ニューラルグループ(4056)の企業分析|AI×エンタメM&A戦略で売上60%増を目指すグロース企業の実力

ニューラルグループ(4056)は、画像認識AIやエッジAI技術を基盤に、駐車場管理・人流解析・デジタルマーケティングなどのAIソリューションを提供する企業です。
2026年に入りイベント・エンタメ企業3社を矢継ぎ早に買収し、AI×エンターテインメントの融合を加速。2026年12月期は売上高53億円(前期比+60.6%)と大幅な増収計画を掲げています。一方、上期(1〜6月)は営業損失3.5億円と赤字が先行し、売上も通期予想の34%にとどまりました。下期にどこまで巻き返せるかが焦点です。
この記事では、ニューラルグループの事業構造、M&A戦略、業績推移、投資判断のポイントを、個人投資家の視点からわかりやすく解説します。
この記事の内容(目次)
会社概要 — 創業2年7ヶ月で上場したAIスタートアップ
ニューラルグループは、重松路威氏が2018年1月に「ファッションポケット」として創業したAIエンジニアリング企業です。創業からわずか2年7ヶ月で東証マザーズに上場(2020年8月)し、AI企業として注目を集めました。2019年3月にニューラルポケットへ社名変更し、2023年6月には事業が広がったことを受けてニューラルグループへ社名を変えました。
項目 | 内容 |
|---|---|
会社名 | ニューラルグループ株式会社(Neural Group Inc.) |
証券コード | 4056(東証グロース) |
設立 | 2018年1月(ファッションポケット株式会社として) |
上場 | 2020年8月(東証マザーズ)→ 2022年4月 東証グロースへ移行 |
代表取締役社長 | 重松路威 |
大株主 | 重松社長(資産管理会社を含め議決権の約5割、2026年6月時点) |
従業員数 | 204名(連結、2025年12月末) |
本社 | 東京都千代田区有楽町(東京ミッドタウン日比谷) |
決算期 | 12月期 |
当初はファッションアイテムの画像認識AI(精度98%超)を強みにスタートしましたが、その後、駐車場や都市空間の解析、デジタルサイネージ広告、LLM開発へと事業領域を広げてきました。2026年からはM&Aを通じてエンターテインメント・イベント領域に本格参入し、「AI×エンタメ」のグループ経営へと舵を切っています。
重松社長が議決権の約半分を持つオーナー企業です。2023年に資本業務提携したソニー(2025年12月末時点で約4%を持つ株主)とは、2026年4月に業務提携を終えました。会社は業績への影響は軽微としています。
事業構造を理解する — 2つの領域とM&Aで広がるグループ
ニューラルグループはAIエンジニアリング事業の単一セグメントですが、社内では「イノベーション領域」と「コアサービス領域」の2つのサービスドメインに分けて開示しています。これに加え、2026年のM&Aでイベント・エンタメ分野の会社が加わりました(会社の開示では、買収した会社の売上はコアサービス領域に含まれます)。
コアサービス領域 — 売上の約8割を担う収益基盤
成熟したAI技術を活用したシステム開発・プロダクト提供を行う領域です。全国12,000拠点以上に導入実績があり、営業拠点も10ヶ所以上。AI企業としては異例の全国ネットワークを構築しています。
デジパーク — AIカメラによる駐車場の満空検知、ナンバープレート解析、デジタルサイネージを活用した安全誘導。商業施設・物流施設・観光地など幅広い施設で採用
デジフロー — AIによる人流解析・可視化サービス。商業施設や都市空間のリアルタイム混雑状況を分析。2025年6月には三井不動産のららぽーと安城で来場者数のカウントに採用(車両の動線解析は姉妹サービスの「デジスルー」)
デジタルマーケティング — 子会社ニューラルマーケティングが運営。全国の大阪・東京・札幌・仙台・名古屋・高松・広島・福岡に拠点を持ち、AI技術を活用したデジタル広告・マーケティング支援を展開

イノベーション領域 — 先端AI技術の研究開発
AIエージェントやLLM(大規模言語モデル)などの先端技術を企業と共同で研究開発する領域です。売上構成比は約2割と小さいものの、将来の競争力を左右する種まきの位置づけです。
NEURAL.LLM — 自社開発の大規模言語モデル。320億パラメーター(AIの規模を表す数)の商用版を2025年に実装しました。社内のネットワークの中で動かせるオンプレミス型が特徴で、データを外部に出せない大企業のニーズに対応
画像認識AIライブラリ — 独自開発のエッジAI技術。ファッションアイテム検知で98%超の精度を実現し、リアルタイムの画像・映像解析を端末側で処理することでクラウド通信コストを削減
イベント・エンタメ事業 — 2026年のM&Aで急拡大
2026年に入り、3社を矢継ぎ早に買収してエンターテインメント・イベント領域に本格参入しました。
子会社名 | 事業内容 | 売上高 | 取得日 |
|---|---|---|---|
ポマト・プロ | 式典・展示会の企画・制作 | 16億円(2025/2期) | 2026年2月 |
カクタス | 光アート・イベント企画制作 | 8.1億円(2025/6期) | 2026年4月 |
魔法 | ゲーム・遊技機(パチンコ等)向けソフト開発 | 6.3億円(2025/3期) | 2026年6月 |
買収代金はポマト・プロ0.73億円、カクタス5.0億円、魔法5.0億円(魔法の株を持つ資産管理会社ペガサスを含む)で、いずれも現金で支払いました。
M&Aで迎えた会社は、2021年のフォーカスチャネル、2022年のネットテン(両社は合併して現在のニューラルマーケティング)から数えて、魔法が5社目です。
買収の目安は「EV/EBITDA 5.0倍以内」で、相手の企業価値が年間の稼ぐ力(EBITDA)の5倍以内に収まる案件に絞っています。140社・406人のM&Aアドバイザーから月60〜70件の案件情報を受け取り、初期検討に進めるのは3〜4%です(2026年8月時点)。
業績推移と財務分析
通期業績推移
創業後に急成長した売上高は、成長率こそ2022年12月期の前期比+185.0%をピークに鈍化し、2024年12月期の35.6億円まで増収が続きました。2025年12月期は33.0億円と初の減収で、期初の会社予想(売上37億円・営業利益1.6億円)にも届きませんでした。会社は、大型案件の契約交渉が長引き、売上が翌期にずれ込んだことを理由に挙げています。
利益面でも2024年12月期にかろうじて営業黒字化(3,500万円)を達成しましたが、翌期は再び営業赤字(△600万円)。2026年12月期はM&Aの連結寄与で売上高53億円(+60.6%)を計画しています。
通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率・売上高成長率)
四半期業績推移(2026年12月期)
2026年12月期の上期(1〜6月の累計)は、買収した会社の売上が加わり売上高17.8億円(前年同期は17.1億円、+4.0%)と増収でしたが、営業損失は3.5億円に広がりました。会社の計画はもともと期初の売上が小さく、買収した会社が加わる下期にかけて増えていく形です。
1〜3月期は、生成AIの進化で自社のWeb制作支援サービス「Generative Web」が売れにくくなり、売上が会社の想定を下回りました。買収のためのアドバイザー費用など約1億円も、上期に計上しています。
4〜6月期(3ヶ月)の売上は11.0億円と四半期で過去最高になりました。会社は、7〜9月期以降さらに大きく収益が拡大する見込みとしています。
期間 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 |
|---|---|---|---|---|
Q1(累計) | 6.8億円 | △2.4億円 | △2.5億円 | △1.9億円 |
Q2(上期累計) | 17.8億円 | △3.5億円 | △3.7億円 | △3.4億円 |
通期予想 | 53.0億円 | 非開示 | 非開示 | 非開示 |
会社が2026年12月期の利益の目標にしているのは、営業利益ではなく調整後EBITDA 4.0億円です(営業利益に、減価償却費・のれん償却費・買収費用を足し戻した値)。上期の実績は△1.7億円(1〜3月期△1.5億円、4〜6月期△0.1億円)で、目標に届くには下期に5.7億円の上積みが要ります。
財務体質
2025年9月に13.6億円の公募増資を行い、2025年12月末は自己資本比率が44.3%に上がりました。現預金(22.2億円)が借入金などの有利子負債(19.1億円)を上回り、差し引き3.1億円の資金余力がある状態でした(1年前は12.1億円の借入超過)。
ただし2026年6月末には、有利子負債21.5億円が現預金15.4億円を上回り、差し引き6.2億円の借入超過に戻っています。上期は営業赤字と税金の支払いで、本業の現金収支(営業キャッシュフロー)が4.8億円のマイナスでした。自己資本比率は33.9%に下がっています。
3社の買収で、のれん(買収額のうち相手の純資産を超えた分)は12.6億円に増え、純資産15.2億円の8割強に当たります。会社は、年末にかけて現預金を有利子負債と同じ水準まで戻す見込みとしています。
指標 | 2024年12月末 | 2025年12月末 | 2026年6月末 |
|---|---|---|---|
総資産 | 29.8億円 | 42.0億円 | 44.5億円 |
純資産 | 6.1億円 | 18.9億円 | 15.2億円 |
自己資本比率 | 20.0% | 44.3% | 33.9% |
1株純資産(BPS) | 38.78円 | 108.27円 | 87.75円 |
現預金 | 6.7億円 | 22.2億円 | 15.4億円 |
有利子負債 | 18.8億円 | 19.1億円 | 21.5億円 |
のれん | 9.4億円 | 8.4億円 | 12.6億円 |
株価指標
株価指標は2026年10月9日終値(200円)時点です。PBRは、赤字で純資産が減った2026年6月末の値で計算しています(2025年12月末の純資産なら1.85倍)。
指標 | 値 |
|---|---|
株価 | 200円 |
時価総額 | 約34億円 |
PER | —(2025年12月期は純損失、2026年12月期は利益の予想なし) |
PBR | 2.28倍(2026年6月末の純資産で計算) |
配当利回り | 0%(無配) |
EPS(直近通期) | △6.76円 |
ROE | △8.8%(2025年12月期) |
投資家が注目すべきポイント
強み① M&Aによる非連続成長
ニューラルグループ最大の成長ドライバーは、M&Aを軸とした売上の非連続成長です。2026年12月期の売上予想53億円(前期比+60.6%)は、2月に買収を決めたポマト・プロ(3月から連結、直近の年商16億円)とカクタス(4月から連結、同8.1億円)を、期の途中から取り込む前提です。6月に買収した魔法(年商6.3億円)については、会社は「業績への影響は限定的」として予想を変えていません。
140社・406人のM&Aアドバイザーから月60〜70件の案件情報が集まる体制は、小型AI企業としては規模が大きく、継続的な買収余地があります(2026年8月時点)。
強み② 全国12,000拠点のAI実装基盤
デジパーク・デジフローなどのコアサービスが全国12,000拠点以上に導入されている点は、AI企業としての差別化要因です。行政機関との連携実績もあり、「実証実験で終わるAI企業」とは一線を画して実業として運用されている点が強みです。
ただし、コアサービス領域の売上は2025年7〜9月期から3四半期続けて前年同期を下回りました(10〜12月期は前年同期比20%減)。会社は、大型案件の契約交渉が長引いたことと、コスト削減を進めた影響を理由に挙げています。2026年4〜6月期は、買収した会社の分を含めて前年同期比30%増に戻りました。
リスク① 赤字体質と下期偏重計画
上場後6期のうち3期が営業赤字という実績は、投資家にとって懸念材料です。2026年12月期も上期の営業損失は3.5億円と赤字が先行し、会社の利益目標(調整後EBITDA 4.0億円)に届くには、下期に5.7億円の改善が必要です。
売上も上期は通期予想の34%にとどまり、予想どおりなら下期は35.2億円と、前年下期(15.9億円)の2.2倍が要ります。会社は2024年・2025年と2年続けて売上の期初予想を下回りました。M&A子会社の連結で売上は増えますが、のれん償却が利益を圧迫するリスクも残ります。
リスク② 希薄化と時価総額の小ささ、上場維持基準
2025年9月の公募増資(13.6億円)で財務基盤は改善しましたが、既存株主の持分は希薄化しています。時価総額は約34億円(2026年10月9日終値時点)とグロース市場でも小型の部類。流動性が低いため値動きが荒くなりやすく、M&Aのニュースで株価が大きく動く傾向があります。
東証はグロース市場の上場維持基準を見直し、2030年3月からは上場5年を過ぎた会社に時価総額100億円以上を求めます。2020年に上場した同社の時価総額は、その3分の1ほどです。基準を下回った状態が1年以内に解消しないと、上場廃止の対象になります。
株価は2025年9月の公募増資の発行価格790円から約4分の1に下がっており、次に資金を集めるときの条件にも響きます。
競合環境
国内の上場AIエンジニアリング企業との比較では、ニューラルグループの位置づけは以下の通りです。
企業 | 時価総額 | 直近通期の売上高 | 特徴 |
|---|---|---|---|
ニューラルG(4056) | 34億円 | 33億円(2025年12月期) | エッジAI・M&A型成長 |
PKSHA(3993) | 1,118億円 | 218億円(2025年9月期) | 対話AI・アルゴリズムライセンス |
HEROZ(4382) | 196億円 | 64億円(2026年4月期) | 将棋AI・法人向けAI・セキュリティ |
データセクション(3905) | 653億円 | 336億円(2026年3月期) | GPUを使ったAIデータセンター |
PKSHAやデータセクションと比べると規模で大きく劣ります。一方、エッジAI×実空間(駐車場・人流・イベント)の組み合わせはユニークなポジションです。全国の営業拠点と12,000拠点の導入実績は、SaaS寄りの他社には無い地上戦の強みといえます。ただし、M&A対象であるイベント・エンタメ領域の競合は多く、AI技術による差別化が収益に反映されるかどうかが今後の評価を左右します。
PKSHA Technology
東京大学・松尾豊研究室発のAIアルゴリズム企業。自然言語処理・音声認識・画像認識・機械学習/深層学習を核に、企業向けAIソリューション、AI SaaSプロダクト、AI×人材マッチングの3事業を展開する。主力製品にAIチャットエージェント「P…
HEROZ
AI技術を活用したBtoC・BtoBサービスを展開するAIテクノロジー企業。将棋AI「HEROZ Kishin」で培った独自のAI技術を基盤に、金融・建設・不動産などの業界向けにAIソリューションを提供する。M&Aを通じてグループを拡大し、…
まとめ
ニューラルグループは、画像認識・エッジAI技術を起点に、M&Aでエンタメ・イベント領域へ事業を拡張中の成長途上企業です。
2026年12月期は売上53億円(+60.6%)を計画。ポマト・プロとカクタスの買収がドライバーだが、上期の売上は通期予想の34%
コアサービス12,000拠点超の導入基盤が強み。ただし既存事業の売上は2025年後半から前年割れが続き、2026年は買収で上乗せ
赤字体質からの脱却が最大の課題。上場後6期中3期が営業赤字で、上期も営業損失3.5億円。会社の目標(調整後EBITDA 4.0億円)には下期に5.7億円の改善が要る
時価総額34億円・無配の小型グロース株。2030年3月からのグロース市場の上場維持基準(時価総額100億円)の3分の1ほどで、M&Aの成否で評価が大きく動くハイリスク・ハイリターン銘柄
M&Aによる売上拡大が目に見える形で進んでおり、エンタメ×AIの新領域への展開は興味深いテーマです。一方、買収した子会社との統合リスク、利益の不安定さ、借入金が現預金を上回る財務、時価総額の小ささを考えると、現時点ではリスク許容度の高い投資家向けの銘柄です。下期の業績進捗とM&A子会社の利益貢献を確認しながら、中長期の成長ストーリーが維持されるかを注視すべきでしょう。










