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ROAの目安|5%基準の根拠と業種別データで読む資産効率の合格ライン

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ROA(総資産利益率)は「5%以上なら優良」と言われることが多いものの、上場3,711社の中央値は4.10%にとどまり、業種の中央値も銀行業の0.28%から情報・通信業の6.67%まで大きく異なります。一律の数字で合否を決めるのではなく、同業種内での位置づけと改善の方向性を知ることがROA分析の本質です。

この記事では、5%基準の根拠、主要業種の中央値データ、業種間の差が生まれる構造的な理由、そしてデュポン分解で高ROA企業の共通点を読み解く方法を解説します。ROAの基本的な計算式や定義はROAとはの記事で詳しく解説しています。

ROA「5%基準」の根拠

投資の教科書やスクリーニングツールでは「ROA 5%以上が優良企業の目安」とよく書かれています。ただし、この5%に統一された定義や統計的な根拠があるわけではなく、経験則として広まった目安です。実際の分布のどこに当たるのかを確かめます。

KabuGraphが上場3,711社(プライム・スタンダード・グロース)の直近通期の決算短信から算出したROA(当期純利益÷総資産)の分布は以下のとおりです(決算データのある3,685社、2026年9月11日時点)。

統計量

ROA

平均

2.90%

中央値

4.10%

第1四分位(P25)

1.78%

第3四分位(P75)

6.99%

出典:KabuGraph算出(上場3,711社、直近通期の決算短信、2026年9月11日時点)。ROA=当期純利益÷総資産(期末)

中央値は4.10%、P75(上位25%ライン)は6.99%です。5%を超えれば中央値を明確に上回りますが、上位4分の1に入るには約7%が必要です。つまり「5%以上」は中央値を約1ポイント上回る「平均以上」の水準です。平均値が2.90%と中央値より低いのは、赤字企業や特別損失で大幅なマイナスを出している企業に引き下げられているためです。

業種別ROA一覧——33業種の中央値を比較

業種別の中央値は、最上位の情報・通信業6.67%から銀行業0.28%まで幅広く、医薬品にいたっては中央値がマイナス(−0.42%)です。同じ集計をもとに、東証33業種分類の中央値を上位から並べました。

業種別ROA中央値(上位15業種・下位8業種)

出典:KabuGraph算出(上場3,711社、直近通期の決算短信、2026年9月11日時点)

代表的な業種の中央値・P25・P75を一覧表にまとめます(上位・中位・下位の特徴的な業種を抜粋)。投資先の業種がどの水準にあるかを確認し、同業種内での比較に使ってください。

業種

中央値

P25

P75

企業数

情報・通信業

6.67%

2.39%

10.63%

606

鉱業

6.19%

5.09%

6.56%

5

精密機器

5.65%

2.69%

8.12%

52

ゴム製品

5.48%

2.62%

7.13%

16

サービス業

5.27%

2.18%

8.65%

534

建設業

4.99%

3.71%

7.22%

142

機械

4.38%

2.47%

6.98%

208

電気機器

4.34%

1.87%

6.75%

224

化学

4.15%

2.46%

6.11%

201

不動産業

3.72%

2.46%

6.02%

129

卸売業

3.61%

2.26%

5.32%

282

小売業

3.56%

1.34%

5.86%

323

電気・ガス業

2.98%

1.60%

4.60%

29

証券・商品先物取引業

2.56%

1.09%

5.50%

37

その他金融業

2.00%

0.79%

6.33%

39

保険業

1.67%

0.64%

5.44%

14

銀行業

0.28%

0.22%

0.39%

79

医薬品

−0.42%

−34.07%

4.61%

80

出典:KabuGraph算出(上場3,711社、直近通期の決算短信、2026年9月11日時点)。企業数は集計対象の上場企業数

プラス圏で最も低い銀行業(0.28%)と最上位の情報・通信業(6.67%)の差は約24倍。医薬品にいたっては中央値がマイナスで、約半数が赤字です。この差がなぜ生まれるかを次のセクションで解説します。

なぜ業種でROAが大きく違うのか——資産の「重さ」の構造

ROAの分母は「総資産」であり、ビジネスモデルに必要な資産の量が業種ごとに根本的に異なるため、ROAの水準も大きく変わります。

銀行業が0.28%で「正常」な理由

銀行は預金者から預かったお金を貸し出して利ざや(貸出金利−預金金利)で稼ぐビジネスです。預金は銀行にとって「負債」であり、総資産は貸出金・有価証券などで膨大な金額になります。たとえば三菱UFJフィナンシャル・グループの2026年3月期は、総資産431.7兆円に対して純利益2.43兆円で、ROAは0.56%です。それでも銀行業のP75(0.39%)を上回る、業界内では高い水準です。銀行同士の比較にROAは有効ですが、他業種と比べて「低いから非効率」と判断するのは的外れです。

情報・通信業が高い理由——軽資産モデル

SaaS企業やゲーム会社は、工場や大規模な在庫を持たず、ソフトウェアと人材で収益を生みます。総資産が小さいまま利益率が高いため、必然的にROAが高くなります。情報・通信業のP75は10.63%であり、上位4分の1の企業は10%を超えています。

医薬品の中央値がマイナスになる理由——研究開発の不確実性

医薬品は中央値−0.42%、P25は−34.07%という極端な数字です。売上のないまま研究開発費を計上するバイオベンチャーが多く、80社の約半数が赤字だからです。一方で大手はまったく別の顔を持ちます。中外製薬のROAは17.6%(2025年12月期)と全業種でも屈指の高さですが、武田薬品工業は2026年3月期に純損失を計上し、ROAは−1.0%でした。業種の中央値が個社の実力を表さない典型例で、医薬品は同業種比較よりも個社ごとの分析が欠かせません。

高ROA企業の共通点——デュポン2分解で読む

ROAは「売上高純利益率 × 総資産回転率」に分解できます(デュポン分解)。高ROAの企業は、利益率が高いか、資産の回転が速いか、あるいはその両方を実現しています。

出典:キーエンス 2026年3月期・コスモス薬品 2026年5月期の決算短信よりKabuGraph作成

利益率型:高い付加価値で稼ぐ

ブランド力や技術力で高い利益率を維持する企業です。キーエンスの2026年3月期は営業利益率51.0%、売上高純利益率38.1%という際立った利益率で、総資産回転率は0.32回にとどまりますが、ROAは12.1%と電気機器のP75(6.75%)を大きく上回ります。中外製薬(純利益率34.5%×回転率0.51回=ROA 17.6%、2025年12月期)も同じパターンです。

回転率型:資産を高速で回す

小売業や卸売業は利益率が低いものの、在庫を高速で回転させて総資産回転率を高めます。ディスカウントドラッグストアのコスモス薬品は、2026年5月期の売上高純利益率が2.9%と低い一方、総資産回転率は1.84回に達し、ROAは5.4%と小売業の中央値(3.56%)を上回っています。

投資家がチェックすべきポイント

ROAが改善した企業を見つけたら、デュポン分解で利益率の向上なのか、回転率の改善なのかを切り分けることが重要です。

  • 利益率の改善→ 価格転嫁やコスト削減が奏功。持続性があるか(一時的な特別利益ではないか)を確認

  • 回転率の改善→ 遊休資産の売却や在庫圧縮が奏功。持続的な仕組みの変化か、単発の資産売却かを区別

  • 両方が改善→ 経営改革が本格的に進んでいるサイン。最も評価できるパターン

ROAの目安を狂わせる3つの要因

業種別の目安を押さえたうえで、ROAが見かけ上変動する会計上の要因も知っておく必要があります。実際の収益力が変わっていなくても、会計処理の変更だけでROAが動くことがあるからです。

①リース会計基準の変更(IFRS第16号・企業会計基準第34号)

IFRS適用企業では、2019年1月1日以後に開始する事業年度からIFRS第16号によりオペレーティング・リースがオンバランス化(使用権資産とリース負債をB/Sに計上)されました。利益への影響は小さい一方、総資産が膨らむため、ROAは低下します。店舗を多数リースする小売業・外食産業などで影響が大きく、適用前後でROAを単純比較すると、収益力が落ちたように見えてしまいます。日本基準でも、2024年9月公表の企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(企業会計基準委員会)が2027年4月1日以後に開始する事業年度から適用され(2025年4月1日以後開始の事業年度から早期適用可)、同じ影響が出ます。

②M&Aによるのれんの増加

企業買収を行うと、取得価額と純資産の差額が「のれん」として資産に計上されます。大型M&Aを繰り返す企業は総資産が膨らみ、利益が同じでもROAは低下します。日本基準ではのれんを20年以内で規則的に償却するため利益も圧縮されますが、IFRSではのれんを償却せず減損テストのみ行うため、総資産が高止まりしたままROAが下がる構造になります。

③特別損益・一時的な資産変動

工場の売却益や減損損失、政策保有株の売却などは当期純利益を大きく変動させます。ROAの分子(当期純利益)が一時的な要因で上下するため、単年度のROAだけを見ると実力を見誤ります。3〜5年の推移で傾向を見ることで、一時要因を除いた実力値を判断できます。

ROAの目安を実際の投資判断に使うには

ここまでの業種別データと注意点を踏まえ、ROAを実際の投資判断に使う手順をまとめます。

  1. 業種の中央値を確認する——まず対象企業の業種における中央値(上の表)を確認し、その企業のROAが中央値のどの位置にあるかを見ます

  2. P25〜P75の範囲で位置づける——中央値を超えていればまず合格。P75を超えていれば業種内で上位25%の効率性。P25を下回っていれば、なぜ低いのかを調べる必要があります

  3. 3〜5年の推移をチェック——ROAが改善トレンドにあるか、悪化トレンドにあるかが重要です。単年度の数字だけでなく、方向性を見ます

  4. デュポン分解で原因を特定——利益率の変化なのか、回転率の変化なのかを切り分けると、改善の持続性を判断できます

  5. ROEと組み合わせる——ROAが高くてROEも高い企業は、借入に頼らず高い収益性を持つ「本質的な高収益企業」です。ROAは低いがROEが高い場合は、レバレッジ(財務レバレッジ)で引き上げている可能性があり、リスクの見極めが必要です。詳しくはROAとROEの違いの記事で解説しています。

ROAの位置

評価

次のアクション

業種P75超

優秀

高ROAの持続性を確認(競争優位の源泉)

中央値〜P75

平均以上

改善トレンドにあるかを3〜5年で確認

P25〜中央値

平均以下

デュポン分解で利益率・回転率のどちらが課題かを特定

P25未満

要注意

構造的な問題か一時要因かを見極め。改善計画があるか確認

KabuGraph作成

まとめ

ROAの目安は「全体で5%以上なら中央値超え、7%以上なら上位25%(P75超)」ですが、業種によって基準は大きく異なります。銀行業の0.28%と情報・通信業の6.67%を同じ基準で評価することはできません。

  • 上場3,711社の中央値は4.10%、P75は6.99%。7%を超えれば上位4分の1に入る(KabuGraph算出、2026年9月11日時点)

  • 業種の中央値は銀行業0.28%から情報・通信業6.67%まで約24倍の開きがあり、医薬品は中央値マイナス。必ず同業種内で比較する

  • 高ROA企業は「高利益率型」か「高回転率型」のどちらか。デュポン分解で特定する

  • リース会計変更・M&Aのれん・特別損益で見かけ上変動するため、3〜5年の推移で判断する

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コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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