tripla(5136)の企業分析|導入1万施設突破・tripla BookとAIチャットボットで宿泊DXを牽引

tripla(5136)は、宿泊施設向けの予約エンジン「tripla Book」、AIチャットボット「tripla Bot」、CRM・MA「tripla Connect」を軸に、ホスピタリティ業界のDXを推進するSaaS企業です。
2025年10月期は売上高25.7億円(前期比+37.8%)、営業利益5.2億円(同+93.6%)と大幅増収増益を達成。2026年10月期第2四半期累計(2025年11月〜2026年4月)でも売上高16.6億円、営業利益4.7億円と好調で、通期業績予想を上方修正しています。
この記事では、triplaの3つの主力プロダクト、競合環境、業績推移、中期経営計画、海外展開戦略、投資判断のポイントを、個人投資家の視点からわかりやすく解説します。
この記事の内容(目次)
会社概要 — インバウンド復活で追い風を受ける宿泊DXのパイオニア
triplaは、Amazon Japanファッション事業部長やコカ・コーラのEC事業責任者を歴任した高橋和久氏が2015年に設立したホスピタリティSaaS企業です。宿泊施設がOTA(楽天トラベル、じゃらん等)に支払う手数料を削減し、「公式サイトでの直接予約」を増やすためのソリューションを提供しています。
項目 | 内容 |
|---|---|
会社名 | tripla株式会社(tripla Co., Ltd.) |
証券コード | 5136(東証グロース) |
設立 | 2015年4月15日(旧社名: 株式会社umami) |
上場 | 2022年11月25日(東証グロース) |
代表取締役 | 高橋和久(CEO)、鳥生格(CPO) |
本社 | 東京都新宿区西新宿4-15-3 住友不動産西新宿ビル3号館3階 |
資本金 | 8.69億円 |
事業内容 | 宿泊施設向けSaaS(予約エンジン・AIチャットボット・CRM/MA)の開発・運営 |
時価総額 | 約117億円(2026年9月10日時点) |
triplaのビジネスモデルは、月額課金(SaaS)と予約手数料(従量課金)のハイブリッド型です。tripla BookではOTAの手数料(通常10〜15%)より低い手数料で予約コンバージョンを高め、宿泊施設の利益改善に貢献します。施設の予約が増えるほどtriplaの収益も伸びる、顧客との利害が一致した構造が特徴です。
通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率・売上高成長率)
売上高は上場前の2022年10月期から毎年35〜60%のペースで成長しており、営業利益率も10.2%→20.2%と着実に改善しています。2026年10月期の会社予想(上方修正後)では売上高35.0億円、営業利益8.2億円と、利益率23%超を見込んでいます。
3つの主力プロダクトを理解する
triplaは宿泊施設のDXに必要な機能を「予約→問い合わせ対応→顧客管理」の一連の流れでカバーしています。単体セグメントのため公式なセグメント別売上はありませんが、主力プロダクトごとの導入施設数と役割を解説します。
tripla Book — 予約エンジン(導入3,812施設)

tripla Bookは、triplaの収益の柱となるSaaS型予約エンジンです。宿泊施設の公式サイトに組み込むことで、ゲストが外部ドメインに遷移せず最短4クリックで予約を完了できます。2026年10月期Q2時点で国内3,812施設に導入されており(前年同期比+16.6%)、予約流通総額(GMV)は四半期ベースで約387億円に達しています。
収益モデルは月額基本料+予約手数料(テイクレート約1.2%)のハイブリッド型。OTAの手数料(10〜15%)と比べて圧倒的に低コストで、宿泊施設にとって「公式サイト経由の予約を増やすインセンティブ」になっています。会員組織・ロイヤルティプログラム(Gold/Silver/Bronzeのランク制度)が追加費用なしで利用でき、Googleホテル広告やFree Booking Linksとも連携します。
tripla Bot — AIチャットボット(導入2,106施設)

tripla Botは、問い合わせの約95%を自動応答するAIチャットボットです。2017年のサービス開始以来、宿泊施設の電話・メール対応の負担を大幅に軽減してきました。2026年10月期Q2時点で2,106施設に導入されています(前年同期比+10.3%)。
標準で8言語に対応しており(英語・簡体字/繁体字中国語・韓国語・タイ語・インドネシア語等)、インバウンド対応で特に威力を発揮します。FAQ登録数に上限がなく、機械学習で回答精度が継続的に向上する仕組みです。LINE・Facebook Messengerとの連携も可能で、宿泊施設のSNS活用にも貢献しています。
tripla Connect — CRM・マーケティングオートメーション

tripla Connectは、tripla BookとBotで蓄積した顧客データを活用するCRM・MAツールです。見込客から宿泊客、リピーターまでを一元管理し、顧客属性(ビジネス・ファミリー・レジャー等)に応じたセグメント別のメールマガジン配信やプランレコメンドが可能です。
中期経営計画では、tripla Connectの導入施設数を2024年10月期の1,116施設から2027年10月期に約2,000施設へ拡大する計画です。予約エンジンとチャットボットの導入施設へのアップセルが成長ドライバーとなっています。
プロダクト | 導入施設数(2026/4時点) | 前年同期比 | 主な収益モデル |
|---|---|---|---|
tripla Book | 3,812施設 | +16.6% | 月額課金+予約手数料(テイクレート約1.2%) |
tripla Bot | 2,106施設 | +10.3% | 月額課金(サブスクリプション) |
tripla Connect | — | — | 月額課金(SaaS) |
競合環境 — 予約エンジン・サイトコントローラー・OTAの三方向から競合が来る
「公式サイトからの直接予約を増やす」という同じ目的に向けて、性格の異なるプレイヤーが並んでいます。予約エンジン専業の「DYNA IBE」、予約エンジンをオプションで持つサイトコントローラー各社、手数料0円で公式サイト予約ツールを配るOTA、そしてAIチャットボット専業。triplaは製品ごとに違う相手と競り合っており、連携先が同時に競合でもある点がこの市場の特徴です。
サービス | 提供企業 | 領域 | 導入規模 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
tripla Book/Bot/Connect | tripla(5136) | 予約エンジン・AIチャット・CRM/MA | Book 3,812施設、Bot 2,106施設(2026年4月末) | 月額+予約金額連動の従量課金。多言語・会員制度が標準。サイトコントローラー「tripla Link」も開始 |
DYNA IBE(旧Direct In S4) | バリューコマース(2491)※旧ダイナテック | 予約エンジン・PMS | 累計8,300施設 | 初期費用0円・月額7,500円〜の固定課金。トラベルテック事業は売上高13.3億円、セグメント損失2.2億円(2025年12月期) |
TL-リンカーン/TLブッキング | シーナッツ(JTB・リクルート出資、未上場) | サイトコントローラー+予約エンジン | 約6,100施設(サイトコントローラー) | 旅行会社・OTA 182社と連携。導入費10万円・月額3万円〜(フルサービス) |
TEMAIRAZU/手間なしNEXT | 手間いらず(2477) | サイトコントローラー+予約エンジン | 非公開(システム連携実績300以上) | 月額固定+従量。売上高24.1億円・営業利益率72%(2026年6月期) |
R-with/ホームページダイレクト | 楽天トラベル/じゃらんnet | OTAが提供する公式サイト予約 | 非公開 | 手数料0円。ただしOTAへの在庫登録が条件で、在庫はOTAと共有 |
talkappi | アクティバリューズ(未上場) | AIチャット・AI電話・付帯予約・会員システム | 2,200以上(自治体・DMOを含む) | 宿泊特化で10年。DYNA IBEと連携し、予約後の食事・体験販売を担う |
SiteMinder | SiteMinder(豪ASX上場) | チャネルマネージャー+予約エンジン | 世界47,000施設超 | 150カ国で展開。東南アジアではtriplaの買収子会社と直接競合 |
予約エンジン — 導入数で先行するDYNA IBEを、売上ではすでに逆転
予約エンジン単体で最大手はダイナテックの「DYNA IBE」(旧Direct In S4)です。累計8,300施設の導入実績はtripla Bookの3,812施設を上回りますが、累計値である上に、初期費用0円・月額7,500円〜の固定課金が中心です。ダイナテックは2019年にヤフーからバリューコマース(2491)へ売却され、2025年4月に同社へ吸収合併されました。バリューコマースのトラベルテック事業(DYNA IBE+DYNA PMS)は2025年12月期の売上高13.3億円(前期比+4.5%)でセグメント損失2.2億円、2026年1〜3月期は一部ホテルチェーンとの契約見直しで売上が前年同期比18%減と、成長が止まっています。
一方のtriplaは2025年10月期の売上高25.7億円(+37.8%)、営業利益率20%です。導入数では後発でも、予約金額に連動する従量課金に宿泊単価の上昇が乗り、事業規模ではすでに約2倍の差をつけています。「安い固定課金で数を取る」DYNA IBEに対し、「施設の売上が伸びるほど自社も伸びる」料金設計を選んだことが、収益性の差として表れています。
サイトコントローラー各社 — 連携先であり、予約エンジンでは競合
OTA各社の在庫・料金を一元管理するサイトコントローラー(チャネルマネージャー)は、国内では手間いらず「TEMAIRAZU」、シーナッツ「TL-リンカーン」、クリップス「ねっぱん!++」、鉄道情報システム「らく通with」の4社が主要プレイヤーで、tripla Bookは2020年にこの4社すべてと連携しています。ただし手間いらずは「手間なしNEXT」(2021年〜)、シーナッツは「TLブッキング」と、それぞれ自社の予約エンジンをオプションで持っており、施設側から見れば「サイトコントローラーのオプションで済ませるか、triplaを別途入れるか」の選択になります。
逆にtriplaも、買収したBookandLinkのチャネルマネージャーを日本向けに改修した「tripla Link」で、「既存のサイトコントローラーより安価」を売りに彼らの領域へ入っています(2025年10月期から売上計上、中期経営計画では2027年10月期に1.6億円を計画)。手間いらずの営業利益率72%が示すように、施設の基幹業務を握るサイトコントローラーは解約されにくく利益率が高い層です。tripla Linkが伸びれば利益率の押し上げ要因になりますが、連携先を敵に回す副作用もあります。
OTAの「無料ツール」— 価格競争ではなく、データの取り合い
楽天トラベルの「R-with」、じゃらんnetの「ホームページダイレクト」は、OTAが宿泊施設に配る手数料0円の公式サイト予約ツールです。予約手数料もかからない代わりに、OTAへの在庫登録が条件で、在庫はOTAと共有され、機能は予約受付にほぼ限られます。「公式サイトで予約を受けたい」だけの施設にはこれで足りるため、triplaが最初に競合するのは有料の予約エンジンではなく、この無料ツールです。
triplaの反論は、公式サイト予約の価値は手数料削減だけでなく「顧客データが施設のものになる」点にある、というものです。tripla Bookで取った予約はtripla Connectのメルマガ・LINE配信に直結し、リピーターを施設が自力で呼べます。OTAの無料ツールではこの部分が空白のままなので、「予約を受けるだけ」から「顧客を育てる」へ施設の関心が移るほど、triplaの土俵になります。
AIチャットボット — talkappiと拮抗、生成AIで参入障壁は下がる
祖業のtripla Bot(2,106施設)には、宿泊特化のAIチャットボットで10年の実績を持つアクティバリューズ「talkappi」(2,200以上、自治体・DMOを含む)が並びます。talkappiはAI電話応対や付帯サービス予約、会員システム、メール配信にも広げており、製品構成はtriplaと重なります。ほかにBespoke「Bebot」、Kotozna、ティファナ「AIさくらさん」など宿泊向けの参入は多く、生成AIの普及で「FAQに答えるだけ」のチャットボットは差別化しにくくなりました。
実際、tripla Botの売上は2024年10月期に3.6億円と前期比で減少し、2025年10月期の中間期も前年同期比1.9%減とほぼ横ばいです。triplaの強みはBot単体の性能ではなく、チャットの会話からそのままtripla Bookの予約へ流す導線にあります。Botは単独で稼ぐ製品から、Bookへの入口へと役割が変わりつつあると見るべきでしょう。
海外 — 東南アジアではSiteMinderのような世界大手と戦う
海外に目を向けると、豪州上場のSiteMinder(世界47,000施設超、150カ国)がチャネルマネージャーと予約エンジンをセットで提供し、東南アジアでも強い存在です。ほかにCloudbeds、アコー傘下のD-EDGEなど、PMS・予約エンジン・チャネルマネージャーを統合したクラウド勢がひしめきます。triplaが買収したインドネシアのBookandLinkやシンガポール・タイのEnduranceはチャネルマネージャーが主力で、まさにSiteMinderと同じ土俵です。国内では「高機能な予約エンジン」で勝負できますが、海外では規模で劣る挑戦者の立場になります。
手間いらず
手間いらずは、ホテル・旅館などの宿泊施設向けシステムと、一般消費者向けデジタルプラットフォーム運営の2つのセグメントで展開。アプリケーションサービスでは、複数の予約サイトの在庫・料金を一元管理できる「TEMAIRAZU」シリーズを提供し、月…
バリューコマース
成果報酬型広告「アフィリエイト」が主力。独自トラッキングシステムでメディア運営者と広告主をマッチング。ASP、コンサルティング、オプションサービスで広告主をサポート。トラベルテック事業では宿泊予約システム「DYNA IBE」、ホテル管理シス…
業績推移と財務分析
triplaは上場以来、4期連続で30%超の増収を達成しています。インバウンド需要の回復、国内宿泊施設のDX化、M&Aによる海外展開が三位一体の成長エンジンとなっています。
四半期業績の推移
四半期売上高・営業利益の推移
四半期ベースでは、2026年10月期Q2(2026年2月〜4月)に売上高8.5億円、営業利益2.5億円を記録。営業利益率は29.7%まで上昇しており、SaaSビジネスのスケーラビリティが数字に表れています。
中期経営計画(2025〜2027年10月期)
指標 | 2025/10(実績) | 2026/10(予想) | 2027/10(計画) |
|---|---|---|---|
売上高 | 25.7億円 | 35.0億円 | 43.0億円 |
営業利益 | 5.2億円 | 8.2億円 | 12.0億円 |
純利益 | 5.0億円 | 6.0億円 | 8.8億円 |
中期経営計画では、2027年10月期に売上高43.0億円(年平均成長率+28%)、営業利益12.0億円を目指しています。成長の柱は3つです。
事前決済比率の引き上げ — 2024年10月期の約20%から2027年10月期に35%へ。事前決済が増えるとキャンセル率が下がり、テイクレートも改善します
海外M&Aの加速 — 台湾(Surehigh)、インドネシア(BookandLink)に加え、香港・フィリピンに進出。東南アジアの宿泊DX需要を取り込みます
tripla ai OTAサービスの展開 — AIを活用した新しいOTAサービスの立ち上げも計画されています
バリュエーション
2026年9月10日時点の株価1,967円に対し、PER 23.0倍、PBR 7.13倍です。SaaS銘柄としてはPERは比較的妥当な水準ですが、PBRは自己資本が薄いため高くなっています。2026年10月期の上方修正後予想(営業利益8.2億円)をベースにすると、PSR(株価売上高倍率)は約3.3倍で、高成長SaaS銘柄としては割安感のある水準です。
投資家が注目すべきポイント
成長ドライバー
インバウンド需要の構造的拡大がtriplaの最大の追い風です。訪日外国人旅行者数はコロナ前の2019年水準を超えて増加しており、宿泊単価の上昇は予約手数料ベースのtripla Bookの収益を直接押し上げます。
また、国内の導入浸透率はまだ約8%です。日本の宿泊施設は約5万施設とされ、triplaのBook導入数3,812施設はまだ市場の一部にすぎません。大手チェーンだけでなく、中小旅館・ホテルへの浸透余地は大きいと考えられます。
海外展開も注目ポイントです。東南アジアはOTA依存度が高い市場ですが、ホテルの直接予約ニーズは日本と同様に高まっています。M&Aで現地の顧客基盤を取得し、triplaの技術で価値を高める戦略は、アジア全域での成長機会を開きます。
リスク要因
小型株ゆえの流動性リスクが最大の注意点です。時価総額117億円、1日の売買代金も限定的で、まとまった売買で株価が大きく動く可能性があります。機関投資家のカバレッジも少なく、決算発表前後のボラティリティは高い傾向です。
OTA大手との競合リスクも見逃せません。楽天トラベル「R-with」やじゃらんnet「ホームページダイレクト」のように、OTAはすでに手数料0円の公式サイト予約ツールを配っています(詳しくは競合環境の章)。現状はOTAとの在庫共有が条件で施設の囲い込み手段という色が濃いものの、OTA側が顧客データの開放や決済手数料の引き下げに踏み込めば、有料の予約エンジンを別途入れる理由は薄れます。ただし、triplaはOTAと直接競合するというよりも、OTAへの依存を減らしたい施設側の需要に応えるポジションにいます。
海外事業はまだ赤字です。台湾子会社Surehighは売上1.1億円に対し営業赤字700万円(政府補助金1,600万円あり)、インドネシアBookandLinkも営業赤字1,500万円(2024年10月期)。成長投資フェーズですが、回収にはまだ時間がかかります。
まとめ
triplaは、宿泊施設の「公式サイト予約」を増やすソリューションに特化した成長SaaS企業です。インバウンド需要の拡大、宿泊施設のOTA手数料削減ニーズ、アジア展開という複数の成長ドライバーを持ち、売上高は年率30%超で成長しています。
営業利益率は20%を超えて改善中で、中期経営計画では2027年10月期に売上高43億円、営業利益12億円を目指しています。一方で小型株の流動性リスクや無配当といった注意点もあり、成長株として中長期の視点で評価すべき銘柄といえるでしょう。
tripla
Triplaは「最高の旅行ソリューションを通じて、宿泊施設の持続可能な成長と地域社会の発展を支援する」をパーパスに掲げる宿泊施設向けホスピタリティSaaS企業。2019年7月にサービス開始した「tripla Book」は、宿泊施設の公式サイ…










