ベイカレント(6532)の企業分析|売上+27.8%・ROE35.8%、11期連続最高益のDXコンサルティング急成長企業

ベイカレント(6532)は、日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するITコンサルティング企業です。2026年2月期は売上高1,483億円(前期比+27.8%)、営業利益509億円(+19.5%)、純利益378億円(+23.0%)で、最終利益ベースで11期連続の過去最高益を更新しました。2027年2月期の計画を達成すれば12期連続となる見通しです。
売上高は6年間で4.5倍、CAGR(年平均成長率)は約28%と日本のコンサルティング業界で突出した成長を続けています。ROE35.8%・営業利益率34.3%という高い資本効率と、DX+生成AI需要の追い風を背景に、2027年2月期も営業利益+27.2%・純利益+27.1%の増益を計画しています。2026年7月開示の第1四半期(3ヶ月)は売上収益+29.9%と計画を上回るペースで滑り出しました。
この記事の内容(目次)
会社概要 — ワンプール制のDXコンサルティング
項目 | 内容 |
|---|---|
会社名 | 株式会社ベイカレント(BayCurrent, Inc.) |
証券コード | 6532(東証プライム) |
本社 | 東京都港区麻布台一丁目3番1号 |
代表者 | 代表取締役会長兼社長 阿部 義之 |
総社員数 | 6,768名(2026年2月期末、決算説明会資料の総社員数) |
コンサルタント数 | 5,590名(2026年2月期末) |
決算期 | 2月 |
時価総額 | 約1.16兆円(2026年9月15日終値7,710円×発行済株式数150,227,210株。2026年8月19日の自己株式消却後ベース) |
ベイカレントはコンサルティング事業の単一セグメントで運営されています。最大の特徴は「ワンプール制」と呼ばれる組織体制です。通常のコンサルティングファームではインダストリー(業界)別にチームが固定されますが、ベイカレントはコンサルタントを一つのプールで管理し、案件ごとに最適なメンバーをアサインします。これにより稼働率を高く維持し、人材の柔軟な活用を実現しています。
売上高・営業利益推移
成長ドライバーと競争力の分析
DX+生成AIコンサルティングの需要拡大
日本企業のDX投資は構造的な拡大フェーズにあります。さらに2023年以降は生成AI(ChatGPT、Copilot等)の活用支援という新たなコンサルティング需要が加わっています。ベイカレントは戦略策定からシステム設計・導入まで一気通貫で支援できる点が強みであり、DXに加えて生成AI関連を中心としたコンサルティング需要が案件数の増加を牽引しています。FY2026の案件数はYoY+20.7%増、通期の平均稼働率も想定レンジ(80〜90%)内の80%台半ばで着地しました(出典:ベイカレント FY2026 通期 決算説明会資料)。
2026年7月開示の2027年2月期第1四半期では、DX/AIに加えてサイバーセキュリティ・防衛領域で新たな需要が顕在化したと会社は説明しています。両領域を合わせてFY2028にかけて売上全体の約10〜20%へ拡大する見込みです(DX/AIは引き続き全体の50〜60%程度。出典:ベイカレント FY2027 1Q 決算補足資料)。
サイバーセキュリティ:主要大手金融機関を中心に、セキュリティ・リスクアセスメント、脆弱性診断・ペネトレーションテスト、セキュリティガバナンス強化など
防衛:政府・重工系大手を中心に、装備品の生産能力増強・工程管理、部品調達のサプライチェーンマネジメント、官公庁・防衛関連企業が関与する大規模プロジェクトの推進など
コンサルタント数の伸びはFY2026に鈍化、FY2027は回復へ
コンサルタント数は5,590名(FY2026/2期末)で、前年期末4,784名から+806名(+16.8%)の増加。FY2023〜FY2025は毎年+25〜30%前後のペースで増えていたので、伸びははっきり鈍化しました。会社は「例年の営業体制の強化に加えて、将来的な成長に向けた組織強化を目的とした人材再配置を実施したため、コンサルタント数は例年より緩やかな伸びとなったが、概ね計画通り着地した」と説明しています。
FY2027期末は約7,000名(YoY+約25%)への回復を計画しています。ベイカレントの成長は「コンサルタント数 × 一人当たり売上」で決まるシンプルな構造であり、人材の質を維持しながら量を拡大できるかが成長持続のカギです。FY2026は一人当たり売上が計画を約4%上振れて着地しており、人数の伸びが鈍化した分を単価面で補った格好です。
コンサルタント数の推移(各期末)
回復は第1四半期から始まっています。2027年2月期第1四半期末(2026年5月末)のコンサルタント数は5,676名(前年同期比+19.0%、OJT中の新卒社員は未算入)、総社員数は7,812名(+28.4%)でした。会社は第2四半期末に6,100〜6,300名(+26〜30%)を見込んでおり、当期入社の新卒約710名のうち550名前後が第3四半期にかけてコンサルタントに算入される予定です。
日本のコンサルティング市場における位置づけ
日本のコンサルティング市場にはアクセンチュア(日本法人は約3万人、2026年6月時点)、デロイト トーマツ、PwC、BCG等のグローバルファームが存在します。ベイカレントは「日本発の独立系総合ファーム」として差別化しており、日本企業の経営層との直接的なリレーション構築に強みがあります。売上1,483億円は国内ファームとしてはトップクラスです。
業績推移と財務分析
通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率)
売上高は6年間で4.5倍(330億→1,483億円)に成長し、営業利益率は30%台後半を維持。FY2026で利益率が34.3%に低下していますが、これは大量採用による人件費増が先行しているためです。会社計画ではFY2027の営業利益率も34.1%(EBITDAマージン35.0%)と横ばいで、採用・育成投資を続ける間は利益率の回復を見込んでいません。
会社は中期経営計画で、2029年2月期に売上収益2,500億円(FY2024〜FY2029のCAGR約20%)とEBITDAマージン30〜40%の維持を目標に掲げています。利益率の水準を守りながら人員を増やし続けられるか、が中計達成のカギです。
主要経営指標
指標 | FY2025/2 | FY2026/2 | FY2027/2(予) |
|---|---|---|---|
売上高 | 1,161億円 | 1,483億円 | 1,900億円 |
営業利益率 | 36.7% | 34.3% | 34.1% |
ROE | 36.5% | 35.8% | — |
EPS | 202.16円 | 249.16円 | 323.79円 |
配当金 | 62円 | 100円 | 130円 |
2027年2月期 第1四半期:売上+29.9%と加速、利益率は先行投資で低下
2026年7月15日開示の第1四半期(2026年3〜5月、3ヶ月)は、売上収益445.8億円(前年同期比+29.9%)と通期計画の+28.1%を上回る伸びで滑り出しました。一方、営業利益は144.8億円(+18.6%)にとどまり、営業利益率は前年同期の35.6%から32.5%へ低下しています。
項目(3ヶ月) | 1Q FY2027/2 | 1Q FY2026/2 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
売上収益 | 445.8億円 | 343.1億円 | +29.9% |
営業利益 | 144.8億円 | 122.1億円 | +18.6% |
営業利益率 | 32.5% | 35.6% | −3.1pt |
EBITDA | 148.9億円 | 124.6億円 | +19.5% |
純利益 | 107.3億円 | 90.2億円 | +19.0% |
EPS | 70.99円 | 59.32円 | +19.7% |
コンサルタント数(期末) | 5,676名 | — | +19.0% |
売上を押し上げたのは案件数(+21.2%)とコンサルタント一人当たり売上(+5.9%)の両方で、後者は計画を上振れました。一方で費用は、採用・育成投資に加えてサイバーセキュリティ・防衛領域の需要を取り込むための先行投資で計画を上回りました。会社は「先行投資は概ね完了しており、2Q以降は徐々に利益成長が加速する」として、通期予想(売上1,900億円・営業利益648億円・純利益481億円・配当130円)を据え置いています。
株主還元:300億円の自社株買いと消却
株主還元方針は「IFRSベースの配当性向40%を目安とし、余剰キャッシュは自社株買いを中心に還元する」というものです。FY2026下期以降の株価下落が業績と乖離しているとして、会社は2026年3月に上限300億円の自社株買いを決め、7月末までに使い切りました。
2026年3月18日:自己株式取得を決議(上限660万株・300億円、取得期間2026年4月15日〜7月31日)
2026年7月31日:取得終了。累計5,184,200株・取得価額299億9,883万円
2026年8月19日:取得した全数を消却。発行済株式総数は155,411,410株から150,227,210株へ(−3.3%)
FY2027の予想EPS323.79円は前期比+30.0%で、純利益の+27.1%を上回ります。この差は自社株買いによる株数減を織り込んでいるためで、EPS成長率は利益成長率に還元分が上乗せされた数字として読む必要があります(出典:自己株式の取得状況及び取得の終了並びに自己株式の消却に関するお知らせ 2026年8月6日、FY2026 通期 決算説明会資料)。
投資家が注目すべきポイント
強み① 11期連続最高益のトラックレコード
最終利益ベースで11期連続で過去最高益を更新し続けている実績(2027年2月期の計画達成で12期連続)は、事業モデルの持続可能性を証明しています。コロナ禍でもDX需要の加速により成長を維持し、景気変動に対する一定の耐性を示しました。
強み② アセットライトモデルの高収益構造
コンサルティング業は設備投資がほぼ不要で、売上の大部分が人件費とコンサルタントへの報酬で構成されるアセットライトモデルです。このため、売上が増えると利益がほぼそのまま増加するレバレッジが効きます。ROE35.8%はこの構造から生まれています。
リスク① 急拡大による品質・離職率リスク
総社員数はFY2026/2期末で前年比+1,352名(+25.0%)、2027年2月期第1四半期末には7,812名(前年同期比+28.4%)とさらに加速しています。コンサルティングファームは人材の質が直接サービス品質に反映されるため、急拡大に伴う育成の遅れや離職率の上昇は重大なリスクです。特に経験者採用市場はアクセンチュアやBIG4ファームとの争奪戦が激しく、人件費の上昇圧力も存在します。
リスク② 国内DX投資の天井
売上の大部分が日本国内に依存しており、グローバルファームと比較して地域集中度が高い構造です。日本企業のDX投資が一巡する局面が到来すれば、成長率の鈍化は避けられません。海外展開の計画は現時点では限定的です。
まとめ
ベイカレントは、DX+生成AI需要の構造的な追い風に乗り、売上CAGR約28%・最終利益ベースで11期連続最高益を更新し続ける日本を代表する急成長コンサルティングファームです。ワンプール制による高稼働率、アセットライトモデルの高収益性、そして生成AIに加えてサイバーセキュリティ・防衛領域へ広がるコンサルティング需要は、当面の成長を支える強力なドライバーです。
一方で、PER30.9倍(2026年9月15日終値7,710円、FY2026/2実績EPS249.16円ベース。FY2027/2予想EPS323.79円では23.8倍)の高バリュエーション、大量採用による品質維持リスク、国内集中の地域リスクは慎重に考慮すべきポイントです。第1四半期は売上+29.9%と計画を上回って滑り出した一方、営業利益率は32.5%に低下しており、FY2027の売上1,900億円(+28%)・営業利益648億円(営業利益率34.1%)の達成状況が投資判断の重要な確認点となります。
ベイカレント
日本最大級の総合経営コンサルティングファーム。戦略立案・デジタルトランスフォーメーション(DX)・オペレーション改革まで、経営課題の上流から実行支援までを一貫して提供する。製造・金融・通信・ヘルスケアなど幅広い業界の大手企業にサービスを展開…










