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関電工(1942)の企業分析|データセンター・再エネ需要で中計目標を前倒し達成、東電系の総合設備工事大手

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関電工(1942)は、東京電力グループの電気設備工事を起源とする日本最大級の総合設備工事会社です。屋内電気設備・送配電線・空調管設備から情報通信設備まで、建物と社会インフラの「動脈」を一手に担います。

2026年3月期は売上高7,420億円(前期比+10.4%)、営業利益831億円(同+42.5%)と売上・利益ともに過去最高を更新。2025年4月に上方修正した中期経営計画(2024-2026年度)の最終年度目標を1年前倒しで達成し、業績の上方修正・年間配当124円への増配(前期比+42円)・300億円の自社株買い(東京電力パワーグリッド保有株の売出しに合わせて実施)という「三段重ね」の株主還元策も話題を呼びました。

この記事では、関電工の事業構造と強み、10年間の業績推移、中計の達成状況と成長戦略、株主還元と投資判断のポイントを、個人投資家の視点からわかりやすく解説します。

会社概要 — 東京電力の「電気工事会社」から総合設備企業へ

関電工は1944年に関東配電(1951年の電力再編で東京電力に承継)の工事会社「関東電気工事」として設立されました。戦後の電力インフラ整備を担い、東京電力グループの送配電工事を主力としてきましたが、現在は屋内電気設備、空調管設備、情報通信設備など建築設備全般をカバーする総合設備企業へと進化しています。

項目

内容

会社名

株式会社関電工(KANDENKO CO., LTD.)

証券コード

1942(東証プライム)

設立

1944年9月

代表取締役社長

田母神 博文

連結子会社

30社(2026年3月時点)

本社

東京都港区

主要株主

東京電力パワーグリッド 34.5%(2026年3月末。2026年2月の売出し前は46.2%)

セクター

建設業

出典: 関電工 会社概要・2026年3月期決算参考資料

電力インフラから始まり、建築設備全般へ拡大

関電工のルーツは、関東配電から東京電力へと引き継がれた送配電工事です。創業から80年以上にわたり、首都圏の電力インフラを支えてきました。しかし現在のビジネスは大きく多角化しています。

  • 屋内電気設備工事 — オフィスビル・商業施設・データセンター等の電気設備。受注の中核

  • 送電線・配電線工事 — 東京電力パワーグリッドからの受注が中心。送電鉄塔・架空送電線・地中ケーブル等

  • 空調管設備工事 — データセンターのサーバー冷却・病院・大型施設の空調。成長分野

  • 情報通信設備工事 — 光ファイバー・LAN・セキュリティシステム等の構築

  • 発電・再エネ事業 — 銚子風力開発、嘉麻太陽光発電、前橋バイオマス発電を自社運営

連結子会社30社には、各地域のケイテクノ(配電工事)、パワーテクノ(送電工事)のほか、川崎設備工業、タワーライン・ソリューションなどの専門子会社が含まれます。首都圏を中心に電気・空調・通信を一括施工できる総合力が最大の競争優位です。

事業構成と成長分野 — データセンター・再エネが牽引

関電工の事業セグメントは大きく「設備工事業」と「その他」に分かれますが、売上の大部分を設備工事業が占めます。ここでは、設備工事業の内訳と注目すべき成長分野を解説します。

関電工公式サイト(kandenko.co.jp)
関電工公式サイト — 「ひとりひとりが、未来を灯す。」をスローガンに掲げる総合設備工事企業

データセンター — 電気・空調の「両方」を受注できる強み

AI需要の急拡大に伴い、日本国内でも大規模データセンターの建設ラッシュが続いています。データセンターは大量の電力を消費し、サーバーの発熱を冷却する空調設備も不可欠なため、電気設備と空調設備の両方を一括受注できる関電工にとって理想的な案件です。

具体的には、特高・高圧受変電設備、非常用発電機、UPS(無停電電源装置)、空調熱源・空調機、入退室セキュリティといった設備を一貫して施工できます。データセンターの新規受注高(単体)は2025年度に459億円(前年度375億円)へ増加しており、売上と利益率の両面で貢献度が高い分野です(出典: 関電工 2026年3月期決算参考資料)。

再生可能エネルギー — 施工と自社運営の「二刀流」

関電工は再エネ分野で他社の太陽光・風力発電所の建設を請け負う「施工」と、自社で発電所を保有・運営する「事業者」の両方を手がけています。銚子風力開発、嘉麻太陽光発電、前橋バイオマス発電を子会社として運営し、銚子・前橋の電力は東京電力グループへ販売しています。

中期経営計画では、再エネ関連を「グリーンイノベーション(GI)」の中核に位置づけ、EMS(エネルギーマネジメントシステム)改修、産業用空調改修、水素・太陽光パネルリサイクル・次世代原子炉・CO2貯留への展開も視野に入れています(出典: 関電工 中期経営計画)。

電力インフラの老朽化更新 — 安定的な需要基盤

日本の送配電網は高度経済成長期に大量整備されたものが多く、老朽化に伴う更新・耐震化工事が継続的に発生します。東京電力パワーグリッドの設備更新投資は関電工にとって景気変動に左右されにくい安定的な受注基盤です。中期経営計画でも送配電設備の高経年化対策工事と、レベニューキャップ制度(送配電事業者の投資計画に基づく収入上限規制)への対応を重点分野に挙げており、中長期的な需要が見込まれています。

業績推移と財務分析 — 10年間で売上1.6倍、営業利益3.1倍

通期業績推移(2017/3期〜2026/3期)

関電工の業績は過去10年間で着実に成長しています。特に直近3期は増収増益のペースが加速し、2026/3期には売上高7,420億円、営業利益831億円とともに過去最高を記録しました。純利益は635億円(前期比+49.9%)で、政策保有株式の売却益78億円を含みます。

決算期

売上高

営業利益

純利益

営業利益率

2017年3月期

4,709億円

264億円

176億円

5.6%

2018年3月期

5,072億円

293億円

191億円

5.8%

2019年3月期

5,636億円

300億円

197億円

5.3%

2020年3月期

6,161億円

347億円

225億円

5.6%

2021年3月期

5,560億円

300億円

201億円

5.4%

2022年3月期

4,956億円

306億円

203億円

6.2%

2023年3月期

5,416億円

327億円

212億円

6.0%

2024年3月期

5,984億円

409億円

273億円

6.8%

2025年3月期

6,719億円

583億円

424億円

8.7%

2026年3月期

7,420億円

831億円

635億円

11.2%

2027年3月期(予想)

7,800億円

900億円

650億円

11.5%

出典:関電工 決算短信よりKabuGraph作成。2027年3月期は会社予想

通期業績推移(売上高・営業利益)

出典:関電工 決算短信よりKabuGraph作成。2027/3は会社予想

このグラフで最も注目すべきは、売上高の伸び以上に営業利益の伸びが大きい点です。2022/3期→2026/3期の4年間で売上高は1.50倍ですが、営業利益は2.71倍に拡大。営業利益率は6.2%→11.2%へとほぼ倍増しています。ゼネコン各社の営業利益率が5%前後にとどまる一方、電気設備工事大手はきんでん12.0%、クラフティア(旧九電工)11.5%、中電工11.5%など軒並み10%台に乗せており、関電工も4年前の6.2%から同業大手と同水準まで引き上げたことになります(2026/3期、KabuGraph算出)。

2027/3期は売上高7,800億円(+5.1%)、営業利益900億円(+8.3%)を計画しており、達成すれば営業利益率11.5%で4年連続の過去最高益を更新する見通しです。売上成長の鈍化(+5.1%)に対して利益成長(+8.3%)が上回る計画であり、利益率の改善トレンドは継続が見込まれています。

2027/3期 第1四半期 — 減収ながら二桁の営業増益

2026年7月31日に開示された2027/3期 第1四半期(4〜6月)は、売上高1,580億円(前年同期比−4.5%)に対し営業利益197億円(同+12.8%)と、減収ながら二桁の営業増益でした。営業利益率は12.5%と前年同期の10.6%から上昇しています。

項目

2027/3期 Q1

2026/3期 Q1

前年同期比

売上高

1,580億円

1,656億円

−4.5%

営業利益

197億円

175億円

+12.8%

経常利益

205億円

183億円

+12.5%

純利益

132億円

127億円

+4.2%

営業利益率

12.5%

10.6%

+1.9pt

出典:関電工 2027年3月期第1四半期決算短信よりKabuGraph作成。前年同期比はKabuGraph算出

通期予想(売上高7,800億円・営業利益900億円・純利益650億円、年間配当130円)は据え置きで、第1四半期時点の進捗率は売上高20.3%・営業利益21.9%です。単体の新規受注高は2,462億円(前年同期比+11.2%)と受注の積み上がりは続いており、第1四半期末の自己資本比率は64.5%へ上昇しています。

受注残の推移 — 建設株の「先行指標」を読む

建設業の決算では、売上高や利益だけでなく「受注残高(次期繰越工事高)」が極めて重要な指標です。受注残とは「契約済みだが未完成の工事の残高」で、いわば将来の売上の先行予約です。受注残が積み上がっていれば今後の売上が見通しやすく、逆に減少していれば将来の売上減少リスクを示唆します。

決算参考資料では「新規受注高」「完成工事高」「次期繰越工事高」の3つがセットで開示されます。投資家が見るべきポイントは次の2点です。

  • 新規受注高 > 完成工事高か? — 受注が完成(売上計上)を上回れば受注残は増加し、将来の成長が裏付けられます

  • 受注残 ÷ 完成工事高(受注残月数) — 「今の受注残で何ヶ月分の仕事があるか」を示す目安。関電工は約12ヶ月分(2026/3期は12.7ヶ月)で推移しており、安定した工事パイプラインを維持しています

受注高・完成工事高・受注残高の推移(単体)

出典:関電工 2026年3月期決算参考資料よりKabuGraph作成。単体ベース。2027/3の新規受注高・完成工事高は会社予想、受注残高はKabuGraph算出

関電工の受注残高は6年連続で増加し、2026/3期末には6,737億円(前年比+16.2%)に達しました。毎年、新規受注高が完成工事高を上回るペースで受注が積み上がっており、特に直近2年は受注残の増加が加速しています。

2027/3期は新規受注8,090億円・完成工事6,740億円の計画で、達成すれば期末受注残は約8,087億円(KabuGraph算出。会社は受注残の予想を開示していません)と初めて8,000億円を突破する見込みです。データセンター・再エネ・電力インフラ更新の3分野が重なり、受注環境は過去に例のない好調さです。

財務体質 — 自己資本比率61.4%、実質無借金

2026年3月期末の総資産6,356億円に対し、純資産は4,057億円、非支配株主持分を除いた自己資本は3,903億円(自己資本比率61.4%)。債務償還年数は0.2年と実質無借金経営の状態です。インタレスト・カバレッジ・レシオも261.1倍と極めて高く、財務の安全性は建設業界トップクラスといえます。

中期経営計画と成長戦略 — 「グリーンイノベーション企業」への変革

中計2024-2026 — 目標を2度引き上げ、見直し後の目標も1年前倒しで超過達成

関電工は2024年4月に「2024-2026年度 関電工グループ中期経営計画」を策定しました。業績が計画を大きく上回ったため、最終年度(2026年度=2027/3期)の数値目標は策定から2年で2度引き上げられています(出典: 関電工 中期経営計画)。

  1. 2024年4月(策定時) — 売上高6,400億円・営業利益450億円・ROE 8%超・ROIC 8%超・配当性向40%程度。この目標は2025/3期の実績(売上6,719億/OP 583億)で2年前倒しで達成

  2. 2025年4月(1度目の見直し) — 売上高7,160億円・営業利益670億円・ROE 10%超・ROIC 10%超へ上方修正。この見直し後の目標も2026/3期の実績(売上7,420億/OP 831億/ROE 16.8%/ROIC 14.4%)で1年前倒しで超過達成

  3. 2026年4月(2度目の見直し・現行) — 売上高7,800億円・営業利益900億円・ROE 16%程度・ROIC 14%程度へ再び引き上げ。2027/3期の会社予想(売上7,800億/OP 900億)はこの現行目標そのもの

指標

策定時目標(2024年4月)

見直し後目標(2025年4月)

2026/3期実績

現行目標(2026年4月)

連結売上高

6,400億円

7,160億円

7,420億円

7,800億円

連結営業利益

450億円

670億円

831億円

900億円

ROE

8%超

10%超

16.8%

16%程度

ROIC

8%超

10%超

14.4%

14%程度

出典:関電工 2024-2026年度中期経営計画(2024年4月策定、2025年4月・2026年4月見直し)・2026年3月期決算短信よりKabuGraph作成。目標はいずれも最終年度(2026年度=2027/3期)の値

本記事のタイトルにある「前倒し達成」は、2025年4月の見直し後の目標に対するものです。策定時の目標は2年、見直し後の目標は1年、それぞれ前倒しで上回りました。

『社会を支える"100年企業"へ』 — 2044年の100周年に向けた長期ビジョン

関電工は創業100周年となる2044年に向け『社会を支える"100年企業"へ』を経営ビジョンに掲げ、「グリーンイノベーション企業」の実現を目指しています。その中間マイルストーンが2024年4月に策定した2030年度の中期目標「Milestone 2030」で、建築設備と社会インフラの融合、新事業領域の創出を目指しています(出典: 事業構想 2026年4月号)。

M&Aも活用方針を明示しており、グリーンイノベーション関連事業の拡大に向けた買収を検討しています。従来の電気工事会社の枠を超え、脱炭素社会のインフラを総合的に担う企業への変革を進めている段階です。

株主還元と資本政策 — 「三段重ね」の還元強化

関電工は2026/3期に株主還元策を大幅に強化しました。業績の上方修正、大幅増配、大規模自社株買いの「三段重ね」が市場で高く評価されています。

配当 — 年間124円/株へ大幅増配

2026/3期の年間配当金は1株当たり124円に設定されました(中間45円+期末79円)。当初予想の90円から120円(2026年1月)、124円(2026年4月)と2度にわたり上方修正されたもので、前期の82円(創立80周年記念配当2円を含む)から42円の増配となっています(出典: 関電工 2026年3月期決算短信、剰余金の配当(増配)に関するお知らせ 2026年4月28日)。

配当方針は、中間・期末の年2回の安定配当を基本に、中計に掲げる配当性向40%程度を目標としています。2026/3期の配当性向は39.8%(前期39.5%)。2027/3期は年間130円(中間65円+期末65円、配当性向39.8%)を予想しています。

自社株買い — 東電PGの売出しに合わせた300億円の取得

配当に加え、300億円の自社株買いも実施しました。これは純粋な還元策というより、筆頭株主・東京電力パワーグリッド(東電PG)が保有株を売り出すのに合わせ、需給への影響を和らげる受け皿として決議されたものです(出典: 関電工 株式の売出しに関するお知らせ 2026年1月29日、自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による取得結果 2026年2月2日)。

  • 2026年1月29日 — 東電PG保有株の売出し(約2,277万株)を公表。同日に上限300億円・750万株の自己株式取得を決議

  • 2026年2月2日 — ToSTNeT-3(立会外買付)で約539万株・約300億円を取得して終了。売出人の東電PGが応じた

  • 株主構成の変化 — 東電PGの持株比率は46.2%(2025年3月末)から34.5%(2026年3月末)へ低下し、個人株主比率は18.3%から25.6%へ上昇。東電HD・東電PGは引き続き「その他の関係会社」で、東電グループ向けは連結完成工事高の24.4%(1,811億円)

自社株買いと借入返済(短期借入金−102億円・長期借入金−29億円)を行ってもなお、2026/3期の現預金は170億円増加しました。手元資金を温存しつつ、株主還元と財務スリム化を同時に実行した形です(出典: 関電工 2026年3月期決算短信 連結キャッシュ・フロー計算書)。

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資本効率の改善

利益成長にこうした株主還元策が加わり、2026/3期のROEは16.8%と見直し後の中計目標(10%超)を大きく上回りました。東証が要請する「PBR1倍超」の経営も意識しており、利益成長と資本効率改善の両輪が回り始めた段階です。建設業界は一般に配当や自社株買いに慎重な企業が多い中、関電工の積極姿勢は投資家からの評価を高めています。

まとめ — 投資判断のポイント

関電工は、東京電力グループの電気工事会社として80年以上の歴史を持ちながら、データセンター・再エネ・電力インフラ更新という3つの構造的追い風を受けて「守り」から「攻め」へ転換した企業です。

投資家が注目すべきポイント

  1. データセンター受注の持続性 — AI需要の拡大がどこまで続くか。大手ハイパースケーラーの国内投資計画を注視

  2. 営業利益率11%超の定着 — 一過性の要因(大型案件の完工時期集中等)ではなく構造的な改善か見極めが重要

  3. 現行中計の再引き上げ目標(売上7,800億・営業利益900億)の達成と、次期中計(2027-2029年度)の水準 — 2026年4月に引き上げた最終年度目標は2027/3期の会社予想と同水準。目標を2度前倒し達成した勢いで、次期中計でどこまで高い目標を設定するか

  4. 人材確保と施工キャパシティ — 受注増に対応できる施工体制を維持できるかが中期的な成長のボトルネック

中計目標の前倒し達成、過去最高の業績、積極的な株主還元と、足元の実績は申し分ありません。一方で、データセンター需要の持続性や人手不足への対応など、中長期での不確実性も残ります。「インフラの守り手」としての安定性と、グリーンイノベーションによる成長ポテンシャルの両面を評価しながら、投資判断を行いたい銘柄です。

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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