チェンジホールディングス(3962)の企業分析|ふるさとチョイス×M&A×セキュリティで地方創生DXを推進

チェンジホールディングス(3962)は、ふるさと納税プラットフォーム「ふるさとチョイス」を核に、M&A仲介・サイバーセキュリティ・公共DXの4領域で「地方創生DX」を推進する東証プライム上場企業です。
2026年3月期(IFRS)は売上収益528億円(前期比+13.9%)と増収を維持しましたが、営業利益は112億円(同-16.4%)と減益。イー・ガーディアンの業績不振やfundbookのPPA償却、前期に計上したDGA持分法再評価益の剥落が利益を圧迫しました。続く2027年3月期第1四半期(3ヶ月)も売上収益109億円(前年同期比+9.9%)に対し営業利益4.9億円(同-19.0%)と、株主優待費用が重しになっています。2025年5月に公表した中期経営計画「Digitize & Digitalize Japan(Phase3)」は2026年5月14日に修正され、営業利益180億円の達成時期は2028年3月期から2030年3月期へ2期後ろ倒しされました。
この記事では、チェンジHDの4つの事業領域の仕組み、業績推移、中期計画の成長シナリオ、投資判断のポイントを、個人投資家の視点から解説します。
会社概要 — 「人×技術」で日本の生産性革命を牽引
チェンジホールディングスは、「Change People, Change Business, Change Japan」をミッションに掲げ、2003年にITコンサルティング企業として創業しました。「人×技術」で日本の生産性を飛躍的に向上させるというビジョンのもと、M&Aを積極的に活用して事業を拡大してきました。
項目 | 内容 |
|---|---|
会社名 | 株式会社チェンジホールディングス(CHANGE Holdings, Inc.) |
証券コード | 3962(東証プライム) |
設立 | 2003年4月10日(2023年4月1日に持株会社体制へ移行し商号変更) |
代表者 | 代表取締役兼執行役員社長 福留 大士 |
従業員数 | 1,439名(2026年3月31日時点、連結) |
会計基準 | IFRS(2020年9月期より適用) |
時価総額 | 約734億円(2026年9月15日終値時点、KabuGraphデータ) |
M&Aで事業を拡大してきた成長の軌跡
チェンジHDの成長エンジンはM&Aによる事業領域の拡大です。前身の中期経営計画「DJ2」期間中に9件のM&Aを実施し、売上規模を約3倍に拡大しました。主要なM&A実績は以下の通りです。
時期 | 対象企業 | 事業領域 |
|---|---|---|
2018年11月 | トラストバンク(ふるさとチョイス) | 地方創生 |
2021年3月 | ビーキャップ(IoTワークプレイス可視化) | 民間DX |
2022年10月 | DFA Robotics(サービスロボット) | 民間DX |
2023年10月 | イー・ガーディアン | BPO・サイバーセキュリティ |
2024年9月 | 東光コンピュータ・サービス | 公共DX |
2024年12月 | fundbook(M&A仲介) | M&A仲介 |
4つの事業領域を理解する
チェンジHDの事業は大きく「NEW-ITトランスフォーメーション事業」と「パブリテック事業」の2セグメントで構成されています。さらに4つのサブ領域に分かれており、それぞれが異なる市場でシナジーを生み出しています。
セグメント別売上構成比(2026年3月期)
① 地方創生 — ふるさとチョイスが生む「地域の資金循環」

子会社トラストバンクが運営する「ふるさとチョイス」は、全国約1,700自治体(全体の約95%)が利用する国内最大級のふるさと納税プラットフォームです。寄付者と自治体をつなぐマッチングサービスとして、返礼品の掲載・決済・配送管理までを一気通貫で支援しています。
収益モデルはGMV(流通総額)に連動するテイクレート型です。自治体が支払う手数料がプラットフォーム収入となります。2025年10月のポイント付与禁止後は掲載品数や使い勝手が差別化要因となり、健全な競争環境への移行が進んでいます。2026年3月期のふるさとチョイスのGMVは前期比-1.7%と前年並みで、地方創生領域の売上収益は230.9億円(同+3.7%)でした。
さらに、個人向けふるさと納税に加え、企業版ふるさと納税やGCF(ガバメントクラウドファンディング)など「政策目的リード型ふるさと納税」への転換を推進。自治体の課題解決に寄付を活用するモデルで、従来のポータルサイト型との差別化を図っています。
② 公共DX — LoGoシリーズで自治体業務をデジタル化
パブリテック事業のもう一つの柱が公共DX領域です。自治体向けSaaS「LoGoシリーズ」を展開しており、代表的なサービスは以下の通りです。
LoGoチャット — 自治体専用ビジネスチャット。有償1,018自治体を含め計1,555自治体が導入(2026年4月30日時点)
LoGoフォーム — 自治体向け電子申請フォーム。有償799自治体を含め計835自治体が導入(2026年4月30日時点)
2026年3月期通期の公共DX領域売上は65.1億円(前期比+66.5%)でした。増収の主因は、東光コンピュータ・サービスの通年寄与(+13.6億円)と、2025年6月に設立したジーグラビティが担う中央省庁向けコンサル(+11.5億円)です。陸上自衛隊のDX支援では2026年3月期に新たに23億円を受注し、期末の受注残高は23.0億円(前期末10.8億円)に積み上がりました。2027年3月期第1四半期(3ヶ月)も公共DX領域は前年同期比+54.1%と、防衛省向けコンサル(5.3億円)が牽引しています。
出典:チェンジホールディングス 2026年3月期 決算説明会資料
③ 民間DX・M&A仲介 — BPO・fundbook・DXコンサルの三本柱

NEW-ITトランスフォーメーション事業の「民間DX・M&A仲介領域」(2026年3月期売上収益202.5億円、前期比+14.2%)は、次の3つで構成されています。
イー・ガーディアンのBPO(約99億円) — ソーシャルサポート(SNS投稿監視)、ゲームサポート、アド・プロセスなど。安定期に入った大型案件の売上縮小が続き、2026年3月期は減収(同社の売上寄与-7.0億円)
fundbookのM&A仲介(54.6億円) — 2024年12月に買収。中小企業のM&A仲介
DXコンサル・研修・DXツール(約49億円) — チェンジ本体のコンサル・研修と、ビーキャップ(IoTワークプレイス可視化)・DFA Robotics(サービスロボット)
この領域はNEW-ITセグメントの売上の85%を占め、2026年3月期のセグメント営業利益が-45.6%と落ち込んだ主因もイー・ガーディアンの減収(営業利益-6.8億円)にあります。イー・ガーディアンは労働集約型からの脱却に向け、AIエージェント型カスタマーサポートツールの開発などAI-BPOモデルへの転換を進めています。
fundbookの2026年3月期通期売上は54.6億円と前期並みで着地しました。大手金融機関とのアライアンスによる紹介件数は2025年9月以降の累計で206件(2026年4月時点)まで積み上がったものの、取り組み開始から日が浅く成約の増加には至っていません。2027年3月期第1四半期(3ヶ月)の民間DX・M&A仲介領域も前年同期比横ばい(+0.0%)で、会社は予算未達と説明しています。M&A仲介大手3社(日本M&AセンターHD・ストライクグループ・クオンツ総研HD〈旧M&A総研HD〉)のPERは16〜22倍(2026年9月15日終値、KabuGraph算出)とチェンジHD全体の約10倍を上回っており、fundbookの成長加速はグループ全体のバリュエーション向上に寄与する可能性があります。
出典:チェンジホールディングス 2026年3月期 決算説明会資料
④ サイバーセキュリティ — サイリーグHDを核に業界再編を推進

2023年10月にイー・ガーディアン(6050、東証プライム)を子会社化し、同年12月に中間持株会社サイリーグホールディングスを設立。会社の区分では、イー・ガーディアン本体のBPOは上記③の民間DX・M&A仲介領域に入り、サイバーセキュリティ領域を担うのはセキュリティ子会社のEGセキュアソリューションズ(EGSS)とアイディルートコンサルティング(IDR)、それらを束ねるサイリーグHDです。
2026年3月期通期のサイバーセキュリティ領域売上は35.9億円(前期比+17.4%)で、IDRの複数年一括ライセンス契約の獲得やEGSSのクラウド型WAFの伸びが寄与しました。2027年3月期第1四半期(3ヶ月)も8.9億円(前年同期比+16.5%)と増収が続いています。SMBCグループ・三井住友海上との合弁会社SMBCサイバーフロント(当社19%出資、持分法適用)にサイリーグが開発したインシデント対応サービスを供給する協業も進み、受注は50件を突破しました(2026年5月7日時点)。
業績推移と財務分析
通期業績推移 — M&Aで売上規模は約3.4倍に
チェンジHDは積極的なM&Aにより売上を急拡大させてきました。2021年9月期の売上収益156億円から2026年3月期には528億円へと約3.4倍に成長しています(IFRS基準)。ただし2026年3月期はイー・ガーディアンの業績不振やDGA持分法再評価益の剥落などにより営業利益は112億円と前期比16.4%の減益となりました。
決算期 | 売上収益 | 営業利益 | 純利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
2023年3月期 | 200.2億円 | 57.3億円 | 38.6億円 | 28.6% |
2024年3月期 | 370.2億円 | 73.8億円 | 42.6億円 | 19.9% |
2025年3月期 | 463.9億円 | 134.2億円 | 74.7億円 | 28.9% |
2026年3月期 | 528.3億円 | 112.3億円 | 69.4億円 | 21.2% |
2027年3月期(予) | 578〜590億円 | 115〜125億円 | 66.9〜73.1億円 | 19.9〜21.2% |
通期業績推移(売上収益・営業利益・営業利益率)
2027年3月期第1四半期 — 株主優待費用で減益も、会社は「計画線上」
2026年8月13日に公表した2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月、3ヶ月)は、売上収益が前年同期比+9.9%と増収でしたが、営業利益は4.9億円(同-19.0%)と減益でした。新設した株主優待の費用2.73億円を除くと+26.0%の増益で、通期予想(売上収益578〜590億円・営業利益115〜125億円)と配当予想26円は据え置かれています。
項目 | 2027年3月期Q1(3ヶ月) | 前年同期比 | 通期予想に対する進捗 |
|---|---|---|---|
売上収益 | 108.9億円 | +9.9% | 18.5〜18.8% |
営業利益 | 4.9億円 | -19.0% | 3.9〜4.3% |
親会社の所有者に帰属する利益 | 0.98億円 | -76.7% | 1.3〜1.5% |
EPS | 1.41円 | — | — |
営業利益の進捗率は4%前後にとどまりますが、同社はふるさと納税の寄付が集中する12月を含む第3四半期に年間営業利益の7〜8割を稼ぐ構造で、会社は「計画線上」と説明しています。領域別の売上(3ヶ月、前年同期比)は次の通りです。
公共DX:+54.1%(防衛省向けコンサル5.3億円が牽引)
サイバーセキュリティ:8.9億円、+16.5%
地方創生:+8.4%(Onwords・フィールドエックスなど新規連結の寄与。ふるさと納税GMVは前年同期を下回るも計画の範囲内)
民間DX・M&A仲介:+0.0%(予算未達。BPO・DXツール・M&A仲介はいずれも増収)
セグメント別売上推移 — NEW-IT事業の急成長
セグメント別に見ると、NEW-ITトランスフォーメーション事業がイー・ガーディアンやfundbookの連結効果で急拡大し、パブリテック事業に匹敵する規模に成長しています。
セグメント別売上推移
配当推移 — 増配基調を継続
チェンジHDは2022年3月期に初配当を実施して以来、4期連続で増配し、2027年3月期も増配(26円)を予定しています。配当方針はDOE(純資産配当率)3.6%かつ配当性向下限15%を基準とし、修正中計では2030年3月期の1株配当36.7円・ROE16.5%を目標に掲げています。2026年9月15日終値994円に対する配当利回りは実績(23円)で2.3%、予想(26円)で2.6%です。
1株当たり配当金の推移
配当以外の株主還元も2026年5月14日の修正中計で拡充されました。
自己株式取得 — 上限250万株・20億円(期間2026年5月15日〜11月30日)を決議。中計期間の4年間では50億円の取得枠を設定。ただし2026年8月31日時点の累計取得は74,300株・約6,700万円にとどまり(7月のみ取得、5・6・8月は0株)、枠に対する進捗は3%程度と鈍い
株主優待の新設 — 300株以上の株主に年2回(6月末・12月末基準)、継続保有期間に応じて年間1.5万〜2万円相当のデジタルギフトを進呈。2029年6月末基準日分まで廃止しないことを取締役会で決議済み。この優待費用(第1四半期に2.73億円)が2027年3月期Q1の減益要因
中期経営計画「DJ3」 — 2026年5月に修正、営業利益180億円は2030年3月期へ
2025年5月に公表された中期経営計画「Digitize & Digitalize Japan(Phase3)」(DJ3)は、2026年3月期の業績予想未達や事業環境の変化を踏まえ、2026年5月14日に修正されました。営業利益180億円の達成時期は2028年3月期から2030年3月期へ2期後ろ倒しされ、M&A枠も300億円から130億円に縮小、オーガニック成長重視へ方針転換しています。修正後の2030年3月期目標は売上収益700億円・営業利益180億円(営業利益率25.7%)・EPS168円です。
FY26/3(実績) | FY30/3(目標) | |
|---|---|---|
売上収益 | 528億円 | 700億円 |
営業利益 | 112億円 | 180億円 |
営業利益率 | 21.2% | 25.7% |
EPS | 99.71円 | 168円 |
M&A枠 | 300億円(修正前) | 130億円 |
投資家が注目すべきポイント
成長ドライバー
ふるさと納税市場の拡大と「政策目的リード型」への転換 — ポイント付与禁止後の健全競争で、掲載品数と自治体ネットワークに優位性を持つふるさとチョイスの実力が問われる局面。GCFや企業版ふるさと納税の拡大がテイクレート低下を補えるかが注目点です
fundbookのM&A仲介事業の成長加速 — 大手金融機関との紹介アライアンスが拡大しており、成約率に直結するMOU(基本合意書)締結件数をKPIとした質重視の経営に転換。2027年3月期以降の成長加速が期待されます
セキュリティ・BPO事業の増収増益転換 — イー・ガーディアンは2026年9月期の期初計画で売上高120.1億円(前期比6.1%増)、営業利益16.0億円(同6.7%増)を掲げ、下半期に増収増益へ転じる計画でした。ただし2026年8月3日公表の第3四半期累計(9ヶ月)は売上高83.0億円(前年同期比-3.6%)、営業利益8.4億円(同-30.1%)で、第3四半期単独(3ヶ月)でようやく増収(+3.5%)・営業利益横ばいまで戻した段階です。通期予想は据え置かれていますが、達成には第4四半期(3ヶ月)だけで売上高37.1億円(前年同期比+37%)・営業利益7.6億円(同2.6倍)が必要で、ハードルは高いと言えます。BPO・セキュリティの成長回帰はグループ評価の見直し材料となります
主なリスク
ふるさと納税の制度変更リスク — 2026年10月から自治体の募集経費率が段階的に引き下げられ(寄付額の47.5%以下→2029年に40%以下)、2027年の寄付分からは年収1億円級の高所得者に特例控除の上限(193万円)が設けられます。テイクレートの低下がパブリテック事業の収益を直接圧迫するリスクがあります。競合のアイモバイル(6535)も同様の影響を受けますが、チェンジHDは利益の大半がふるさと納税事業に依存しているため影響度が大きくなります
のれん減損リスク — 2026年3月期末ののれんは293億円(総資産の約28%)。IFRS基準ではのれんを定期償却しない代わりに年次減損テストが実施されます。買収先(特にイー・ガーディアンやfundbook)の業績が計画を下回った場合、減損損失の計上リスクがあります
Amazonのふるさと納税参入 — 2024年12月にAmazonが「Amazonふるさと納税」で参入しました(開始時約1,000自治体)。既存ユーザーのAmazon流出リスクは、ポータルサイト型のふるさとチョイスにとって中長期的な脅威です。ただし参入から1年余りが経った2026年3月期のふるさとチョイスのGMVは前期比-1.7%と前年並みを保っており、会社は2025年10月のポイント付与禁止後の競争環境を「ふるさとチョイスにはポジティブ」と説明しています。影響は今のところ限定的です
バリュエーション — PER10倍前後の低評価
2026年9月15日終値994円に基づくPERは約10.0倍(2026年3月期EPS 99.71円)、PBRは約1.5倍、配当利回りは2.3%(実績23円)・2.6%(予想26円)です。これはふるさと納税の制度リスクや2026年3月期の減益、2027年3月期Q1の減益が織り込まれた結果ですが、競合のアイモバイル(6535)もPER約9.7倍(同日終値503円、2026年7月期EPS 51.64円)と同水準であり、ふるさと納税セクター全体がディスカウントされています。アイモバイルが2026年9月10日に発表した2026年7月期決算は売上高221.5億円(前期比+2.9%)・営業利益41.8億円(同+1.1%)で、同社も伸びが鈍っています。M&A仲介大手3社がPER16〜22倍で評価されていることを踏まえると、M&A仲介事業やセキュリティ事業の成長が顕在化すれば、バリュエーションの見直し余地は大きいと考えられます。
出典:チェンジホールディングス 2026年3月期決算短信(EPS 99.71円)・アイモバイル 2026年7月期決算短信(EPS 51.64円)。株価・PER・PBR・配当利回りは東証株価よりKabuGraph算出(2026年9月15日終値時点)
まとめ
チェンジホールディングスは、ふるさと納税プラットフォーム「ふるさとチョイス」を起点に、M&A仲介・サイバーセキュリティ・公共DXの4領域で「地方創生DX」を展開する独自のビジネスモデルを持つ企業です。
強みは、全国1,700自治体とのネットワーク、M&Aで構築した多角的な事業基盤、そしてPER約10倍という低バリュエーションです。一方で、ふるさと納税の制度リスク、のれん減損リスク、Amazonの参入リスクなど、事業環境の不確実性も存在します。
修正後の中期経営計画DJ3が掲げる「2030年3月期に営業利益180億円」の達成には、ふるさと納税以外の事業(特にM&A仲介とセキュリティ)の成長加速が不可欠です。fundbookの成約件数やイー・ガーディアンの増収増益転換時期を四半期ごとにウォッチすることで、投資判断の精度を高めることができるでしょう。
最終更新:2026年9月16日(2026年3月期決算および2027年3月期第1四半期実績に基づく。株価指標は2026年9月15日終値時点)










