SBIホールディングス(8473)徹底分析|SBI証券1,600万口座・新生銀行の利鞘拡大とPER4.8倍の中身

SBIホールディングス(8473)は、ネット証券最大手のSBI証券とSBI新生銀行を中核に、保険・暗号資産・バイオまで展開する国内最大級の金融コングロマリットです。
2026年3月期は売上収益1兆8,966億円(前期比+31.4%)、純利益4,276億円(同+163.7%)と過去最高益を大幅に更新し、続く2027年3月期第1四半期も税引前利益2,258億円(前年同期比+149.9%)と第1四半期として過去最高でした。子会社740社・持分法適用78社を擁する巨大グループでありながら、PERは見かけ上わずか4.8倍(2026年8月時点、ただし一時益含む)と、東証プライム平均を大きく下回る水準にあります。
この記事では、SBIホールディングスの5つの事業セグメントの仕組み、業績推移、配当政策、投資判断のポイントを、個人投資家の視点からわかりやすく解説します。
会社概要 — ソフトバンクから独立した「ネット金融の覇者」
SBIホールディングスは、1999年にソフトバンクの金融子会社として設立され、2006年に完全独立。以来、「顧客中心主義」と「テクノロジー×金融」を掲げ、ネット金融のあらゆる領域に事業を拡大してきました。
項目 | 内容 |
|---|---|
会社名 | SBIホールディングス株式会社(SBI Holdings, Inc.) |
証券コード | 8473(東証プライム) |
設立 | 1999年7月(ソフトバンク・インベストメントとして) |
上場 | 2000年12月(大証ナスダック・ジャパン)→ 2002年2月 東証第一部 → 2022年4月 プライム市場 |
代表取締役会長兼社長CEO | 北尾吉孝 |
従業員数 | 18,669名(連結、2026年3月期) |
本社 | 東京都港区六本木(泉ガーデンタワー) |
セクター | 証券・商品先物取引業 |
決算期 | 3月期(IFRS適用) |
グループ企業数 | 連結子会社740社、持分法適用78社(2026年3月期) |
北尾吉孝とSBIの歩み — ソフトバンクからの独立と「金融生態系」の構築
SBIグループの中心人物は、創業者の北尾吉孝会長兼社長CEOです。野村証券で投資銀行業務を経験した後、1995年にソフトバンクの孫正義氏にスカウトされ常務取締役に就任。1999年にソフトバンク・インベストメント(現SBIホールディングス)を設立し、2006年にソフトバンクから完全独立して現在のSBIグループを築き上げました(出典: SBIホールディングス 沿革)。
SBIグループの成長は、以下の3つのフェーズに分けて理解できます。
第1期(1999〜2006年): ネット金融の基盤構築 — イー・トレード証券(現SBI証券)を中核に、ネット証券・ネット銀行・ネット保険の「三位一体」モデルを構想し、ネット証券を軸に基盤を構築
第2期(2007〜2020年): 「金融生態系」の拡大 — 2007年に住友信託銀行(現・三井住友信託銀行)と折半で住信SBIネット銀行(現ドコモSMTBネット銀行)を開業。証券・銀行・保険・FX・ベンチャーキャピタルを有機的に連携させ、手数料引き下げ競争をリードしながらグループ全体で顧客を囲い込む戦略を推進
第3期(2021年〜): 「第四のメガバンク」構想 — 2021年にSBI新生銀行をTOBで子会社化(取得比率47.8%、現在71.2%保有)。地方銀行への出資も進め、銀行業を軸にした総合金融グループへと変貌
子会社740社 — 金融を超えた巨大コングロマリット
SBIグループの最大の特徴は、その事業の幅広さです。証券・銀行・保険という金融の三本柱だけでなく、暗号資産、バイオテクノロジー、Web3、再生可能エネルギーにまで進出しています。2026年3月期時点で連結子会社740社・持分法適用78社というグループ規模は、メガバンクグループに匹敵します。
事業は5つのセグメントに分類されています。売上構成を見ると、金融サービス事業がグループ全体の約82%を占めており、中核事業としての重要性が際立っています。
セグメント別売上構成比(2026年3月期)
5つの事業セグメントを理解する
金融サービス事業 — グループ収益の82%を稼ぐ中核

金融サービス事業は、2026年3月期のセグメント収益1兆5,825億円(前期比+34.8%)を計上し、グループの圧倒的な稼ぎ頭です。主要な子会社は以下の通りです(出典: 2026年3月期決算短信)。
SBI証券 — 国内ネット証券の絶対的トップ
SBI証券は総合口座数1,600万口座超(2026年5月時点)を誇る国内最大のネット証券です。野村證券の約614万口座(2026年6月末)を大きく上回り、楽天証券と双璧をなす存在です。2026年3月期の営業収益は2,846億円、純利益は536億円を計上しました(出典: SBIホールディングス IR)。
2023年9月に国内株式の売買手数料を完全無料化(「ゼロ革命」)するなど、業界の価格破壊をリードしてきました。新NISA制度の追い風もあり、口座数は2024年2月の1,200万から2026年5月には1,600万へと急拡大しています。手数料無料化の減収分は、日銀の利上げを追い風とした信用取引の金利収入、投資信託の残高に連動する信託報酬収入(ストック収益)、外国株式やFXなど無料対象外の取引手数料、さらには銀行・保険へのクロスセルで補っており、ゼロ革命後もSBI証券は営業収益2,846億円・純利益536億円と過去最高を更新しています。「まず顧客を集め、その後に収益化する」というプラットフォーム戦略の成果です。

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SBI新生銀行 — 公的資金返済を果たした銀行事業
SBI新生銀行は、経営破綻した日本長期信用銀行を前身とする普通銀行です。2021年にSBIがTOBで経営権を取得し、2023年1月に現社名に変更しました。SBIグループは現在71.2%の株式を保有しています(2026年3月時点)。2025年7月には長年の懸案であった公的資金3,300億円の完済を達成しました。2026年3月期は経常収益7,741億円、純利益1,134億円を計上し、グループの収益基盤を大きく強化しています(出典: SBI新生銀行 IR情報)。
傘下にはカードローン「レイク」を運営する新生フィナンシャルや、信販会社のアプラスなどがあり、リテール金融と消費者金融に強みを持つ銀行です。

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保険事業 — SBI損保・SBI生命
SBIインシュアランスグループ傘下で、SBI損害保険(自動車保険のダイレクト型)とSBI生命保険(ネット生保)を運営。「顧客中心主義」の名の下に保険料を低く抑える戦略で、ネット保険市場でのシェアを拡大しています。
暗号資産事業 — Ripple提携を軸としたデジタル資産戦略
暗号資産事業は、2026年3月期のセグメント収益896億円(前期比+10.9%)を計上しました。暗号資産交換業「SBI VCトレード」を中心に、ブロックチェーン技術を活用した金融サービスを展開しています。SBIは早くからRipple社のXRPに注目し、国際送金分野での提携を推進してきました。
資産運用事業 — インデックス投信の低コスト化
資産運用事業は、セグメント収益416億円(前期比+23.1%)を計上。SBIアセットマネジメントが運用するインデックスファンド・シリーズは、業界最低水準の信託報酬を武器にNISA口座での人気を集めています。SBIグローバルアセットマネジメントを通じた資産運用プラットフォーム事業も展開中です。
PE投資事業 — ファンド運営の収益源
PE(プライベート・エクイティ)投資事業は、従来「投資事業」として開示されていたセグメントで、2025年4月に「PE投資事業」へ名称変更されました。2026年3月期のセグメント収益は1,583億円(前期比+12.4%)です。国内外のIT・フィンテック・AI・ブロックチェーン・金融・バイオ関連のベンチャー企業への投資・育成を行っており、投資先の評価損益(FVTPLで測定する金融資産から生じる収益)の変動が業績を左右します。
次世代事業 — バイオ・Web3・再生エネの「種まき」
次世代事業は、セグメント収益562億円(前期比+83.2%)と急成長中のセグメントです。具体的には以下の領域を含みます。
バイオ・ヘルスケア — 天然アミノ酸5-ALA(5-アミノレブリン酸)を用いた医薬品・健康食品・化粧品の開発・販売と、SBIバイオテックによる抗体医薬・核酸医薬の研究開発
半導体(現在は含まれず) — 台湾PSMCと計画した宮城県の半導体工場(JSMC)は2024年9月に解消され、2026年3月期決算短信の事業説明にも半導体は含まれていない
Web3・ブロックチェーン — NFT、セキュリティトークン(ST)などデジタル資産のインフラ整備
その他 — 再生可能エネルギー、人材関連、メディア関連事業
セグメント別売上収益の推移
業績推移と財務分析
通期業績推移 — 5年で売上は2.5倍に急拡大
SBIホールディングスの業績は、SBI新生銀行の連結効果や暗号資産市場の成長を背景に急速な拡大トレンドにあります。IFRSを採用しているため、一般的な日本企業の「営業利益」ではなく、「税引前利益」が主要な収益指標となります。
決算期 | 売上収益 | 税引前利益 | 純利益 | EPS |
|---|---|---|---|---|
2022年3月期 | 7,636億円 | — | 3,669億円 | 749.27円 |
2023年3月期 | 9,570億円 | — | 354億円 | 66.94円 |
2024年3月期 | 1兆2,105億円 | 1,416億円 | 872億円 | 158.21円 |
2025年3月期 | 1兆4,437億円 | 2,823億円 | 1,621億円 | 268.04円 |
2026年3月期 | 1兆8,966億円 | 5,167億円 | 4,276億円 | 666.82円 |
通期業績推移(売上収益・純利益)
売上収益は5年間で約2.5倍に拡大しました。ただし、純利益の変動が非常に大きい点が金融持株会社の特徴です。
FY2022/3: 純利益3,669億円 — SBI新生銀行のTOB成立に伴う負ののれん(取得価額と純資産の差額)の計上で大幅増益
FY2023/3: 純利益354億円 — 一時的な利益がはく落し、投資有価証券の評価損も影響
FY2026/3: 純利益4,276億円 — 金融サービス事業の好調に加え、住信SBIネット銀行(現ドコモSMTBネット銀行)株式の売却益1,416億円も寄与
2027年3月期 第1四半期決算の進捗 — 第1四半期として過去最高
2026年7月31日に開示された2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は、収益5,710億円(前年同期比+28.8%)、税引前利益2,258億円(同+149.9%)、親会社所有者に帰属する四半期利益1,481億円(同+75.0%)と、いずれも第1四半期として過去最高でした。EPSは229.07円(前年同期139.60円)です。通期の会社予想は引き続き非開示のため進捗率は算出できませんが、税引前利益は前期通期(5,167億円)の44%に相当する額を1四半期で稼いだ計算になります。
セグメント | 2026年3月期 1Q | 2027年3月期 1Q | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
金融サービス事業 | 727億円 | 1,160億円 | +59.5% |
資産運用事業 | 13億円 | 27億円 | +103.6% |
PE投資事業 | 280億円 | 1,199億円 | +328.0% |
暗号資産事業 | ▲5億円 | ▲14億円 | — |
次世代事業 | 10億円 | 36億円 | +262.5% |
連結(消去後) | 904億円 | 2,258億円 | +149.9% |
けん引したのはPE投資事業で、複数の投資先で評価益を計上し税引前利益は1,199億円(+328%)に跳ねました。金融サービス事業も銀行事業663億円(+58.9%)、証券事業352億円(+57.6%)、保険事業135億円(+262.7%)と3事業そろって増益です。SBI証券(日本会計基準)は半導体関連銘柄を中心とした活況な売買を背景に営業収益916億円(+47.5%)、営業利益318億円(+67.4%)と四半期として過去最高を更新し、グループの証券口座数は2026年6月末で1,638万口座に達しました。一方、暗号資産事業は14億円の税引前損失(前年同期は5億円の損失)でした。なお韓国のSBI貯蓄銀行は2026年4月に株式の一部を教保生命保険へ譲渡し、連結子会社から持分法適用関連会社に移行しています。
株主還元では、この好業績を受けて中間配当予想を前年同期比10円増の30円(分割後換算)に引き上げ、年間では前期実績の95円以上を目指す方針を示しました(出典: SBIホールディングス 2027年3月期第1四半期決算説明資料)。
利上げの利益寄与 — 「金利のある世界」がもたらす追い風
2026年3月期の好業績には一時的な売却益だけでなく、日銀の利上げによる構造的な収益改善が大きく寄与しています。日銀は2024年3月にマイナス金利を解除し、政策金利を2025年1月に0.5%、2025年12月に0.75%、2026年6月には1.0%へと引き上げました。この「金利のある世界」への回帰は、SBIグループの銀行事業と証券事業の両方で利益を押し上げています。
銀行事業: SBI新生銀行は利鞘拡大で純利益+34%
最大の恩恵を受けたのがSBI新生銀行を中核とする銀行事業です。金融サービスセグメントの銀行事業税引前利益は1,147億円→2,690億円(2.3倍)になりましたが、このうち1,416億円は住信SBIネット銀行株式の売却益です。これを除いた実質は約1,270億円(+11%程度)で、利上げの効果はこちらに表れています。SBI新生銀行(連結・日本基準)では業務粗利益が2,987億円→3,346億円(+12%)、純利益は844億円→1,134億円(+34%)と大幅な増益です。
決算説明資料では増益の主因として「営業性資産残高の拡大に伴う貸出利鞘の増加」が筆頭に挙げられています。営業性資産残高(貸出金や有価証券など利息を生む資産)は14.3兆円→18.0兆円(+26%)に拡大。利上げにより貸出金利が上昇する一方、預金金利の上昇は相対的に緩やかなため、銀行の利鞘(貸出金利と調達金利の差)が拡大しています。
証券事業: 信用取引の金利収入が40%増
SBI証券でも利上げの恩恵は顕著です。金融収益(信用取引の金利や貸株料など)が860億円→1,205億円(+345億円、+40%)に急増し、営業収益全体の42.3%を占めるまでに拡大しました。ゼロ革命開始直後のFY2024/3(661億円)と比べると2年で+82%です。信用取引の建玉残高が2.16兆円→2.52兆円に増えたことに加え、利上げで信用取引の貸付金利(制度信用2.80%等)による利息収入そのものが増加しています。2023年9月の株式売買手数料無料化(ゼロ革命)で失った委託手数料の減収分を、この金利収入の増加が大きく上回る構図が鮮明になっています。
配当推移 — 着実な増配を継続
SBIホールディングスは直近3期連続の増配を実施しています(株式分割調整後ベース)。配当利回りは約3%と、金融セクターとしては標準的な水準です。2027年3月期は、第1四半期の好業績を受けて中間配当予想を前年同期比10円増の30円(分割後換算)に引き上げ、年間では前期実績の95円以上を目指す方針です(2026年7月31日公表)。
決算期 | 1株配当(分割調整後) | 配当性向 |
|---|---|---|
2022年3月期 | 75円 | 10.0% |
2023年3月期 | 75円 | 112.0% |
2024年3月期 | 80円 | 50.6% |
2025年3月期 | 85円 | 31.7% |
2026年3月期 | 95円 | 14.2% |
1株配当の推移(株式分割調整後)
FY2023/3は純利益354億円と低迷しましたが、減配せず75円を維持した点は評価できます。業績変動が大きいにもかかわらず、配当を減らさない姿勢は株主還元に対する強いコミットメントを示しています。ただし、FY2026/3の配当性向14.2%は、住信SBIネット銀行(現ドコモSMTBネット銀行)の売却益1,416億円などの一時益で純利益が膨らんだ結果であり、経常的な利益ベースでは実質20%台前半の水準です。なお同期はこの売却益を踏まえて総額500億円の自己株式取得も実施しており、配当と合わせた総還元性向は26.1%でした。会社の還元方針は「金融サービス事業の税引前利益(子会社株式売却益などの特殊要因を除く)の30%程度」を配当と自社株買いの合計で還元するというものです。利益変動が大きい金融持株会社では、配当性向よりも配当の絶対額と増配トレンドに注目するのが実践的です。
株価指標(2026年8月時点)
指標 | 値 |
|---|---|
株価 | 3,216円(2026年8月21日終値) |
時価総額 | 約2兆1,263億円 |
PER(株価収益率) | 4.8倍 |
PBR(株価純資産倍率) | 1.16倍 |
ROE(自己資本利益率) | 28.0%(会社公表・親会社所有者帰属持分ベース、一時益含む)/17.7%(KabuGraph算出・非支配持分を含む資本合計ベース) |
配当利回り | 約2.95% |
自己資本比率 | 4.7% |
年初来高値 / 安値 | 3,866円(2026年1月15日)/ 2,631円(2026年7月2日) |

PBR(株価純資産倍率)とは|1倍割れ問題と東証改革の核心
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PER 4.8倍は、東証プライム平均(約19〜21倍、実績ベース・2026年8月末・JPX集計)と比較して極めて低い水準です。PBR 1.16倍も1倍台前半にとどまり、市場はSBIの多角化戦略に対して「コングロマリットディスカウント」を適用していると解釈できます。ただし、PERの分母であるFY2026/3の純利益4,276億円には、住信SBIネット銀行(現ドコモSMTBネット銀行)株式の売却益1,416億円などの一時益が含まれています。これらを除いた経常的な利益ベースで試算すると、実質PERは7〜8倍程度となり、見かけほどの割安感ではない点に留意が必要です。同様に、配当性向14.2%も一時益で分母が膨らんだ結果であり、経常利益ベースでは実質的に20%台前半の水準です。

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投資家が注目すべきポイント
3つの強み
1. 圧倒的なスケールと「低コスト」戦略
SBI証券の1,600万口座、SBI新生銀行の総資産24.7兆円(2026年3月期)という規模は、ネット金融では他の追随を許さないスケールです。このスケールを活かし、株式売買手数料の完全無料化や投資信託の信託報酬引き下げなど、徹底した低コスト戦略で顧客基盤を拡大し続けています。SBI証券が楽天証券と並ぶ「2強」の地位を築いたのは、この戦略の成果です。
2. 「第四のメガバンク」としての総合力
証券・銀行・保険・投信・FX・暗号資産をワンストップで提供できる金融グループは、メガバンク3行(三菱UFJ・三井住友・みずほ)を除けばSBIのみです。SBI新生銀行の取得で銀行免許を持つフルバンキンググループとなり、法人向け融資やストラクチャードファイナンスなど対面金融の領域にも進出。地方銀行への出資(SBIは複数の地銀に出資)を通じた「地銀連合」構想も、競合にはない独自のポジションです。
3. 増配トレンドとバリュエーションの妙味
3期連続増配で配当利回り約3%。それでいてPER 4.8倍(一時益除外の実質ベースでも7〜8倍程度)・PBR 1.16倍というバリュー株としての魅力があります。純利益の一時性を差し引いても、売上収益の成長率(5年CAGR +20%超)と配当利回りの組み合わせは、バリュー投資家にとって検討に値する水準です。
注意すべきリスク
1. 自己資本比率4.7%という薄い資本基盤
銀行業を含む金融持株会社の宿命ですが、自己資本比率4.7%はレバレッジが非常に高いことを意味します。金融危機や大幅な信用損失が発生した場合、自己資本が毀損するリスクは一般事業会社よりも大きくなります。メガバンクの自己資本比率(BIS基準で14〜17%程度)と比べると見劣りしますが、SBIは純粋な銀行ではなく証券・保険・PE投資を含む金融コングロマリットであり、単純な銀行基準との比較には限界があります。とはいえ、多数の金融子会社を束ねる持株会社として、グループ全体での資本管理の健全性には継続的な注視が必要です。
2. コングロマリットディスカウント
証券・銀行・保険・暗号資産・バイオ・Web3と、事業の幅が広すぎるために個々の事業価値が正当に評価されにくいという問題があります。子会社740社という規模はガバナンスの複雑さも意味し、投資家にとって全体像の把握が困難です。低PERの一因がここにあると考えられます。
3. 市場環境への高い感応度
証券事業は株式市場の活況度、暗号資産事業は仮想通貨市況、PE投資事業は投資先のバリュエーション、銀行事業は金利環境に大きく左右されます。複数の市場リスクを同時に抱えているため、マクロ環境が悪化するとセグメント横断的に業績が下振れする可能性があります。FY2023/3の純利益354億円は、こうしたリスクが顕在化した例です。
4. 通期業績予想の非開示
SBIホールディングスは通期の業績予想を開示していません(2027年3月期第1四半期決算時点でも非開示)。金融持株会社は市場環境に左右されるため予想が困難という事情はありますが、投資家にとっては将来の業績見通しを持ちにくいというデメリットがあります。
5. 創業者リスク
北尾吉孝CEOは設立以来25年以上にわたってグループを率いるカリスマ経営者です。「第四のメガバンク」構想や地銀連合、暗号資産への積極投資など、北尾氏のリーダーシップに大きく依存する経営スタイルのため、後継者問題と経営体制の持続性は中長期的な注視ポイントです。
6. 次世代事業の投資回収リスク
次世代事業セグメント(バイオ・Web3・再生可能エネルギーなど)は、FY2026/3でセグメント収益562億円(前期比+83.2%)と急成長し黒字転換を果たしましたが、その収益の多くは暗号資産の評価益など市況に左右される要素を含みます。半導体事業では、台湾PSMCとの共同出資による宮城県への工場建設計画が2024年9月にPSMC側の事情で解消されるなど、先端技術への投資は不確実性が高く、投資回収の時期や規模は不透明です。バイオ事業も研究開発段階であり、収益化までの道のりは長期にわたります。これらの「種まき」事業が将来の収益柱に育つかどうかは、現時点では未知数です。
まとめ
SBIホールディングス(8473)は、ネット証券・銀行・保険を中核に、暗号資産からバイオまで展開する国内最大級の金融コングロマリットです。
投資の観点からのポイントを整理すると、以下の通りです。
事業基盤: SBI証券1,600万口座・SBI新生銀行を中核に、子会社740社を擁する巨大金融グループ。5つのセグメントで多角的に収益を創出
成長性: FY2026/3は売上収益1兆8,966億円(+31%)と過去最高。金融サービス事業が+35%の成長を牽引。FY2027/3 Q1も税引前利益2,258億円(+150%)と第1四半期として過去最高
株主還元: 3期連続増配(分割調整後75円→95円)、FY2027/3は年間95円以上を目指す方針。配当利回り約3%。PER 4.8倍(一時益除外の実質ベースで7〜8倍程度)・PBR 1.16倍とバリュー水準
注意点: 自己資本比率4.7%の高レバレッジ経営。純利益は一時益で大きく振れる(FY2022/3の新生銀行買収益、FY2026/3の住信SBI売却益)。次世代事業(バイオ・Web3・再生エネ)の投資回収は不透明。事業の多角化が株価に「コングロマリットディスカウント」をもたらしている可能性
SBIホールディングスは、「安くて便利」な金融サービスで個人投資家の支持を集めてきた企業です。PERやPBRの低さは「コングロマリットの複雑さ」と「市場環境依存の業績変動」に起因しますが、裏を返せば事業の実態に対して株価が割安に放置されている可能性もあります。増配トレンドと約3%の配当利回りを享受しながら、グループの成長を中長期で待つことができるかどうかが、この銘柄の投資判断のカギとなるでしょう。
SBIホールディングス
SBIホールディングスは、ネット証券最大手のSBI証券(口座数1,500万超)とSBI新生銀行を中核とする国内最大級の金融コングロマリットです。1999年にソフトバンクの金融子会社として設立され、2006年に完全独立。証券・銀行・保険の金融…
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。記事中の数値は2026年8月24日時点の情報に基づいています。










