【投資テーマ解説】グループウェア|kintone国内4万社・Microsoft 365利用率首位の市場と関連銘柄

グループウェアは、メール・スケジュール・ファイル共有・ワークフローなど社内の情報共有基盤を統合するソフトウェアです。富士キメラ総研が2022年に公表した予測では、国内市場は2026年度に約3,475億円規模に達する見通しです。2021年度の時点で、SaaS型が市場全体の約9割を占めていました(富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場 2022年版」)。
利用率ではMicrosoft 365が57.4%と圧倒的な存在感を示す一方、サイボウズのkintoneは国内の契約企業が4万社(2026年6月末)に達し、「ノーコード業務アプリ」という新たな市場を開拓しています(キーマンズネット「グループウェアの利用状況(2025年)」、サイボウズ IRグループ面談〔2026年8月〕)。この記事ではグループウェア市場の全体像を整理し、サイボウズ・ネオジャパン・HENNGE・ドリーム・アーツ・トヨクモ・rakumoの6社を投資家目線で解説します。
この記事の内容(目次)
グループウェアとは何か——企業の情報共有インフラ
グループウェアとは、企業内のコミュニケーションと情報共有を効率化するためのソフトウェア群を指します。メール・カレンダー・掲示板・ファイル共有・ワークフロー(稟議申請)・チャットを一つのプラットフォームで提供し、部門間の情報の壁を取り除くことが基本的な役割です。
オンプレミスからクラウドへの移行
かつてのグループウェアはLotus NotesやサイボウズOfficeなど、社内サーバーにインストールするオンプレミス型が主流でした。その後クラウド(SaaS)型への移行が進み、コロナ禍のリモートワーク普及でその流れが強まりました。2021年度の時点で、SaaS型が市場全体の約9割を占めていました(富士キメラ総研)。クラウド化によりVPNなしで社外からアクセスでき、サーバー保守が不要になるため、中小企業でも導入のハードルが下がりました。
グループウェアからノーコード・業務アプリへの進化
注目すべきは、近年のグループウェアが従来の「情報共有ツール」から「ノーコード・ローコードの業務アプリケーションプラットフォーム」へと進化している点です。サイボウズのkintoneやネオジャパンのAppSuiteは、プログラミング不要で業務アプリを作成でき、従来はシステム開発が必要だった案件管理や顧客管理などを現場主導で構築できます。この進化がグループウェア市場に新たな成長余地を生んでいます。
国内グループウェア市場の規模とシェア
富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場 2022年版」(2022年7月刊)によると、国内グループウェア市場は2021年度に約2,679億円(SaaS型:約2,401億円、パッケージ型:約278億円)で、2026年度にはSaaS型・パッケージ型合計で約3,475億円に拡大する見通しです。年平均では約5.3%の安定した伸びです。
ただし、これは2022年時点の予測です。同社は2026年7月に最新の2026年版を出していますが、グループウェアの市場規模は有料の報告書にしか載っておらず、公表資料では確かめられません。
利用率ランキング——Microsoft 365が過半
キーマンズネットが2025年5月に読者へ「勤務先で利用しているグループウェア」を尋ねた調査(有効回答205件)では、上位3製品は以下の通りでした。
順位 | 製品名 | 利用率 | 備考 |
|---|---|---|---|
1位 | Microsoft 365 | 57.4% | 2020年比+16.9pt |
2位 | Google Workspace | 21.0% | 2020年比+11.5pt |
3位 | サイボウズ Office | 11.1% | 国産首位 |
Microsoft 365(57.4%)とGoogle Workspace(21.0%)の海外勢は、いずれも2020年の調査から利用率を大きく伸ばしました。しかし、国産ベンダーにはMicrosoft 365/Google Workspaceと「共存」して成長する独自の戦略があります。サイボウズのkintoneはMicrosoft 365やGoogle Workspaceでは手の届かない「現場の業務アプリケーション構築」に特化し、HENNGEはこれらクラウドサービスのセキュリティ基盤として機能しています。
グループウェアの利用率(2025年調査・上位3製品)
クラウド移行が加速する3つの背景
グループウェア市場の成長を支える構造的な追い風を整理します。
①テレワーク・ハイブリッドワークの定着
コロナ禍を経て、多くの企業がハイブリッドワークを恒常的な働き方として採用しています。場所を選ばずに情報共有・業務処理ができるクラウドグループウェアは、もはや「あると便利」ではなく「なければ業務が回らない」インフラとなりました。大企業でもクラウドの業務基盤は広がっており、東証プライム上場企業の約46%がサイボウズのkintoneを導入しています(サイボウズ2025年12月期決算説明会資料)。
②DX推進とノーコード・ローコード需要
経済産業省の「DX推進ガイドライン」以降、業務プロセスのデジタル化は経営課題の上位に位置づけられています。しかしIT人材の不足がボトルネックとなり、プログラミング不要で業務アプリを構築できるノーコード・ローコードツールへの需要が急拡大しました。kintoneやAppSuite(ネオジャパン)、SmartDB(ドリーム・アーツ)はこの文脈で成長しています。
③中小企業のクラウド導入余地
月額数百円〜千円台の中小企業向けプランが整備されたことで、従業員100名以下の企業でも導入の経済合理性が成立するようになりました。中小企業セグメントはまだ導入率が低く、今後の市場成長の最大のドライバーとなる見通しです。サイボウズのkintoneでも、月額売上(MRR)の39.1%は従業員99名以下の会社からで(2025年12月末)、中小企業が売上の柱の1つになっています。
グループウェア関連銘柄マップ——4つのカテゴリで整理
日本の上場企業の中からグループウェア関連銘柄を機能・ポジションで4つのカテゴリに分類します。
カテゴリ | 企業名 | 主要プロダクト | 特徴 |
|---|---|---|---|
総合プラットフォーム | サイボウズ(4776) | kintone / Garoon / サイボウズ Office | 国産最大手。kintoneはノーコード業務アプリに進化 |
総合プラットフォーム | ネオジャパン(3921) | desknet's NEO / AppSuite / ChatLuck | オールインワン型。セキュリティ強み |
大企業向け業務基盤 | ドリーム・アーツ(4811) | SmartDB | 大企業特化のノーコードワークフロー |
セキュリティ基盤 | HENNGE(4475) | HENNGE One | Microsoft 365/Google Workspace向けSSO・セキュリティ |
エコシステム拡張 | トヨクモ(4058) | 安否確認サービス2 / kintone連携 | kintoneのエコシステム上で成長 |
エコシステム拡張 | rakumo(4060) | rakumo ワークフロー / カレンダー | Google Workspace/Microsoft 365の機能拡張。M&Aで製品を拡充 |
投資テーマとしてのポイントは、Microsoft 365やGoogle Workspaceが普及するほど、その「上」や「横」で価値を提供する国産ベンダーにも追い風が吹くという共生関係にあることです。以下、各社の詳細を見ていきます。
サイボウズ(4776)——kintone契約4万社・国産グループウェアの盟主
サイボウズ
チームワークを支えるクラウドサービスを開発・提供するソフトウェア企業。業務アプリケーション構築プラットフォーム「kintone」、中堅・大企業向けグループウェア「Garoon」、中小企業向けグループウェア「サイボウズ Office」、メール…
サイボウズは国産グループウェアの最大手で、kintone・Garoon・サイボウズOffice・メールワイズの4製品を展開しています。中でもノーコード業務アプリケーションプラットフォーム「kintone」が成長の柱です。
製品ポートフォリオ
kintone:ノーコードで業務アプリを構築できるプラットフォーム。2025年12月期の売上高は約217億円(前年比+33.9%)。国内の契約企業は2025年12月末に3.9万社、2026年6月末に4万社。東証プライム上場企業の約46%が導入(サイボウズ2025年12月期決算説明会資料、IRグループ面談)
Garoon:中堅・大企業向けグループウェア。2025年12月期の売上高は62億円(前年比+12.2%)
サイボウズ Office:中小企業向けグループウェア。売上高68億円(前年比+18.7%)
業績推移
2025年12月期の連結売上高は374億円(前年比+26.1%)、営業利益は101億円(同+106.4%)と大幅な増収増益を達成しました(サイボウズ 2025年12月期決算短信、2026年2月12日開示)。会社は、2024年11月に実施した価格改定(kintoneのライトコースは1ユーザー月額780円→1,000円など)の効果が大きいと説明しています。2022年12月期には先行投資で営業利益が6億円まで落ち込みましたが、その後は利益率が回復しています。
サイボウズ 連結業績推移
2026年12月期の会社予想は売上高421億円(前年比+12.7%)、営業利益105億円(同+4.1%)です。人員採用・昇給による人件費、国内外の広告宣伝費、データセンターの費用を増やすため、利益の伸びは売上より小さくなる見通しです。中期目標として2028年度に連結売上高509億円(2023年度比2倍)を掲げています(サイボウズ2025年12月期決算短信・決算説明会資料)。
2026年12月期 中間期(2026年8月13日開示):上期累計の売上高は207.8億円(前年同期比+16.1%)、営業利益は59.6億円(同+15.5%)でした。kintoneの上期売上は122.4億円(+19.1%)です。通期予想は据え置きで、営業利益の進捗率は約57%です。5〜7月には自己株式を約30億円(123.8万株)取得しました(サイボウズ 2026年12月期中間期決算短信、IRグループ面談)。
ネオジャパン(3921)——desknet's NEOとAppSuiteで14期連続増収
ネオジャパン
グループウェア『desknet's NEO』を中核とするクラウドサービスの提供企業。業務アプリ作成ツール『AppSuite』、ビジネスチャット『ChatLuck』も展開。北米市場向けSaaS販売やシステムインテグレーションで、エンタープライ…
ネオジャパンは「desknet's NEO」を軸とする国産オールインワン型グループウェアの老舗です。スケジュール・掲示板・ワークフロー・文書管理など27のアプリケーションを標準搭載し、追加費用なしで利用できる点が中堅・中小企業に支持されています。
製品と事業構成
desknet's NEO:クラウド版とオンプレミス版を提供。クラウド版の伸びがソフトウェア事業の成長を牽引
AppSuite:desknet's NEO上で動作するノーコード業務アプリ作成ツール。クラウド版は前年比+30%超の成長
ChatLuck:セキュリティに強みを持つビジネスチャット。オンプレミス版もあり、官公庁・自治体に強い
業績推移
2026年1月期の連結売上高は82.3億円(前年比+13.3%)、営業利益は24.9億円(同+28.0%)を達成し、14期連続の増収と上場来連続増配を継続しています(ネオジャパン 2026年1月期決算短信、2026年3月11日開示)。
利益率を押し上げたのは、2024年9月に実施したクラウド版の値上げ(desknet's NEOは1ユーザー月額400円→600円)です。2026年1月期のdesknet's NEOクラウドの売上は、この価格改定の効果で前年比+24.7%に伸びました。営業利益率は2024年1月期まで20%前後でしたが、2026年1月期は30.3%に上がっています。
ネオジャパン セグメント別売上高推移
値上げの効果が一巡する2027年1月期の会社予想は、売上高86.2億円(前年比+4.7%)、営業利益26.8億円(同+7.3%)と伸びが鈍る見通しです。中期業績目標では、2029年1月期に売上高100億円・営業利益31億円(2026年1月期から年平均7〜8%の伸び)を掲げています。
海外は、ASEAN(マレーシア・タイ・フィリピン)の子会社3社で現地企業への販売を進めています。2026年1月期の海外事業の売上は前期比2.1倍になりましたが、まだ0.8億円規模で赤字です(ネオジャパン 2026年1月期決算短信・決算説明資料)。
2027年1月期 中間期(2026年9月11日開示):上期累計の売上高は42.3億円(前年同期比+6.4%)、営業利益は13.5億円(同+7.9%)でした。AppSuiteクラウドの売上は+37.0%と高い伸びが続いています。通期予想は据え置きで、営業利益の進捗率は約50%です(ネオジャパン 2027年1月期中間期決算短信)。
HENNGE(4475)——クラウドセキュリティで契約3,800社超
HENNGE
企業向けクラウドセキュリティサービス「HENNGE One」を提供するSaaS企業。企業が利用する複数のクラウドサービス(Microsoft 365、Google Workspace等)に対して、横断的なアクセス制御・シングルサインオン・多…
HENNGEは企業向けクラウドセキュリティサービス「HENNGE One」を提供するSaaS企業です。Microsoft 365やGoogle Workspaceなど複数のクラウドサービスに対して、横断的なアクセス制御(SSO:シングルサインオン)、メールセキュリティ、情報漏洩対策を提供しています。
ビジネスモデル——グループウェアの「守り」
HENNGEの成長はMicrosoft 365やGoogle Workspaceの普及と連動しています。企業がクラウドグループウェアを導入するほど、それらのセキュリティを一元管理するニーズが高まるためです。2026年6月末の契約企業数は3,881社(前年同期比+18.0%)に達しています(HENNGE 2026年9月期第3四半期決算短信)。
業績推移
HENNGE 連結業績推移
2025年9月期の売上高は109億円(前年比+30.6%)、営業利益17.9億円(同+76.7%)と高成長が続いています。2026年9月期の会社予想は売上高128億円(+17.5%)、営業利益20.6億円(+14.7%)です(HENNGE 2025年9月期決算短信、2025年11月7日公表)。
2026年9月期 第3四半期(2026年8月4日開示):第3四半期までの累計(9ヶ月)で売上高は93.9億円(前年同期比+17.1%)、営業利益は18.5億円(同+17.4%)でした。ARR(翌期以降も続く見込みの年間契約金額)は125.2億円(+16.7%)です。営業利益は通期予想の9割に達していますが、会社は第4四半期に広告宣伝費を上乗せする計画で、予想は据え置いています(HENNGE 2026年9月期第3四半期決算短信)。
2026年10月2日には、次の3つを同時に発表しました。
公募増資:新株110万株の公募と、オーバーアロットメント(需要に応じた追加売出し)に伴う最大37.2万株の第三者割当で、発行済株式数は最大4.5%増えます。手取りは最大約23.6億円で、HENNGE Oneとブランディングの広告宣伝費、人材採用費に充てます。あわせて創業メンバー3人が138万株を売り出します
プライム市場へ:東証から市場区分の変更の承認を受け、10月20〜22日(株式の受渡期日)にグロースからプライムへ移ります。増資にはプライムの上場基準「純資産50億円以上」を満たす目的もあります
増配:2026年9月期の期末配当予想を3円から8円に引き上げ、年間配当は6円から11円になります
出典:HENNGE「新株式発行及び株式売出しに関するお知らせ」「東京証券取引所プライム市場への上場市場区分変更承認に関するお知らせ」「配当予想の修正(増配)に関するお知らせ」(いずれも2026年10月2日)よりKabuGraph作成
ドリーム・アーツ(4811)・トヨクモ(4058)・rakumo(4060)
ドリーム・アーツ(4811)——大企業特化のSmartDB
ドリーム・アーツ
大企業向けの業務デジタル化クラウドサービスを開発・提供するソフトウェア企業。ノーコード・ローコードで業務アプリケーションを構築できる「SmartDB」を主力製品とし、ワークフロー・Webデータベースを組み合わせた現場主導のDXを推進する。グ…
ドリーム・アーツは従業員1,000名以上の大企業に特化したノーコード・ローコード業務アプリケーションプラットフォーム「SmartDB」を提供しています。ワークフロー(稟議・申請承認)とWebデータベースを組み合わせ、現場主導のDXを支援します。
2025年12月期の売上高は56.5億円(前年比+12.3%)、営業利益は9.7億円(同+26.0%)でした(ドリーム・アーツ 2025年12月期決算短信)。売上の87.5%が継続収入(ストック)で、うちクラウドが79.0%を占める安定した収益基盤が強みです(2025年12月期決算説明資料)。
2026年12月期は中期経営計画の初年度として人材・広告・製品開発に投資するため、営業利益8.65億円(前年比−11.2%)の減益を予想しています。中間期(2026年8月14日開示)は上期累計の売上高29.8億円(前年同期比+6.0%)、営業利益4.8億円(同−20.9%)で、通期予想に対する営業利益の進捗率は55.6%です。ストック比率は90.6%、クラウド比率は83.7%に上がりました。なお、2026年1月に1株を3株に分割し、2月には累進配当(原則として配当を前年より減らさない方針)を導入しています(2026年12月期第2四半期決算説明資料ほか)。
トヨクモ(4058)——kintoneエコシステムの成長株
トヨクモ
トヨクモは、法人向けクラウドサービスを複数展開するSaaS企業。災害時に従業員の安否を確認するクラウドサービス「安否確認サービス2」を主力に、サイボウズ「kintone」の機能を拡張する連携サービス群、社内ナレッジを一元管理するマニュアル作…
トヨクモはサイボウズ「kintone」の機能を拡張する連携サービス群と、災害時の安否確認サービスを展開するSaaS企業です。kintoneの導入企業が拡大するほどトヨクモの潜在顧客も増えるというエコシステム型の成長モデルを持ちます。
2025年12月期の売上高は48.6億円(前年比+54.4%)、営業利益は16.1億円(同+38.1%)と急成長し、6期連続で過去最高益を更新しました(トヨクモ 2025年12月期決算短信)。伸びを押し上げたのは、2024年10月から効き始めたkintone連携サービスの価格改定と、2025年1月に子会社化したプロジェクト・モード(社内wiki・ナレッジ共有ツール「NotePM」)の連結です。
2026年12月期 中間期(2026年8月13日開示):上期累計の売上高は29.3億円(前年同期比+30.5%)、営業利益は12.5億円(同+45.6%)でした。同日に通期予想を上方修正し、売上高60億円(前年比+23.5%)、営業利益21億円(同+30.8%)を見込んでいます。安否確認サービスでの他社からの乗り換え・大型契約と、kintone連携サービスの利用が想定を上回ったためです(トヨクモ 連結業績予想の修正に関するお知らせ)。
rakumo(4060)——Google Workspace・Microsoft 365の拡張ツール
rakumo
rakumoは、グループウェアを拡張・強化するクラウドサービスを提供しています。rakumo ワークフロー、rakumo カレンダー、社内掲示板の rakumo ボード、rakumo キンタイ、rakumo コンタクト、rakumo ケイヒ…
rakumoは、Google WorkspaceやMicrosoft 365に足りない日本企業向けの機能を補うクラウドサービスを提供しています。rakumoワークフロー、カレンダー、キンタイ(勤怠管理)、ボード(社内掲示板)などで、もともとはGoogle Workspace向けでしたが、2025年から「rakumo for Microsoft 365」も出しています(2026年9月にはワークフローのMicrosoft 365版を提供開始)。両社のグループウェアの導入企業が増えるほど、「日本の商習慣に合わせた拡張」の需要が高まる構図です。
2025年12月期の売上高は18.3億円(前年比+26.8%)、営業利益は4.3億円(同+11.6%)です(rakumo 2025年12月期決算短信、2026年2月12日開示)。2022年からM&Aで4社を買収し、社内SNS型日報「gamba!」やWebサイトCMS「STARTRE CMS」など、rakumo以外の製品を加えてきました。2025年12月期はrakumoサービスが+17.3%、買収で加わった製品を含む「その他サービス」が+75.1%でした。営業利益の伸びが小さいのは、M&A関連費用・のれん償却・株式報酬が増えたためです。
2026年12月期 中間期(2026年8月13日開示):上期累計の売上高は11.0億円(前年同期比+36.5%)、営業利益は2.6億円(同+16.3%)でした。rakumoサービスは+15.7%で、売上の約27%を買収した製品などの「その他サービス」が占めます。通期予想は売上高23.3億円、営業利益5.5億円です(rakumo 2026年度中間期決算説明資料)。
グループウェア関連銘柄の投資指標比較
6社の投資指標を一覧で比較します。
銘柄 | コード | 時価総額 | 直近売上高 | PER | PBR | 配当利回り |
|---|---|---|---|---|---|---|
サイボウズ | 4776 | 1,565億円 | 374億円 | 18.2倍 | 7.7倍 | 1.69% |
HENNGE | 4475 | 572億円 | 109億円 | 35.2倍 | 13.5倍 | 0.63% |
トヨクモ | 4058 | 237億円 | 49億円 | 16.7倍 | 5.3倍 | 1.25% |
ネオジャパン | 3921 | 225億円 | 82億円 | 11.9倍 | 2.8倍 | 3.38% |
ドリーム・アーツ | 4811 | 110億円 | 57億円 | 17.0倍 | 3.4倍 | 2.22% |
rakumo | 4060 | 70億円 | 18億円 | 21.9倍 | 3.5倍 | 1.17% |
PERのレンジはネオジャパンの11.9倍からHENNGEの35.2倍まで幅広い分布です(2026年10月2日終値)。ネオジャパンはPER11.9倍・配当利回り3.38%とバリュー寄りで、HENNGEはPER35.2倍と高成長プレミアムが乗っています。サイボウズはPER18.2倍と両者の中間に位置し、売上規模と成長性のバランスが評価されています。
なおHENNGEは、10月下旬の公募増資の払込で自己資本が最大約24億円増えます(6月末は約41億円)。払込後の自己資本で計算すると、PBRは表の値より大きく下がります。
グループウェア関連6社 時価総額比較
投資のリスク——グループウェア市場の注意点
①Microsoft・Googleとの競争激化
最大のリスクはMicrosoft 365とGoogle Workspaceの機能拡張が国産ベンダーの領域を侵食する可能性です。MicrosoftはPower Platformでノーコード・ローコード領域にも進出しており、kintoneやAppSuiteと競合する場面が増えています。キーマンズネットの2025年調査では、グループウェアのリプレースを予定している回答者(全体の10.2%、約20人)の57.1%がMicrosoft 365を移行先に挙げました。一方で、desknet's NEO(23.8%)やサイボウズ Garoon(19.0%)と国産製品も続いています。
②プラットフォーム依存リスク
rakumoはGoogle Workspace(Microsoft 365向けは立ち上げ段階)、トヨクモはkintoneのエコシステムに依存しています。プラットフォーム側のAPI変更や料金体系の改定が収益に直結するため、独立したプロダクトを持つ企業と比べて外部環境への依存度が高い点に留意が必要です。
③SaaS企業共通のバリュエーションリスク
HENNGEのPBR13.5倍やサイボウズのPBR7.7倍(2026年10月2日終値)が示すように、高成長SaaS企業は将来の成長期待を大きく織り込んだ株価水準にあります。成長率の鈍化や利益予想の下方修正があった場合、バリュエーションの調整幅は大きくなりやすい点は共通のリスクです。
④価格改定の両面性
サイボウズは2024年11月にkintoneの価格改定を実施し、ARPA(1契約あたりの月額単価)が向上しています。値上げは短期的にはARPAとマージン改善に寄与する反面、新規獲得のハードルが上がる副作用もあります。実際にサイボウズは、最小契約ユーザー数の引き上げ(5人→10人)もあって新規顧客の獲得社数は緩やかだと説明しています。キーマンズネットの調査(後編)でも「度重なる値上げで負担が大きい」という声が目立ち、小さい会社ほど導入コストを重視しているため、中小企業向けでは影響を注視する必要があります。
値上げの効果はいずれ一巡します。ネオジャパンは2024年9月の値上げの効果が一巡するため、2027年1月期の増収率が+4.7%に下がる見通しです。トヨクモ・rakumoも値上げが最近の伸びを押し上げており、効果が一巡した後の成長率を確かめる必要があります。
まとめ——グループウェア投資テーマの全体像
富士キメラ総研の2022年時点の予測では、グループウェア市場は年平均5%台で伸び、2026年度に約3,475億円規模に拡大する見通しです。利用率の調査ではMicrosoft 365が57%と首位を占めますが、国産ベンダーはMicrosoft/Googleと「競合」ではなく「補完」の関係で成長しているのが投資テーマとしての特徴です。
銘柄選択の軸としては、以下の視点が有効です。
プラットフォーム企業(サイボウズ・ネオジャパン):自社でエコシステムを構築し、kintoneやdesknet's NEOの上に多数のパートナー/拡張サービスが乗る構造。中長期のスイッチングコストが高く、顧客基盤の粘着性がある
セキュリティレイヤー(HENNGE):クラウドサービスの導入が増えるほど需要が拡大する「必需品」型。契約企業数と解約率に注目。2026年10月にプライム市場へ移る
エコシステム参加企業(トヨクモ・rakumo):小型だが成長率が高い。プラットフォームの成長に連動するレバレッジが魅力だが、依存リスクとセットで評価する
バリュー重視(ネオジャパン):PER11.9倍・配当利回り3.38%(2026年10月2日終値)と、SaaS銘柄としては割安。14期連続増収の安定性を評価する投資家向けだが、値上げ効果の一巡で今期の増収率は+4.7%に下がる見通し
テレワーク定着・DX推進・中小企業のクラウド導入余地という構造的な追い風は当面続く見通しであり、グループウェアは「枯れたテーマ」ではなくノーコード・AI・セキュリティを軸に進化を続ける成長テーマです。









