野村総合研究所(4307)の企業分析|金融ITとコンサルの一気通貫、969億円減損を経て中計2028で営業利益2,000億円へ
2027年3月期 第1四半期決算まで反映

野村総合研究所(NRI・4307)は、経営コンサルティングとITソリューションを一気通貫で提供する日本最大級のコンサルティング・SIer企業です。
2026年3月期は売上収益8,147億円(前期比6.5%増)と過去最高を更新。一方、海外子会社ののれん等の減損約969億円の計上により営業利益は583億円(同56.8%減)となりました。ただし減損などの一時的要因を除いた事業利益は1,567億円(同16.3%増)と、本業の成長は堅調です(出典:NRI 2026年3月期決算短信)。2027年3月期第1四半期(3ヶ月)も営業利益417億円(前年同期比12.0%増)と2桁増益で滑り出しました。
この記事では、NRIの4つの事業セグメント、業績推移、海外M&A減損の実態、中計2028と700億円の自社株買い、DX・AI成長戦略と投資判断のポイントを、個人投資家の視点からわかりやすく解説します。
この記事の内容(目次)
会社概要 — 野村證券の電算部門をルーツに持つ「未来創発」企業

野村総合研究所は、1965年に設立された野村総合研究所(シンクタンク)と、野村證券の電子計算部門を母体に1966年に設立された野村コンピュータシステム(旧・野村電子計算センター)が1988年に合併して誕生しました。「Dream up the future. — 未来創発」を企業理念に掲げ、経営コンサルティングとITソリューションの両輪で顧客企業の成長を支援しています。
項目 | 内容 |
|---|---|
会社名 | 株式会社野村総合研究所 |
証券コード | 4307(東証プライム) |
設立 | 1965年(現NRIは1988年合併) |
代表取締役社長 | 柳澤花芽 |
従業員数 | 16,894名(NRIグループ、2026年3月31日現在) |
本社 | 東京都千代田区大手町 |
決算期 | 3月(IFRS適用) |
主要顧客 | 野村グループ(野村HD向けが売上の約1割)、大手金融機関、流通・製造業 |
4つの事業セグメントを理解する

NRIはコンサルティング、金融ITソリューション、産業ITソリューション、IT基盤サービスの4つのセグメントで事業を展開しています(出典:NRI セグメント情報)。
セグメント別売上構成比(2026年3月期)
コンサルティング — 経営課題の上流を担う
経営戦略、DX戦略、業務改革、制度・政策提言などのコンサルティングサービスを提供。売上687億円(前期比5.1%増)と規模は最小ながら、営業利益率28.0%と最も高い利益率を誇ります。会社側はAIコンサルティング案件やレガシー・モダナイゼーション案件の活況が増収増益の要因と説明しています。
金融ITソリューション — NRIの屋台骨
証券・銀行・保険など金融機関向けのITシステム開発・運用を手がける、NRIの中核セグメント。売上4,052億円(前期比8.7%増)は連結売上収益8,147億円の約50%に相当します。証券業向け共同利用型システム「STAR」(野村證券には「THE STAR」を提供)など業界標準となった共同利用型プラットフォームが安定収益を生み出しており、営業利益743億円(利益率18.3%)と高い収益性を維持しています。
産業ITソリューション — 非金融分野を担う第2の柱
流通・製造・通信・サービス業など非金融分野向けのITソリューションを提供。売上2,800億円と金融に次ぐ規模ですが、2026年3月期は国内がモダナイゼーション案件の活況で6.9%増収(1,919億円)だった一方、豪州を中心に海外が減収となり、セグメント全体では1.5%増にとどまりました。セブン&アイHDや大手流通企業のシステム基盤を支えています。さらに海外子会社ののれん等の減損を計上したため、営業損益は746億円の損失(利益率▲26.6%)となりました。セグメントに計上された減損971億円を除けば約224億円(利益率8.0%)の黒字です。
IT基盤サービス — ストック型のインフラ運用
データセンター運営、クラウドサービス、ネットワーク基盤の提供を行うセグメント。売上2,215億円(前期比10.0%増)は金融IT・産業ITに次ぐ規模ですが、うち1,445億円は他セグメント向けの内部売上で、外部顧客向けは770億円です。営業利益386億円(利益率17.4%)を計上しています。一度構築したインフラの継続利用(ストック型収益)が安定収益の源泉です。
セグメント別営業利益と利益率(2026年3月期)
業績推移と財務分析
通期業績推移 — 本業成長は堅調、のれん減損で一時的に減益
NRIの売上収益は毎期過去最高を更新し続けており、2017年3月期の4,245億円から2026年3月期の8,147億円へ10年でほぼ倍増しました。2026年3月期は海外子会社(豪州のNRI Australia〈旧ASG〉・Planit、北米のCore BTS)で合計約969億円ののれん等(無形資産を含む)の減損を計上したため、見かけ上は大幅減益となりましたが、のれん減損などの一時的要因を除いた事業利益は1,567億円(前期比16.3%増)と堅調に推移しています(出典:NRI 2026年3月期決算短信 p.1)。
決算期 | 売上収益 | 営業利益 | 純利益 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
2021/3 | 5,505億円 | 865億円 | 681億円 | |
2022/3 | 6,116億円 | 1,062億円 | 714億円 | OP初の1,000億円超 |
2023/3 | 6,922億円 | 1,118億円 | 763億円 | |
2024/3 | 7,366億円 | 1,204億円 | 796億円 | |
2025/3 | 7,648億円 | 1,349億円 | 938億円 | |
2026/3 | 8,147億円 | 583億円 | 153億円 | のれん等の減損▲969億円 |
2027/3(会社予想) | 8,500億円 | 1,750億円 | 1,190億円 | 減損の反動で大幅増益 |
売上収益と営業利益の推移
2027年3月期第1四半期 — 2桁増益で計画進捗は順調
2026年7月30日に開示された2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月、3ヶ月)は、売上収益2,104億円(前年同期比7.5%増)、営業利益417億円(同12.0%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益292億円(同12.4%増)でした。営業利益率は19.8%(同0.8ポイント改善)、EBITDAマージンは26.0%です。通期の会社予想(売上収益8,500億円・営業利益1,750億円・当期利益1,190億円)は据え置かれ、営業利益の進捗率は23.8%(前年同期は期初予想に対して24.8%)です。
セグメント | 売上収益 | 営業利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|
コンサルティング | 151億円(+4.4%) | 29億円(▲8.7%) | 19.3% |
金融ITソリューション | 1,205億円(+8.9%) | 207億円(+18.9%) | 17.2% |
産業ITソリューション | 588億円(+3.8%) | 67億円(▲10.9%) | 11.4% |
IT基盤サービス | 577億円(+10.3%) | 111億円(+24.8%) | 19.2% |
連結 | 2,104億円(+7.5%) | 417億円(+12.0%) | 19.8% |
金融ITとIT基盤の2桁増益が全体を牽引した一方、コンサルティングと産業ITは増収ながら減益です。コンサルティングの利益率は19.3%と前年同期の22.0%から低下しており、通期で28.0%だった高収益セグメントの動向は次の四半期で確認したいところです。
配当推移と自社株買い — 減損下でも増配、700億円の買い戻しを完了
NRIは業績連動型の配当方針を採用しつつ、連続増配を継続しています。2026年3月期はのれん等の減損で純利益が大幅減少したにもかかわらず、1株当たり配当金を前期の63円から77円へ増配(配当性向は一時的に289%に上昇)。2027年3月期は中間42円・期末42円の年間84円(連結配当性向40.5%)を予想しています。減損はキャッシュフローに影響しないという会社の説明どおり、本業の成長に対する自信を示す配当政策です。
1株当たり配当金と配当性向の推移
株価指標(2026年9月18日終値時点)
指標 | 値 |
|---|---|
株価 | 5,156円 |
時価総額 | 約2兆8,935億円 |
PER(株価収益率) | 193.7倍(減損でEPSが26.62円に低下した影響。会社予想EPS 209.46円ベースでは約24.6倍) |
PBR(株価純資産倍率) | 6.83倍 |
配当利回り | 1.49%(2026年3月期実績77円。2027年3月期予想84円ベースでは1.63%) |
ROE(自己資本利益率) | 3.5%(一時的低下、前期は22.5%) |
投資家が注目すべきポイント
3つの強み
① コンサルティング×ITの一気通貫モデル
経営戦略のコンサルティングからシステムの設計・開発・運用までをワンストップで提供できる点がNRI最大の強みです。顧客の経営課題を上流で把握し、ITソリューションとして実装・運用まで一貫して手がけることで、長期的な顧客リレーションと高いリピート率を実現。コンサルティングの利益率28.0%、金融ITソリューションの利益率18.3%という数字がその付加価値の高さを物語っています。
② 金融IT市場でのドミナントポジション
野村證券の電子計算部門を母体とするNRIは、証券・銀行・保険業界のIT基盤を深く理解した上でソリューションを提供しています。STAR(リテール証券向け、1974年稼働)、I-STAR(ホールセール証券向け)、T-STAR(資産運用会社向け)、BESTWAY(投信窓販向け)など、業界標準の共同利用型プラットフォームを多数保有。これらは一度導入するとスイッチングコストが高く、ストック型の安定収益を生み出しています。
③ DX・AI需要の拡大による持続的成長
日本企業のDX投資拡大を追い風に、売上収益は毎期過去最高を更新中。AI活用に関するコンサルティング案件やレガシー・モダナイゼーション案件が活況で、NRIは「NRI Solution Ai」を軸にAI導入・活用支援サービスを展開しています。2026年4月策定の中計2028でも「AIによるビジネス変革」を成長領域の筆頭に掲げました。減損影響を除いたEBITDAマージンは25.6%(前期比1.1ポイント増)と、収益性の改善も進んでいます。
注意すべきリスク
① 海外事業の減損と成長シナリオの後退
2026年3月期に豪州のNRI Australia(旧ASGグループ)・Planitと北米のCore BTSで合計約969億円ののれん等(無形資産を含む)の減損を計上。買収子会社間の事業融合や注力分野の絞り込みが不十分だったと会社自身が総括しており、海外市場でのPMI(買収後統合)の難しさが浮き彫りになりました。海外売上収益比率は13.3%と前期から1.4ポイント低下しています。
これを受けて中計2028では、V2030で掲げていた海外売上2,500億円超の目標を取り下げ、北米・豪州は「規模拡大を志向せず、事業基盤を再構築する時期」と位置づけました(海外全体の目標は売上1,200億円・営業利益率5%水準)。海外が当面は成長ドライバーにならないことを織り込む必要があり、再建が遅れれば追加の構造改革費用が出るリスクも残ります。
② 金融業界への高い依存度
金融ITソリューションが売上の約50%を占めており、金融業界の規制変更やIT投資抑制の影響を受けやすい構造です。2027年3月期からは豪州事業も金融ITに移管されるため、セグメント上の金融比率はさらに高まります。金融セクターの景気変動が業績に与えるインパクトは依然として大きいです。
③ IT人材の獲得競争
国内外でIT人材の争奪戦が激化しており、コンサルタント・エンジニアの採用・育成コストが上昇しています。特にAI・DX領域の高度人材は外資系コンサルやGAFAMとの獲得競争にさらされており、人件費の上昇が利益率に対する下押し圧力となる可能性があります。
④ 高いバリュエーションの持続性
PBR 6.83倍(2026年9月18日終値、2026年3月期末BPSベース)は日本株の中でも高水準で、自社株買い後の持分で見れば7倍台後半です。2027年3月期の会社予想(営業利益1,750億円・EPS 209.46円)をベースにした予想PERは約24.6倍と、IT・コンサル企業としては妥当な範囲ですが、減損前の成長トレンドへの回帰と中計2028(営業利益2,000億円)の達成が前提となっています。国内の大型案件やAI関連需要の動向次第で評価が変わり得ます。
まとめ
野村総合研究所は、コンサルティングからITソリューションまでを一気通貫で提供する日本最大級のコンサルSIer企業です。
強み:コンサル×ITの一気通貫モデル、金融ITでのドミナントポジション、DX・AI需要の取り込み
課題:海外事業の再建(中計2028で拡大路線を撤回)、金融業界への依存、人材獲得競争
注目点:2027/3の利益回復(OP 1,750億円、Q1は417億円で進捗23.8%)の達成度合い、中計2028(2029/3にOP 2,000億円・ROE25%)の進捗、AI関連売上3,000億円目標の実現性
2026/3の大幅減損は一時的要因であり、2027/3期Q1も2桁増益と本業の成長力は健在です。700億円の自社株買いと消却で資本効率の改善にも踏み込みました。ただし、海外を成長ドライバーから外した中計2028を国内だけで達成できるか、そしてPBR 7倍近い高バリュエーション(2026年9月18日終値)を正当化するだけの成長持続性が、今後の投資判断の焦点となります。
野村総合研究所
野村総合研究所(NRI)は、研究・コンサルティング・システムソリューション企業です。経営戦略・業務改革・IT戦略に関するコンサルティング、金融機関向けIT基盤ソリューション、流通・製造業向けシステム開発・運用サービス、データセンター運営、情…










