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導管性要件とは|J-REITが法人税を実質非課税にできる7つの条件

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導管性要件とは、投資法人(J-REIT)が投資主への配当金を法人税の計算上「損金」に算入するために満たすべき一連の条件です。要件をすべて満たせば、利益のほぼ全額を配当に回すことで法人税が実質ゼロになり、二重課税(法人段階+個人段階)を回避できます。

「導管」とはパイプのこと。不動産から得た賃料収入が、法人税で目減りすることなくそのまま投資家に届く仕組みを指します。根拠法令は租税特別措置法第67条の15(投資法人に係る課税の特例)です。本記事では、導管性要件の全体像・7つの具体的条件・要件を満たせない場合のリスクを解説します。

導管性要件の全体像

通常の株式会社が利益を上げると、まず法人税(実効税率約30%)が課税され、残った利益から株主に配当が支払われます。株主は受け取った配当に対してさらに所得税が課されるため、利益が法人段階と個人段階で二重に課税される構造になっています。

J-REITは不動産の賃料収入を投資家に分配する器(ビークル)であり、事業会社のように内部に利益を蓄える必要性が低い仕組みです。そこで税法は、一定の条件を満たした投資法人に対して支払った配当等の額を損金(経費)に算入する特例を認めています(租税特別措置法67条の15第1項)。この特例の適用を受けるための条件群が「導管性要件」です。

法人要件と適用事業年度要件の2分類

導管性要件は大きく「法人要件」と「適用事業年度要件」の2つに分類されます。

分類

内容

違反した場合

法人要件

投資法人としての登録・規模・国内募集など、法人の基本属性に関する要件(第1号イ〜ニ)

一度でも満たさないと、以後の期も特例を受けられない(投資主数の要件だけは各期末に判定)

適用事業年度要件

配当率・同族会社非該当・資産構成・借入先制限など、事業年度ごとに判定する要件(第2号イ〜チ)

当該事業年度のみ特例適用不可(翌期に充足すれば復活)

出典:租税特別措置法67条の15第1項、ARES不動産証券化ジャーナルVol.37(EY税理士法人)よりKabuGraph作成

7つの導管性要件を一覧で解説

導管性要件は条文上、法人要件(第1号)に4項目、適用事業年度要件(第2号)に8項目ありますが、実務上は以下の7つの柱で整理すると理解しやすくなります。

1. 登録要件(法人要件)

投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)第187条に基づく内閣総理大臣の登録を受けていることが前提です(措法67条の15第1項第1号イ)。投資法人として金融庁に登録されていなければ、そもそも特例の対象になりません。

2. 規模・公募要件(法人要件)

以下のいずれかを満たす必要があります(措法67条の15第1項第1号ロ)。

  • 設立時に公募で1億円以上の投資口を発行した

  • 事業年度終了時に投資口が50人以上に所有されている

  • 事業年度終了時に投資口が機関投資家のみに所有されている

東証に上場しているJ-REITであれば、投資口は多数の投資家に保有されているため、この要件は通常問題になりません。一方、私募リート(非上場の投資法人)では機関投資家のみの保有要件で対応するケースが多いです。

あわせて、規約に「投資口の発行価額総額のうち国内で募集される割合が50%超」と記載されていること(同号ハ)、および会計期間が1年を超えないこと(同号ニ)も法人要件です。

3. 配当要件(適用事業年度要件)

導管性要件のなかで最も有名なのが、配当等の額が配当可能利益の90%超であること(措法67条の15第1項第2号ホ、措令39条の32の3第6項)です。

J-REITの決算短信で「1口当たり分配金」が高い水準にあるのは、この要件があるからです。

  • 利益の10%以上を内部留保に回すと要件を満たせず、その期は分配金を損金にできません。通常の会社と同じように法人税が課されます

  • 90%超を満たしても、損金になるのは実際に分配した額だけです。手元に残した利益には法人税がかかるため、実際のJ-REITは利益のほぼ全額を分配しています

4. 同族会社非該当要件(適用事業年度要件)

事業年度の終了時において、同族会社に該当しないことが必要です(措法67条の15第1項第2号ニ、措令39条の32の3第5項)。具体的には、投資主の一人及びこれと特殊の関係のある者が保有する投資口の合計が、発行済投資口総数の50%を超えてはならないとされています。

なお、法人税法上の一般的な同族会社判定は「上位3グループで50%超」ですが、投資法人の導管性要件では「1投資主グループで50%超」と、より緩やかな基準が採用されています。J-REITの敵対的買収が議論される際に「導管性要件の喪失リスク」が語られるのは、この要件があるためです。特定の投資家が投資口の過半を取得すると、同族会社に該当してしまい、その期は分配金を損金にできず法人税がかかる可能性があります。

5. 業務委託・営業制限要件(適用事業年度要件)

投資法人は資産運用業務を資産運用会社に、資産保管業務を資産保管会社にそれぞれ委託していることが求められます(措法67条の15第1項第2号ロ・ハ)。また、投信法63条に定める営業制限(資産運用以外の行為の禁止、本店以外の営業所を持たないこと、使用人を雇用しないこと)に違反していないことも必要です(同号イ)。

J-REITが自ら従業員を雇わず、外部の運用会社(アセットマネジメント会社)に運用を任せる構造は、投信法そのものが定めるものです(使用人の雇用禁止、資産運用・資産保管の委託義務)。導管性要件は、投資法人がこの投信法のルールを守っていることを条件にしています。

6. 資産構成要件(適用事業年度要件)

事業年度末日において、有価証券・不動産・不動産の賃借権・地上権等の特定資産の帳簿価額が総資産の帳簿価額の50%超であることが必要です(措法67条の15第1項第2号ト、措令39条の32の3第10項)。

J-REITは不動産に投資するのが本業ですから、総資産の大半が不動産関連資産になり、この要件は問題なく満たします。

この要件は2014年に設けられたもので、再生可能エネルギー発電設備や公共施設等運営権(空港・道路などのコンセッション)を主な資産とする投資法人を導管性の対象から外すためのものです。インフラファンドは、後述する期限付きの特例でこの要件をクリアしています。

7. 借入先制限・会社支配禁止要件(適用事業年度要件)

機関投資家以外の者から借り入れをしていないこと(措法67条の15第1項第2号チ、措令39条の32の3第11項)、および他の法人の発行済株式総数の50%以上を保有していないこと(同号ヘ)が求められます。

前者は投資法人が個人からの借入で実質的な私的金融機関化することを防ぎ、後者は投資法人が事業会社の親会社となって事業支配を行うことを禁じる趣旨です。匿名組合出資についても出資割合が50%以上にならないことが条件とされています。

分類

要件

根拠条文

概要

法人

①登録

1号イ

投信法187条の登録を受けていること

法人

②規模

1号ロ

公募1億円以上で設立 or 50人以上 or 機関投資家のみ

法人

③国内募集・会計期間

1号ハ・ニ

国内募集50%超、会計期間1年以内

事業年度

④配当

2号ホ

配当等の額が配当可能利益の90%超

事業年度

⑤同族会社

2号ニ

同族会社に非該当(1投資主グループ50%以下)

事業年度

⑥資産構成

2号ト

特定資産(不動産等)の帳簿価額が総資産の50%超

事業年度

⑦借入先・支配

2号ヘ・チ

他法人株式50%以上保有禁止、機関投資家以外からの借入禁止

出典:租税特別措置法67条の15第1項・同施行令39条の32の3よりKabuGraph作成

導管性要件を満たせないリスク

導管性要件を満たせなかった場合、投資法人は配当を損金算入できなくなり、通常の法人と同じく法人税(実効税率約30%)が課されることになります。具体的には以下のような影響があります。

分配金の大幅な減少

法人税が課されると、利益の約30%が税金として失われるため、投資家に配当できる金額が大幅に減少します。たとえば配当可能利益が100億円の場合、導管性要件を満たしていれば100億円近くを分配できますが、要件未達なら約70億円しか分配できない計算になります。

投資口価格の下落

J-REITは分配金利回りで価格が形成される金融商品です。分配金が減れば利回りの低下を通じて投資口価格が下落し、投資家は含み損を抱えるリスクがあります。

買収・TOBにおける導管性リスク

近年、J-REITへの敵対的買収が現実味を帯びるなか、特定の投資主が投資口の50%超を取得すると同族会社要件に抵触する可能性があります。買収者が導管性要件の喪失をいとわない場合でも、一般投資主は分配金の減少という不利益を被ることになります。この問題は、投資法人の買収防衛策の議論と密接に関連しています。

利益超過分配金と導管性要件の関係

J-REITの分配金には、利益から支払われる「利益分配金」のほかに、利益を超えて支払われる「利益超過分配金」があります。

主な原資は減価償却費です。減価償却費は会計上の費用ですが現金は出ていかないため、手元には「当期利益+減価償却費」の現金が残ります。その一部を、出資の払い戻しとして投資家に回す仕組みです。

利益超過分配金も、90%ルールと無関係ではありません。

  • 利益超過分配をした期は、その額も加えて90%超を判定します(租税特別措置法施行令39条の32の3第7項)

  • 一部(会計と税務のズレを埋めるための「一時差異等調整引当額」)は、税務上も配当とみなされ、損金に算入されます

  • それ以外(減価償却費を原資とする分など)は、税務上は出資の払い戻しです

のれんと導管性要件——合併時の論点

J-REIT同士の合併が行われると、正ののれん(合併対価が被合併法人の純資産を上回る差額)が発生する場合があります。のれんは会計上20年以内で償却しますが、償却費は会計上の利益(分配の原資)を減らす一方、税務上の所得は減らさない場合があります。この会計と税務のズレの分は分配しきれず、法人税がかかるおそれがありました。

2015年の制度改正で、このズレの分を「一時差異等調整引当額」として利益を超えて分配すれば、税務上も配当として損金に算入できるようになりました(太陽グラントソントン「上場リート Report vol.1」)。合併で生じたのれんが、導管性の障害になりにくくなっています。

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インフラファンドへの適用

導管性要件はJ-REIT(不動産投資法人)だけでなく、再生可能エネルギー発電設備に投資するインフラファンド(インフラ投資法人)にも適用されます。基本的な要件は不動産投資法人と同じですが、再エネ発電設備は原則として資産構成要件の「特定資産」に数えられず、そのままでは総資産の50%超という条件を満たせません。

そこで、上場していて発電設備の運用を賃貸に限る投資法人には、発電設備を特定資産に数えられる特例があります。対象は2031年3月31日までに取得した設備で、使えるのは最初に貸し付けた日から20年以内の期間です(租税特別措置法施行令39条の32の3第12項)。

この特例は2014年に設けられ、2016年度(平成28年度)の税制改正で期間が10年から20年に延びました(EY税理士法人「インフラ投資法人の導管性要件」)。取得期限は2026年度(令和8年度)の税制改正で、2026年3月末から2031年3月末に延長されています。

投資家が押さえるべきポイント

導管性要件は税法の専門的な話題ですが、J-REITに投資する上では以下のポイントを押さえておけば十分です。

  1. J-REITの高い分配金利回りは導管性要件があるから成り立つ。利益の90%超を分配すれば分配額を損金にでき、実際にはほぼ全額を分配するため、法人税がほとんどかからずに利益が投資家に届きます

  2. 内部留保が制限される。導管性を維持するために利益のほぼ全額を配当するため、物件取得の原資は増資や借入に頼る構造です。これがJ-REITのLTV(負債比率)が高めになる一因です

  3. 買収・合併時には導管性喪失リスクに注意。特に敵対的買収で投資口が特定者に集中すると同族会社要件に抵触し、分配金が減少する可能性があります

  4. 利益超過分配金も90%ルールと関わる。利益超過分配をした期は、その額も加えて90%超を判定します。減価償却費を原資とする分の上限は、2026年6月から減価償却費の100%に広がりました

J-REITへの投資を検討する際は、個別銘柄の有価証券報告書「投資リスク」欄で導管性要件に関する記載を確認するとともに、投資主構成(同族会社リスク)や借入先の構成に目を配ることをおすすめします。

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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