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【投資テーマ解説】防衛|43兆円計画4年目・防衛費9兆円時代の関連11銘柄を徹底比較

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日本の防衛政策は歴史的な転換点を迎えています。2022年12月に閣議決定された防衛力整備計画(2023〜2027年度・総額43兆円)は4年目に入り、2026年度の防衛関係費は初めて9兆353億円に到達しました。2021年度の5.3兆円からわずか5年で1.7倍という急拡大です。防衛費と関連経費を合わせたGDP比2%は、当初目標の2027年度から2年前倒しして2025年度に到達し、政府は2026年内に安保3文書を改定する方針です。さらに2026年4月には防衛装備移転三原則の運用指針が改定され、殺傷能力を持つ装備品の輸出が原則解禁されました。

この記事では、防衛費拡大の全体像から主要装備プログラム、重工3社(三菱重工・川崎重工・IHI)の比較、防衛エレクトロニクス、中小型の防衛専業銘柄まで、関連11銘柄の防衛事業規模と投資指標を投資家目線で解説します。

防衛費の全体像:43兆円計画の進捗と9兆円予算

2022年12月、岸田政権は国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画の安保3文書を閣議決定し、2023〜2027年度の5年間で43兆円を防衛力整備に投じる方針を打ち出しました。当初の目標は、防衛費と関連経費を合わせた予算を2027年度にGDP比2%の水準にすることでした(国家安全保障戦略)。

このGDP比2%は、2025年度に到達しました(当初目標の2027年度から2年前倒し)。高市政権が2025年度の補正予算で安全保障関連経費1.1兆円を積み増し、当初予算と合わせて2%の水準に達しています(首相記者会見 2025年12月17日)。

防衛関係費(当初予算)の推移

出典:財務省予算資料よりKabuGraph作成。各年度の当初予算ベース

2026年度予算(9兆353億円)までの4年間で、防衛力整備計画の契約ベースでは約81%を措置済みです(参議院調査室「2026年度防衛関係費の概要」)。歳出ベースでは77%の進捗です。

最終年度の2027年度予算は、政府が2026年内に改定する安保3文書を踏まえて組まれます(骨太方針2026)。8月末の概算要求では、現行計画に沿った事業を歳出ベース約9兆円で計上し、改定に左右される事業は金額を示さない「事項要求」としました(防衛省「令和9年度概算要求の概要」)。

主要装備プログラムと受注企業

43兆円の中身を見ると、「スタンド・オフ防衛能力」「統合防空ミサイル防衛」「無人アセット」「宇宙・サイバー・電磁波」など7つの柱に重点配分されています。投資家にとって重要なのは、どの装備プログラムがどの企業に流れるかです。

次期戦闘機 GCAP(Global Combat Air Programme)

日本・英国・イタリアの3か国共同開発による第6世代戦闘機で、2035年度の配備開始を目指しています。F-2後継機として航空自衛隊に配備される予定です。2023年12月に3か国が条約に署名し、2024年12月に条約が発効して国際管理機関GIGOが発足しました(防衛省「次期戦闘機の開発について」)。日本側の主契約企業は三菱重工業(機体)、IHI(エンジン)、三菱電機(レーダー等アビオニクス)です。開発規模は数兆円に上るとみられ、2030年代にかけて収益貢献が本格化します。

イージス・システム搭載艦

弾道ミサイル防衛の要として建造が進む新型護衛艦です。搭載するSPY-7レーダーは米国でのテストを完了し、2027年度の就役を目指しています。建造は1番艦が三菱重工、2番艦がジャパンマリンユナイテッド(JMU、非上場)です(防衛装備庁「令和6年度中央調達の調達実績」)。2隻で約5,000億円規模のプログラムです。

スタンド・オフ・ミサイル

敵の射程圏外から攻撃する長射程ミサイルの整備は43兆円計画の最大の柱の一つです。国産の12式地対艦誘導弾(能力向上型)は射程が報道では1,000km超とされ、三菱重工業が開発・製造を担います。地上発射型は2026年3月に「25式地対艦誘導弾」として熊本の健軍駐屯地に配備が始まりました。艦艇発射型・航空機発射型の取得も2027年度の概算要求に計上されており、3形態の整備が進んでいます。

潜水艦・護衛艦

潜水艦は三菱重工と川崎重工(いずれも神戸)が交互に建造し、護衛艦は三菱重工とJMUが担います。最新鋭のたいげい型潜水艦「らいげい」は川崎重工が建造し2025年に引き渡されました。もがみ型護衛艦の能力向上型(4,800トン型)も建造が進んでおり、豪州は2025年8月にこの艦を次期フリゲートに選び、2026年4月18日に三菱重工と正式契約を結びました(最初の3隻を長崎造船所で建造し、1番艦は2029年12月に納入予定)。

プライムコントラクター:重工3社の防衛事業比較

日本の防衛産業の中核を担うのが三菱重工・川崎重工・IHIの重工3社です。防衛装備庁の2025年度の契約額(中央調達)は、三菱重工が9,724億円で1位、三菱電機が5,284億円で2位、川崎重工が3,308億円で3位でした(防衛装備庁「令和7年度中央調達の調達実績」)。順位は大型艦艇などの契約の有無で年ごとに入れ替わり、2024年度は三菱重工が1兆4,567億円と2位以下に2倍以上の差をつけていました。IHIは直接の契約額では13位(422億円)ですが、戦闘機エンジンで欠かせない存在です。3社の防衛事業の特徴と業績を比較します。

三菱重工業(7011):防衛の「盟主」

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三
7011機械

三菱重工業

三菱重工業は火力・原子力・風力発電システム、航空機用エンジン、製鉄機械、商船・交通システム、エアコン・ターボチャージャ、防衛航空機・ロケットなど幅広い重工業製品を4つのセグメントで展開する日本最大級の重工業メーカー。

日本最大の防衛プライム企業です。戦闘機・護衛艦・潜水艦・戦車・ミサイルと全領域をカバーし、次期戦闘機GCAPの機体設計・製造も担います。

2026年3月期の防衛・宇宙事業の売上収益は1兆1,445億円(前期比+3,169億円)、受注残高は4兆円超に達しました。航空・防衛・宇宙セグメント全体では受注高1兆9,294億円、受注残高4兆632億円、売上収益1兆3,938億円、事業利益1,515億円(前期比+515億円)と大幅増益です(三菱重工 2026年3月期決算短信)。連結売上収益4兆9,741億円に対し、防衛・宇宙の売上比率は約23%です。

川崎重工業(7012):潜水艦と航空機の「面」の強さ

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川
7012自動車・輸送機

川崎重工業

航空宇宙から鉄道車両、エネルギー、ロボット、二輪車までを手がける総合重工メーカー。航空宇宙システム、車両、エネルギーソリューション&マリン、精密機械・ロボット、パワースポーツ&エンジン、その他の6事業で構成され、子会社136社・関連会社31…

防衛装備庁の契約額は2025年度が3位(3,308億円)、2024年度は2位(6,383億円)。P-1哨戒機・C-2輸送機の独占メーカーであり、潜水艦の建造能力も持つ点が強みです。

2026年3月期の航空宇宙システムセグメントは受注高8,109億円、売上収益6,136億円、事業利益624億円でした(川崎重工 2025年度決算説明資料)。航空宇宙には民間航空エンジンの分担製造も含まれるため、防衛のみの正確な切り出しは困難ですが、防衛省向けの増加が増収の主因です。連結売上収益2兆3,112億円に対する航空宇宙の比率は約27%です。

IHI(7013):戦闘機エンジンの「心臓部」

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I
7013機械

IHI

IHIは原動機・カーボンソリューション・原子力などの資源・エネルギー・環境事業、橋梁・交通システム・シールドシステムなどの社会基盤事業、車両過給機・パーキング・回転機械などの産業システム事業、航空エンジン・ロケット・防衛機器の航空・宇宙・防…

日本で唯一、ジェット戦闘機用エンジンを製造できる企業です。F-2・F-15のエンジンに加え、F-35に搭載するF135エンジンの最終組立・検査と整備も担い、GCAP用の新型エンジン開発が長期の成長ドライバーとなります。

2026年3月期の航空・宇宙・防衛セグメントは売上収益6,517億円、営業利益1,124億円で、連結売上収益1兆6,434億円の約40%を占めます(IHI 2026年3月期決算短信)。民間航空エンジンのアフターマーケットが好調で、防衛事業との合算で営業利益率は17%超と高水準です。

重工3社の防衛関連セグメント売上収益(2026年3月期)

出典:各社2026年3月期決算短信よりKabuGraph作成。三菱重工は航空・防衛・宇宙セグメント、川崎重工は航空宇宙システムセグメント、IHIは航空・宇宙・防衛セグメント。いずれも民間航空を含み、セグメント間の取引を含む売上収益

防衛エレクトロニクス:三菱電機・NEC・富士通

ハードウェアだけでなく、レーダー・通信・指揮統制システムなどのエレクトロニクスが防衛費の大きな割合を占めます。サイバー・宇宙・電磁波といった新領域では、IT企業の重要度がさらに増しています。

三菱電機(6503)

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三
6503電機・精密

三菱電機

日本を代表する総合電機メーカー。FA(ファクトリーオートメーション)機器、空調・家電、電力システム、鉄道車両用電機品、人工衛星、防衛関連機器、パワー半導体など、社会インフラから家庭まで幅広い領域で電機製品を製造販売する。「霧ヶ峰」(ルームエ…

防衛装備庁の契約額は2025年度が2位(5,284億円)、2024年度は3位(4,956億円)。レーダー・ミサイル誘導装置・指揮統制システム・衛星搭載機器を手がけ、GCAPのアビオニクスも担当します。

防衛システム事業の受注高は2022年度の1,400億円から2024年度は6,000億円規模へ急拡大する見込みで(2025年3月時点)、2030年度に売上高6,000億円以上・営業利益率10%以上を目標としています(三菱電機「防衛事業説明会」2025年3月)。連結売上収益5兆8,947億円に対する防衛事業の比率は現時点で一桁%台ですが、受注残の積み上がりにより着実に拡大中です。また、2020年にはフィリピンへの防空レーダー4基の輸出契約(約100億円相当)を成立させており、日本の完成防衛装備品輸出の先駆けとなりました。

NEC(6701)

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日
6701電機・精密

日本電気

日本電気(NEC)は、ITサービスと社会インフラを主力とする総合ICT企業です。システム構築、クラウドサービス、コンサルティングなどのITサービス事業と、通信ネットワーク機器、航空宇宙・防衛システムの社会インフラ事業の2セグメントで展開して…

指揮統制システム・衛星通信・ソナー・サイバーセキュリティなど「見えないインフラ」を担う防衛IT企業です。航空宇宙・防衛事業は防衛費拡大の恩恵を直接受け、2026年3月期は売上収益4,736億円(前期比27.4%増)、調整後営業利益744億円(前期比312億円増)となりました(NEC 2025年度通期決算概要)。防衛事業の人員を2021年3月期から約4割増やす計画を推進しており、NATO最大級のサイバー防衛演習「Locked Shields 2026」にも参加するなどサイバー領域での存在感を高めています。

富士通(6702)

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富
6702電機・精密

富士通

富士通は日本を含む世界各地で事業展開するグローバルデジタルサービス企業。ビジネス・テクノロジーコンサルティング、クラウドサービス(IaaS・PaaS・SaaS)、システムインテグレーション、ビジネスプロセスアウトソーシング等のサービスソリュ…

防衛省の通信ネットワーク・電子戦システム・射撃統制装置を手がけます。2026年3月期は連結売上収益3兆5,029億円、営業利益3,483億円(前期比31%増)。防衛事業はセグメントとして開示されていませんが、防衛装備庁の2025年度の契約額は1,362億円(6位)です。

中小型の防衛専業・準専業銘柄

大手と比べて時価総額は小さいものの、売上に占める防衛比率が高いため、防衛費増額の恩恵をより直接的に受ける銘柄群です。ニッチな装備品で独占的な地位を持つ企業が多い点が特徴です。

日本製鋼所(5631):砲身と弾薬の名門

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日
5631機械

日本製鋼所

日本製鋼所は産業機械と素形材・エンジニアリングを二本柱とする機械・素材メーカー。産業機械事業では、樹脂の造粒機・二軸混練押出機・フィルム/シート製造装置といった樹脂製造・加工機械と、プラスチック射出成形機・中空成形機・マグネシウム合金射出成…

戦艦大和の主砲を製造した歴史を持つ「砲の名門」で、日本唯一の大口径砲メーカーです。火器管制装置・榴弾砲・艦載砲・機関銃を製造します。防衛機器は産業機械事業に含まれ、2026年3月期の防衛関連機器の売上高は469億円(前期比45.6%増)と、連結売上高2,748億円の約17%を占めました(日本製鋼所 2026年3月期決算短信)。主力は樹脂製造・加工機械ですが、防衛の比重は高まっています。弾薬・砲身の増産需要は息が長く、今後も底堅い伸びが見込まれます。

東京計器(7721):防衛計測のニッチ独占

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東
7721電機・精密

東京計器

舶用機器・修理・サービス部品、油空圧機器(油圧応用装置・油空圧部品)、流体計測機器・消火設備、防衛関連・海上交通システム・道路トンネル計測・通信機器など防衛・通信機器を中核事業とした総合機器メーカー。物流・ファクタリング等関連サービスを統合…

ジャイロスコープ・慣性航法装置・火器管制レーダーを製造する計測機器メーカーです。2026年3月期の連結売上高は612億円(前期比35億円増)、営業利益は54億円。防衛・通信機器事業は売上の約4割(260億円)、受注残高の約7割(432億円、2026年3月末)を占めます。同期の防衛・通信機器の受注高は260億円(前期比23.5%減)で、会社は防衛予算の年度配分による需要の一服感を挙げています(東京計器 2026年3月期決算説明資料)。

石川製作所(6208):国内唯一の機雷メーカー

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石
6208機械

石川製作所

段ボール製函印刷機械と防衛機器の二本柱で事業を営む機械メーカー。紙工機械事業では段ボール製函印刷機械を製造し、その他の関係会社であるレンゴー等の大手段ボールメーカーに納入する。防衛機器事業では機雷や航空機用電子機器を防衛省向けに製造。他社か…

日本で唯一の機雷製造企業であり、防衛機器事業が売上の約77%を占める実質的な防衛専業企業です(機雷のほか段ボール製函印刷機などの紙工機械も手がけます)。2026年3月期は売上高185億円(前期比14.0%増)、営業利益13億円(同88.7%増)と大幅増益でした。一方、同期の受注高は137億円(前期比35.5%減、うち防衛機器は100億円で41.4%減)と売上高を下回っています。参入障壁が極めて高いニッチ市場を独占する点が投資家の注目を集めています。

豊和工業(6203):国内唯一の小銃メーカー

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豊
6203機械

豊和工業

工作機械・火器・建材・特装車両を製造する名古屋拠点の老舗メーカー。CNC旋盤やマシニングセンタ等の工作機械および空油圧機器・電子機械の製造販売を主力とし、中国には連結子会社の和(天津)机床有限公司を通じた販売体制を構築する。防衛省向けに自動…

陸上自衛隊の制式小銃「20式5.56mm小銃」を製造する日本唯一の小銃メーカーです。火器事業では小銃の納入数増加が続いていますが、主力の工作機械事業が低調で、2026年3月期は連結売上高241億円(前期比3.1%減)。2026年9月7日にはドローンメーカーのプロドローンへの出資を発表し、プロドローンが豊和工業の敷地内に量産工場を新設するほか、迎撃用ドローンも共同開発します。発表後に株価は急伸し、時価総額は307億円、PBRは1.40倍です(2026年9月30日終値時点)。

細谷火工(4274):照明弾・発煙弾の専業

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細
4274素材・化学

細谷火工

煙火・信号弾・発煙筒など火工品の専業メーカー。防衛省向けの照明弾・発煙弾、船舶用の信号炎管、鉄道・道路向けの発炎筒を製造・販売する。火薬類の取扱いに必要な大型施設や火薬庫を自社保有しており、大型商業店舗・実験棟・火薬庫等の施設賃貸事業も展開…

自衛隊向けの照明弾・発煙弾・信号炎管などの火工品(弾薬系)を製造する専業メーカーで、売上の9割超を火工品が占め、防衛省向けの直接販売だけで売上の51%(2026年3月期、有価証券報告書)にのぼります。2026年3月期は売上高21億円、経常利益3億円で、経常利益は2期連続で過去最高を更新しました。時価総額46億円(2026年9月30日終値時点)と最も小型ながら、防衛費増額の恩恵を最も直接的に受ける銘柄の一つです。

防衛装備移転(輸出)の新局面

2026年4月21日、高市政権は防衛装備移転三原則の運用指針を改定し、「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の5類型の制約を撤廃しました(経済産業省「防衛装備移転三原則等の一部改正について」)。これにより、日本と防衛装備品・技術移転協定を結ぶ17か国に対して、戦闘機や護衛艦を含む殺傷能力を持つ装備品の輸出が原則可能になりました。

投資家にとっての意味は大きく2つあります。

  1. 市場の拡大:国内防衛予算の今後の規模は2026年内に改定される安保3文書で決まり、伸びが続くとは限りませんが、海外市場が新たな成長エンジンになりえます。GCAPの共同開発を通じて英国・イタリアとの産業基盤が構築されるほか、フィリピンへの護衛艦輸出協議も進行中です。

  2. 量産効果:日本の防衛装備品は少量生産のため単価が高い構造的課題がありました。輸出による生産数増加は量産効果を生み、調達コストの低減と利益率の改善が期待されます。三菱重工の豪州向けフリゲートは、量産効果が期待される最初の大型案件です(1番艦の納入は2029年12月予定)。

サイバー・宇宙・電磁波:新領域の投資機会

防衛力整備計画は従来の陸海空に加え、宇宙・サイバー・電磁波を「新領域」として重点的に予算を配分しています。2025年5月に成立したサイバー対処能力強化法(いわゆる能動的サイバー防御法)は2026年10月1日に施行され、電力・通信・金融などの基幹インフラ事業者に、サイバー攻撃の被害の報告と、重要なシステム機器を導入した際の届出が義務づけられました。政府が通信情報を分析する仕組みは、2027年11月までに政令で定める日から始まります。

サイバー防衛

NECとNTTグループは2026年4月開催のNATO最大級サイバー防衛演習「Locked Shields 2026」に参加しており、国際的なサイバー防衛能力を実証しています。防衛省は自衛隊サイバー防衛隊の人員を大幅に増強中であり、NEC・富士通・NTTデータが主要なシステム構築を担っています。

宇宙領域

宇宙状況監視(SSA)・衛星通信・ミサイル警戒衛星の整備が進んでおり、三菱電機(衛星搭載機器)、NEC(衛星通信システム)が関わっています。宇宙テーマの詳細は宇宙産業テーマ解説記事もご参照ください。

電磁波領域(電子戦)

電磁波領域は敵のレーダーや通信を妨害する電子戦能力のことで、C-2輸送機を母機とするスタンド・オフ電子戦機は川崎重工が開発しています。「目に見えない戦場」として予算が急拡大しており、ハードウェアよりもソフトウェア・AI技術の比重が高い領域です。

関連銘柄一覧と投資指標

主要な防衛関連銘柄の投資指標を一覧で比較します。

銘柄

コード

時価総額

PER

PBR

配当利回り

防衛事業の特徴

三菱重工業

7011

12兆9,514億円

38.8倍

4.18倍

0.65%

全領域カバー、契約額1位

三菱電機

6503

10兆9,992億円

26.2倍

2.38倍

1.06%

レーダー・GCAP電子機器

富士通

6702

6兆8,843億円

15.5倍

3.39倍

1.26%

通信・電子戦システム

NEC

6701

6兆4,925億円

23.4倍

2.87倍

0.80%

指揮統制・サイバー防衛

IHI

7013

2兆9,153億円

17.7倍

4.38倍

0.74%

戦闘機エンジン・GCAP

川崎重工業

7012

2兆736億円

18.3倍

2.25倍

1.45%

潜水艦・哨戒機・輸送機

東京計器

7721

1,247億円

29.9倍

2.64倍

0.55%

慣性航法・レーダー

日本製鋼所

5631

5,428億円

27.9倍

2.53倍

1.26%

砲身・弾薬・火器管制

豊和工業

6203

307億円

39.8倍

1.40倍

0.82%

小銃(20式)・火器

石川製作所

6208

116億円

17.9倍

1.85倍

1.10%

機雷(国内唯一)

細谷火工

4274

46億円

21.3倍

1.31倍

1.32%

照明弾・発煙弾(防衛省向け約5割)

出典:東証株価・決算短信よりKabuGraph算出(2026年9月30日終値時点)。PER・配当利回りは2026年3月期の実績ベース

投資家が注目すべきポイント

防衛関連銘柄への投資を検討する際に押さえておくべきポイントを整理します。

43兆円計画の「その先」

現行の防衛力整備計画(2023〜2027年度)は、最終年度を待たずに新しい計画へ切り替わる見通しです。政府は2026年内に安保3文書を改定し、2027年度予算もその内容を踏まえて年末に固めるため、次の計画の規模が今後の注目点になります。ただし、契約済みの装備品の支払い(後年度負担の歳出化)だけで2026年度は約4.5兆円あるため、防衛費が大幅に縮小することは構造的に難しいと考えられます。

受注残高の「厚み」を見る

防衛装備品は契約から納入まで3〜5年かかるため、受注残高が今後数年の売上の「見える化」になります。三菱重工の防衛・宇宙の受注残高4兆円超は、同事業の年間売上(1兆1,445億円)の3.5年分を超えます。逆に、石川製作所の2026年3月期のように受注高が売上高を下回ると受注残は減っていくので、受注高と売上高の大小も合わせて確認したいところです。

バリュエーションの二極化

銘柄一覧を見ると、PBRは三菱重工(4.18倍)・IHI(4.38倍)と、豊和工業(1.40倍)・細谷火工(1.31倍)で大きな差があります(2026年9月30日終値時点)。大手は防衛以外の事業(GTCC・航空エンジン・FA機器など)の成長期待も織り込まれている一方、中小型の防衛比率の高い銘柄は純資産に対する評価が比較的抑えられています。ただしPERでは豊和工業(39.8倍)が三菱重工(38.8倍)を上回っており、中小型株はドローン連携のような材料ひとつで評価が大きく動く点に注意が必要です。防衛費拡大のピュアプレイを狙うなら防衛比率に注目し、分散を効かせるなら大手エレクトロニクスを含める形が考えられます。

防衛テーマ投資のリスク

  • 政治リスク:防衛予算は閣議決定で決まるため、政権交代や財政悪化で方針が変わる可能性

  • 利益率の構造問題:日本の防衛産業はコスト+利益率方式の価格体系で、民間事業ほどの高マージンは期待しにくい(改善の動きはあり)

  • 地政学リスクの両面性:台湾海峡や朝鮮半島の緊張は防衛関連株の注目を高めますが、実際の有事は経済全体にマイナス

  • ESG投資との関係:一部の機関投資家やファンドは防衛産業を投資対象から除外しており、資金フローに影響する可能性

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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