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日立製作所(6501)の企業分析|Lumada売上比率50%へ、エナジー事業急伸で時価総額25兆円規模に達した変革の全貌

2027年3月期 第2四半期決算まで反映

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日立製作所(6501)は、IoT・AIプラットフォーム「Lumada」を核にデジタルトランスフォーメーション(DX)企業へと変貌を遂げた日本最大級の総合電機メーカーです。2026年3月期は売上収益10兆5,868億円(+8.2%)、調整後営業利益1兆1,992億円(+23.4%)の増収増益。売上収益は日立Astemo等を連結していた2023年3月期(10兆8,812億円)には届かないものの、調整後営業利益は初めて1兆円を超え、Adjusted EBITA・当期利益(8,023億円)・コアFCFとともに過去最高を達成しました。

上場子会社22社をゼロにし(親子上場を解消)、非注力事業を次々と売却した「選択と集中」により、かつての「利益率の低い巨大コングロマリット」から利益率11%超の高収益DX企業に変革しました。この記事では、日立のセグメント構造、Lumada戦略、業績推移、投資判断のポイントを解説します。

会社概要 — 4セクター体制で成長を加速

項目

内容

会社名

株式会社日立製作所(Hitachi, Ltd.)

証券コード

6501(東証プライム)

本社

東京都千代田区丸の内一丁目6番6号

代表者

執行役社長兼CEO 德永 俊昭

従業員数

287,901名(連結、2026年3月31日現在)

決算期

3月

時価総額

約25.5兆円(2026年10月28日終値5,620円時点、KabuGraphデータ)

セグメント別売上構成(2026年3月期)

出典:日立製作所 2026年3月期決算短信(IFRS)。セグメント間消去前の数値

セグメント別売上推移(2026年3月期の報告セグメント基準)

出典:日立製作所 2026年3月期 決算短信(セグメント情報)・2026年3月期 連結決算の概要 p.33よりKabuGraph作成。セグメント間消去前の数値。2025年3月期にグリーンエナジー&モビリティ(GEM)をエナジーとモビリティに分割し、日立パワーソリューションズをGEMからコネクティブインダストリーズへ移管したため、2024年3月期以前は同一基準の遡及値が開示されておらず掲載していない(旧3セクター基準の2024年3月期はDSS 25,986/GEM 30,523/CI 30,579/日立Astemo 11,643(2023年10月に非連結化)/その他 5,077億円)

2027年3月期は産業分野SI事業のDSSへの移管など報告セグメントを再編したうえで、2026年7月29日に4セクター全ての通期見通しを上方修正し、10月28日にもDSS・CIの売上収益とエナジー・CIのAdj. EBITAを引き上げました。エナジーは+26%の4兆600億円と、4セクターで最大かつ最も高い成長率となる見通しです。

セグメント(新基準)

2026/3実績(組替後)

2027/3予想

増収率

Adj. EBITA率予想

デジタルシステム&サービス

30,683

32,900

+7%

15.4%

エナジー

32,199

40,600

+26%

15.0%

モビリティ

13,215

14,500

+10%

9.4%

コネクティブインダストリーズ

30,860

33,000

+7%

11.8%

その他

5,310

5,000

△6%

3.0%

連結合計

105,867

120,000

+13%

13.0%

出典:日立製作所 2027年3月期 第2四半期 連結決算の概要 p.31、2026年3月期 連結決算の概要 p.34よりKabuGraph作成(単位:億円)。2027年3月期から産業分野SI事業をコネクティブインダストリーズからDSSへ移管するなど報告セグメントを変更しており、2026/3実績は新基準への組替値(上のチャート・円グラフの旧基準とはDSS・CIの値が異なる)。予想は2026年10月28日の修正後。全社及び消去は省略。ATM事業(DSS)は2026年10月1日に合弁会社化、家電事業(CI)は2027年3月期中に非連結化予定

事業ポートフォリオと成長ドライバー

出典:日立製作所 公式サイト

デジタルシステム&サービス — Lumadaが牽引するDXの中核

デジタルシステム&サービス(DSS)は、IoT・AIプラットフォーム「Lumada」を中核に据えたITサービス・クラウド・データ分析事業です。2026年3月期は売上2兆9,400億円、Adjusted EBITA率15.3%とグループ内で最も高い収益性を誇ります。Lumada事業の売上収益は4兆1,460億円でグループ売上の40%を占め、2027年3月期は44%への拡大を見込んでいます(出典:日立製作所 2026年3月期 連結決算の概要 p.31)。通期のLumada売上収益見通しは期初の4兆7,900億円から7月に5兆600億円、10月28日に5兆2,000億円(前期比+25%)へ引き上げられ、上期(4〜9月累計)のLumada売上収益は2兆4,280億円(+31%、売上比率44%)でした(出典:日立製作所 2027年3月期 第2四半期 連結決算の概要 p.28)。

エナジー — 受注残10兆円の成長エンジン

エナジーセグメントは2026年3月期に前期比+22.6%の3兆2,199億円と最も高い成長を記録しました。世界的な脱炭素シフトと再生可能エネルギーの拡大に伴い、送電網(パワーグリッド)の増強需要が旺盛です。日立エナジー(旧ABB Power Grids)が中心で、受注残は2026年3月末で9.2兆円(前年度末比+42%)に達し、2026年9月末には10.5兆円(2026年3月末比+14%、669億ドル)へさらに積み上がりました。上期(4〜9月累計)のエナジー受注高は欧州の複数の大型HVDC(高圧直流送電)案件やデータセンター関連需要により3兆4,725億円(+66%)です。Adj. EBITA率は12.9%で改善基調にあり、2027年3月期の見通しは期初の13.5%から7月に14.2%、10月28日に15.0%へ引き上げられました(出典:日立製作所 2026年3月期 連結決算の概要 p.16・p.25、2027年3月期 第2四半期 連結決算の概要 p.4・p.19)。

モビリティ — 鉄道システムのグローバル展開

鉄道システム(車両・信号)を中心とするモビリティは売上1兆3,215億円(+12.8%)。欧州(セグメント売上の6割、+13%)・北米(+20%)を中心に鉄道インフラ需要が拡大しており、2024年5月に買収したタレス社の鉄道信号事業(旧GTS、2026年3月期売上3,910億円)も寄与しました。Adjusted EBITA率は8.2%で改善余地があります。

コネクティブインダストリーズ — 課題を抱える最大セグメント

産業機器・ビルシステム・計測分析を含むコネクティブインダストリーズは売上3兆2,627億円と最大のセグメントですが、2026年3月期は前期比△1%と唯一のマイナス成長でした。中国での新設エレベーター(昇降機)需要の減少でビルシステムが△9%となったことが響いています(産業機器は+3%、計測分析システムは半導体製造装置の販売増で+9%)。Adjusted EBITA率は11.3%と安定しています。

セグメント別Adjusted EBITA率の比較

セグメント別Adjusted EBITA率(2026年3月期)

出典:日立製作所 2026年3月期 連結決算の概要 p.4・p.33。日立のセグメント損益指標はAdjusted EBITAで、全社の調整後営業利益とは別指標

業績推移と財務分析

通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率)

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成。2027/3(予)は2026年10月28日に上方修正した会社予想。営業利益はIFRS調整後営業利益

日立の変革の軌跡が数字に明確に表れています。営業利益率は2021年3月期の5.7%から2026年3月期には11.3%へとほぼ倍増。これは上場子会社の集約、非注力事業の売却、Lumada事業の高利益率化が複合的に効いた結果です。2027年3月期は会社予想で売上収益12兆円(+13.3%)、調整後営業利益1兆4,500億円(+20.9%)を見込んでいます(期初予想の11兆1,000億円・1兆3,150億円から、2026年7月29日と10月28日の2度にわたり上方修正)。

2027年3月期 上期(4〜9月累計)は4セクター全てで増収増益(2026年10月28日開示)

指標

2027/3期 上期(4〜9月累計)

前年同期比

通期予想への進捗

売上収益

5兆6,140億円

+17.3%

46.8%

調整後営業利益

6,432億円

+26.6%

44.4%

Adjusted EBITA(率)

6,996億円(12.5%)

+1,378億円(+0.8pt)

44.8%

親会社株主帰属中間利益

4,166億円

△11.9%

45.3%

EPS

93.20円

△10.1%(前年同期103.63円)

45.2%(通期予想206.41円)

出典:日立製作所 2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信・第2四半期 連結決算の概要 p.31・p.32よりKabuGraph作成。数値は2026年4〜9月の6ヶ月(上期累計)。進捗率は10月28日修正後の通期会社予想に対する比率でKabuGraph算出

第2四半期(7〜9月)の売上収益とAdjusted EBITAは第2四半期として過去最高でした。親会社株主帰属の中間利益が△11.9%と減ったのは、前年同期にあった空調事業の合弁会社売却に伴う利益の反動(税引前で△1,553億円)と、外貨建て資産・負債の評価替えによる為替差損益の悪化(同△590億円)のためで、本業の調整後営業利益は+26.6%でした(出典:日立製作所 2027年3月期 第2四半期 連結決算の概要 p.3・p.8)。セグメント別(上期累計)の内訳は次のとおりです。

  • エナジー:売上収益1兆8,723億円(+32%)、Adj. EBITA率14.7%(+2.5pt)。欧州の大型HVDC案件やデータセンター関連需要で受注高は3兆4,725億円(+66%)。増収効果と受注残の収益性改善、為替が利益を押し上げ

  • デジタルシステム&サービス:売上収益1兆5,331億円(+10%)、Adj. EBITA率13.8%(+0.2pt)。国内の金融・公共などのAX/モダナイゼーション案件が貢献。第2四半期に一部国内案件のコスト増など一過性の減益要因(△90億円)

  • モビリティ:売上収益6,929億円(+18%)、Adj. EBITA率8.1%(+1.1pt)。為替、欧州の鉄道車両案件の進捗、タレスGTS事業の成長と収益性向上

  • コネクティブインダストリーズ:売上収益1兆5,866億円(+11%)、Adj. EBITA率11.2%(+0.4pt)。ビルサービス事業の拡大と、半導体製造・計測・検査装置、配電用変圧器の販売拡大

EPS・配当金の推移

EPS・1株配当金の推移

出典:決算短信・有価証券報告書・IR資料よりKabuGraph作成。EPS・配当金は2024年7月の株式分割(1:5)で遡及調整済み。配当性向は決算短信の開示値

2026年3月期は自己株式取得枠4,000億円を決議(2026年1月に1,000億円を追加。期中の取得額は約3,500億円で、残りは2027年3月期の取得予定額5,500億円に繰り越し)。加えて家電事業では、ノジマとの合弁新会社設立(譲渡価格約1,100億円、日立GLS出資19.9%、空調事業は継続保有)を決定し、2027年3月期には5,000億円を上限とする自社株買いを決議しました。増配も継続しており、資本効率の改善に積極的な姿勢が鮮明です(出典:日立製作所 2026年3月期 連結決算の概要 p.9)。

政策保有株式の縮減も進み、日立建機株は2026年8月21日に残る全株を売却しました(2027年3月期の個別決算で特別利益1,799億円。IFRS連結では損益に計上されず、連結業績予想への影響なし)。持分法適用会社だったAstemo(旧日立Astemo)の株式も、2026年10月1日に一部を本田技研工業へ譲渡し、日立の持分は40.0%から19.0%となって持分法の対象から外れました(当期利益への影響は重要ではないと会社は説明。出典:日立製作所 2027年3月期 第2四半期決算短信 p.9)。

投資家が注目すべきポイント

強み① Lumada事業の成長と利益率改善

Lumadaは顧客のDXを支援するIoT・AIプラットフォームで、日立が持つOT(制御技術)とIT(情報技術)を融合した独自の強みです。売上比率は約40%に到達し、2027年度に50%を目指しています。Lumada事業はリカーリング(継続課金)型の収益モデルを拡大しており、従来のハードウェア販売中心のビジネスモデルからの脱却を実現しています。

強み② エナジー受注残10兆円の可視性

日立エナジーの受注残は2026年3月末の9.2兆円から9月末には10.5兆円(669億ドル)へ積み上がり、日立エナジーの年間売上(2026年3月期198億ドル)の3年分を超える強固な基盤です。2027年3月期上期(4〜9月累計)のエナジー受注高も欧州の大型HVDC案件などで+66%と大きく伸びました。世界的な電力需要の増加(データセンター・EV・再エネ)により送電網の増強は構造的な需要であり、短期的な景気変動に左右されにくい特徴があります。

強み③ 事業再編の完遂と株主還元の強化

上場子会社22社をゼロにして親子上場を解消し、非注力事業を切り離す大胆な構造改革を完遂しました。営業利益率は5.7%→11.3%に改善し、2027年3月期の5,000億円(上限)の自社株買い+増配という積極的な株主還元は、構造改革の「果実」が株主に返っていることを示しています。


リスク① コネクティブインダストリーズの中国リスク

2026年3月期に最大セグメントだったコネクティブインダストリーズは、中国での新設エレベーター需要の減少で微減収。2027年3月期上期(4〜9月累計)はビルサービス事業の拡大などで増収増益となりましたが、会社は通期の見通しでも中国の新設昇降機の需要減少を減益要因に挙げており、新設需要の回復が遅れれば全社の成長率にブレーキがかかるリスクがあります。家電事業(日立GLS)とATM事業の非連結化に伴う減収も2027年3月期の見通しに織り込まれています(出典:日立製作所 2027年3月期 第2四半期 連結決算の概要 p.26)。

リスク② 変革プレミアムの剥落リスク

PER31.8倍(2026年10月28日終値5,620円、2026年3月期実績EPS176.76円ベース、KabuGraph算出。上期決算は同日の取引終了後に発表)は電機セクターとしては高めの水準であり、Lumada比率50%達成や利益率の継続的な改善を織り込んだ「変革プレミアム」が乗っています。DX需要の減速やLumadaの成長鈍化が見えた場合、バリュエーションの切り下げが発生するリスクは認識しておく必要があります。

リスク③ 中東情勢とエナジー大型案件の遂行

会社は中東情勢を2027年3月期の主要リスクに挙げています。2026年3月期の中東売上収益は約4,700億円(従業員約2,900名、サウジアラビア・UAE等)で、エナジー・コネクティブインダストリーズ・モビリティの大型プロジェクトに支障が出る可能性があります。上期(4〜9月累計)の影響は売上収益△330億円・Adj. EBITA△130億円(うち第1四半期△160億円・△70億円)で、通期では△430億円・△230億円を見通しに織り込んでいます。会社は7月時点で、物流遅延や調達品の供給不足、調達品・エネルギー価格の高騰などを影響の要因に挙げていました(出典:日立製作所 2027年3月期 第1四半期 連結決算の概要 p.11、第2四半期 連結決算の概要 p.6・p.7)。

まとめ

日立製作所は、10年にわたる構造改革により「利益率5%台の巨大コングロマリット」から「利益率11%超のDX・エナジー企業」へと見事に変貌を遂げました。Lumada事業の拡大、日立エナジーの受注残10.5兆円(2026年9月末)、2027年3月期の5,000億円(上限)の自社株買いは、この変革が一過性ではなく構造的なものであることを示しています。2027年3月期は上期(4〜9月累計)に4セクター全てで増収増益となり、通期予想は10月28日に売上収益12兆円・調整後営業利益1兆4,500億円へ再び上方修正されました。

一方でPER31.8倍(2026年10月28日終値時点)の高バリュエーションは変革の継続を前提としており、コネクティブインダストリーズの中国リスク、中東情勢、DX需要の不確実性には注意が必要です。Lumada比率50%の達成とエナジー事業のさらなる拡大がカギとなります。

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日立製作所は、デジタル技術とインフラ融合による社会課題解決を掲げる総合電機メーカーです。IT・クラウド、電力システム、鉄道、エレベーター、家電など多岐にわたる製品・サービスを世界規模で提供しています。デジタルソリューション「Lumada」を…

コラム著者・編集者

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KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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