株のPTSとは|夜間取引のデメリットと、権利付最終日の注意点

株のPTS(私設取引システム)とは、取引所を通さずに株を売買できる、証券会社が運営する売買の場です。東証が閉まった後の夜も売買できる一方、夜間は売買が細く、注文は指値だけで信用取引はできず、権利付最終日の夜に買っても配当・優待の権利は付きません。
この記事では、PTSの仕組みと取引時間(2026年10月時点)、使い方とSOR、デメリットとその避け方を、運営会社・証券会社の公表資料と日本証券業協会の統計で整理します。
この記事の内容(目次)
株のPTSとは——証券会社が運営する、取引所の外の売買の場
PTS(Proprietary Trading System、私設取引システム)は、証券会社がコンピューターで多数の投資家の注文を突き合わせ、株を売買させる仕組みです。金融商品取引法は、電子情報処理組織を使い、多数の者を相手に、取引所の売買価格を用いる方法や顧客の指値を突き合わせる方法などで行う売買をPTSの業務と定め(金融商品取引法 第2条第8項第10号)、運営には内閣総理大臣の認可が要ります(同 第30条)。
投資家はPTSに直接注文を出せず、口座のある証券会社が取り次ぎます。ジャパンネクストPTSとJAXPTSで成立した売買は、東証の売買と同じく日本証券クリアリング機構が債務を引き受けて決済します(ジャパンネクスト証券「上場株式等私設取引システム取引説明書」(2024年11月5日改定)、日本証券クリアリング機構「業務方法書の取扱い」の一部改正(JAXPTSの取引の債務引受開始、2024年12月27日施行))。
上場株を売買できるPTSは3つ(2026年10月時点)——Cboeは2025年8月に撤退
2026年10月時点で上場株を売買できるPTSは、次の3社が運営する3つです。三菱UFJ eスマート証券は、Cboeの市場が閉鎖された後のSORの接続先として、この3社のPTSを挙げています(三菱UFJ eスマート証券 プレスリリース(2026年1月30日))。
ジャパンネクストPTS(ジャパンネクスト証券):J-Market・X-Market・U-Marketの3市場からなり、夜間(ナイトタイム・セッション)があるのはJ-Marketだけ(同社「PTS」、2026年10月28日閲覧)。2007年6月にPTS運営の認可を受けた(同社 プレスリリース(2025年5月7日)の会社概要)
JAXPTS(Japan Alternative Market):楽天証券が2025年6月16日から直接注文の取り次ぎを(楽天証券のお知らせ(2025年6月2日))、9月1日から夜間取引の取り次ぎを始めた(楽天証券のお知らせ(2025年8月15日))
ODX株式PTS(大阪デジタルエクスチェンジ):SBI証券では日中だけ、SOR注文で回るときに使われる(SBI証券「各市場の取引時間」・「PTS取引基本ルール」、2026年10月28日閲覧)
楽天証券などが取り次いでいたCboeジャパンのPTS(旧チャイエックス)は、2025年8月29日に業務を停止しました(Cboe Global Markets “Cboe Plans to Cease Japanese Equities Operations”(2025年7月23日)。閉鎖は三菱UFJ eスマート証券 プレスリリース(2026年1月30日)で確認)。運営会社・市場の名前・取引時間はここ数年でも変わっています。この記事の内容は2026年10月時点のものなので、使う前に証券会社のページで確かめましょう。
上場株の売買代金の2割近くがPTSに
日本証券業協会の統計では、上場株の売買代金(取引所での売買と取引所外の売買の合計)に占めるPTSの割合は、2025年の1年間で12.4%(234.6兆円)、2026年9月は18.6%でした。2026年8月の21.4%は、月次の統計で最も高い水準です(日本証券業協会「金融商品取引所上場銘柄のPTSにおける売買状況等」、2026年10月21日更新)。
上場株の売買代金に占めるPTSの割合
東証との違い
値段の決まり方
東証:寄付と引けは注文をまとめて1つの値段で約定させる板寄せ、その間は注文が入るたびに約定させるザラバ
PTS:板寄せがなく、受け付けた指値どうしを価格優先・時間優先で突き合わせ続ける(ジャパンネクスト証券「取引説明書」)
注文
東証:成行・指値と各種の執行条件
PTS:指値だけ。成行・逆指値は使えない(SBI証券「PTS取引基本ルール」・楽天証券「夜間取引/PTS取引の基本ルール」、2026年10月28日閲覧)
呼値(値段の刻み)
東証:株価2,000円のTOPIX500以外の銘柄なら1円刻み
J-Market:同じ銘柄が0.1円刻み(ジャパンネクスト証券「PTS」の呼値の比較表、2026年10月28日閲覧)
制限値幅
どちらも東証の基準値段と同じ表で決まる(ストップ高・安)。PTSには、制限値幅に張り付いたまま終わったときのストップ配分がない(同社「取引説明書」)
信用取引
東証:立会時間中
PTS:東証の立会時間(9:00〜11:30・12:30〜15:30)だけ。夜間はできない(ジャパンネクスト証券「取引説明書」、楽天証券「夜間取引/PTS取引の基本ルール」、2026年10月28日閲覧)
ついた値段
東証の終値は東証の大引けでついた値段で(日本取引所グループ「用語集:大引け」)、始値も東証の板寄せで決まる(同「売買成立の方法」)。PTSの約定は東証の値段に入らず、逆に夜間のPTSが東証の最終値段を基準値段に使う(ジャパンネクスト証券「取引説明書」)
PTSも東証と同じく、同じ値段の注文は先に出した方から約定します。ただし板は市場ごとに別で、東証で先に並んでいた注文がPTSで優先されることはありません。約定の優先順位の基本は次の記事で解説しています。

価格優先・時間優先の原則とは|約定の順番と例外、訂正したときの扱い
価格優先の原則は買いなら高い値段・売りなら安い値段の注文から、時間優先の原則は同じ値段なら東証が先に受け付けた注文から約定させる決まり。成行は指値より先。寄付などの同時注文や特別約定の例外、訂正・期間指定・SORでの順番も板の例で解説。
PTSの取引時間——日中8:20〜16:30・夜間17:00〜翌6:00、証券会社はもっと短い
ジャパンネクストPTSの運営時間は、日中(デイタイム・セッション)が8:20〜16:30、夜間(ナイトタイム・セッション)が17:00〜翌6:00です(ジャパンネクスト証券「PTS」、2026年10月28日閲覧)。夜間の終わりは2023年8月14日に23:59から翌6:00へ延びました(同社 プレスリリース(2025年1月28日))。東証の立会は9:00〜11:30・12:30〜15:30で、注文は8:00から受け付けます(日本取引所グループ「売買立会時(立会時間)」、2026年10月28日閲覧)。後場の終わりは2024年11月5日に15:00から15:30へ延びました(日本取引所グループ「現物市場の機能強化に向けた取組み(取引時間の延伸等)」)。
ただし、投資家が実際に注文できる時間は、取り次ぐ証券会社が決めています。SBI証券・楽天証券・松井証券の夜間は、翌6:00ではなく23:59か翌2:00で締まります。
証券会社 | 日中 | 夜間 |
|---|---|---|
SBI証券 | 8:20〜16:30 | 17:00〜23:59 |
楽天証券 | 8:20〜16:00 | 17:00〜23:59 |
松井証券 | 8:20〜15:30 | 17:00〜翌2:00 |
各社の時間はSBI証券「各市場の取引時間」・「私設取引システム取引説明書」(2024年11月5日)、楽天証券「夜間取引/PTS取引の基本ルール」、松井証券「PTS取引ルール」で確かめられます(いずれも2026年10月28日閲覧)。松井証券は、夜間を翌2:00まで扱うのはPTSの夜間取引を扱う大手ネット証券3社(同社・SBI証券・楽天証券)で最長としています(松井証券「PTS」、2026年5月14日時点の同社調べ)。

東証の1日の時間割(寄付前・昼休み・プレ・クロージング)と、ザラ場の約定のルールは次の記事にまとめています。

ザラ場(ザラバ)とは|前場9:00〜11:30・後場12:30〜15:25の約定ルールと板の見方、ザラ場高値と終値ベースの違い
ザラ場(ザラバ)は寄付と引けの間に、注文が入るたびに約定させる時間帯と売買方式。東証では前場9:00〜11:30・後場12:30〜15:25で、価格優先・時間優先で約定する。板の見方、ザラ場高値と終値ベースの違い、PTS、売買停止も解説。
PTSの使い方——市場を選んで指値で出すか、SORに任せる
PTSで売買する方法は、自分で市場を選ぶか、証券会社のSOR(スマート・オーダー・ルーティング)に任せるかの2つです。
東証が閉まった夜に東証あてに出す注文は、翌営業日の注文として扱われ、翌朝まで約定しません(SBI証券「各市場の取引時間」、2026年10月28日閲覧)。夜のうちに約定させたいときは、PTSを指定します。
自分で市場を選んで出す
口座の証券会社がどのPTSを扱っているかを確かめる。ジャパンネクストPTSで信用取引をするには、信用取引口座に加えて「PTS信用取引に係る合意書」が要る(ジャパンネクスト証券「取引説明書」)。同意の手続きは証券会社ごとに違う(例:楽天証券「夜間取引/PTS取引の基本ルール」、2026年10月28日閲覧)
注文画面で市場を「PTS」「JNX」「JAX」などに指定する(画面の名前は会社による)
値段は指値で入れる。呼値はPTSの細かい刻みで、制限値幅の範囲内
有効期間はそのセッション限り。約定しなければ、日中の終わりか夜間の締めで失効する
成行・逆指値は使えないので、注文方法の選び方は東証と変わります。指値・成行・逆指値の違いは注文方法の記事で解説しています。
SORなら、東証と同値か有利な市場に自動で回る
SORは、東証とPTSなど複数の市場の気配を比べ、東証と同値か有利な市場に注文を回す仕組みです。証券会社には、顧客の注文を最良の条件で執行するための方針(最良執行方針)を定めて公表し、それに従って執行する義務があります(金融商品取引法 第40条の2)。
楽天証券は全チャネルでSORを初期設定で有効にしており、東証の立会時間中(寄付前・昼休み・大引け後と、東証が特別気配のときは判定しない)に、東証の最良気配と同値か有利な価格がPTSにあれば、そちらで約定させます(楽天証券「SOR注文」、2026年10月28日閲覧)。SORを有効にしていれば、自分で選ばなくても日中はPTSで約定していることがあります。

比べる市場は証券会社で違います。SBI証券は東証・J-Market・X-Market・ODX・ダークプールを比べ、1つの注文の一部だけをPTSに回して残りを東証に出すこともあります(SBI証券「最良執行方針 新旧対照表」、2026年6月27日改定)。三菱UFJ eスマート証券は2026年3月2日からODX・JAX・X-Marketを加え、接続先を6か所にしました(同社 プレスリリース(2026年1月30日)、同社「最良執行方針」)。
PTSのメリット——夜に動ける、値段の刻みが細かい
大引け後の決算やニュースに、夜のうちに動ける:2026年3月期の決算発表は63.6%(1,365社)が東証の大引け後の15:30〜17:59に出た(東京証券取引所「2026年3月期決算発表状況の集計結果について」、2026年6月4日)。夜間のPTSなら、翌朝の寄付を待たずに売買できる
値段の刻みが東証より細かい:株価2,000円の銘柄なら、TOPIX500以外は東証が1円・J-Marketが0.1円、TOPIX100・Mid400は東証が0.5円・J-Marketが0.1円(ジャパンネクスト証券「PTS」の呼値の比較表、2026年10月28日閲覧)
東証より少し有利な値段で約定することがある:ジャパンネクスト証券の集計では、2026年9月に同社PTSで約定した注文は、板にある注文にぶつけた側から見て、その時点の東証の最良気配より平均1.58bp(0.0158%、売買代金で加重)有利だった(同社「Market Report for September, 2026」)。100万円の売買なら約158円にあたる(KabuGraph算出)
手数料は東証と同じ体系の会社が多い:楽天証券は、PTSで約定しても追加の手数料はかからず、選んでいる手数料コースが適用される(楽天証券「夜間取引/PTS取引」、2026年10月28日閲覧)。証券会社による
東証も2027年3月1日から、銘柄の流動性に応じて呼値の単位を決める見直しを予定しており(東京証券取引所「現物市場の更なる機能強化に向けた売買制度の見直しに係る業務規程等の一部改正について」、2026年8月6日)、PTSとの刻みの差は銘柄ごとに変わりえます。
決算発表の多くが大引け後に集まる理由と、大引け後に何が起きるかは次の記事で扱っています。

株の大引けとは|15時30分に終値が決まる仕組み
大引けは後場の最後の売買で、東証は15時30分。15時25分から5分間注文を集め、板寄せで終値を決める。大引けには売買代金の13〜17%が集まり、終値は指数・投信・翌日のストップ高の基準に。2027年10月12日(予定)からランダムクローズ。
PTSのデメリット——夜間は板が薄く、注文は指値だけ
PTSのデメリットは、次の6つにまとまります。権利付最終日と翌朝の寄付の2つは、次の節で詳しく扱います。
夜間は売買が細く、値が飛びやすい
注文は指値だけで、成行・逆指値は使えない
信用取引は東証の立会時間だけで、夜間はできない
取引時間・使える市場・締め時刻が証券会社で違う
権利付最終日の夜に買っても、配当・優待の権利は付かない
夜につけた値段で、翌朝の東証が始まるとは限らない
ジャパンネクストPTSの夜間の売買代金は取引所の約0.2%、約定がある銘柄は4分の1
ジャパンネクストPTSの夜間(ナイトタイム・セッション)の売買代金は、2026年9月に1日平均207.6億円でした(同社「Market Report for September, 2026」)。同じ月の国内の取引所の売買代金は1日平均約9.9兆円(日本証券業協会の統計の取引所取引 187.7兆円を19営業日で割った値、KabuGraph算出)なので、ジャパンネクストPTSの夜間はその約0.2%にあたります(夜間の数字にはETFなども含む)。2025年9月からはJAXPTSも夜間を開いているので、夜間全体の売買はこれより大きくなります。
ジャパンネクストPTSの夜間に気配が出ていた銘柄は1晩平均3,858銘柄で、そのうち1回でも約定があったのは948銘柄(約4分の1)でした(同レポート)。売買は一部に集まり、9月の夜間の売買代金の首位はキオクシアホールディングス(285A)の月1,063億円、2位はNEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(1570)の384億円です(同レポート)。
板が薄いと、少し大きな注文が何段もの値段にわたって約定し、平均の約定値段が気配から離れます。指値で上限は決められますが、その指値が遠いほど不利な値段で約定しえます。
注文は指値だけ。逆指値の損切りも置けない
SBI証券・楽天証券・松井証券とも、PTSへの注文は指値だけで、成行・逆指値は使えません(SBI証券「PTS取引基本ルール」、楽天証券「夜間取引/PTS取引の基本ルール」、松井証券「PTS取引ルール」、2026年10月28日閲覧)。夜間に悪い材料が出たとき、逆指値で自動的に売るしくみはPTSでは使えず、自分で指値を出して相手を探すことになります。
信用取引は東証の立会時間だけ
ジャパンネクストPTSでの信用取引は、新規も返済も9:00〜11:30と12:30〜15:30だけで、11:30と15:30に残っている信用取引の注文はすべて取り消されます(ジャパンネクスト証券「取引説明書」)。信用取引の建玉は、夜間に決算や悪材料が出ても夜のうちには返済できません。楽天証券の「いちにち信用」のように、PTSを指定できない信用取引もあります(楽天証券「夜間取引/PTS取引」)。
約定の取消し、売買停止、扱えない銘柄
夜間に開示が出ると止まることがある:ジャパンネクストPTSは、夜間の18:00以降に適時開示が出た銘柄などで、売買を続けるのが適当でないと判断すれば売買を止める(同社「取引説明書」)
誤発注などで約定が取り消されることがある:異常な取引が成立したとき、ジャパンネクスト証券の方針で取り消され、初めから成立しなかったとみなされる場合がある(松井証券「PTS取引ルール」)
新規上場株は、東証で初値がつくまで取引できない(ジャパンネクスト証券「PTS」、SBI証券「PTS取引基本ルール」)
権利付最終日の夜に買っても、配当・優待の権利は取れない
東証の株の受渡しは約定日から起算して3営業日目なので、配当や株主優待をもらうには、権利確定日(基準日)の2営業日前の権利付最終日までに買う必要があります(日本取引所グループ「株式等の決済期間短縮化(T+2化)」)。権利付最終日・権利落ち日・基準日の数え方は新株落ちの記事で、東証の規則とあわせて解説しています。
PTSの夜間の約定は、翌営業日の取引として扱われます。ジャパンネクストPTSは夜間の約定を、夜間のセッションが終わった日(翌朝)から数えて3営業日目に決済します(同社「取引説明書」)。SBI証券は、権利付最終売買日の取引所の取引の後に始まる夜間は「権利落ちでの取引」になると明記し(SBI証券「PTS取引基本ルール」)、楽天証券も、権利付最終日の夜間に買っても配当や株主優待などの権利は得られないとしています(楽天証券「夜間取引/PTS取引」、2026年10月28日閲覧)。
一方、日中のPTSなら、東証の大引けの後でも権利付最終日のうちは権利付きです。SBI証券は、権利付最終売買日の取引所取引とPTSのデイタイム・セッション(〜16:30)を権利付きとし(SBI証券 よくある質問)、楽天証券も16時までの買付なら権利が得られるとしています(楽天証券「夜間取引/PTS取引」)。

夜間で権利を取りたいなら、権利付最終日の前の営業日の夜に買います。楽天証券は「夜間取引の場合は、権利付最終日が1日前倒しされます」としています(楽天証券「夜間取引/PTS取引」、2026年10月28日閲覧)。図の例なら、3月26日(金)の夜間の買いは3月29日(月)の取引の扱いになり、3月31日に受け渡されて権利が付きます。
夜間は値段の基準も権利落ちの扱いです。配当落ちや権利落ちがある銘柄では、東証の最終値段から計算した権利落修正理論価格が夜間の基準値段になります(ジャパンネクスト証券「取引説明書」)。売買単位の変わる株式分割・併合の権利付最終日は、夜間の売買を止める証券会社もあります(SBI証券「PTS取引基本ルール」、楽天証券は株式分割・併合の銘柄で停止。楽天証券「取引時間/注文受付時間」)。
PTSの値段で翌朝の東証も始まる?——寄付は東証の板で決まる
始まるとは限りません。東証の寄付の値段は、8:00から東証に集まった注文を9:00に板寄せして決まり(日本取引所グループ「売買立会時(立会時間)」・「売買成立の方法」)、PTSの値段は使われません。翌日の東証のストップ高・ストップ安の基準も、前日の東証の終値(または最終気配)です(日本取引所グループ「制限値幅」)。寄付の値段の決まり方は板寄せの記事で計算例とともに解説しています。
夜間の値幅は、翌日の東証と同じ基準で決まる
夜間のPTSの基準値段は当日の東証の最終値段で、制限値幅の表も東証と同じです(ジャパンネクスト証券「取引説明書」)。そのため、東証でストップ高に張り付いた株も、夜間のPTSでは翌日の東証と同じ値幅の中で売買できます。
例(数値は架空):前日の終値が800円の銘柄が、当日の東証で150円高のストップ高950円で引けた
夜間のPTS:基準値段950円、値幅150円で、800〜1,100円の範囲で売買できる
翌朝の東証:基準値段950円で、同じく800〜1,100円の範囲。ただし寄付の値段は東証の板で決まる
値幅は基準値段700円以上1,000円未満なら150円です(日本取引所グループ「制限値幅」)。東証が値幅を広げる措置をとった銘柄は、PTSも広げることがあります。
東証でストップ高の銘柄は夜間・翌日も同じ向きに動きやすいが、4割強は続かない
ジャパンネクスト証券の集計では、2025年1〜3月に東証でストップ高になった516銘柄のうち、夜間も上がったのは約64%(328銘柄)で、そのうち翌日の東証でも上がったのは58%(190銘柄)でした。ストップ安の76銘柄では、夜間も下がった45銘柄のうち約60%(27銘柄)が翌日も下がりました(同社「夜間市場クォータリーレポート(2025年1月〜3月期)」、2025年5月7日)。
同社は、東証でストップ高・ストップ安になった銘柄は夜間も同じ向きに動き、翌日の東証でも続く確率が比較的高いとしています。一方で、ストップ高のあと夜間も上がった328銘柄のうち4割強(138銘柄)は、翌日の東証で上昇が続いていません(138銘柄と4割強はKabuGraph算出)。同社は、夜間の参加者が個人に偏っていることを、夜間にも投機的な売買が続く要因とみています(同レポート)。夜間の値段は参加者の少ない市場でついた値段で、翌朝の東証の値段を約束するものではありません。
PTSのデメリットを避ける使い方——注文前に確かめること
証券会社の時間と締めを確かめる:SBI証券・楽天証券・松井証券では、日中の締めが15:30〜16:30、夜間の締めが23:59か翌2:00で、会社ごとに違う
夜間は板を見て、少ない株数で指値を出す:気配と数量を見て、数量の多い注文は分ける。約定した値段は約定照会で確かめる
権利を取りたい株は、権利付最終日の日中に約定させる:権利付最終日の夜間の約定は権利落ちの取引になる。夜間で買うなら、その前の営業日の夜まで
信用取引の建玉は、夜に返済できない前提で持つ:決算発表の日時を確かめ、日中のうちに方針を決めておく
SORを使うかどうかと、比べる市場を確かめる:初期設定で有効の会社もある。比べる市場は各社の最良執行方針に書いてある
夜の値段は翌朝の値段ではない:翌朝の注文は、8:00からの東証の気配を見て値段を決める
決算発表を受けて売買するなら、決算短信のどこを読むかを先に押さえておくと、夜間の短い時間でも判断しやすくなります(決算短信の読み方)。
よくある質問
PTSで買った株にも配当や株主優待は付く?
付きます。東証で買ったときと同じく、権利確定日に株主名簿に載っていれば権利が得られます(楽天証券「夜間取引/PTS取引」、2026年10月28日閲覧)。ただし権利付最終日の夜間に買った株は、翌営業日の取引の扱いなので権利は付きません。
PTSは何時まで取引できる?
ジャパンネクストPTSの夜間は翌6:00までですが、証券会社が取り次ぐのはSBI証券・楽天証券が23:59まで、松井証券が翌2:00までです。日中はSBI証券が16:30、楽天証券が16:00、松井証券が15:30までです(SBI証券「各市場の取引時間」、楽天証券「夜間取引/PTS取引の基本ルール」、松井証券「PTS取引ルール」、2026年10月28日閲覧)。23:59を過ぎてもジャパンネクストPTSの値段や板は画面で更新されますが、SBI証券・楽天証券ではその時間には注文できません(同、楽天証券「取引時間/注文受付時間」)。
NISA口座でもPTSで買える?
証券会社によります。楽天証券はNISAの成長投資枠でのPTSの買付を、買付可能額の範囲で受け付けています(楽天証券「夜間取引/PTS取引の基本ルール」、2026年10月28日閲覧)。使っている証券会社のPTSのルールで確かめましょう。
夜間に売った代金はいつ受け渡される?
夜間の約定は、日中より受渡しが1営業日遅くなります。SBI証券・松井証券とも、日中は約定日から起算して3営業日目、夜間は4営業日目です(SBI証券のよくある質問は「2営業日後」「3営業日後」と表記。SBI証券 よくある質問、松井証券「PTS取引ルール」)。
PTSで売買するのは危ない?
ジャパンネクストPTSとJAXPTSでの売買は、東証と同じく日本証券クリアリング機構が債務を引き受けて決済します(ジャパンネクスト証券「取引説明書」、日本証券クリアリング機構(2024年12月27日施行の改正))。注意が要るのは決済よりも、夜間の板の薄さ、指値しか使えないこと、権利付最終日の扱いといった取引の条件の違いです。








