メザニンファイナンスとは|シニアローンとエクイティの間を埋める「中二階」の資金調達

メザニンファイナンスは、銀行借入(シニアローン)と株式(エクイティ)の中間に位置する資金調達手法です。「メザニン(mezzanine)」はイタリア語で「中二階」を意味し、返済順位がシニアローンより低くエクイティより高いことから、資本構成の中二階にたとえられます。
代表的な形態には劣後ローン・優先株式・転換社債(CB)があり、LBO(レバレッジドバイアウト)や事業承継、成長投資の資金調達で「シニアローンだけでは足りないが、株式の希薄化は避けたい」という場面で活用されます。日本ではDBJ(日本政策投資銀行)やメガバンク系ファンドが主要な供給者で、2019年以降に残高が急拡大しました。本記事ではメザニンの仕組みと種類、シニアローンとの違い、LBOでの役割を体系的に解説します。
この記事の内容(目次)
メザニンファイナンスの定義と語源
メザニンファイナンスとは、負債(デット)と資本(エクイティ)の中間的な性質を持つ資金調達の総称です。
「メザニン」の語源はイタリア語の「mezzanino(中二階)」で、建築用語としては1階と2階の間に設けられた中間フロアを指します。金融の文脈では、資本構成(キャピタルストラクチャー)においてシニアローン(1階)とエクイティ(2階)の間に位置するファイナンスをメザニンと呼びます。
メザニンの基本的な特徴
返済順位がシニアローンより低い——会社が破綻した場合、シニアローンの債権者に全額返済された後にはじめてメザニンの出し手に資金が戻る
リスクが高い分、金利・配当が高い——シニアローンに比べ高いスプレッド(上乗せ金利)が設定されるため、ミドルリスク・ミドルリターンの投資商品になる
株式の希薄化を抑えられる——劣後ローン型であれば議決権は発生せず、優先株式型でも議決権を制限できるため、既存株主の持分を守りやすい
シニアローンとは——返済順位の最上位に立つ融資
シニアローン(Senior Loan)は、資本構成のなかで返済順位が最も高い借入金です。主に銀行が貸し手となり、対象企業の資産に第一順位の担保権を設定します。債務者が破綻した場合、シニアローンの債権者は他のすべての債権者よりも先に弁済を受けるため、「最も安全な貸出」に位置づけられます。
シニアローンの主な特徴
項目 | 内容 |
|---|---|
返済順位 | 最上位(第一順位) |
主な貸し手 | 銀行(メガバンク・地方銀行) |
担保 | 対象会社の資産に第一順位の担保権を設定 |
金利水準 | 相対的に低い(基準金利+スプレッド) |
コベナンツ | 財務制限条項(DSCR・レバレッジ比率等)が厳格に設定される |
返済方法 | 分割返済(アモチゼーション)が一般的 |
シニアローンは金利が低い代わりに審査が厳格で、コベナンツ(財務制限条項)が多数付されます。借入企業が一定の財務指標(DSCR:元利金返済カバー率、ネットデット/EBITDAレシオ等)を維持できない場合は期限の利益を喪失し、繰上返済を求められることがあります。コベナンツの詳細は下記の記事で解説しています。

コベナンツとは|財務制限条項の種類・抵触時のペナルティと有報開示ルール
コベナンツ(財務制限条項)の意味を初心者向けに解説。純資産維持・レバレッジ比率など財務コベナンツの種類、抵触時の期限の利益喪失、LBOローンでの役割、2024年施行の有価証券報告書開示義務まで網羅します。
資本構成のウォーターフォール——返済順位の全体像
企業が破綻した際に誰が先に弁済を受けるかを示す「ウォーターフォール(返済の滝)」の構造を理解することが、メザニンの位置づけを知る鍵です。返済順位が高いほどリスクが低く、リターン(金利・配当)も低くなります。
返済順位 | 資金の種類 | リスク | 期待リターン | 主な出し手 |
|---|---|---|---|---|
1(最優先) | シニアローン | 低 | 低(基準金利+数%) | 銀行 |
2 | メザニン(劣後ローン) | 中 | 中(シニア+数%の上乗せ) | メザニンファンド・政策投資銀行 |
3 | メザニン(優先株式) | 中〜高 | 中〜高(配当+エクイティキッカー) | メザニンファンド・政策投資銀行 |
4(最劣後) | エクイティ(普通株式) | 高 | 高(キャピタルゲイン) | PEファンド・事業会社 |
上の表のとおり、メザニンは「ローリスク・ローリターンのシニアローン」と「ハイリスク・ハイリターンのエクイティ」のちょうど中間、ミドルリスク・ミドルリターンの投資になります。投資家にとっては、シニアローンより高い利回りを得つつ、エクイティほどのリスクは取りたくない場合の受け皿になります。
なお、シニアとメザニンの返済順位は法律だけでなく契約で決まります。メザニンレンダーは「劣後特約」によって自らシニアローンより弁済順位を下げることを約束し(破産法99条「約定劣後破産債権」として法的に有効)、LBOファイナンスではシニアレンダー・メザニンレンダー・スポンサー間で「債権者間契約(Intercreditor Agreement)」を締結して、担保の実行順序や回収金の配分ルールを細かく取り決めます。
メザニンの3つの主要形態
メザニンファイナンスには複数の形態がありますが、実務で使われるのは主に次の3つです。それぞれ法的性質や税務上の扱いが異なるため、案件の目的に応じて使い分けられます。
劣後ローン(Subordinated Loan)
劣後ローンは、返済順位がシニアローンに劣後する借入金です。法的には「債権」であり、会社が破綻した場合はシニアローンの全額返済後に弁済を受けます。
税務メリット:支払利息は損金算入できるため、優先株式の配当より税務的に有利
手続きが迅速:株式発行に必要な定款変更や株主総会決議、債権者異議手続きが不要
金利上限あり:利息制限法により年15%が上限(元本100万円以上の場合)。優先株式には配当率の法的上限がないため、ハイリターンを狙うならこちらが制約になる
貸金業登録が必要:メザニンレンダー(出し手)は貸金業法上の登録が必要
劣後ローンは劣後債の一種でもあります。劣後債全般の仕組みは下記の記事で詳しく解説しています。

劣後債とは|弁済順位の仕組みからAT1債・クレディスイス全損事例まで解説
劣後債(劣後特約付社債)の意味と仕組みを弁済順位の図解で解説。期限付劣後債・永久劣後債・AT1債の違い、バーゼルIIIの自己資本規制との関係、クレディ・スイスAT1債の全損事例、個人投資家のリスクまで網羅します。
優先株式(Preferred Stock)
優先株式は、配当と残余財産の分配で普通株式に優先する種類株式です。議決権を制限することが可能であり、経営権の希薄化を最小限に抑えながら資本性の資金を調達できます。
エクイティキッカー:新株予約権(ワラント)が付与される場合があり、株価上昇時のキャピタルゲインで投資リターンを上乗せできる
資本性が高い:バランスシート上は資本として計上されるため、格付機関から自己資本として一定の評価を受け、信用力の補強効果がある
手続きに時間がかかる:定款変更(株主総会の特別決議)と1ヶ月以上の債権者異議手続期間が必要で、劣後ローンより実行まで時間を要する
転換社債型新株予約権付社債(CB)
CB(Convertible Bond)は、一定の条件で株式に転換できる社債です。発行時は社債(負債)として扱われますが、転換権の行使により株式(資本)に変わるため、デットとエクイティの双方の性質を持ちます。株価が上昇すれば転換権を行使してキャピタルゲインを得られ、下落しても社債として元本返済を受けられるのが投資家にとっての魅力です。
3形態の比較表
劣後ローン | 優先株式 | 転換社債(CB) | |
|---|---|---|---|
法的性質 | 債権(負債) | 株式(資本) | 社債→転換後は株式 |
破綻時の回収順位 | シニアの次 | 劣後ローンの次 | 転換前は社債、転換後は株式と同列 |
税務上の扱い | 利息は損金算入可 | 配当は損金不算入 | 利息は損金算入可 |
手続き期間 | 短い(契約のみ) | 長い(定款変更+債権者異議期間) | 中程度(取締役会決議で発行可能) |
リターンの上限 | 年15%(利息制限法) | なし(キッカー次第で青天井) | 転換益は株価次第 |
BS上の区分 | 負債(ただし資本性を認定される場合あり) | 資本 | 転換前は負債 |
LBOにおけるメザニンの役割
メザニンファイナンスが最も頻繁に使われるのがLBO(レバレッジドバイアウト)の場面です。LBOでは買収対象企業の資産やキャッシュフローを担保に資金を調達するため、自己資金の何倍もの規模の買収を実行できます。
LBOの典型的な資金構成
たとえば500億円の買収資金が必要な場合、典型的な構成は次のようになります。
LBOにおける資金調達構成の例(買収金額500億円)
上の例では、シニアローン300億円(60%)+メザニン100億円(20%)+エクイティ100億円(20%)で500億円を調達しています。メザニンがなければ、PEファンドはエクイティの拠出額を200億円(40%)に増やすか、買収自体を断念しなければなりません。
メザニンがLBOにもたらす3つの効果
買収規模の拡大:シニアローンの限界を超える部分をメザニンで埋めることで、PEファンドは自己資金の何倍もの買収を実行できる
エクイティリターンの向上:自己資金の比率を抑えられるため、レバレッジ効果で投資リターン(IRR・MOIC)が高まる
リスクの階層化:リスク許容度の異なる投資家層にそれぞれ適したリスク・リターンの商品を提供できる
LBOの仕組み全体(SPCの設立から合併まで)については、下記の記事で4段階に分けて解説しています。

LBO(レバレッジドバイアウト)とは|買収対象の信用力で資金を調達するM&A手法
LBO(Leveraged Buyout)の仕組みをSPC設立から合併までの4段階で図解。シニアローン・メザニン・エクイティの資金構造、コベナンツ、ソフトバンク×ボーダフォン等の事例、MBOとの違いまで解説します。
シニアローンとメザニンの比較
シニアローンとメザニンの違いを投資家目線で整理します。
シニアローン | メザニン | |
|---|---|---|
返済順位 | 最優先 | シニアに劣後 |
担保 | 第一順位の担保権 | 第二順位、または無担保 |
金利水準 | 低い | 高い(シニアの2〜4倍程度) |
返済方法 | 分割返済(アモチ)が中心 | 満期一括(ブレット)が多い |
コベナンツ | 厳格(財務維持・情報開示義務) | シニアより緩やかなことが多い |
主な貸し手 | メガバンク・地銀 | メザニンファンド・DBJ・保険会社 |
期間 | 5〜7年程度 | 7〜10年程度(シニアより長い) |
メザニンの返済方法が「満期一括(ブレット)」であることは重要なポイントです。期中のキャッシュフローはシニアローンの分割返済に充てられ、メザニンは満期時に一括で返済されるため、借入企業にとっては期中の資金繰り負担を軽減できます。一方で、メザニンの出し手は満期まで元本の回収を待つ必要があり、信用リスクの期間が長くなります。
メザニンファイナンスのメリットとデメリット
調達側(借り手企業)のメリットとデメリット
メリット | デメリット |
|---|---|
経営権の希薄化を抑えて資金を調達できる | シニアローンより金利・配当が高い |
シニアローンだけでは賄えない資金不足を埋められる | コベナンツや財務報告義務が追加される |
格付機関から一定の資本性評価を受けられる(優先株式の場合) | エクイティキッカーにより将来的な希薄化リスクがある |
劣後ローンなら支払利息を損金算入でき税務上有利 | 担保提供やコントロール権の一部譲渡を求められることがある |
投資側(出し手)のメリットとデメリット
メリット | デメリット |
|---|---|
シニアローンより高い利回りを得られる | 返済順位が低く、破綻時の回収リスクが高い |
エクイティキッカーで株価上昇時の追加リターンを狙える | 元本回収が満期まで長期間拘束される |
エクイティ投資より元本毀損リスクが低い | 劣後ローンの場合、利息制限法により年15%が上限 |
日本のメザニンファイナンス市場
日本のメザニンファイナンスは、2000年代からDBJ(日本政策投資銀行)を中心に発展してきました。
市場の拡大
日本銀行が2024年5月に公表した「LBOファイナンスの動向とリスク管理」によると、わが国金融機関のLBOファイナンス与信残高は約5兆円に達しています。また、金融庁が2024年7月に公表した「国内LBOローンに関するアンケート調査結果」によると、大手銀行のメザニン残高は2019年3月末の約80億円から2023年9月末に約3,800億円へ、地域銀行でも同期間に約50億円から約1,700億円へと急拡大しました。PEファンドによるバイアウト案件の大型化に伴い、シニアローンだけでは資金ギャップを埋められないケースが増えていることが背景にあります。
主要なプレイヤー
DBJ(日本政策投資銀行):劣後ローン・優先株式・ハイブリッドファイナンスの三形態を提供する国内最大手のメザニンプレイヤー。事業再編・事業承継・成長投資の局面で活用されている
メガバンク系ファンド:三菱UFJ・みずほ・三井住友の各グループがメザニンファンドを運営し、LBO案件にメザニンを供給
保険会社・年金基金:長期安定利回りを求める機関投資家がメザニンファンドに出資するケースも増加
金利水準と市場の特徴
金融庁が2024年7月に公表した「国内LBOローンに関するアンケート調査結果」および全国銀行協会の「国内LBOファイナンスの課題に関する報告書(2024年3月)によると、日本のLBOシニアローンのスプレッドは大型案件で300bp(3%)前後と、欧米に比べ低水準にあります。メザニンはこれに対してさらに数百bpの上乗せとなるのが一般的です。
メザニンが使われる主な場面
メザニンファイナンスはLBOだけでなく、さまざまな場面で活用されます。
事業承継・MBO
後継者が経営権を引き継ぐMBO(マネジメント・バイアウト)では、後継者自身の資金力に限りがあるため、シニアローンに加えてメザニンで資金を補うケースが多くみられます。優先株式であれば議決権を制限できるため、後継者の経営権を守りながら大きな買収資金を調達できるのがポイントです。
成長投資・設備投資
新規事業や設備投資に必要な資金が銀行融資(シニア)の枠を超える場合、メザニンで追加調達を行います。増資による希薄化を避けつつ資金を確保できるため、オーナー企業や上場企業の大型投資で活用されます。
財務基盤の強化
格付機関から資本性の認定を受けられるメザニン(ハイブリッドファイナンス)を利用して、実質的な自己資本を厚くすることで信用格付けの維持・向上を図る手法です。大手企業が社債発行や格付け維持の文脈で劣後債やハイブリッド証券を発行するのはこのケースです。
不動産ファイナンス
不動産の取得・開発においても、シニアローン(銀行融資)でカバーしきれない部分にメザニンローンを活用する構造は一般的です。不動産クラウドファンディングの世界では「シニア/メザニン/劣後」の三層構造で投資家を募集する商品も増えています。
投資家が知っておくべきポイント
メザニンファイナンスは主にプロの機関投資家やPEファンドの世界で使われる手法ですが、個人投資家にとっても理解しておくべき理由があります。
上場企業の決算・開示を読むために
上場企業が劣後債やハイブリッド債を発行する際、その条件(利率・期間・資本性認定の有無)は信用力や財務体質に直結します。劣後債の発行は「自己資本の見た目の強化」であり、本質的に返済義務のある負債である点を見逃さないことが重要です。
TOBやMBOの資金構造を読むために
近年の大型MBOでは、買収資金の調達構造が開示されます。「シニア○○億円+メザニン○○億円+エクイティ○○億円」という構成を読めれば、PEファンドがどの程度のレバレッジをかけているか、買収後の財務負担はどの程度かを判断する材料になります。たとえば大正製薬のMBO(約7,100億円)では巨額の資金調達がどのような階層で賄われたかが市場の注目点でした。
不動産投資型クラウドファンディング
個人投資家がメザニンに直接触れる最も身近な場面が不動産クラウドファンディングです。「シニア/メザニン/劣後」の三層で募集される商品では、メザニン出資は劣後出資より元本毀損リスクが低く、シニアよりリターンが高いミドルリスクの投資として提供されます。ただし不動産価格の下落局面では、劣後出資が吸収しきれない損失がメザニン層に及ぶ点に注意が必要です。
まとめ
メザニンファイナンスの要点を整理します。
メザニンはシニアローン(負債)とエクイティ(資本)の中間に位置する資金調達で、「中二階」の語源のとおり返済順位もリスク・リターンも両者の間に入る
主な形態は劣後ローン・優先株式・転換社債(CB)の3つで、法的性質・税務・手続きの違いに応じて案件ごとに使い分けられる
LBOではシニアローンとエクイティの間の資金ギャップを埋める不可欠な存在で、日本市場でも2019年以降に残高が急拡大した
シニアローンは返済順位が最上位で低金利・厳格なコベナンツ、メザニンは劣後する分だけ高金利で柔軟な条件設計が特徴
個人投資家にとっても、TOB・MBOの資金構造の読み解きや、上場企業の劣後債発行の意味を理解するうえで知っておくべき知識である









