ウォール街の格言35選|バフェット・グレアム・リバモアの名言を英語原文つきで解説

ウォール街には200年以上にわたって語り継がれてきた投資格言があります。相場の本質は時代が変わっても同じだからこそ、これらの格言は今も投資家の判断指針として生き続けています。
本記事では、ウォーレン・バフェット、ベンジャミン・グレアム、ジェシー・リバモアなど伝説の投資家たちが残した名言を英語原文と日本語訳つきで紹介し、「逆張り」「長期投資」「リスク管理」「市場心理」の4テーマに分けて解説します。
この記事の内容(目次)
逆張り・買い時の格言
ウォール街で最も有名な格言群の一つが、「大衆と逆を行け」という逆張りの教えです。暴落時にパニックに巻き込まれず、冷静に行動するための指針として語り継がれています。
1. 「他人が貪欲なときに恐れ、他人が恐れているときに貪欲であれ」
"Be fearful when others are greedy, and greedy when others are fearful."
— ウォーレン・バフェット(バークシャー・ハサウェイ 1986年 株主への手紙)
バフェットの最も有名な格言です。市場が過熱して楽観ムードに包まれているときこそ警戒し、暴落で悲観が支配しているときこそ買い場と捉えよ、という逆張りの本質を一文に凝縮しています。実際にバフェットは2008年のリーマン・ショック直後にゴールドマン・サックスやGEへ大型投資を実行し、大きなリターンを得ました。
2. 「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、陶酔の中で消えていく」
"Bull markets are born on pessimism, grow on skepticism, mature on optimism, and die on euphoria."
— ジョン・テンプルトン卿(テンプルトン・グロース・ファンド創設者)
逆張り投資の巨匠テンプルトンが残した、相場サイクルの4段階を端的に表した格言です。「皆が絶望しているとき」が買い場であり、「皆が安心しきったとき」が売り場になるという市場の周期性を教えてくれます。テンプルトンは第二次世界大戦の開戦直後、1ドル以下で取引されていた104銘柄に各100ドルずつ投資し(うち37銘柄は破産状態)、4年で4倍のリターンを得たことで知られます。
3. 「血が路上に流れているとき、それが自分の血であっても買え」
"Buy when there's blood in the streets, even if the blood is your own."
— ロスチャイルド家に帰属(18〜19世紀。特定の人物は諸説あり)
18世紀末〜19世紀のロスチャイルド家に伝わるとされる格言です。ナポレオン戦争の混乱期にロンドン市場で大規模な国債投資を行い、巨額の利益を得たエピソードが背景にあるとされますが、帰属先にはネイサン、アンゼルムなど諸説あります。「たとえ自分の血であっても」の部分は後世の付加とする説が有力です。恐慌やパニックのさなかにこそ最大の投資機会がある、という極端な逆張りの教えです。
4. 「人が売るときに買い、人が買うときに売れ」
"Buy when everyone else is selling and hold until everyone else is buying."
— J・ポール・ゲティ(石油王、20世紀)
一時は世界一の富豪と呼ばれた石油王ゲティの言葉です。大衆の逆を行くことの重要性を簡潔に述べています。ゲティは大恐慌の最中に割安な石油株と不動産を買い集め、莫大な資産を築きました。
5. 「最も暗い時間は夜明けの直前にある」
"The darkest hour is just before the dawn."
— 英語圏のことわざ(17世紀、トーマス・フラーの著作に由来)
もともとは英語圏の一般的なことわざですが、ウォール街では相場の底打ちを表す格言として広く使われています。最も悲観的なニュースが集中するときが、実は相場の底に近いことを示唆しています。
6. 「大衆は常に間違っている」
"The public is always wrong."
— ハンフリー・B・ニール(逆張り投資理論の提唱者、1954年『The Art of Contrary Thinking』)
ニールは「逆張り思考の技術」の著者として知られ、多数派の意見が一致した時点でその見方は織り込まれており、むしろ逆方向に動く可能性が高いと論じました。
長期投資・忍耐の格言
「時間を味方にする」ことの重要性は、ウォール街の多くの伝説的投資家が繰り返し語ってきたテーマです。
7. 「短期的には市場は投票機だが、長期的には計量機である」
"In the short run, the market is a voting machine but in the long run, it is a weighing machine."
— ベンジャミン・グレアム(バフェットが伝えるグレアムの教え。原型は『証券分析』1934年の「投票機」の比喩)
バリュー投資の父グレアムの代表的な格言です。グレアムは『証券分析』で市場を「投票機」に喩え、バフェットがグレアムの授業での教えとして「長期では計量機」の対比を広めました。短期の株価は人気投票のように感情やムードで動くが、長期では企業の本質的な価値が株価に反映される、という意味です。短期の値動きに一喜一憂するのではなく、企業の本質的価値(内在価値)を見極めることの大切さを説いています。
8. 「10年間保有する気がないなら、10分間でも持つな」
"If you aren't willing to own a stock for ten years, don't even think about owning it for ten minutes."
— ウォーレン・バフェット(バークシャー・ハサウェイ 1996年 株主への手紙)
短期売買に走るのではなく、長期保有に値する企業を選ぶべきだという教えです。バフェットはコカ・コーラ(1988年購入)やアメリカン・エキスプレスを数十年単位で保有し続けたことで知られます。
9. 「株式市場はせっかちな人から忍耐強い人へ資産を移す装置である」
"The stock market is a device for transferring money from the impatient to the patient."
— ウォーレン・バフェットに帰属(具体的な一次ソースは未確認)
株式市場はせっかちな人から忍耐強い人へ資産を移す装置であるという警句です。短期のノイズに惑わされて売買を繰り返すほど手数料と税金がかさみ、じっくり保有する投資家との差が開いていくことを示唆しています。
10. 「複利は世界第八の不思議である」
"Compound interest is the eighth wonder of the world. He who understands it, earns it; he who doesn't, pays it."
— アルバート・アインシュタインに帰属(原典は未確認)
アインシュタインの言葉として広く知られていますが、実は明確な原典は確認されていません。ただし、複利の威力は投資の世界では紛れもない事実です。年利7%で運用すれば約10年で資産は2倍になります。長期投資が報われる最大の理由が、この複利効果です。
11. 「市場に居続けることが、市場のタイミングを計ることに勝る」
"Time in the market beats timing the market."
— ウォール街の格言(ケン・フィッシャーやピーター・リンチが引用)
売買のタイミングを完璧に当て続けることは事実上不可能であり、市場に長く参加し続けるほうが良い結果を生むという教えです。S&P 500の過去30年間で、上昇率が最も高かった上位10日間を逃すだけでリターンは半減するという統計が、この格言の正しさを裏付けています。
12. 「干し草の山から針を探すな。干し草の山ごと買え」
"Don't look for the needle in the haystack. Just buy the haystack!"
— ジョン・C・ボーグル(バンガード創設者、インデックスファンドの父)
バンガード・グループの創設者ボーグルの言葉です。個別株を選んで市場を出し抜こうとするより、インデックスファンドで市場全体に投資するほうが合理的だという主張を比喩で表しています。ボーグルが1975年に設立した世界初の個人投資家向けインデックスファンド(現バンガード500)は、この哲学を実現したものです。
13. 「投資とは、ペンキが乾くのや草が伸びるのを見ているようなものだ。スリルが欲しいなら800ドル持ってラスベガスに行け」
"Investing should be more like watching paint dry or watching grass grow. If you want excitement, take $800 and go to Las Vegas."
— ポール・サミュエルソン(ノーベル経済学賞受賞者)
堅実な投資はいかに退屈であるべきかを、ユーモアを交えて伝えた名言です。サミュエルソンはインデックスファンドの普及を強く支持した経済学者でもあります。毎日値動きを追い、頻繁に売買したくなる衝動を抑え、時間を味方につけることが長期投資の本質——「市場は投票機だが、長期的には計量機」(7番)というグレアムの教えにも通じます。
リスク管理・損切りの格言
投資で資産を守るために、リスク管理と損切りに関する格言はウォール街で最も重視されるテーマの一つです。
14. 「第1のルール:損をするな。第2のルール:第1のルールを忘れるな」
"Rule No. 1: Never lose money. Rule No. 2: Never forget Rule No. 1."
— ウォーレン・バフェット
バフェットが最も大切にする原則です。50%の損失を取り戻すには100%のリターンが必要になるように、損失の回避は利益の追求よりも重要です。「絶対に損をするな」という文字通りの意味ではなく、元本毀損を最小限に抑えることが資産形成の最優先事項だという教えです。
15. 「投資とは、徹底的な分析に基づき、元本の安全と満足なリターンを約束するものである」
"An investment operation is one which, upon thorough analysis, promises safety of principal and an adequate return."
— ベンジャミン・グレアム(『証券分析』1934年)
グレアムが「投資」と「投機」を明確に区別した定義です。徹底的な分析を行い、元本の安全性を確保したうえで適切なリターンを得るものが「投資」であり、これらの条件を満たさないものは「投機」である、と定義しました。自分の行動が投資なのか投機なのかを常に問い直す姿勢が大切です。
16. 「卵を一つのカゴに盛るな」
"Don't put all your eggs in one basket."
— 英語圏のことわざ(17世紀、ミゲル・デ・セルバンテス『ドン・キホーテ』に類似表現)
分散投資の重要性を説く最も有名な格言です。一つの銘柄や資産に集中投資すると、それが下落したときに資産全体が大打撃を受けます。セクター・地域・資産クラスを分散させることでリスクを低減できます。
17. 「雄牛は儲け、熊は儲け、豚は屠殺される」
"Bulls make money, bears make money, pigs get slaughtered."
— ウォール街の格言
強気(Bull)でも弱気(Bear)でも利益を出すことはできるが、欲張って利確のタイミングを逃す「豚」だけは必ず損をする、という戒めです。利益が出ているときに「もっと上がるはず」と欲をかくと、反転時に利益を吐き出してしまうリスクがあります。
18. 「最初の損失が最も小さい」
"The first loss is the best loss."
— ウォール街の格言
判断を誤ったと気づいたら、傷が浅いうちに損切りすべきだという教えです。「もう少し持てば戻るかもしれない」と先延ばしにするほど損失は膨らみます。早めに損を認めて撤退する判断力が、結果として資産を守ることにつながります。
19. 「市場は、あなたが支払い能力を維持できる期間よりも長く、非合理的でいられる」
"The market can stay irrational longer than you can stay solvent."
— ジョン・メイナード・ケインズに帰属(具体的な一次ソースは未確認)
経済学者ケインズの言葉として広く引用される格言です。割高・割安の判断が正しくても、市場がその方向に動くまでに資金が尽きれば意味がない、という警告です。逆張りの正しさが証明されるまでに、追証や強制決済で退場させられるリスクを忘れてはいけません。レバレッジを効かせた取引ではとりわけ重要な教訓です。
20. 「重要なのは、正しいか間違っているかではない。正しいときにいくら稼ぎ、間違ったときにいくら損をするかだ」
"It's not whether you're right or wrong that's important, but how much money you make when you're right and how much you lose when you're wrong."
— ジョージ・ソロス(クォンタム・ファンド創設者)
勝率よりも「損小利大」の徹底こそが投資の本質だと説いた言葉です。10回の取引のうち6回負けても、4回の勝ちで大きく取れればトータルでプラスになります。ソロスは1992年のポンド売りで10億ドル以上の利益を得た一方、間違ったときは素早く撤退することでも知られていました。「最初の損失が最も小さい」(17番)と合わせて、損切りの速さと利益の伸ばし方の両輪を意識しましょう。
市場心理・行動バイアスの格言
投資における最大の敵は自分自身の感情です。ウォール街の格言は、恐怖・欲望・過信といった行動バイアスへの処方箋を数多く残しています。
21. 「ウォール街で新しいことなど何もない」
"There is nothing new in Wall Street. There can't be because speculation is as old as the hills."
— ジェシー・リバモア(エドウィン・ルフェーブル『Reminiscences of a Stock Operator』1923年)
「ウォール街のグレート・ベア」と呼ばれたリバモアの代表的格言です。バブルと崩壊は何度でも繰り返されるという洞察であり、過去の歴史を学ぶことが投機で生き残るための最善策だと説いています。1929年の大暴落を予見し、空売りで巨額の利益を得たリバモアの経験に裏打ちされた言葉です。
22. 「相場師の成功は心理的な闘いで決まる」
"The game of speculation is the most uniformly fascinating game in the world. But it is not a game for the stupid, the mentally lazy, the person of inferior emotional balance."
— ジェシー・リバモア(同上)
投機は知力の勝負ではなく感情の制御が勝敗を分ける、というリバモアの核心的な主張です。頭の良さよりも精神的なバランスが投資の成否を左右します。
23. 「ミスター・マーケットは気分屋だが、あなたが合わせる必要はない」
"Mr. Market is there to serve you, not to guide you."
— ベンジャミン・グレアム(『賢明なる投資家』1949年)
グレアムは市場を「ミスター・マーケット」という架空の人物に喩えました。ミスター・マーケットは毎日異なる値段を提示してくる気分屋だが、彼の提案を受け入れるかどうかは投資家の自由です。市場価格に振り回されるのではなく、自分の計算した内在価値に基づいて判断すべきだという教えです。
24. 「投資で最も危険な4つの単語は『今回は違う』」
"The four most dangerous words in investing are: 'This time it's different.'"
— ジョン・テンプルトン卿
バブルのたびに「今回は今までと違う」と言い訳が語られますが、結局は同じパターンが繰り返されてきました。ITバブル、リーマン・ショック、仮想通貨バブルなど、どの局面でもこの言葉が聞かれました。過度な楽観を戒め、歴史に学ぶ姿勢の重要性を説いています。
25. 「靴磨きの少年に株の話をされたら売り時だ」
"When the shoeshine boy gives you stock tips, it's time to sell."
— ジョセフ・P・ケネディ(ケネディ大統領の父、1928年頃)
1929年の大暴落の前年、ケネディは靴磨きの少年から株の銘柄を勧められ、「普段株に縁のない人まで株の話をし始めたら天井だ」と判断して保有株を全て売却したと伝えられています。結果として大暴落を免れ、莫大な資産を守りました。一般大衆にまで投資熱が広がった時こそ、市場の過熱を疑うべきというサインです。
26. 「ウォール街にはロールスロイスで乗り付けて、地下鉄で帰る人からアドバイスを受ける場所だ」
"Wall Street is the only place that people ride to in a Rolls Royce to get advice from those who take the subway."
— ウォーレン・バフェット
金融業界の矛盾をユーモラスに突いた格言です。金融のプロが必ずしも自分の顧客より良い投資成績を上げているわけではない、という皮肉を込めています。専門家の意見を鵜呑みにせず、自分で調べて判断することの大切さを説いています。
銘柄選択・企業分析の格言
どの銘柄を買うべきか、どの企業を選ぶべきか。投資のプロたちは「何を買うか」の判断基準をシンプルな言葉に残しています。
27. 「能力の輪を知り、その中にとどまれ」
"Know your circle of competence, and stick within it."
— ウォーレン・バフェット(バークシャー・ハサウェイ 1996年 株主への手紙)
自分が理解できるビジネスだけに投資せよ、という教えです。バフェットは長年テクノロジー株を避けていた理由を「自分の能力の輪の外にあるから」と説明していました。能力の輪の大きさよりも、その境界線を正確に認識していることが重要だと述べています。
28. 「自分が知っているものに投資せよ」
"Invest in what you know."
— ピーター・リンチ(『One Up on Wall Street』1989年)
マゼラン・ファンドを13年間で運用資産約1,800万ドルから140億ドルに育てたリンチの信条です。「スーパーで人気の商品を作っている企業」「自分が毎日使うサービスの会社」など、日常生活の中から投資アイデアを見つけることで、ウォール街のアナリストより先に有望銘柄を発掘できると主張しました。
29. 「素晴らしい企業をそこそこの値段で買うほうが、そこそこの企業を素晴らしい値段で買うよりいい」
"It's far better to buy a wonderful company at a fair price than a fair company at a wonderful price."
— ウォーレン・バフェット(バークシャー・ハサウェイ 1989年 株主への手紙)
バフェットが師匠グレアムの「シケモク投資(安い株ならなんでも拾う)」から進化して到達した投資哲学です。競争優位性(=「経済的な堀」)を持つ優良企業に適正価格で投資するほうが、長期的なリターンは大きいという考え方で、チャーリー・マンガーの影響を受けたとされます。
30. 「木は天まで伸びない」
"Trees don't grow to the sky."
— ドイツのことわざ(ウォール街でも頻用)
元はドイツのことわざですが、ウォール街でも成長株の過信を戒める文脈で頻繁に引用されます。どんな優良企業でも永遠に成長し続けることはない。高PERの成長株が期待に応えられなくなったときの反動の大きさを意識しておく必要があります。
31. 「インセンティブを見せてみろ。そうすれば結果を教えてやろう」
"Show me the incentive and I will show you the outcome."
— チャーリー・マンガー(バークシャー・ハサウェイ副会長)
経営者や従業員がどのような報酬体系・動機で動いているかを見れば、その企業や市場の行く末は予測できるという、人間の本質を突いた言葉です。マンガーは「インセンティブ超反応傾向」を人間の最も重要な心理バイアスとして挙げました。企業分析では、経営者の持ち株比率・ストックオプション・業績連動報酬の設計を見ることで、株主と利害が一致しているかを判断できます。
価値評価・価格の格言
「価格」と「価値」は別物である——ウォール街で最も重要な区別の一つです。
32. 「価格はあなたが支払うもの、価値はあなたが得るものだ」
"Price is what you pay. Value is what you get."
— ウォーレン・バフェット(バークシャー・ハサウェイ 2008年 株主への手紙)
バフェットが繰り返し引用する格言で、元はグレアムの「安全域」の考え方を端的に表したものです。株価が高いから割高とは限らず、安いから割安とも限らない。大事なのは支払う価格に対して得られる企業価値がどれだけあるかです。PERやPBRが低いからといって安い買い物とは限らず、高い株価でも将来価値が十分ならば適正な投資になりえます。
売買タイミング・相場観の格言
いつ買い、いつ売るか。売買のタイミングに関する格言も数多く残されています。
33. 「5月に売って立ち去れ」
"Sell in May and go away."
— 英国の格言(ロンドン証券取引所の伝承。起源は定かではないが18世紀頃とされる)
もともとはロンドンの証券街に伝わる「Sell in May and go away, and come back on St. Leger's Day(セント・レジャー・ステークスの日=9月に戻ってこい)」を略したものです。5〜10月は株式市場のリターンが低い傾向にあるというアノマリー(経験則)に基づいています。ただし、これに従って市場を離脱するとその間の配当や急騰を逃すリスクもあり、長期投資家には必ずしも有効とは限りません。
34. 「トレンドは友達だ。逆らうな」
"The trend is your friend."
— ウォール街の格言(マーティン・ツバイクが普及に貢献)
上昇トレンドの銘柄を買い、下降トレンドの銘柄を避けるという、トレンドフォローの基本原則を示す格言です。逆張り格言と矛盾するようですが、使い分けがあります。市場全体の暴落は逆張りの好機になりえますが、個別銘柄の下降トレンドには業績悪化や構造的な問題が伴うケースが多く、安易に逆張りすると損失が拡大します。

投資のアノマリーとは|1月効果・セルインメイなど代表的な17の経験則と活用の注意点
株式市場のアノマリー(経験則)を網羅的に解説。1月効果・セルインメイ・曜日効果・小型株効果など12種類の定義と実証データ、効率的市場仮説との関係、投資で使う際の注意点を紹介します。
35. 「調整局面そのものよりも、調整に備えたり予測しようとしたりする投資家によって、はるかに多くの資金が失われてきた」
"Far more money has been lost by investors preparing for corrections, or trying to anticipate corrections, than has been lost in corrections themselves."
— ピーター・リンチ(マゼラン・ファンド元運用者)
暴落を恐れて早々に現金化したり、空売りでタイミングを計ろうとしたりする行為が、暴落そのものより大きな損失を生むという逆説的な教えです。相場の調整は避けられないが、予測は不可能——だからこそ「市場に居続けることが、市場のタイミングを計ることに勝る」(11番)のです。リンチがマゼラン・ファンドを運用した13年間、年平均リターン29%を達成できたのも、暴落時に逃げ出さなかったことが一因でした。
格言を一覧で比較する
ここまで紹介した30の格言を、テーマ・発言者・キーメッセージの一覧表にまとめます。
No. | テーマ | 格言 | 発言者 | キーメッセージ |
|---|---|---|---|---|
1 | 逆張り | 他人が貪欲なときに恐れよ | バフェット | 大衆心理の逆を行く |
2 | 逆張り | 強気相場は悲観の中で生まれる | テンプルトン | 相場サイクルの4段階 |
7 | 長期 | 短期は投票機、長期は計量機 | グレアム | 本質的価値は長期で反映 |
8 | 長期 | 10年保有する気がないなら持つな | バフェット | 長期保有前提で選ぶ |
13 | 長期 | ペンキが乾くのを見るような退屈さが正解 | サミュエルソン | 退屈な投資こそ正解 |
14 | リスク | 第1のルール:損をするな | バフェット | 元本毀損の最小化が最優先 |
19 | リスク | 市場は非合理的でいられる | ケインズ | 正しくても資金が尽きれば終わり |
20 | リスク管理 | 正しいときにいくら稼ぎ、間違ったときにいくら損をするか | ソロス | 期待値で考える |
21 | 心理 | ウォール街に新しいことは何もない | リバモア | 歴史は繰り返す |
27 | 銘柄選択 | 能力の輪にとどまれ | バフェット | 理解できるビジネスだけ |
31 | 企業分析 | インセンティブを見れば結果がわかる | マンガー | 仕組みが行動を決める |
35 | 相場観 | 調整に備える投資家のほうが損をしてきた | リンチ | 調整を待つコストは高い |
格言の活かし方と注意点
格言は投資判断の「原則」を教えてくれますが、万能のルールではありません。実際の投資に活かすためのポイントを整理します。
矛盾する格言は「使い分ける」もの
「トレンドは友達だ」と「人が売るときに買え」、「卵を一つのカゴに盛るな」と「一つのカゴを注意深く見守れ」のように、一見矛盾する格言が共存しています。これは格言が間違っているのではなく、場面によって適用すべき原則が異なるということです。
市場全体のパニック → 逆張りの格言が有効(市場全体が安くなるので割安銘柄が増える)
個別銘柄の下降トレンド → トレンドフォローの格言が有効(業績悪化が原因なら回復しない可能性)
初心者・資産形成期 → 分散投資の格言が有効(リスク分散が最優先)
深い分析力のある熟練投資家 → 集中投資の格言が有効(確信度の高い銘柄にリソースを集中)
格言は「出典」を確認して読む
有名な格言でも、原典が確認できないものがあります。「複利は世界第八の不思議」はアインシュタインの言葉として広まっていますが、彼が実際にそう述べた記録は見つかっていません。格言そのものの有用性は変わりませんが、誰がどんな文脈で述べた言葉なのかを理解して初めて、正しく使い分けられます。
格言を実践に繋げるステップ
自分の投資スタイルを認識する(長期か短期か、バリューかグロースか)
自分のスタイルに合う格言を3〜5個選ぶ(全部覚えようとしない)
売買判断で迷ったときに格言を思い出す(感情に流される前のブレーキとして)
格言と自分の判断が食い違ったときこそ慎重に(格言は過去の教訓の集積。無視するなら相応の理由が必要)

株の格言34選|江戸時代から伝わる相場の知恵と投資への活かし方
「頭と尻尾はくれてやれ」「国策に売りなし」など代表的な相場格言34選を、買い時・売り時・心構え・リスク管理のカテゴリ別に紹介。意味・由来・投資への活かし方をわかりやすく解説します。

干支の相場格言|十二支すべての意味と日経平均の過去実績で検証
「辰巳天井、午尻下がり…」干支にまつわる株式相場の格言を十二支すべて紹介。日経平均の過去70年超の騰落率データで格言の的中率を検証し、アノマリーとしての位置づけを解説します。
出典・参考文献
本記事で紹介した格言の出典を一覧にまとめます。
Benjamin Graham, Security Analysis, 1934(邦訳『証券分析』)
Benjamin Graham, The Intelligent Investor, 1949(邦訳『賢明なる投資家』)
Edwin Lefèvre, Reminiscences of a Stock Operator, 1923(邦訳『欲望と幻想の市場』)— ジェシー・リバモアをモデルにした自伝的小説
Peter Lynch, One Up on Wall Street, 1989(邦訳『ピーター・リンチの株で勝つ』)
John C. Bogle, The Little Book of Common Sense Investing, 2007(邦訳『インデックス投資は勝者のゲーム』)
Humphrey B. Neill, The Art of Contrary Thinking, 1954
Berkshire Hathaway Annual Reports(バークシャー・ハサウェイ 株主への手紙)— バフェットの格言の多くはこの年次報告書に記載
Mark Twain, Pudd'nhead Wilson, 1894(邦訳『おろかもの・ウィルソンの悲劇』)








