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カバー(5253)の企業分析|ホロライブ9,500万登録を軸にTCG・スマホゲームで収益多角化

Cover Photo

カバー(5253)は、世界最大級のVTuber事務所「ホロライブプロダクション」を運営するエンターテインメント企業です。YouTube総チャンネル登録数は9,525万(2026年6月時点)を誇り、日本・英語圏・インドネシアの3地域でタレントを展開しています。

2026年3月期は売上高493億円(前期比+13.7%)と増収基調を維持した一方、営業利益は70.6億円(同-11.8%)と減益に転じました。メタバース「ホロアース」の開発方針転換に伴う32億円の減損処理により、純利益は30.2億円(同-45.7%)と大幅減となっています。

この記事では、カバーの4つの収益源の仕組み、業績推移、ANYCOLORとの比較、投資判断のポイントを、個人投資家の視点からわかりやすく解説します。

会社概要 — VTuber市場を切り拓いた「ホロライブ」の生みの親

カバー株式会社は、代表取締役社長の谷郷元昭氏が2016年に設立したテクノロジー×エンターテインメント企業です。当初はAR/VR技術の開発を手がけていましたが、2017年に「ときのそら」をデビューさせたことでVTuber事業に軸足を移し、「hololive(ホロライブ)」ブランドとして急成長を遂げました。

項目

内容

会社名

カバー株式会社(COVER Corporation)

証券コード

5253(東証グロース)

設立

2016年6月13日

上場

2023年3月27日(東証グロース)

代表取締役社長

谷郷元昭

従業員数

679名(2025年5月時点)

本社

東京都港区三田

セクター

情報・通信業

出典:カバー株式会社 コーポレートサイトよりKabuGraph作成

VR技術のスタートアップからVTuber最大手へ

創業者の谷郷元昭氏は、三井住友銀行やサンゼンエイトを経て起業。当初はAR/VR技術を活用したサービス開発を手がけていましたが、2017年にVTuber「ときのそら」をデビューさせたことが転機となりました。その後、同年に「hololive」ブランドを立ち上げ、2019年にはhololive 3期生(宝鐘マリンら)のデビューで人気が急拡大。コロナ禍での巣ごもり需要も追い風に、2023年3月に東証グロース市場に上場しました(公募価格750円、初値1,750円)。

現在はVTuber事業を中心に、グッズ・ライセンス・ライブイベント・ゲームと収益源を多角化し、「2次元コンテンツ企業から、コンテンツプラットフォーム企業へ」という成長ビジョンを掲げています(カバー 事業ページ)。

カバー株式会社の事業ページ。「バーチャル領域は可能性が無限大」のキャッチコピーが表示されている
出典:カバー株式会社 公式サイト

4つの収益源を理解する

カバーの売上は大きくストリーミング/コンテンツ、マーチャンダイジング、ライブ/イベント、ライセンス/タイアップの4分野で構成されます。2026年3月期の構成比は以下のとおりです。

分野別売上構成比(2026年3月期)

出典:決算説明資料よりKabuGraph作成

ストリーミング/コンテンツ(売上の18.5%)

ホロライブプロダクションの核となるYouTubeでのライブ配信・動画コンテンツが中心です。収益はスーパーチャット(投げ銭)、メンバーシップ(月額課金)、広告収入で構成されます。

hololiveブランドはhololive(日本)、hololive EN(英語圏)、hololive ID(インドネシア)、hololive DEV_ISの4ブランドで構成され、さらに男性VTuberグループ「HOLOSTARS」も展開。2026年6月時点のYouTube総チャンネル登録数は9,525万に達しています(カバー 事業ページ)。

ホロライブプロダクション公式サイト。VTuberタレントのイラストと「想いは、次元を選ばない。」のキャッチコピー
出典:ホロライブプロダクション公式サイト

ただし、FY2026/3のストリーミング収益は91.4億円と前期比-2.0%に。一部タレントの卒業によるコミュニティ構成の変化が影響しています。一方で、2023年以降にデビューした新タレントの収益は前年比2倍に伸びており、世代交代は進みつつあります。

マーチャンダイジング(売上の48.2%)

売上の約半分を占める最大セグメントです。公式オンラインショップでのグッズ販売に加え、2024年9月に発売した「hololive OFFICIAL CARD GAME」(TCG)が大ヒットし、成長を牽引しました。TCGはブシロードとの協力のもと国内外で展開され、累計2,000万パック以上を販売。北米での流通拡大も進んでいます。

ホロライブプロダクション公式ショップ。ねんどろいど兎田ぺこらなどのグッズが並ぶ
出典:hololive production OFFICIAL SHOP

FY2026/3の当分野の売上高は237.5億円(前期比+15.6%)。ただしQ1 FY2027/3では45.5億円(同-22.1%)と減収に転じました。TCGの新商品発売スケジュールの違い、卒業タレント関連商品の剥落、ECの製造・販売オペレーション移行に伴う欠品が主因です。

ライブ/イベント(売上の18.8%)

アリーナ級の大型会場でのリアルライブコンサートやワールドツアー、「hololive SUPER EXPO」などの大規模イベントを展開しています。FY2026/3は92.5億円(前期比+18.7%)と堅調に成長。Q1 FY2027/3でも前年同期比+109.6%と大幅に伸長しており、過去のライブ映像の二次販売も収益に貢献しています。

ライセンス/タイアップ(売上の14.6%)

企業とのブランドコラボレーション、ホロライブIPのライセンス供与、ゲームへの出演などが含まれます。FY2026/3は72.0億円(前期比+25.3%)と4分野中最も高い成長率を記録。北米・東アジアを中心に海外での取引が拡大しています。

新たな成長エンジン「hololive Dreams」

2026年7月23日に全世界同時リリースされたホロライブ初の公式スマホゲーム「hololive Dreams」(ホロドリ)は、QualiArtsとの共同開発によるリズム&RPGです。54名のホロライブタレントが登場し、iOS、Android、Steamで配信。リリース初日に100万ダウンロードを突破し、累計200万ダウンロードを超え、期初計画を大幅に上回っています(カバー プレスリリース)。

hololive Dreams公式サイト。ホロライブタレントが集合したメインビジュアルとApp Store/Google Play/Steamのダウンロードリンク
出典:hololive Dreams 公式サイト

業績推移と財務分析

カバーの売上高はIPO前の2023年3月期から3期連続で増収を続けています。一方、利益面ではFY2026/3で増収減益に転じ、収益性の転換点を迎えています。

通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率・売上高成長率)

出典:決算短信よりKabuGraph作成。2027/3期は会社予想

FY2026/3は増収減益 — 3つの逆風

FY2026/3の売上高493.3億円(+13.7%)に対し、営業利益は70.6億円(-11.8%)、純利益は30.2億円(-45.7%)と利益面は厳しい結果でした。主な要因は3つです。

  1. 米国関税リスクによる海外EC売上の減速 — 米国の通商政策変更に伴い、海外向けグッズのEC売上が縮小しました。

  2. タレント構成の変化による配信・自社EC売上の調整 — 一部の主力タレントの卒業に伴い、ストリーミング収益は前期比-2.0%に。関連グッズの売上も剥落しています。

  3. ホロアース関連の減損処理(31.99億円) — メタバースプロジェクトの方針転換に伴い、ソフトウェア資産を全額減損。これが純利益を大きく押し下げました。

FY2027/3 Q1の進捗 — スロースタートの評価

2027/3期Q1(2026年4-6月期、2026年8月12日開示)は、売上高88.3億円(前年同期比-8.3%)、営業利益6.5億円(同-33.0%)と減収減益でのスタートとなりました。通期予想に対する売上高の進捗率は17.2%(営業利益は9.3%)と低水準です。

分野

Q1売上

前年同期比

備考

ストリーミング

20.9億円

-3.8%

タレント構成変化

マーチャンダイジング

45.5億円

-22.1%

TCG発売時期差・EC欠品

ライブ/イベント

9.1億円

+109.6%

大型イベント増加

ライセンス/タイアップ

12.8億円

+8.2%

海外取引拡大

出典:2027年3月期 第1四半期決算短信よりKabuGraph作成

マーチャンダイジングの落ち込みが全体を引き下げた形ですが、Q2以降はhololive Dreams(7月23日リリース、200万DL超)の収益貢献が加わるため、会社は通期予想を据え置いています。Q1の進捗率が低いからといって即座に未達を意味するわけではなく、Q2以降の巻き返しがカギです。

株価指標の現在地

2026年9月5日時点の株価は1,667円、PER 36.3倍、PBR 5.48倍、時価総額1,094億円です。配当はなく、ROEは15.1%。なお、2026年5月に取締役会で決議した30億円・187万株の自社株買い(発行済株式の4.6%)を6月に完了しており、配当こそないものの資本還元の姿勢は示しています。会社予想EPSベースでは予想PERは約22倍に低下しますが、Q1の減収傾向が続けば業績修正の可能性もあり、現時点では割安とは言い切れません(出典:東証株価・決算短信よりKabuGraph算出、2026年9月5日時点)。

ANYCOLOR(にじさんじ)との比較 — 「収穫」と「種まき」

VTuber銘柄を検討する際、カバーとANYCOLOR(5032、「にじさんじ」運営)の比較は避けて通れません。両社は同じVTuber市場の二大勢力でありながら、経営戦略は大きく異なります。

指標

カバー(FY2026/3)

ANYCOLOR(FY2026/4)

売上高

493.3億円

556.8億円

営業利益

70.6億円

201.7億円

営業利益率

14.3%

36.2%

純利益

30.2億円

140.9億円

ROE

15.1%

52.3%

PER

36.3倍

12.7倍

時価総額

1,094億円

1,798億円

配当

無配(自社株買い30億円実施)

75円(利回り2.55%)

出典:東証株価・決算短信よりKabuGraph算出(カバーは2026年9月5日時点、ANYCOLORは同日時点)。決算期が1ヶ月異なる(カバー3月期、ANYCOLOR4月期)

利益率の差はなぜ生まれるのか

両社の営業利益率の差(カバー14.3% vs ANYCOLOR 36.2%)は、経営戦略の違いを如実に反映しています。

  • ANYCOLOR(=「収穫」型) — 海外事業を縮小し、国内のコア事業に経営資源を集中。高い利益率と株主還元(初配当75円)で「稼ぐ力」を示す戦略

  • カバー(=「種まき」型) — COVER USA設立による海外展開の加速、hololive Dreamsへの開発投資、mekPark(新タレント育成)など、将来の成長に向けた先行投資を優先。短期の利益率を犠牲にしている

どちらが優れているという話ではなく、フェーズの違いです。カバーへの投資は「先行投資が将来の収益につながる」というシナリオへの賭けであり、PER 36.3倍という評価はそれを織り込んでいます。逆に、投資が実を結ばなければANYCOLORとの時価総額差(700億円)はさらに開くリスクがあります。

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ANYCOLOR

VTuberグループ「にじさんじ」を運営するエンターテインメント企業。所属VTuberがYouTube等でライブ配信を行い、視聴者との双方向コミュニケーションを通じたファンコミュニティの形成を事業の中核とする。グッズ販売、音楽ライブ、タイア…

投資家が注目すべきポイント

成長ドライバー

  1. hololive Dreamsの収益化 — 200万DL超の滑り出しは好調。ガチャ型のリカーリング収益が加わることで、グッズ販売に偏った収益構造の改善が期待されます。Q2以降の課金動向(ARPU、継続率)が最初のチェックポイントです。

  2. TCGの海外拡大 — 国内では累計2,000万パック超のヒット商品に成長。北米での流通拡大が進めば、マーチャンダイジング分野の次の成長ドライバーとなります。

  3. 新タレント育成(mekPark) — トレーニー制度から「UNIT B Pre-Debut」(YouTube登録10.3万)や「ACHRORA」(同5.4万)がプレデビュー。タレントの卒業リスクを緩和する「パイプライン」として機能するかが注目されます。

  4. ライブ/イベントの拡大 — アリーナ級会場でのコンサートやワールドツアーが拡大中。Q1 FY2027/3は前年同期比+109.6%と全分野中最も高い成長率を記録しました。

リスク要因

  1. タレント依存と卒業リスク — VTuber事業はタレント個人の人気に依存するビジネスです。主力タレントの卒業は配信収益・グッズ売上・ファンコミュニティに直接響きます。FY2026/3のストリーミング減収はこのリスクの現実化です。

  2. 先行投資の回収不確実性 — hololive Dreams、海外展開、mekParkなど複数の成長投資が利益率を圧迫しています。ホロアースで32億円の減損が発生したように、すべての投資が実を結ぶとは限りません。

  3. 関税・為替リスク — 米国の関税政策が海外向けグッズ販売に影響を与えています。海外売上比率の上昇に伴い、地政学・通商リスクへの感応度が高まっています。

  4. 無配の継続 — 上場以来無配が続いています。2026年5-6月に30億円(発行済の4.6%)の自社株買いを実施し、資本還元の意思は示しましたが、ANYCOLORがFY2026/4に75円の初配当を実施したことと比べると株主還元の差は歴然です。成長投資が一巡するまで配当開始は見込みにくい状況です。

まとめ — 「コンテンツプラットフォーム企業」への進化を見極める局面

カバーは、VTuber事業を中核にTCG・スマホゲーム・ライブ・ライセンスと収益源を広げる「コンテンツプラットフォーム企業」への転換を進めています。YouTube総登録9,525万という世界最大級のファンベースは他社が簡単に再現できない参入障壁であり、IP価値の源泉です。

一方で、FY2026/3は増収減益、Q1 FY2027/3も減収減益と利益面は踊り場にあります。ホロアースの32億円減損という「失敗」を経て本業集中を打ち出したこと自体は前向きですが、PER 36.3倍という評価にはhololive Dreamsの収益化やTCGの海外拡大が着実に進むことが織り込まれています。

ANYCOLORとの比較では「収益性のANYCOLOR、成長投資のカバー」という構図が鮮明です。どちらのシナリオに賭けるかは投資家の時間軸次第。短期の利益を重視するならANYCOLOR、VTuber市場のグローバル化と収益多角化に中長期で賭けるならカバーという選択肢になるでしょう。

次のチェックポイントは2026年11月予定のQ2決算。hololive DreamsのQ2売上とマーチャンダイジングの回復が確認できれば、通期予想の達成確度が大きく高まります。

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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