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楽天グループ(4755)徹底分析:モバイル黒字化への挑戦、エコシステムの真価と投資リスク

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楽天グループ(4755)は、ECプラットフォーム「楽天市場」を起点に、フィンテック(楽天カード・楽天銀行・楽天証券)、モバイル通信(楽天モバイル)へと事業を拡大し、1億超の会員IDを基盤とする「楽天経済圏」を構築した日本最大級のインターネット企業です。

2020年に「第4のキャリア」として参入した楽天モバイルへの巨額設備投資により、7期連続の連結純損失を計上しています。2024年12月期に5期ぶりの連結営業黒字化を達成し、続く2025年12月期も2年連続で連結営業黒字を確保(IFRS営業利益144億円)しましたが、倉庫型ネットスーパー撤退や楽天シンフォニーの減損など一過性の構造改革費用により純損失は1,779億円に拡大。一方、2026年12月期は上期(1〜6月)だけでIFRS営業利益504億円と前期の通期を上回り、税引前利益と中間利益(非支配持分込み)が7年ぶりに黒字化。モバイル事業の損失縮小は続いており、黒字化への道筋が見え始めた局面にあります(出典: 楽天グループIR 決算資料)。

この記事では、楽天グループの3セグメント(インターネットサービス・フィンテック・モバイル)の事業構造、業績推移、楽天モバイルの黒字化展望、そして巨額の有利子負債に伴う投資リスクを、個人投資家の視点からわかりやすく解説します。

会社概要 — 「楽天経済圏」で1億人を囲い込むエコシステム企業

楽天グループは、三木谷浩史氏が1997年に創業したインターネット企業です。「楽天市場」というオンラインショッピングモールからスタートし、金融・旅行・通信・メディアなど70以上のサービスを展開する巨大エコシステムを構築してきました。

項目

内容

会社名

楽天グループ株式会社(Rakuten Group, Inc.)

証券コード

4755(東証プライム)

設立

1997年2月(「楽天市場」同年5月開設)

上場

2000年4月(JASDAQ)→ 2013年 東証一部 → 2022年4月 プライム市場

代表取締役会長兼社長

三木谷浩史

従業員数

29,419名(連結、2025年12月31日時点)

本社

東京都世田谷区(楽天クリムゾンハウス)

セクター

サービス業

決算期

12月期(IFRS適用)

出典: 楽天グループ コーポレートサイト

「楽天経済圏」の仕組み — ポイントが生むクロスセル

楽天グループ最大の特徴は、70以上のサービスを「楽天ID」と「楽天ポイント」で結びつけた「楽天経済圏」にあります。ユーザーは楽天市場での買い物、楽天カードでの決済、楽天モバイルの通信料支払いなど、日常のあらゆる場面で楽天ポイントを貯め・使うことができます。

この仕組みにより、ひとつのサービスに加入したユーザーが他のサービスにも連鎖的に加入する「クロスセル効果」が生まれます。たとえば、楽天モバイルに契約するとSPU(スーパーポイントアッププログラム)で楽天市場のポイント還元率が上がるため、楽天市場の利用が増え、さらに楽天カードの利用も促進されるという循環が生まれます。

事業は大きく3つのセグメントに分かれます。2025年12月期の売上構成比は以下の通りです。

セグメント別売上構成比(2025年12月期)

出典: 楽天グループ 2025年12月期決算短信(セグメント間取引消去前ベース)

セグメント別売上推移

出典: 楽天グループ 各期決算短信(セグメント間取引消去前。2022/12は2023年12月期短信の遡及修正後の数値)

3つの事業を理解する

インターネットサービス — 楽天市場を核とするEC・旅行プラットフォーム

楽天グループ公式サイト
楽天グループ公式サイト

楽天グループの祖業であり最大の事業セグメントです。中核は日本最大級のオンラインショッピングモール「楽天市場」で、5万店以上(2025年度、楽天グループ公表)が出店しています。楽天は自ら商品を仕入れるのではなく、出店者に対してプラットフォームを提供し、出店料・販売手数料を得るマーケットプレイス型のビジネスモデルを採用しています。

楽天市場に加え、楽天トラベル(国内OTA大手)、楽天ブックス(書籍・電子書籍)、Rakuten Fashion(ファッション)、ラクマ(フリマアプリ)、楽天レシピ、Rakuten TVなど多数のサービスを展開しています(出典: 楽天グループ サービス一覧)。

セグメント損益は安定して黒字を維持しています。2025年12月期は売上高1兆3,697億円(前期比+6.8%)、セグメント利益889億円(前期比+4.5%)を記録。国内EC流通総額は6兆3,452億円(+3.9%)に成長し、物流事業等の損失縮小とあわせて国内ECのNon-GAAP営業利益は1,224億円(前期比+12.6%)に。セグメント全体でもマイノリティ投資の評価損益を除けば1,003億円(同+15.2%)と増益基調です(出典: 楽天グループ 2025年12月期決算説明会補足資料)。

フィンテック — 楽天カード・楽天銀行・楽天証券が利益の柱

フィンテックセグメントは楽天グループの「利益の柱」です。楽天カード、楽天銀行、楽天証券、楽天ペイメント、楽天生命・楽天損害保険など、金融サービスを幅広く展開しています。

楽天カードは、日本のクレジットカード業界でショッピング取扱高No.1を誇ります。2026年6月末時点でカード発行枚数は3,431万枚に達し、2025年度のショッピング取扱高は26.5兆円(前年度比+10.3%)に成長しました。楽天ポイント還元による高い集客力が強みです(出典: 楽天カード 数字で見る楽天カード)。

楽天銀行は、口座数約1,763万(2025年12月末時点、前年比+7.0%)を誇るネット銀行大手です。2023年4月に東証プライム市場に上場し、楽天グループにとって重要な資金調達源となりました。楽天証券とのマネーブリッジ(自動入出金)連携により、投資家の資金を効率的に取り込んでいます(出典: 楽天銀行)。

楽天証券は、証券総合口座数1,326万(2025年12月末時点、前年比+11.1%)を持つ国内最大級のオンライン証券です。2024年1月のNISA(新しい少額投資非課税制度)の抜本改正に伴い口座開設が加速し、NISA口座数は2026年1月に700万を突破しました。

フィンテックセグメント全体では、2025年12月期に売上高9,759億円(前期比+19.0%)、セグメント利益1,999億円(前期比+30.3%)を記録。インターネットサービスを大きく上回る利益額を稼ぎ出しており、グループ最大の収益基盤を支えています(出典: 楽天グループ 2025年12月期決算説明会補足資料)。

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モバイル — 「第4のキャリア」楽天モバイルの巨額投資

楽天モバイルは、2020年4月にNTTドコモ・KDDI(au)・ソフトバンクに次ぐ「第4のキャリア」として自社回線によるMNOサービスを開始しました。

技術面では、世界初の完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワークを採用。従来のキャリアが専用ハードウェアに依存するのに対し、楽天モバイルは汎用サーバー上のソフトウェアで基地局機能を実現する「Open RAN」アーキテクチャを採用しています。これにより設備投資コストの効率化と、他キャリアへの技術販売(Rakuten Symphony)という新たな収益機会を生み出しています(出典: 楽天モバイル)。

しかし、通信ネットワークの全国整備には巨額の設備投資が必要であり、楽天モバイルは開業以来毎期数千億円規模の損失を計上してきました。これが楽天グループ全体の連結赤字の最大の要因です。

決算期

モバイル売上

モバイル損益

契約回線数

2022年12月期

3,507億円

△4,793億円

約450万回線(MNO)

2023年12月期

3,646億円

△3,146億円

約600万回線(MNO)

2024年12月期

4,407億円

△2,089億円

約830万回線(全回線)

2025年12月期

4,828億円

△1,618億円

約1,001万回線(全回線)

出典: 楽天グループ 各期決算短信(契約回線数は決算短信・決算説明資料より概数。2022・2023年はMNOのみ、2024年以降はMVNE・MVNO・BCPを含む全契約回線数。損益は2022年が2023年12月期短信の遡及修正後、2023年以降はモバイルエコシステム貢献額考慮後の数値)

注目すべきはモバイル損失の急速な縮小です。2022年12月期の△4,793億円(遡及修正後)から2025年12月期には△1,618億円へと、3年間で損失が約66%縮小しました。2025年12月期にはEBITDA黒字化を達成し、全契約回線数は1,001万回線を突破。ARPUの改善と基地局投資の一巡が損失縮小に寄与しています。2026年12月期上期(1〜6月)もセグメント損失は△711億円(前年同期△885億円)と縮小が続いています。

楽天モバイル セグメント損益の推移

出典: 楽天グループ 各期決算短信(2022/12は2023年12月期短信の遡及修正後、2023/12以降はモバイルエコシステム貢献額考慮後の基準)

楽天モバイルが黒字化すれば、インターネットサービスとフィンテックが生み出す合計約2,900億円の利益(2025年12月期実績)がそのまま連結利益に貢献する構造になります。これが楽天株の「黒字化シナリオ」として市場が注目するポイントです。

業績推移と財務分析

通期業績推移 — 売上成長の陰で続く純損失

楽天グループの連結売上高は着実に成長を続けています。一方で、楽天モバイルの巨額損失や金融費用・税負担等により、7期連続の連結純損失が続いています。

決算期

売上高

営業利益

純利益

営業利益率

2022年12月期

1兆9,279億円

△3,639億円

△3,729億円

2023年12月期

2兆713億円

△2,129億円

△3,395億円

2024年12月期

2兆2,792億円

530億円

△1,624億円

2.3%

2025年12月期

2兆4,966億円

144億円

△1,779億円

0.6%

出典: 楽天グループ 各期決算短信(IFRS営業利益・親会社帰属純損益。2022年12月期はIFRS第17号適用前の当初開示値)

連結営業利益と営業利益率の推移

出典:楽天グループ 各期決算短信よりKabuGraph作成(IFRS営業利益・親会社帰属純損益。2022/12はIFRS第17号適用前の当初開示値)

2024年12月期は5期ぶりの連結営業黒字(530億円)を達成しましたが、これはAST SpaceMobile株式の再測定益1,069億円を含むもので、経常的な収益力を示すNon-GAAP営業利益は70億円でした。2025年12月期は売上高が2兆4,966億円(前期比+9.5%)と過去最高を更新し、Non-GAAP営業利益は1,063億円へ大幅に改善した一方、倉庫型ネットスーパーや楽天シンフォニーの減損など非経常項目△711億円を計上したため、IFRS営業利益は144億円にとどまりました。モバイルセグメントの損失は△2,089億円から△1,618億円へ縮小しています。

純利益は△1,779億円と前期(△1,624億円)から赤字が拡大しました。営業利益と親会社帰属純損失の乖離(約1,900億円)は、金融費用・子会社の法人所得税・非支配持分帰属利益の複合要因によるものです。

2026年12月期 第2四半期(上期)決算の進捗 — 営業利益は半年で前期通期を超過

2026年12月期は第1四半期(1〜3月)に売上収益6,436億円(前年同期比+14.4%)、IFRS営業利益304億円(前年同期△154億円)と好スタートを切り、上期(1〜6月累計)では売上収益1兆3,091億円(+12.9%)、IFRS営業利益504億円(前年同期△66億円)、Non-GAAP営業利益783億円(+296.6%)を計上しました。上期のIFRS営業利益だけで2025年12月期の通期(144億円)を上回っています。税引前中間利益(179億円)と中間利益(254億円、非支配持分込み)は2019年以来7年ぶりに黒字化し、親会社の所有者に帰属する中間損益も△109億円(前年同期△1,244億円)まで縮小。第2四半期単独(4〜6月)では77億円の黒字(第1四半期は△186億円)に転じました。EBITDAは2,241億円(+22.4%)です。

セグメント(2026年12月期 上期)

売上収益

セグメント損益

前年同期の損益

インターネットサービス

6,558億円(+4.1%)

442億円(+67.2%)

265億円

フィンテック

5,708億円(+25.1%)

1,277億円(+46.9%)

870億円

モバイル

2,525億円(+13.3%)

△711億円

△885億円

出典:楽天グループ 2026年12月期第2四半期決算短信よりKabuGraph作成(セグメント間取引消去前、モバイルエコシステム貢献額考慮後のNon-GAAP営業損益。前年同期はAI関連開発費の配分変更を遡及修正した値)

3セグメントすべてが増収で、フィンテックは日銀利上げに伴う楽天銀行の運用利回り向上と楽天証券の好調な株式市況を追い風に利益を約1.5倍に伸ばしました。モバイルの損失も△885億円から△711億円へ縮小しています。会社は2026年12月期について、売上収益で前期比一桁後半の成長を目指し、Non-GAAP営業利益に加えて税引前当期利益・当期利益の黒字化を掲げています(数値予想は非開示、配当は未定)。ただし第3四半期にはフィンテック事業再編に伴う関連費用の計上を見込んでおり、下期の利益水準は上期の単純な延長線では読めない点に注意が必要です。

セグメント別損益 — モバイルの赤字がインターネット+フィンテックの利益を食う構造

楽天グループのP/L構造を理解する上で最も重要なのが、「インターネットサービスとフィンテックが稼いだ利益を、モバイルの赤字が食い潰す」という構造です。

決算期

インターネット

フィンテック

モバイル

連結営業利益

2022/12

646億円

898億円

△4,793億円

△3,639億円

2023/12

656億円

1,112億円

△3,146億円

△2,129億円

2024/12

851億円

1,534億円

△2,089億円

530億円

2025/12

889億円

1,999億円

△1,618億円

144億円

出典: 楽天グループ 各期決算短信(セグメント損益はNon-GAAPベース。2022/12は2023年12月期短信の遡及修正後、2023/12以降はモバイルエコシステム貢献額考慮後。連結営業利益はIFRSベースで、2022/12はIFRS第17号適用前の当初開示値)

セグメント別損益の推移

出典:楽天グループ 各期決算短信よりKabuGraph作成(Non-GAAPセグメント損益。2022/12は2023年12月期短信の遡及修正後、2023/12以降はモバイルエコシステム貢献額考慮後)

上のチャートが楽天の収益構造を端的に示しています。インターネットとフィンテックが合計2,888億円の利益を生み出す一方、モバイルが△1,618億円を食い潰している(2025年12月期)。モバイルの赤字は3年間で約66%縮小し、EBITDA黒字化を達成。Non-GAAP営業利益での黒字化も視野に入っています。

財務健全性 — 巨額の有利子負債が最大のリスク要因

楽天グループの財務面で最も注視すべきは巨額の有利子負債です。楽天モバイルの基地局建設に伴う設備投資と、ユーザー獲得のための販売促進費をまかなうため、社債発行や銀行借入を積極的に行ってきました。

グループ全体の有利子負債(社債・借入金)は銀行業を含むベースで約5.6兆円(2025年12月期末時点、5兆5,696億円)に達しています(社債及び借入金1兆5,981億円、証券事業2,692億円、カード事業8,106億円、銀行事業2兆8,918億円の合計)。この負債に対する金融費用に加え、子会社の黒字部門に対する法人所得税や楽天銀行等の非支配持分への利益帰属が、営業利益と親会社帰属純損失の大きな乖離(2025年12月期で約1,900億円)の要因です(出典: 楽天グループ 2025年12月期決算短信)。

楽天グループは資金調達の多様化を図っており、楽天銀行の上場(2023年4月、売出で約820億円を回収)、ドル建て社債の発行、公募増資などを実施してきました。また、格付けについてはJCR(日本格付研究所)がA-(安定的)を維持する一方、S&PはBB(投機的等級、見通し安定的、2026年7月時点)としており、国際的にはハイイールド(投機的)水準に位置しています。

株価指標(2026年8月時点)

指標

時価総額

約1兆7,031億円

PER(株価収益率)

— (純損失のため算出不可)

PBR(株価純資産倍率)

1.66倍

ROE(自己資本利益率)

△13.1%(純損失による負値。非支配持分を含む資本合計ベース。短信の親会社所有者帰属持分ベースでは△18.5%)

PSR(株価売上高倍率)

約0.68倍

配当利回り

0%(無配)

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成、2026年8月時点
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純損失が続いているためPERは算出不可。一方、PSR(株価売上高倍率)は約0.68倍と、売上高2.5兆円の企業としては低い水準にあります。PBR 1.66倍も、IT企業としては控えめです。これは市場が財務リスクを織り込んでいる結果であり、逆にモバイル黒字化が実現すれば大幅な見直し余地があるとも解釈できます。

投資家が注目すべきポイント

3つの強み

1. 楽天経済圏のネットワーク効果

1億超の会員IDを基盤に、EC・金融・通信・旅行・メディアを横断するエコシステムは日本企業で唯一無二の存在です。楽天ポイントとSPUによるクロスセル効果は、個々のサービス単体では実現できない集客力と顧客囲い込みを生み出しています。サービスが増えるほど経済圏の粘着性(ロックイン効果)が高まる「ネットワーク効果」が働く構造です。

2. フィンテックの安定成長

楽天カード(発行枚数3,431万枚、ショッピング取扱高26.5兆円で国内No.1)、楽天銀行(口座数約1,763万)、楽天証券(口座数1,326万)を擁するフィンテックセグメントは、セグメント利益1,999億円(2025年12月期)を稼ぐグループ最大の利益源です。2026年12月期上期もセグメント利益1,277億円(前年同期比+46.9%)と伸びが加速。クレジットカード・銀行・証券は景気変動の影響を受けにくいストック型ビジネスであり、キャッシュレス化や金利上昇、NISA拡充の追い風も受けて安定的な成長が見込まれます。

なお、2026年5月に楽天銀行が株式交付により楽天カード・楽天証券HDを子会社化する「フィンテック事業再編」が最終合意されました(2026年10月1日効力発生予定)。決済から資産形成まで一気通貫の金融サービス基盤を構築し、エコシステムのシナジーを加速させる狙いですが、楽天銀行株はストップ安となるなど市場の評価は賛否が分かれており、統合後の成長鈍化懸念も含めて今後の動向を注視する必要があります。

3. モバイル黒字化による利益爆発の可能性

楽天モバイルの損失は△4,793億円(2022年12月期、遡及修正後)から△1,618億円(2025年12月期)へ約66%縮小し、EBITDA黒字化を達成しました。2026年12月期上期も△711億円(前年同期△885億円)と縮小が続いています。この損失がゼロになれば、インターネット+フィンテックの利益約2,900億円がほぼそのまま連結営業利益に貢献する計算になります。現在の時価総額1.7兆円に対して営業利益2,900億円なら、EV/EBITDA等のバリュエーションは大幅に改善します。これが楽天株最大の「見直し材料」です。

注意すべきリスク

1. 巨額の有利子負債と金利リスク

最大のリスクは約5.6兆円に及ぶ有利子負債(銀行業含む、2025年12月期末)です。金融費用や子会社の法人所得税負担も含め、営業利益と親会社帰属純損失の大きな乖離(約1,900億円)の一因となっています。日本銀行の利上げ局面では借入金利の上昇リスクもあり、金利1%の上昇が年間数百億円規模のコスト増につながる可能性があります。なお、2021年発行の米ドル建永久劣後債(7.5億ドル)は、2025年10月に円建て永久劣後債820億円を発行して借り換え原資を手当てし、2026年4月22日の初回任意償還日に全額を償還済みで、目先のリファイナンスリスクは一服しています。ただし、中長期的な社債の借り換え負担は引き続き注視が必要です。

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2. 7期連続の純損失と株主資本の毀損

2019年12月期から7期連続で連結純損失を計上しており、累計の純損失は約1兆3,300億円に達し、2025年12月期末の利益剰余金は△1兆361億円です。ROEは△13.1%と大幅なマイナスであり、自己資本の毀損が続いています。会社は2026年12月期の当期利益黒字化を目指していますが、上期の親会社帰属中間損益はなお△109億円です。連結純利益の黒字化には、モバイルの黒字化に加えて有利子負債の削減(金利負担の軽減)が不可欠です。

3. モバイル事業の競争環境

楽天モバイルはNTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの大手3キャリアと正面から競合しています。大手3社はサブブランド(ahamo、povo、LINEMO)やMVNOで低価格帯にも対応しており、楽天モバイルの「価格優位性」は以前ほど明確ではなくなっています。契約回線数を1,000万以上に伸ばしARPUを引き上げるためには、ネットワーク品質(特に地下・屋内の電波)のさらなる改善が必要です。

4. 無配当

楽天グループは2023年12月期以降、配当を実施していません(2022年12月期まで年間4.50円/株を配当)。モバイル事業への投資を優先する方針であり、配当や株主優待を重視する投資家には向かない銘柄です。純損失が続く限り、配当の再開は困難でしょう。

5. 株式の希薄化リスク

楽天グループは過去にモバイル事業の資金を調達するため公募増資を実施しており、発行済株式数が増加してきました。今後も追加の資金調達が必要になった場合、公募増資やCB(転換社債)の発行による既存株主の希薄化リスクが残っています。

まとめ

楽天グループ(4755)は、EC・フィンテック・モバイル通信の3事業を「楽天経済圏」で統合する、日本で唯一無二のインターネットコングロマリットです。

投資の観点からのポイントを整理すると、以下の通りです。

  • 事業構造: インターネットサービスとフィンテックは安定的に利益を生み出す一方、モバイルが巨額の赤字を計上する「稼ぎ頭と金食い虫」の二面構造

  • 最大の注目点: モバイル損失が3年間で約66%縮小(△4,793億→△1,618億)し、2026年12月期上期も△711億円と縮小が継続。黒字化すればインターネット+フィンテックの利益2,900億円弱がそのまま連結利益に貢献

  • 売上成長: 連結売上高は2兆4,966億円(2025年12月期)と着実に成長し、2026年12月期上期も+12.9%。上期のIFRS営業利益504億円は前期通期(144億円)を上回る。PSR 0.68倍と売上高対比では割安な水準

  • 最大のリスク: 約5.6兆円の有利子負債(銀行業含む)。金融費用・法人所得税・非支配持分帰属利益の複合要因で営業利益と純損失に約1,900億円の乖離。2026年4月の米ドル建永久劣後債の償還は完了したが、中長期的な金利上昇・借り換え負担に要注意

  • 投資家への向き不向き: 純損失継続・無配・PER算出不可。安定配当を求める投資家には不向き。モバイル黒字化と経済圏の拡大に賭ける「ターンアラウンド投資」としての銘柄

  • 注目の経営トピック: 2026年10月にフィンテック事業再編(楽天銀行が楽天カード・楽天証券HDを子会社化)が予定。金融サービスの一体運営によるシナジー創出が期待される一方、市場の評価は賛否が分かれている

楽天グループへの投資は、「楽天モバイルが黒字化し、巨額の有利子負債を管理可能な水準に抑えられるか」という一点に集約されます。2026年10月のフィンテック事業再編も含め、グループ全体の収益構造が転換期を迎えています。モバイルの損失縮小トレンドが継続し黒字化が実現すれば、エコシステム全体の価値が再評価される可能性がありますが、負債リスクと競争環境を冷静に見極める必要があります。


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楽天グループ

楽天グループは、「インターネットサービス」「フィンテック」「モバイル」の3セグメントを基軸としたグローバル企業です。ECモール「楽天市場」を中核に、楽天トラベル、楽天ブックス、Rakuten Fashionなどの多数のインターネットサービス…

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。記事中の数値は各出典に記載の時点のものです。

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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