【投資テーマ解説】グループウェア|kintone3.9万社突破・Microsoft 365シェア首位の国内市場と関連銘柄

グループウェアは、メール・スケジュール・ファイル共有・ワークフローなど社内の情報共有基盤を統合するソフトウェアです。国内市場は2026年度に約3,475億円規模に達する見通しで、SaaS型が市場全体の約9割を占めるまでに成長しています(富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場 2025年版」)。
利用率ではMicrosoft 365が57.4%と圧倒的な存在感を示す一方、サイボウズのkintoneは導入3.9万社を突破し、「ノーコード業務アプリ」という新たな市場を開拓しています(キーマンズネット「グループウェアの利用状況(2025年)」、サイボウズ2025年12月期決算説明会資料)。この記事ではグループウェア市場の全体像を整理し、サイボウズ・ネオジャパン・HENNGE・ドリーム・アーツ・トヨクモ・rakumoの6社を投資家目線で解説します。
この記事の内容(目次)
グループウェアとは何か——企業の情報共有インフラ
グループウェアとは、企業内のコミュニケーションと情報共有を効率化するためのソフトウェア群を指します。メール・カレンダー・掲示板・ファイル共有・ワークフロー(稟議申請)・チャットを一つのプラットフォームで提供し、部門間の情報の壁を取り除くことが基本的な役割です。
オンプレミスからクラウドへの移行
かつてのグループウェアはLotus NotesやサイボウズOfficeなど、社内サーバーにインストールするオンプレミス型が主流でした。しかし2020年以降のリモートワーク普及を契機にクラウド(SaaS)型への移行が一気に加速し、現在はSaaS型が市場全体の約9割を占めます。クラウド化によりVPNなしで社外からアクセスでき、サーバー保守が不要になるため、中小企業でも導入のハードルが下がりました。
グループウェアからノーコード・業務アプリへの進化
注目すべきは、近年のグループウェアが従来の「情報共有ツール」から「ノーコード・ローコードの業務アプリケーションプラットフォーム」へと進化している点です。サイボウズのkintoneやネオジャパンのAppSuiteは、プログラミング不要で業務アプリを作成でき、従来はシステム開発が必要だった案件管理や顧客管理などを現場主導で構築できます。この進化がグループウェア市場に新たな成長余地を生んでいます。
国内グループウェア市場の規模とシェア
富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場 2025年版」によると、国内グループウェア市場は2021年度に約2,679億円(SaaS型:約2,401億円、パッケージ型:約278億円)に達し、2026年度にはSaaS型・パッケージ型合計で約3,475億円に拡大する見通しです。年平均成長率は約5.3%と、企業ソフトウェア市場の中でも安定成長カテゴリに位置づけられています。
利用率ランキング——Microsoft 365が過半
キーマンズネットが2025年に実施した調査(有効回答205件)では、グループウェアの利用率は以下の通りでした。
順位 | 製品名 | 利用率 | 備考 |
|---|---|---|---|
1位 | Microsoft 365 | 57.4% | 2020年比+16.9pt |
2位 | Google Workspace | 21.0% | 2020年比+11.5pt |
3位 | サイボウズ Office | 11.1% | 国産首位 |
Microsoft 365とGoogle Workspaceの海外勢が2020年比で大きくシェアを伸ばしており、合計で約78%を占めます。しかし、国産ベンダーにはMicrosoft 365/Google Workspaceと「共存」して成長する独自の戦略があります。サイボウズのkintoneはMicrosoft 365やGoogle Workspaceでは手の届かない「現場の業務アプリケーション構築」に特化し、HENNGEはこれらクラウドサービスのセキュリティ基盤として機能しています。
グループウェア利用率(2025年調査)
クラウド移行が加速する3つの背景
グループウェア市場の成長を支える構造的な追い風を整理します。
①テレワーク・ハイブリッドワークの定着
コロナ禍を経て、多くの企業がハイブリッドワークを恒常的な働き方として採用しています。場所を選ばずに情報共有・業務処理ができるクラウドグループウェアは、もはや「あると便利」ではなく「なければ業務が回らない」インフラとなりました。サイボウズのkintone導入企業が東証プライム上場企業の約46%に達していることがその証左です(サイボウズ2025年12月期決算説明会資料)。
②DX推進とノーコード・ローコード需要
経済産業省の「DX推進ガイドライン」以降、業務プロセスのデジタル化は経営課題の上位に位置づけられています。しかしIT人材の不足がボトルネックとなり、プログラミング不要で業務アプリを構築できるノーコード・ローコードツールへの需要が急拡大しました。kintoneやAppSuite(ネオジャパン)、SmartDB(ドリーム・アーツ)はこの文脈で成長しています。
③中小企業のクラウド導入余地
月額数百円〜千円台の中小企業向けプランが整備されたことで、従業員100名以下の企業でも導入の経済合理性が成立するようになりました。中小企業セグメントはまだ導入率が低く、今後の市場成長の最大のドライバーとなる見通しです。サイボウズのkintone導入企業のうち39.1%が従業員99名以下のSMBセグメントであることが、この市場の厚みを示しています。
グループウェア関連銘柄マップ——4つのカテゴリで整理
日本の上場企業の中からグループウェア関連銘柄を機能・ポジションで4つのカテゴリに分類します。
カテゴリ | 企業名 | 主要プロダクト | 特徴 |
|---|---|---|---|
総合プラットフォーム | サイボウズ(4776) | kintone / Garoon / サイボウズ Office | 国産最大手。kintoneはノーコード業務アプリに進化 |
総合プラットフォーム | ネオジャパン(3921) | desknet's NEO / AppSuite / ChatLuck | オールインワン型。セキュリティ強み |
大企業向け業務基盤 | ドリーム・アーツ(4811) | SmartDB | 大企業特化のノーコードワークフロー |
セキュリティ基盤 | HENNGE(4475) | HENNGE One | Microsoft 365/Google Workspace向けSSO・セキュリティ |
エコシステム拡張 | トヨクモ(4058) | 安否確認サービス2 / kintone連携 | kintoneのエコシステム上で成長 |
エコシステム拡張 | rakumo(4060) | rakumo ワークフロー / カレンダー | Google Workspaceの機能拡張に特化 |
投資テーマとしてのポイントは、Microsoft 365やGoogle Workspaceが普及するほど、その「上」や「横」で価値を提供する国産ベンダーにも追い風が吹くという共生関係にあることです。以下、各社の詳細を見ていきます。
サイボウズ(4776)——kintone3.9万社・国産グループウェアの盟主
サイボウズ
チームワークを支えるクラウドサービスを開発・提供するソフトウェア企業。業務アプリケーション構築プラットフォーム「kintone」、中堅・大企業向けグループウェア「Garoon」、中小企業向けグループウェア「サイボウズ Office」、メール…
サイボウズは国産グループウェアの最大手で、kintone・Garoon・サイボウズOffice・メールワイズの4製品を展開しています。中でもノーコード業務アプリケーションプラットフォーム「kintone」が成長の柱です。
製品ポートフォリオ
kintone:ノーコードで業務アプリを構築できるプラットフォーム。2025年12月期の売上高は約216億円(前年比+35%)。導入企業は国内3.9万社超、東証プライム上場企業の約46%が導入(サイボウズ2025年12月期決算説明会資料)
Garoon:従業員数千〜数万名規模の大企業向けグループウェア。2025年12月期の売上高は62億円(前年比+12.2%)
サイボウズ Office:中小企業向けグループウェア。売上高68億円(前年比+18.7%)
業績推移
2025年12月期の連結売上高は374億円(前年比+26.1%)、営業利益は101億円(同+106.4%)と大幅な増収増益を達成しました(サイボウズ 2025年12月期決算短信、2026年2月12日開示)。2022年12月期には先行投資で営業利益が6億円まで落ち込みましたが、投資回収フェーズに入り利益率が急回復しています。
サイボウズ 連結業績推移
2026年12月期の会社予想は売上高421億円(前年比+12.7%)、営業利益105億円(同+4.1%)と、増収ペースを維持しつつkintone AIなど中長期の成長投資を強化する方針です。中期目標として2028年度に連結売上高509億円(2023年度比2倍)を掲げています(サイボウズ2025年12月期決算説明会資料)。
ネオジャパン(3921)——desknet's NEOとAppSuiteで14期連続増収
ネオジャパン
グループウェア『desknet's NEO』を中核とするクラウドサービスの提供企業。業務アプリ作成ツール『AppSuite』、ビジネスチャット『ChatLuck』も展開。北米市場向けSaaS販売やシステムインテグレーションで、エンタープライ…
ネオジャパンは「desknet's NEO」を軸とする国産オールインワン型グループウェアの老舗です。スケジュール・掲示板・ワークフロー・文書管理など27のアプリケーションを標準搭載し、追加費用なしで利用できる点が中堅・中小企業に支持されています。
製品と事業構成
desknet's NEO:クラウド版とオンプレミス版を提供。クラウド版の伸びがソフトウェア事業の成長を牽引
AppSuite:desknet's NEO上で動作するノーコード業務アプリ作成ツール。クラウド版は前年比+30%超の成長
ChatLuck:セキュリティに強みを持つビジネスチャット。オンプレミス版もあり、官公庁・自治体に強い
業績推移
2026年1月期の連結売上高は82.3億円(前年比+13.3%)、営業利益は24.9億円(同+28.0%)を達成し、12期連続の増収と上場来連続増配を継続しています(ネオジャパン 2026年1月期決算短信、2026年3月11日開示)。ソフトウェア事業が全体をけん引し、desknet's NEOクラウドの売上成長が利益率改善に寄与しています。
ネオジャパン セグメント別売上高推移
長期目標として2030年に売上高100億円(2022年1月期比の年平均成長率6.8%)を掲げています。北米市場向けSaaS販売も開始しており、海外事業の拡大も注目点です(ネオジャパンIR資料)。
HENNGE(4475)——クラウドセキュリティで契約3,700社超
HENNGE
企業向けクラウドセキュリティサービス「HENNGE One」を提供するSaaS企業。企業が利用する複数のクラウドサービス(Microsoft 365、Google Workspace等)に対して、横断的なアクセス制御・シングルサインオン・多…
HENNGEは企業向けクラウドセキュリティサービス「HENNGE One」を提供するSaaS企業です。Microsoft 365やGoogle Workspaceなど複数のクラウドサービスに対して、横断的なアクセス制御(SSO:シングルサインオン)、メールセキュリティ、情報漏洩対策を提供しています。
ビジネスモデル——グループウェアの「守り」
HENNGEの成長はMicrosoft 365やGoogle Workspaceの普及と連動しています。企業がクラウドグループウェアを導入するほど、それらのセキュリティを一元管理するニーズが高まるためです。2026年9月期第2四半期時点で契約企業数は3,731社に達しています(HENNGE 2026年9月期第2四半期決算短信)。
業績推移
HENNGE 連結業績推移
2025年9月期の売上高は109億円(前年比+30.6%)、営業利益17.9億円(同+76.7%)と高成長が続いています。2026年9月期の会社予想は売上高128億円(+17.5%)、営業利益20.6億円(+14.7%)です(HENNGE 2026年9月期通期業績予想)。
ドリーム・アーツ(4811)・トヨクモ(4058)・rakumo(4060)
ドリーム・アーツ(4811)——大企業特化のSmartDB
ドリーム・アーツ
大企業向けの業務デジタル化クラウドサービスを開発・提供するソフトウェア企業。ノーコード・ローコードで業務アプリケーションを構築できる「SmartDB」を主力製品とし、ワークフロー・Webデータベースを組み合わせた現場主導のDXを推進する。グ…
ドリーム・アーツは従業員1,000名以上の大企業に特化したノーコード・ローコード業務アプリケーションプラットフォーム「SmartDB」を提供しています。ワークフロー(稟議・申請承認)とWebデータベースを組み合わせ、現場主導のDXを支援します。
2025年12月期の売上高は56.5億円(前年比+12.3%)、営業利益は9.7億円(同+26.0%)で、クラウド事業の売上比率は77%に達しています(ドリーム・アーツ 2025年12月期決算短信)。ストック比率86.1%と高い経常収益基盤が強みです。
トヨクモ(4058)——kintoneエコシステムの成長株
トヨクモ
トヨクモは、法人向けクラウドサービスを複数展開するSaaS企業。災害時に従業員の安否を確認するクラウドサービス「安否確認サービス2」を主力に、サイボウズ「kintone」の機能を拡張する連携サービス群、社内ナレッジを一元管理するマニュアル作…
トヨクモはサイボウズ「kintone」の機能を拡張する連携サービス群と、災害時の安否確認サービスを展開するSaaS企業です。kintoneの導入企業が拡大するほどトヨクモの潜在顧客も増えるというエコシステム型の成長モデルを持ちます。
2025年12月期の売上高は48.6億円(前年比+54.4%)、営業利益は16.1億円(同+38.1%)と急成長を遂げ、7期連続の過去最高益を更新しています(トヨクモ 2025年12月期決算短信)。2026年12月期中間期も売上高前年比+30.5%と高い成長が継続しています。
rakumo(4060)——Google Workspace拡張の専門家
rakumo
rakumoは、グループウェアを拡張・強化するクラウドサービスを提供しています。rakumo ワークフロー、rakumo カレンダー、社内掲示板の rakumo ボード、rakumo キンタイ、rakumo コンタクト、rakumo ケイヒ…
rakumoはGoogle Workspaceの機能を拡張するクラウドサービスを提供しています。rakumoワークフロー、カレンダー、キンタイ(勤怠管理)、ボード(社内掲示板)など、Google Workspaceに不足する日本企業向け機能を補完します。Google Workspaceの導入企業が増えるほど、「日本の商習慣に合わせた拡張」の需要が高まる構図です。
2025年12月期の売上高は18.3億円(前年比+26.8%)、営業利益は4.3億円(同+11.6%)です(rakumo 2025年12月期決算短信、2026年2月12日開示)。
グループウェア関連銘柄の投資指標比較
6社の投資指標を一覧で比較します。
銘柄 | コード | 時価総額 | 直近売上高 | PER | PBR | 配当利回り |
|---|---|---|---|---|---|---|
サイボウズ | 4776 | 1,549億円 | 374億円 | 18.2倍 | 7.60倍 | 1.70% |
HENNGE | 4475 | 530億円 | 109億円 | 32.1倍 | 12.50倍 | 0.37% |
トヨクモ | 4058 | 245億円 | 49億円 | 17.3倍 | 5.45倍 | 1.21% |
ネオジャパン | 3921 | 222億円 | 82億円 | 11.8倍 | 2.92倍 | 3.43% |
ドリーム・アーツ | 4811 | 105億円 | 50億円 | 16.3倍 | 3.27倍 | 2.31% |
rakumo | 4060 | 69億円 | 18億円 | 21.8倍 | 3.53倍 | 1.18% |
PERのレンジはネオジャパンの11.8倍からHENNGEの32.1倍まで幅広い分布です。ネオジャパンはPER11.8倍・配当利回り3.43%とバリュー寄りで、HENNGEはPER32.1倍と高成長プレミアムが乗っています。サイボウズはPER18.2倍と両者の中間に位置し、売上規模と成長性のバランスが評価されています。
グループウェア関連6社 時価総額比較
投資のリスク——グループウェア市場の注意点
①Microsoft・Googleとの競争激化
最大のリスクはMicrosoft 365とGoogle Workspaceの機能拡張が国産ベンダーの領域を侵食する可能性です。MicrosoftはPower Platformでノーコード・ローコード領域にも進出しており、kintoneやAppSuiteと競合する場面が増えています。キーマンズネットの2025年調査では、リプレース検討先としてMicrosoft 365(57.1%)が最も多く挙げられています。
②プラットフォーム依存リスク
rakumoはGoogle Workspace、トヨクモはkintoneのエコシステムに依存しています。プラットフォーム側のAPI変更や料金体系の改定が収益に直結するため、独立したプロダクトを持つ企業と比べて外部環境への依存度が高い点に留意が必要です。
③SaaS企業共通のバリュエーションリスク
HENNGEのPBR12.5倍やサイボウズのPBR7.6倍が示すように、高成長SaaS企業は将来の成長期待を大きく織り込んだ株価水準にあります。成長率の鈍化や利益予想の下方修正があった場合、バリュエーションの調整幅は大きくなりやすい点は共通のリスクです。
④価格改定の両面性
サイボウズは2024年11月にkintoneの価格改定を実施し、ARPA(ユーザーあたり単価)が向上しています。値上げは短期的にはARPAとマージン改善に寄与する反面、新規獲得のハードルが上がる副作用もあります。キーマンズネットの調査では「AIや派手な機能よりもグループウェアに望むのはコストパフォーマンス」という声が多く、価格感応度の高い中小企業向けでは影響を注視する必要があります。
まとめ——グループウェア投資テーマの全体像
グループウェア市場は年平均5%台の安定成長を続け、2026年度には約3,475億円規模に拡大する見通しです。市場の利用率ではMicrosoft 365が57%と首位を占めますが、国産ベンダーはMicrosoft/Googleと「競合」ではなく「補完」の関係で成長しているのが投資テーマとしての特徴です。
銘柄選択の軸としては、以下の視点が有効です。
プラットフォーム企業(サイボウズ・ネオジャパン):自社でエコシステムを構築し、kintoneやdesknet's NEOの上に多数のパートナー/拡張サービスが乗る構造。中長期のスイッチングコストが高く、顧客基盤の粘着性がある
セキュリティレイヤー(HENNGE):クラウドサービスの導入が増えるほど需要が拡大する「必需品」型。契約企業数と解約率に注目
エコシステム参加企業(トヨクモ・rakumo):小型だが成長率が高い。プラットフォームの成長に連動するレバレッジが魅力だが、依存リスクとセットで評価する
バリュー重視(ネオジャパン):PER11.8倍・配当利回り3.43%と、SaaS銘柄としては割安。14期連続増収の安定性を評価する投資家向け
テレワーク定着・DX推進・中小企業のクラウド導入余地という構造的な追い風は当面続く見通しであり、グループウェアは「枯れたテーマ」ではなくノーコード・AI・セキュリティを軸に進化を続ける成長テーマです。









