CAGR(年平均成長率)とは|計算式・Excel関数・単純平均との違いを具体例で解説

CAGR(Compound Annual Growth Rate:年平均成長率)は、ある値が一定期間でどれだけ成長したかを「年あたりの複利ベース」で示す指標です。売上高や利益の成長率を比較したり、投資リターンを年率に換算したりする場面で広く使われます。
この記事では、CAGRの計算式と意味、Excelでの求め方、単純平均成長率との違い、実務での活用シーンと注意点を具体例つきで解説します。
この記事の内容(目次)
CAGRの定義と意味
CAGRは「複利で毎年一定の率で成長したと仮定したときの年率」です。実際には年ごとに成長率がばらついていても、開始値と終了値だけから「もし毎年同じ率で伸びていたらいくらか」を逆算します。
たとえば、売上高が3年で100億円から160億円に成長した企業があるとします。各年の成長率にばらつきがあっても、CAGRは「毎年約17.0%で成長した」と1つの数字で要約します。
CAGRが使われる場面
企業の業績分析 — 売上高や営業利益の過去5年・10年の成長率を1つの数字で把握
投資リターンの評価 — 投資元本がどの程度の年率で増えたかを算出
企業間・業界間の比較 — 規模の異なる企業の成長力を同じ物差しで比較
将来予測のベース — 過去のCAGRをもとに将来の売上高や市場規模を推計
CAGRの計算式
CAGRの計算式は以下のとおりです。
記号 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
SV(Starting Value) | 開始時点の値 | 100億円 |
EV(Ending Value) | 終了時点の値 | 160億円 |
n | 期間(年数) | 3年 |
計算例:売上高100億→160億円(3年間)
上の例に数値を当てはめてみましょう。
つまり、売上高が3年間で年平均17.0%ずつ成長したことを意味します。
2021年度 | → | 2022年度 | → | 2023年度 | → | 2024年度 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
売上高 | 100億円 | 130億円 | 120億円 | 160億円 | |||
経過年数 | 起点(0年目) | 1年 | 2年 | 3年 | n=3 |
ExcelでCAGRを計算する3つの方法
Excelには「CAGR関数」は存在しませんが、以下の3つの方法で簡単に計算できます。
方法1:べき乗演算子(^)を使う
最もシンプルな方法です。セルA1に開始値、B1に終了値、C1に年数が入っている場合:
=(B1/A1)^(1/C1)-1方法2:POWER関数を使う
べき乗をPOWER関数で置き換えた形です。
=POWER(B1/A1, 1/C1)-1方法3:RRI関数を使う(Excel 2013以降)
RRI関数はCAGRの計算そのものを行う関数です。引数は(期間、開始値、終了値)の順になります。
=RRI(C1, A1, B1)補足:RATE関数で代用する
RRI関数が使えない環境(Excel 2013より前のバージョン)では、RATE関数で代用できます。
=RATE(C1, 0, -A1, B1)RATE関数はローンの利率計算用ですが、CAGRにも流用できます。開始値にはマイナスを付ける点に注意してください。
方法 | 数式 | 特徴 |
|---|---|---|
べき乗(^) | =(B1/A1)^(1/C1)-1 | 最もシンプル。どのバージョンでも使える |
POWER関数 | =POWER(B1/A1,1/C1)-1 | 関数形式で読みやすい |
RRI関数 | =RRI(C1,A1,B1) | 最も簡潔。Excel 2013以降対応 |
CAGRと単純平均成長率の違い
成長率の「平均」には、CAGR(幾何平均)と単純平均(算術平均)の2種類があります。両者は似て非なるもので、使い分けを間違えると成長力を過大評価してしまいます。
具体例で比較する
ある企業の売上高が以下のように推移したとします。
年度 | 売上高 | 前年比成長率 |
|---|---|---|
2021年度 | 100億円 | — |
2022年度 | 150億円 | +50.0% |
2023年度 | 120億円 | −20.0% |
2024年度 | 156億円 | +30.0% |
このとき、2つの平均成長率は以下のように異なります。
単純平均成長率:(+50% − 20% + 30%) ÷ 3 = +20.0%
CAGR:(156 ÷ 100)^(1/3) − 1 = +16.0%
単純平均(20.0%)で3年間成長すると100億→172.8億円になりますが、実際は156億円です。単純平均は成長率を過大に見せてしまうため、企業や投資の成長力を評価する場面ではCAGRを使うのが適切です。
CAGRの活用シーン
1. 企業の売上成長率を比較する
規模の異なる企業を比較するとき、絶対額ではなくCAGRを使えば「成長の勢い」を公平に比べられます。たとえば売上高5年CAGRが20%の中小企業と5%の大企業があれば、成長力は前者が大きいと判断できます。
比較する期間を揃えることが前提です。3年CAGRと10年CAGRを並べても、経済環境が違うため有意な比較になりません。
2. 投資リターンを年率換算する
たとえば5年間で株価が200万円から350万円になった場合:
「5年で75%増えた」よりも「年率11.8%で増えた」のほうが、他の投資商品(預金・債券・投資信託)と比較しやすくなります。
3. 市場規模の成長予測
市場調査レポートでは「AI市場の2024〜2030年のCAGRは36.6%」のように使われます(Grand View Research調べ)。過去のCAGRから将来を予測する場合は、外部環境の変化を考慮する必要があります。
4. EPSや配当の成長力を評価する
1株当たり利益(EPS)の5年CAGRが高い企業は、利益成長が継続していることを示します。PER(株価収益率)と組み合わせて「PERは高いが成長率も高い(PEGレシオが低い)」といった分析にも使えます。
CAGRの注意点・限界
CAGRは万能な指標ではありません。以下の限界を理解した上で使いましょう。
途中経過が見えない
CAGRは開始値と終了値だけから計算するため、途中の変動(ボラティリティ)は完全に無視されます。たとえば以下の2つの投資はCAGRがほぼ同じ(約15%)ですが、リスクの大きさはまるで違います。
1年目 | 2年目 | 3年目 | 最終値 | CAGR | |
|---|---|---|---|---|---|
投資A(安定型) | +15% | +14% | +15% | 150.8 | 14.7% |
投資B(乱高下型) | +50% | −25% | +35% | 151.9 | 14.9% |
投資Bは2年目に25%下落しており、精神的な負荷も実際のリスクも投資Aとは段違いです。CAGRだけでなく、年ごとの推移(グラフ)と合わせて確認することが大切です。
起点と終点の選び方で結果が変わる
起点に異常値(特需や落ち込み)を選ぶと、CAGRが実態と大きくずれます。たとえばコロナ禍で売上が落ちた2020年度を起点にすると、その後の回復をそのまま「高成長」として計算してしまいます。
起点・終点をずらして複数のCAGRを比較する
3年・5年・10年など複数の期間で見る
起点・終点に明らかな異常値がないか確認する
将来を保証しない
過去のCAGRはあくまで実績であり、将来も同じ率で成長する保証はありません。市場環境・競合状況・経営戦略の変化によって成長率は変動します。「過去5年のCAGRが20%だから今後も20%」という推論は危険です。
マイナス・ゼロの値には使えない
CAGRの計算は「終了値÷開始値」のべき乗根を取るため、開始値や終了値がマイナス(赤字)の場合は計算できません。また、開始値がゼロの場合もゼロ除算となり計算不能です。新規事業の立ち上げ期に「初年度の売上が0円」というケースは実務でよく発生するため、注意が必要です。
まとめ
CAGRのポイントを整理します。
項目 | 内容 |
|---|---|
定義 | 複利ベースの年平均成長率 |
計算式 | (終了値 ÷ 開始値)^(1 ÷ 年数)− 1 |
Excel | =(B1/A1)^(1/C1)-1 またはRRI関数 |
単純平均との違い | 複利を反映するため、単純平均より正確 |
主な用途 | 業績分析・投資リターン評価・企業間比較・市場予測 |
注意点 | 途中経過を無視する・起点選びで結果が変わる・将来を保証しない |
CAGRは「成長力をひと目で比較する」ための便利な指標ですが、途中の変動やリスクは別途グラフなどで確認しましょう。また、起点・終点の選び方で数字が大きく動くため、複数の期間で比較することが重要です。









