設

2025年10月、TELは熊本県合志市に約470億円を投じたプロセス開発棟を竣工しました。会社資料によれば同棟が担うのはコータ/デベロッパと洗浄装置の開発です。延床面積は約27,000㎡。クリーンルーム面積2倍×開発効率2倍で開発アウトプットを4倍に高め、TSMCをはじめとする顧客の半導体メーカーを交えて1nm世代に向けた新装置の評価を進めると報じられています(出典:東京エレクトロン 2026年3月期決算説明会資料 p.19、東京エレクトロン九州 新開発棟竣工のお知らせ(2025年10月15日)、電子デバイス産業新聞)。

投資家が注目すべきポイント

強み① コーター/デベロッパーの独占的シェア

世界シェア91%(CY2025、Gartner調べ)のコーター/デベロッパーは、TELの最大の競争優位性です。この装置はASMLの露光装置と必ず対で使われるため、世界中の最先端半導体工場に新規ファブが建設されるたびにTELの装置が導入される構造になっています。数十年にわたるレジストメーカーとの共同開発実績が参入障壁を形成しており、この独占的地位が崩れる可能性は当面きわめて低いと考えられます。

強み② AI半導体スーパーサイクルの恩恵

生成AI・データセンター向けの半導体設備投資は、従来のPC・スマートフォンサイクルとは異なる構造的な成長ドライバーです。TELの製品ポートフォリオは、先端ロジック(TSMC 2nm/1nm)、HBM用DRAM、アドバンストパッケージングのすべてに対応しており、AI半導体投資の恩恵を幅広く受ける立場にあります。2027年3月期にはコーター/デベロッパーで前年比50%超、アドバンストパッケージングで70%超の成長を見込んでいます(2026年7月時点の会社見通し)。

強み③ 高水準のFCFと積極的な株主還元

2026年3月期のフリーキャッシュフローは4,332億円(四半期の合計からKabuGraph算出)で、有価証券報告書が開示する直近5期では最高水準です。配当性向50%を基本方針とし、2026年3月期は1株628円(分割後の株数に換算すると125.6円)の配当に加え1,499億円の自社株買いを実施しました(総還元額4,374億円、総還元性向76%)。2027年3月期の配当予想は分割後の株数で年間191円と過去最高です。中期計画ではROE30%以上を目標とし、資本効率を重視した経営姿勢を明確にしています。

2026年5月29日に決議した上限1,500億円の自己株式取得は、7月31日までに約1,500億円(分割前の株数で244万3,900株)を取得して終了しました。10月30日には新たに上限1,500億円・2,500万株(自己株式を除く発行済株式総数の1.1%)の自己株式取得枠を設定しています(取得期間2026年11月1日〜2027年3月31日。出典:自己株式の取得状況および取得終了に関するお知らせ(2026年8月3日)、自己株式の取得枠設定に関するお知らせ(2026年10月30日))。ただし2026年3月期の配当は政策保有株式の売却益1,155億円に支えられた面があり、本業だけで積み上がった水準ではない点は留意が必要です。


リスク① 中国売上比率34%と地政学リスク

2026年3月期の中国向け売上は全体の34.1%を占めます。米国は半導体製造装置の対中輸出規制を段階的に強化しており、先端装置の販売制限がさらに拡大すれば収益への影響は避けられません。四半期ベースの中国比率はQ4に26.8%まで下がったものの、2027年3月期は第1四半期30.4%、第2四半期36.4%と再び上がっており、成熟ノード向け装置にまで規制が及ぶ場合のインパクトは大きいと言えます。

地政学リスクは顧客との関係にも及びます。台湾子会社(Tokyo Electron Taiwan)は、元従業員がTSMCの機密情報を不正に取得した事件をめぐって監督義務違反を問われ、2026年4月に台湾の裁判所が元従業員に懲役10年、同子会社に罰金を科す判決を下しました(捜査への協力・再発防止策の実施・TSMCとの和解が考慮され、同子会社の刑の執行は猶予)。有価証券報告書でも事業等のリスクとして記載されています。

リスク② 半導体設備投資サイクルの反転

半導体製造装置業界は景気循環性が高く、売上高が1年で17%減少した実績があります(2023/3→2024/3)。現在のAIスーパーサイクルは構造的な成長とされていますが、ハイパースケーラーの設備投資方針の変更やPER約38倍(2026年10月30日終値9,514円・決算発表前、前期実績ベース。会社予想ベースでは約25倍)の現在の株価水準では、成長期待の剥落が大きな下振れリスクとなります。

リスク③ 営業利益率35%目標との差とR&D投資の先行負担

営業利益率は2023年3月期の28.0%から2026年3月期には25.6%に低下しました。直近期の低下(28.7%→25.6%)は、原材料高・人件費増による売上総利益率の低下(47.1%→45.3%)が最大の要因で、1nm世代の装置開発を含むR&D費の増加(2,778億円、+11.1%)がこれに次ぎます。2027年3月期は会社予想で営業利益率31.6%まで回復する見込みですが、R&D費は3,350億円(前期比+20.6%)、減価償却費は1,000億円(前期809億円)に増える計画です(設備投資は前期の2,160億円から1,900億円に減る計画)。中期計画の営業利益率35%以上の目標には、会社予想の31.6%でも約3ポイント届かず、達成ハードルの高さを示しています。

まとめ

東京エレクトロンは、コーター/デベロッパーでの圧倒的なシェア(91%、CY2025)を軸に、AI半導体向けの設備投資拡大という構造的な追い風を受けている日本を代表する半導体装置メーカーです。

パターニング工程の4連続工程すべてに装置を持つ世界唯一の企業としてのポートフォリオの幅、フィールドソリューションによるストック型収益、そして配当性向50%+自社株買いの積極的な株主還元は、長期投資家にとって魅力的な要素です。

一方で、中国売上比率34%の地政学リスク、半導体設備投資の景気循環性、PER約38倍(2026年10月30日終値・決算発表前、会社予想ベースでは約25倍)の高バリュエーション、そして中期計画の営業利益率35%に届かない利益率は、投資判断において慎重に考慮すべきリスク要因です。2026年3月期の純利益・配当の伸びが政策保有株式の売却益1,155億円に支えられている点も押さえておきたいところです。

中期経営計画(目標年度は2027年3月期)の売上3兆円・営業利益率35%の目標に対し、10月に初めて開示した通期予想は売上3兆7,000億円・営業利益率31.6%で、売上は目標を超える一方、利益率は届かない見込みです。2027年3月期上期は売上+41.3%・営業利益+67.2%と半期の過去最高を更新し、通期では営業利益1兆1,690億円(+87.1%)を見込みます。利益率の回復が続けば株価のさらなる上昇余地がある一方、AI投資サイクルの転換点には注意が必要です。

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東京エレクトロンは世界有数の半導体製造装置メーカーです。半導体プロセス用の製造装置を開発・製造し、世界の大手半導体メーカーに提供。国内製造の装置を米国・韓国・欧州などの子会社を通じて販売・保守。次世代デバイス技術の研究開発に積極的に取り組み…

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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