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ABEJA(5574)の企業分析|公的プロジェクトを軸に売上高30%増、営業利益は微増の計画

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ABEJA(5574)は、「ゆたかな世界を、実装する」を理念に掲げ、ABEJA Platformを基盤として300社超のエンタープライズAI導入を支援する日本有数のAIプラットフォーム企業です。

2026年10月15日に発表した2026年8月期決算は売上高45.8億円(前期比+27.7%)、営業利益7.1億円(同+59.4%)で、7月に上方修正した会社予想どおりに着地しました。純利益10.7億円(同+137.8%)は税金の戻り(法人税等がマイナス3.1億円)で膨らんでいるため、本業の利益は営業利益で見るのが妥当です。

2027年8月期の会社予想は売上高59.6億円(+30.2%)に対して営業利益7.3億円(+2.7%)です。公的プロジェクトを軸に増収を見込む一方、案件構成の変化による利益率の低下と採用・研究開発の費用増を織り込んでいます。

この記事では、ABEJAの事業構造(トランスフォーメーション領域・オペレーション領域)、ABEJA PlatformとLLM戦略、業績推移、投資判断のポイントを個人投資家の視点からわかりやすく解説します。

会社概要 -- 日本のディープラーニング黎明期から歩むAIパイオニア

ABEJAは、岡田陽介氏が2012年に設立したAIスタートアップです。日本でディープラーニングがまだ一般的ではなかった時代に、いち早くAIの産業応用に着目し、製造業や小売業を中心にAI実装を推進してきました。

項目

内容

会社名

株式会社ABEJA(ABEJA, Inc.)

証券コード

5574(東証グロース)

設立

2012年9月10日

上場

2023年6月13日(東証グロース)

代表取締役CEO

岡田 陽介(創業者)

従業員数

140名(2026年8月末時点)

本社

東京都港区三田1-1-14 Bizflex麻布十番2F

セクター

情報・通信業

出典:ABEJA公式サイト・有価証券報告書・2026年8月期 決算説明資料よりKabuGraph作成

創業から上場までの歩み

ABEJAの社名はスペイン語で「ミツバチ」を意味します。ミツバチが花粉を運んで生態系を支えるように、テクノロジーの力で産業構造を変革するという創業の志が込められています。

  • 2012年 -- 岡田陽介氏が設立。日本におけるディープラーニングの社会実装を目指す

  • 2018年2月 -- ABEJA Platformを正式リリース

  • 2018年12月 -- 大規模言語モデル(LLM)の研究開発に着手。当時としては先駆的な取り組み

  • 2023年3月 -- ABEJA LLM Seriesを商用サービスとして提供開始

  • 2023年6月 -- 東証グロース市場に上場(公募価格1,550円、初値4,980円)

  • 2024年2月 -- 経産省GENIAC(第1期)に採択

  • 2024年10月 -- GENIAC第2期にも採択。小型LLMの開発に着手

  • 2025年7月 -- GENIAC第3期にも採択。3期連続での参画

  • 2026年6月 -- GENIAC第4期にも採択。IDOMと連携し自動車整備向けAIエージェントを構築

創業以来10年以上にわたりABEJA Platformの研究開発と運用に投資を続けた結果、国内における圧倒的な技術力と300社超の導入実績を蓄積しています。

事業紹介 -- ABEJA Platformを軸にした2つの領域

ABEJAの事業は「エンタープライズプラットフォーム事業」の単一セグメントです。売上高は「トランスフォーメーション領域」と「オペレーション領域」に分類されており、いずれも中核のABEJA Platformを基盤としています。

ABEJAが展開するエンタープライズプラットフォーム事業
出典:ABEJA公式サイト

ABEJA Platform -- 「デジタル版EMS」としてのAI基盤

ABEJA Platformは、顧客企業のミッションクリティカル業務(基幹業務)にAIを実装するためのソフトウェア群です。ABEJAはこれを「デジタル版EMS(Electronics Manufacturing Service)」と位置づけ、製造業における受託製造のように、企業のDXに必要な設計・開発・構築・運用・改善を一気通貫で担います。

ABEJA Platform -- DXの実行に必要なプロセスを提供するソフトウェア群
出典:ABEJA公式サイト

プラットフォームにはAutoML(自動機械学習)、AIガバナンス、リスク管理、Human in the Loopの仕組みが組み込まれており、汎用的なAIツールとは異なり、業務データ・判断ルール・実行プロセスを一体的に扱える点が強みです。

トランスフォーメーション領域(売上構成比71.8%)

トランスフォーメーション領域は、個別顧客のニーズに合わせたAI導入コンサルティング・設計・構築サービスを提供します。顧客企業の基幹業務を分析し、ABEJA Platform上でAIシステムを構築する「仕組みづくり」のフェーズです。

  • 収益モデル:プロジェクト型(フロー型)の都度契約。構築には段階的に進めるため長期間にわたる

  • 主な顧客業種:金融、製造、小売、インフラ、物流など

  • 導入事例:栃木銀行との金融DX/AI領域での業務連携(金融特有の複雑なガバナンスをABEJA Platform上に構築)

  • エンタープライズ企業の継続顧客からの売上比率:86.3%(2026年8月期、前期は88.8%)。前期にも売上があったエンタープライズ顧客からの売上が、エンタープライズ顧客の売上全体に占める割合

2026年8月期の実績は32.9億円(前期比+19.6%、構成比71.8%)でした(ABEJA 2026年8月期 決算短信 p.5)。

オペレーション領域(売上構成比28.2%)

オペレーション領域は、トランスフォーメーション領域で構築したAIシステムの継続的な運用・改善サービスです。ABEJA Platform上でHuman in the Loopによる運用を行い、主な収入はストック型(継続課金)となります。なお、会社はこの領域に、運用支援だけでなく長期・月額型で提供するAIの導入・活用支援も含めています。

  • ABEJA Insight for Retail:店舗内の来店者属性・動線データをAIカメラで収集・分析するサービス。POSデータとの連携で購買率分析も可能

  • 収益の安定性:一度導入されたAIシステムの運用は継続するため、解約率が低くストック収入が積み上がる

2026年8月期の実績は12.9億円(前期比+54.1%、構成比28.2%)で、全社の伸び(+27.7%)を大きく上回りました。会社は、全社のAI活用を支える長期・月額型の導入・活用支援が増えたことを理由に挙げています(ABEJA 2026年8月期 決算説明資料 p.14)。オペレーション領域の拡大は、収益基盤の安定化につながる重要なシグナルです。

ABEJA LLM SeriesとGENIACプロジェクト

ABEJAは2018年から大規模言語モデル(LLM)の研究開発に取り組んでいる国内屈指の先行プレイヤーです。2023年3月にはLLMのビジネス実装サービス「ABEJA LLM Series」を商用提供開始しました。

ABEJA LLM Series -- 大規模言語モデルのビジネス実装サービス
出典:ABEJA公式サイト

さらに、経済産業省が立ち上げたGENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)に第1期から4期連続で採択されています。第2期では、Alibabaの「Qwen」シリーズをベースに開発した32Bパラメータの小型モデルが、GPT-4を上回る日本語性能を達成。第3期(2026年2月終了)では、長い文章を扱える小型LLMとAIエージェントを構築しました。第4期ではIDOMと連携し、自動車整備領域に特化したAIエージェントの構築に取り組んでいます(ABEJA プレスリリース 2026年6月4日)。

2026年6月には、NVIDIAとの長年の協業関係を踏まえNVIDIA Nemotron 3をABEJA Platformに搭載。自社開発と外部モデルの両面から、高度なAIエージェントの構築を推進しています。

また、2026年7月にはAIガバナンスプラットフォーム「MODEL SAFE」を持つMONO BRAINの買収と吸収合併を発表し、9月1日に合併しました。MONO BRAINは2023年設立の小さなスタートアップ(2026年1月期の売上高は1,400万円)で、会社は業績への影響を軽微と見込んでいます。それでも、AIの品質管理・リスク管理を支援するプロダクトを取り込むことで、ミッションクリティカル業務へのAI導入に不可欠なガバナンス体制をABEJA Platform内で一貫して提供できる体制が整います。同じ7月には、AIマネジメントシステムの国際規格「ISO/IEC 42001」の認証も取得しました。

業績推移と財務分析

ABEJAの業績を通期ベースで振り返ると、2024年8月期に一時的な踊り場を経験した後、2025年8月期から力強い成長軌道に復帰しています。

通期業績推移(売上高・営業利益・営業利益率・売上高成長率)

出典:ABEJA 各期の決算短信(2026年8月期 決算短信ほか)よりKabuGraph作成。2027/8期は会社予想(2026年10月15日公表)

2024年8月期の踊り場と2025年8月期の回復

2024年8月期は売上高27.7億円(前期比-0.3%)、営業利益2.9億円(同-27.9%)と、成長が一時停滞しました。主な要因は既存取引先の個社事情によるボリューム減です。ただし、この間もLLM関連の新規案件が増加しており、減収分をほぼカバーしていた点は注目に値します。営業利益の下落は採用強化による人件費増が主因です。

2025年8月期は売上高35.8億円(+29.6%)、営業利益4.5億円(+53.6%)と一転して大幅な増収増益を達成。LLM関連需要の本格的な取り込みとABEJA Platformを通じたAI活用の拡大が成長をけん引しました。

2026年8月期決算(2026年10月15日発表)-- 7月の予想どおりに着地

2026年8月期(2025年9月〜2026年8月)の実績と、7月15日に上方修正した会社予想との比較は以下の通りです。

指標

実績

7月予想

達成率

売上高

45.8億円

45.5億円

100.6%

営業利益

7.1億円

7.1億円

100.1%

経常利益

7.6億円

7.3億円

104.8%

純利益

10.7億円

8.5億円

125.1%

出典:ABEJA 2026年8月期 決算短信・決算説明資料よりKabuGraph作成。7月予想は2026年7月15日修正の会社予想で、達成率は会社の算出。純利益は税金の戻り(法人税等の合計がマイナス3.1億円)を含む

売上高と営業利益は、7月に上方修正した会社予想どおりの着地です。会社は「売上高は予想を上回り、営業利益は概ね予想どおりに着地」と説明しています(ABEJA 2026年8月期 決算説明資料 p.12)。期初(2025年10月)の予想は売上高44億円・営業利益5億円で、2026年4月と7月の2回の上方修正を経ての着地でした。営業利益が売上高の倍以上の伸びになったのは、売上総利益が24.9%増えたのに対して販管費の伸びが16.3%にとどまり、営業利益率が15.5%(前期比+3.1ポイント)に上がったためです。

4Q(2026年6〜8月の3か月)の売上高は12.1億円(前年同期比+35.5%)と、四半期で過去最高でした。営業利益は1.4億円で、前年同期(0.5億円)からは増えた一方、3Q(1.8億円)からは減りました。会社は、2027年8月期に向けた体制強化(採用教育費・人件費)と、研究開発用ロボットの導入などで販管費が増えたことを理由に挙げています(同 p.13・p.18)。

純利益10.7億円は、税金の戻りで膨らんでいます。当期に課された税金(1.4億円)に対し、繰延税金資産の回収可能性の見直しなどで法人税等調整額がマイナス4.4億円となり、法人税等の合計はマイナス3.1億円に。税引前利益の7.6億円を上回る純利益になりました(ABEJA 2026年8月期 決算短信 p.4・p.9)。純利益が7月予想を2.1億円上回ったのも、大部分は税金の差です。経常利益の上振れは0.3億円で、残りの約1.8億円は税金が予想より少なかった分です(KabuGraph算出)。

2027年8月期の会社予想 -- 売上高30%増、営業利益は2.7%増

決算と同時に公表した2027年8月期(2026年9月〜2027年8月)の会社予想は次の通りです(ABEJA 2026年8月期 決算短信 p.1)。

  • 売上高:59.6億円(前期比+30.2%)

  • 営業利益:7.3億円(同+2.7%)。営業利益率は12.2%(前期は15.5%)

  • 経常利益:7.6億円(同+0.0%)

  • 純利益:6.8億円(同-36.2%)。1株当たり利益(EPS)は67.76円

  • 配当:年間0円(無配を継続)

会社は公的プロジェクトの拡大を軸に増収を計画しています。利益面では、公的プロジェクトの拡大に伴う案件構成の変化による利益率への影響と、採用・研究開発などの費用増を織り込み、2028年8月期以降の持続的な利益成長につなげるとしています(同 p.6)。

公的プロジェクトが売上高に占める割合は、2024年8月期の2%から2025年8月期18%、2026年8月期24%と上がってきました。同じ期間に売上総利益率は66.7%→62.4%→61.0%と下がっており、会社は案件構成の変化に応じた緩やかな低下と説明しています(ABEJA 2026年8月期 決算説明資料 p.15)。

経常利益が横ばいの予想なので、純利益の減少(-36.2%)は税金の差によるものです。前期は法人税等の合計がマイナス3.1億円だったのに対し、今期予想は経常利益と純利益の差から約0.8億円の負担で、税引前利益の約1割にとどまる前提です(KabuGraph算出)。

領域別売上の推移

領域別売上構成比(2026年8月期)

出典:ABEJA 2026年8月期 決算短信よりKabuGraph作成

領域別では、オペレーション領域が12.9億円(前期比+54.1%)と、トランスフォーメーション領域(32.9億円、+19.6%)を大きく上回って伸び、構成比は前期の23.4%から28.2%に上がりました。会社が示したその他の指標は次の通りです。

  • LLM案件の売上構成:前期の50%超から、2026年8月期は80%弱に上昇

  • 大口の取引先:年間売上高5,000万円以上の取引先からの売上が前期比+36.2%

  • フィジカルAI関連:全社売上の10%弱。通期の増収額(+9.9億円)の約40%に寄与

出典:ABEJA 2026年8月期 決算説明資料 p.14・p.15

財務の健全性

純利益の推移

出典:ABEJA 各期の決算短信(2026年8月期 決算短信ほか)よりKabuGraph作成。2025/8期と2026/8期は繰延税金資産の計上で税負担が軽い(法人税等の合計は2025/8期0.04億円、2026/8期マイナス3.1億円)。2027/8期は会社予想(2026年10月15日公表)

ABEJAの財務体質は極めて健全です。2026年8月期末で自己資本比率87.5%、純資産56.6億円を確保。期末の有利子負債はなく、現預金は44.2億円と潤沢です。上場時の資金調達が財務基盤の安定に寄与しており、研究開発やM&Aに振り向ける余力を十分に持っています。

一方、2026年8月期の営業キャッシュフローは1.7億円と、前期(16.2億円)から大きく減りました。前期は未収入金の回収(6.8億円)で膨らんでいた面があり、当期は売上債権の増加(3.8億円)と契約負債の減少(1.5億円)が重しになりました。投資有価証券は期末に3.8億円となり、富士山マガジンサービスやアンリアレイジへの出資などによるものです(ABEJA 2026年8月期 決算短信 p.5・p.12、決算説明資料 p.22)。

投資家が注目すべきポイント

成長ドライバー

1. エンタープライズAI市場の構造的成長

生成AI・LLMの急速な普及により、企業のAI導入ニーズは「実証実験」から「基幹業務への実装」フェーズに移行しています。ABEJAが「ミッションクリティカル業務へのAI実装」を掲げ10年以上蓄積してきた知見は、まさにこの需要増加の恩恵を受ける位置にあります。

2. 自社LLM開発力とGENIAC 4期連続採択

ABEJAは外部LLMのAPI利用に留まらず、自社でLLMを研究開発しています。GENIAC(経産省/NEDO)に第1期から4期連続で採択されている企業は限られており、国策としてのAI開発支援を受けながら技術力を高められる立場は大きな競争優位です。第2期ではAlibabaの「Qwen」をベースに、GPT-4を上回る日本語性能の32Bパラメータモデルを開発しており、既存のモデルを日本語・業務向けに磨き上げる技術力を示しています。GENIACを含む公的プロジェクトは2026年8月期の売上高の24%を占めるまでになり、2027年8月期の増収計画の軸にもなっています。

3. オペレーション領域の拡大による収益安定化

ストック型収入が中心のオペレーション領域は、2026年8月期に前期比+54.1%と全社(+27.7%)を上回って伸びました。トランスフォーメーション(フロー型)で顧客を獲得し、オペレーション(ストック型)で収益を安定化させる好循環が機能し始めています。エンタープライズ企業の継続顧客からの売上比率も86.3%(2026年8月期、前期は88.8%)と高い水準にあります。

4. AIロボティクスへの事業領域拡張

ABEJAはLLMの知見をフィジカルAI(AIロボティクス)へ展開する取り組みを加速しています。2026年7月以降、JR東日本の高輪ゲートウェイシティにおける館内デリバリー自動化支援、村田製作所との実験業務自動化の技術検証、JAXAからの委託による宇宙空間でのPhysical AI実装支援など、具体的な案件が相次いでいます。9月には防衛装備庁と、無人車両の自律走行に映像・言葉・動作をまとめて扱うAIモデル(VLAモデル)を使う検証の契約を結び(1月の契約に続くもので、会社は業績への影響を軽微としています)、三菱重工業からも委託を受けて、AIエージェントなどを使って無人機に自律化の機能を持たせる検証の支援を始めました(ABEJA プレスリリース 2026年9月10日)。会社によると、フィジカルAI関連は2026年8月期に全社売上の10%弱を占め、通期の増収額の約40%に寄与しました。デジタル空間からリアル空間へ事業領域を拡張することで、TAM(獲得可能市場規模)の大幅な拡大が期待されます。

投資リスク

1. 繰延税金資産の計上を除けばグロース平均を3割上回るPER

2026年10月15日終値の実績PERは24.0倍と、東証グロース市場の単純平均PER(2026年9月末で31.7倍、連結)を下回ります。ただしこれは繰延税金資産の計上で膨らんだEPSによる見かけで、それを除くと約41.0倍と平均を3割ほど上回り、2027年8月期の会社予想ベースでも37.9倍です。利益がほぼ横ばいの計画に対して平均を上回る評価がついており、業績の下振れや成長鈍化が株価に大きなインパクトを与えるリスクがあります。

2. 無配当

ABEJAは上場以来、配当を実施しておらず、2027年8月期も無配の予想です。成長投資を優先する方針は理解できますが、インカムゲインを重視する投資家には不向きな銘柄です。

3. 少数精鋭ゆえのスケーラビリティリスク

従業員140名(2026年8月末)と小規模な組織であり、急激な需要増に対する人的リソースの制約が成長のボトルネックになる可能性があります。トランスフォーメーション領域はプロジェクト型であり、人員数が売上の上限を規定する構造です。

4. 2024年8月期に見られた成長一時停滞のリスク

2024年8月期には既存顧客の個社事情により売上が横ばいになりました。大口顧客への依存度が高い場合、特定顧客の方針変更が業績に直接影響する集中リスクが内在しています。筆頭株主のSOMPOホールディングス(子会社のSOMPO Light Vortexを通じて16.9%を保有、2026年8月末時点)は顧客でもあり、同社向けの売上高は2025年8月期の売上高の12.9%を占めます。

5. AI業界の激しい競争環境

エンタープライズAI市場にはNTTデータ、アクセンチュア、PwCなどの大手コンサルティングファームや、エクサウィザーズ(4259)、Laboro.AI(5586)などの同業AIスタートアップが参入しています。ABEJAの差別化要因であるABEJA Platformと自社LLMが、競合との技術差を維持できるかが中長期の鍵です。

6. 公的プロジェクトへの依存と利益率の低下

2027年8月期の会社予想は、公的プロジェクトの拡大を軸に売上高+30.2%を見込む一方、案件構成の変化と費用増で営業利益率は15.5%から12.2%に下がる前提です。公的プロジェクトは期間の決まった案件が多いため、新たな採択が続かなければ増収の勢いが鈍り、利益率だけが下がったまま残るおそれがあります。会社が見込む2028年8月期以降の利益拡大が実現するかは、まだ見通せません。

まとめ

ABEJAは、ABEJA Platformを基盤に300社超のエンタープライズAI実装を手がけ、自社LLM開発力とGENIAC連続採択で技術優位を築くAIプラットフォーム企業です。

2024年8月期の踊り場を経て2025年8月期には売上高+29.6%・営業利益+53.6%と力強く回復。2026年8月期も売上高+27.7%・営業利益+59.4%と、7月に上方修正した会社予想どおりに着地しました。LLM関連需要の取り込みと、長期支援を中心にしたオペレーション領域の拡大(+54.1%)が成長をけん引しています。なお、純利益10.7億円は税金の戻り(約3.1億円)を含むので、割り引いて見る必要があります。

2027年8月期は売上高+30.2%に対して営業利益+2.7%の計画で、公的プロジェクトの拡大による利益率の低下と、採用・研究開発の費用増を織り込んでいます。会社はこれを2028年8月期以降の利益拡大につなげるとしています。

一方、繰延税金資産の計上を除いた実績PERで約41倍、予想PERで約38倍と、いずれもグロース市場の平均(31.7倍)を上回る評価、無配当、従業員140名の小規模体制はリスク要因です(株価は2026年10月15日終値)。AIロボティクスや公的プロジェクトなど将来の成長余地は大きいものの、今期は利益がほぼ横ばいの計画である点には留意が必要です。

個人投資家にとっては、公的プロジェクトを軸にした増収計画の進み具合と、下がる利益率がどこで止まるかが判断材料になるでしょう。四半期ごとの売上高と営業利益率に加え、オペレーション領域の比率が上がり続けるかどうかは、収益の安定性を測る上で注目すべき指標です。

コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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