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HOYA(7741)の企業分析|EUVマスクブランクスを寡占供給、6期連続最高益を更新する精密素材メーカー

2027年3月期 第2四半期決算まで反映

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HOYA(7741)は、半導体製造に不可欠なEUVマスクブランクスと眼鏡レンズで世界トップクラスのシェアを持つ精密素材メーカーです。EUV(極端紫外線)リソグラフィ向けマスクブランクスではAGCと2社で世界市場のほぼ全量を供給し、その大半をHOYAが占めるという圧倒的な地位にあり、3nm・2nm世代の先端半導体製造に欠かせない存在です。

2026年3月期は売上収益9,477億円(前期比+9.4%)、純利益2,531億円(同+25.2%)で6期連続の最高益を更新しました。ただしこの増益には、過去に中国で設立した白内障用眼内レンズの合弁会社について、持分の買い取り見積額と実際の取得額との差額を一過性の収益として計上した影響が含まれます。2027年3月期も上期(4〜9月累計)で売上収益+13.4%、純利益+27.3%と好調が続き、会社は通期の売上収益を1兆430億円(前期比+10.1%)と見込んでいます。一方で2026年7月31日には、ライフケア事業の一角である医療用内視鏡事業について、事業譲渡を含む戦略的オプションの検討開始を決議しました。

この記事では、HOYAのEUVマスクブランクスの寡占的地位、ライフケア事業の安定性と内視鏡事業の去就、業績推移と投資判断のポイントを個人投資家の視点から解説します。

会社概要 — 半導体素材×ヘルスケアの二刀流

HOYAは1941年に光学ガラス専門メーカーとして創業し、1944年に株式会社化されました。現在は「情報・通信」と「ライフケア」の2つの事業セグメントを柱に、光学技術と精密素材技術を軸としたグローバル企業へと進化しています。

項目

内容

会社名

HOYA株式会社(HOYA CORPORATION)

証券コード

7741(東証プライム)

本社

東京都新宿区西新宿六丁目10番1号

代表者

取締役兼代表執行役CEO 池田 英一郎

従業員数

37,752名(連結、2026年3月31日現在)

業種

精密機器

決算期

3月

時価総額

約8.8兆円(2026年10月30日終値時点)

HOYAの特徴は、半導体関連の高利益率事業と、ヘルスケアの安定成長事業を併せ持つポートフォリオにあります。情報・通信事業は利益率54%超と極めて高く、ライフケア事業は眼鏡レンズ・コンタクトレンズを中心に景気変動に左右されにくい安定的な収益源です(ただし内視鏡事業は事業譲渡を含む戦略的オプションを検討中。後述)。

セグメント別売上構成比(2026年3月期実績)

出典:HOYA 2026年3月期決算短信よりKabuGraph作成。外部顧客に対する売上収益

売上構成ではライフケア事業が62%と過半を占めますが、利益構成では情報・通信事業が約60%を占めるという特徴的な構造です。

セグメント別利益構成比(2026年3月期実績)

出典:HOYA 2026年3月期決算短信よりKabuGraph作成。セグメント利益は税引前利益ベース。情報・通信のセグメント利益率は54.2%

セグメント別売上推移

出典:HOYA 決算短信各期よりKabuGraph作成。外部顧客に対する売上収益。「その他」(音声合成ソフトウェア、2025年10月売却)は少額のため省略

ライフケアが毎期増収を続けてきたのに対し、情報・通信は2023年3月期・2024年3月期に2期連続で減収しています(2,484億円→2,443億円→2,283億円)。半導体用マスクブランクスの顧客在庫調整と、データセンターの投資抑制によるHDD用ガラスサブストレートの減収が重なったためです。2025年3月期以降はEUV向け先端品とニアラインHDD需要の回復で急回復しており、この循環性はリスク①で改めて触れます。

事業ポートフォリオと競争力

情報・通信事業 — EUVマスクブランクスが利益の柱

出典:HOYA 公式サイト

情報・通信事業の中核はフォトマスク・EUVマスクブランクスです。マスクブランクスとは、半導体の回路パターンを転写するフォトマスクの素材(ガラス基板にクロムなどの薄膜を堆積させたもの)で、ASML製EUV露光装置とセットで使用されます。

この事業にはさらに、HDD用ガラスサブストレート(ガラス基板)も含まれます。HDDのニアライン向け(データセンターストレージ)でガラス基板への置き換えが進んでおり、HOYAはガラスサブストレートで世界トップシェアを持っています。

ライフケア事業 — 眼鏡レンズ世界2位、内視鏡は戦略的オプションを検討中

ライフケア事業は「ヘルスケア」と「メディカル」の2つのサブセグメントで構成されます。

ヘルスケア(眼鏡レンズ・コンタクトレンズ)では、HOYAは眼鏡レンズでエシロール・ルックスオティカに次ぐ世界2位のポジションにあります(出典:HOYA 統合報告書2025 ライフケア事業)。世界の高齢化と新興国の中間層拡大により、眼鏡レンズ市場は年率4〜5%の安定成長が見込まれています。コンタクトレンズでは日本国内最大の専門小売チェーン「アイシティ」を展開しています。

メディカル(内視鏡・眼内レンズ)では、PENTAX Medical(ペンタックスメディカル)ブランドで消化器・呼吸器内視鏡を世界展開しています。内視鏡市場はオリンパスが圧倒的な首位ですが、HOYAは世界第3位のポジションを確保しています(出典:HOYA 統合報告書2025 ライフケア事業)。ただし内視鏡事業は構造改革の途上にあり、2027年3月期上期(2026年4〜9月累計)は特に米国での販売が停滞して減収でした。

HOYAの事業ポートフォリオの特徴

事業

売上構成

利益率

成長ドライバー

情報・通信

37%

54.2%

EUVマスクブランクス、ガラスサブストレート

ライフケア

62%

21.9%

眼鏡レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ(内視鏡は戦略的オプション検討中)

出典:HOYA 2026年3月期決算短信よりKabuGraph作成。2026年3月期。利益率はセグメント利益(税引前利益ベース)÷外部顧客に対する売上収益

HOYAの強みは、景気循環性の高い半導体関連事業と、景気に左右されにくいヘルスケア事業のバランスにあります。半導体サイクルが悪化しても、眼鏡レンズやコンタクトレンズの需要は安定しており、全社業績の底が抜けにくい構造です。実際に情報・通信が2期連続で減収した2023年3月期・2024年3月期も、ライフケアの増収で全社では増収増益を保ちました。

業績推移と財務分析

HOYAは6期連続で最高益を更新しており、2026年3月期は売上収益9,477億円(前期比+9.4%)、純利益2,531億円(同+25.2%)を記録しました。ただし、この大幅増益には、過去に中国で設立した白内障用眼内レンズの合弁会社について、将来の持分取得に備えて見積もった買い取り額と実際の取得額との差額を一過性の収益として計上した影響が含まれます。この特殊要因を除いた実力ベースの収益性は、純利益率26.7%より低い水準と見るのが妥当です。HOYAはIFRSを採用しており、2026年3月期までは営業利益を開示せず、税引前利益を主要な利益指標としていました。

通期業績推移(売上収益・純利益・純利益率)

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成。2027/3(予)は2026年10月30日に公表した会社予想で、売上収益のみ(利益の通期予想は未公表)。HOYAはIFRS採用のため営業利益ではなく純利益を表示

2027年3月期上期(2026年4〜9月累計)は売上収益5,159億円(前年同期比+13.4%)、営業利益1,734億円(同+31.6%)、純利益1,365億円(同+27.3%)と大幅な増収増益でした。7月に公表した上期予想に対し、売上収益はわずかに届かなかったものの(予想5,210億円)、利益は上回りました(営業利益の予想は1,650億円)。会社は10月30日に通期の売上収益予想1兆430億円(前期比+10.1%)を公表しましたが、利益の通期予想はまだ出していません(下の補足を参照)。

伸びをけん引したのは情報・通信で、売上収益2,077億円(+23.1%)、セグメント利益1,145億円(+27.9%)でした。会社は、EUV向け先端品の開発活動などで需要が増えたマスクブランクス(ハイエンド品の構成比も上昇)や、データセンター向けのHDD用ガラス基板などの大幅増収を挙げています。ライフケアは売上収益3,082億円(+8.5%)、セグメント利益626億円(+24.8%)と収益性が改善しましたが、為替の影響を除いた売上の伸びは+1.2%(全社では+6.3%)にとどまります(出典:HOYA 2027年3月期第2四半期決算短信 p.2〜3・p.20、同 補足資料 p.8。セグメント利益は通常の営業活動からの利益)。

EPS・配当金の推移

EPS・1株配当金の推移

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成。2026年3月期は増配+自社株買いで株主還元を大幅強化

注目すべきは2026年3月期の大幅増配(160円→295円、+84%)です。配当性向も従来の20%台から39.7%へ引き上げられ、株主還元姿勢の転換が鮮明になりました。2027年3月期の中間配当は160円(前年同期は125円)に決まり、期末配当は未定です。配当利回りは2026年3月期の年間配当295円で計算して1.13%(2026年10月30日終値時点)です。

背景には2026年3月期決算で示した新しい還元方針があります。

  • 配当は「配当性向40%を目安とする累進配当」を基本方針とする

  • バランスシート上の余剰資金は自社株買いを軸に段階的にリリースし、概ね3年で現預金水準を適正化する

  • 2026年7月31日に上限1,000万株・2,000億円の自己株式取得を決議(取得期間2026年8月3日〜2027年3月24日、取得後は消却予定)。2026年9月30日までに199万7,900株・約500億円を取得済み(出典:HOYA 自己株式の取得状況に関するお知らせ(2026年10月1日))

投資家が注目すべきポイント

強み① EUVマスクブランクスの寡占的シェア

EUVマスクブランクス市場での圧倒的なシェアは、HOYAの最大の競争優位性です。3nm・2nm世代のEUVリソグラフィにはマスクブランクスが不可欠であり、TSMC、Samsung、Intelなど世界の先端ファブが新設されるたびにHOYAのマスクブランクス需要が生まれる構造です。HOYA自身も、3nm世代などEUVの微細化の進展に伴い需要が堅調に推移していると説明しています(出典:HOYA 統合報告書2025 情報・通信事業)。

強み② 6期連続最高益の高収益体質

HOYAは情報・通信事業でセグメント利益率54.2%という極めて高い収益性を実現しています。マスクブランクスやHDD用ガラスサブストレートは少量・高付加価値の製品であり、製造効率の向上がそのまま利益率の改善に直結します。2026年3月期の全社純利益率は26.7%と、日本の大企業としては突出した水準です。ただし、この純利益率には上記の中国眼内レンズ合弁会社に係る一過性の収益が含まれており、実力ベースではこれを下回る点に留意が必要です。

強み③ ライフケアのディフェンシブな安定収益

売上の62%を占めるライフケア事業は、眼鏡レンズ・コンタクトレンズ・眼内レンズなど景気変動に左右されにくいヘルスケア需要が支えています。眼鏡レンズ世界2位のシェアは中小メーカーの買収を通じて継続的に拡大中であり、コンタクトレンズの「アイシティ」チェーンも安定した収益源です。一方、内視鏡事業は事業譲渡を含む戦略的オプションを検討中のため、この安定基盤に数えるべきではありません(リスク④参照)。


リスク① 半導体市況への依存度の高まり

情報・通信事業のセグメント利益は全社利益の約60%を占めており、半導体設備投資サイクルの影響を強く受けます。EUVマスクブランクスはEUV露光を使う先端ノード向けの製品であるため、ファウンドリの先端投資が減速した場合のインパクトが大きい点は留意が必要です。実際に2023年3月期・2024年3月期は顧客の在庫調整で情報・通信が2期連続の減収・減益となりました。ただし、ライフケア事業が下支えすることで、半導体専業メーカーのような急激な売上減少は起こりにくい構造ではあります。

リスク② PER35.2倍の高バリュエーション

株価26,210円に対してPER35.2倍、PBR8.62倍(2026年10月30日終値時点で、同日13時30分の決算発表後の値。PER・PBRは2026年3月期実績ベース)と高い水準です。6期連続最高益の実績とAI半導体需要の成長期待が織り込まれていますが、EPS成長が市場期待(年率20%超)を下回った場合にはPERの切り下げリスクがあります。

リスク③ 年度前半に通期見通しが得られない情報の非対称性

HOYAは期首時点では通期予想を開示せず、第1四半期の決算発表時に第2四半期連結累計期間の予想、第3四半期の決算発表時に通期予想を公表する方針です。会社は、情報・通信の製品の多くが部材で最終製品の景況に左右されることや、海外売上比率が大きく為替の影響を受けやすいことから、長期の予想が難しいと説明しています。2027年3月期は売上収益の予想だけを10月30日に公表しましたが、利益の見通しは第3四半期の決算発表まで示されず、投資家にとっては四半期決算ごとに業績の方向感を再評価する必要があるため、決算発表前後の株価ボラティリティが高くなりやすい傾向があります。

リスク④ 内視鏡事業の去就が未定

2026年7月31日に決議した医療用内視鏡事業の戦略的オプション検討は、第三者への事業譲渡を選択肢として明示しています。譲渡ならライフケア事業の売上の一部が抜け、譲渡損益や構造改革費用が一時的に損益を動かす可能性があります。内視鏡単体の売上・利益は開示されていないため、影響の大きさを外から見積もることもできません。2026年10月30日の決算発表時点でも結論・時期・条件は示されておらず、業績への影響も会社は「未定」としているため、続報が出るまでは内視鏡を含むライフケアの収益予想を保守的に見る必要があります。

まとめ

HOYAは、EUVマスクブランクスでの圧倒的なシェアと、眼鏡レンズ世界2位のディフェンシブ事業を併せ持つ、半導体×ヘルスケアのハイブリッド型高収益企業です。

6期連続最高益と2026年3月期の大幅増配(+84%)は、事業の好調さと株主還元姿勢の強化を明確に示しています。ただし純利益率26.7%には中国眼内レンズ合弁会社に係る一過性の収益が含まれており、実力ベースの収益性はこれより低い水準と見るのが妥当です。AI半導体の成長がEUVマスクブランクス需要を押し上げ、眼鏡レンズ・コンタクトレンズが安定基盤を提供する構図は当面続く見通しです。

一方で、PER35.2倍(2026年10月30日終値時点)の高バリュエーション、半導体市況への利益依存度の高まり、利益の通期予想が第3四半期まで示されないことによる不確実性、そして事業譲渡を含む戦略的オプションを検討中の内視鏡事業の去就は、投資判断において慎重に考慮すべきポイントです。

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7741電機・精密

HOYA

光学技術を軸に、医療分野と半導体関連分野の2事業を柱とするメーカー。「ライフケア」では眼鏡レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ、医療用内視鏡などを手がけ、「情報・通信」では半導体の回路パターンを転写するフォトマスクの原版となるマスクブランク…

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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