MACDとは|見方と計算式、交差が遅れてだましが出る理由

MACD(マックディー)は、12日と26日の指数平滑移動平均(EMA)の差を1本の線にした指標です。その線(MACD)を9日で平均した「シグナル」と、2本の差を棒で表した「ヒストグラム」を合わせて表示し、トレンドの向きと勢いの変化を読みます。
見るときは、①MACDがゼロより上か下か(=短期と長期のEMAのどちらが上か)②MACDとシグナルの交差 ③ヒストグラムの伸び縮み ④株価との逆行(ダイバージェンス)の順に確かめます。弱点は、平均から作るので天井や底より遅れて交差することと、横ばいの相場では交差が「だまし」になりやすいことです。
この記事では、指数平滑移動平均の式とMACDの計算例、4つの見方、三菱UFJの月足での実例、パラメータ(12・26・9)、弱点を図解し、日経平均での検証結果とほかの指標との組み合わせも紹介します(ツールの既定値などは2026年10月13日時点)。
この記事の内容(目次)
MACDとは——2本のEMAの「間隔」で勢いを見る指標
MACDは Moving Average Convergence Divergence の略で、大和証券の用語解説は「移動平均収束拡散法」と訳しています(大和証券「金融・証券用語解説:MACD」、2026年10月13日閲覧)。短期の指数平滑移動平均(EMA)から長期のEMAを引いた値がMACDで、一般には12日と26日のEMAが使われます(同)。
2本の移動平均は、上昇が続くと短期の線が長期の線より上で離れていき(拡散)、勢いが鈍ると近づきます(収束)。MACDは、この2本の間隔そのものを1本の線にしたものです。日本テクニカルアナリスト協会の用語集は、MACDを「異なる期間のEMA差でトレンドと勢いを同時に見る指標」としています(日本テクニカルアナリスト協会「用語集」、2026年10月13日閲覧)。
画面には、次の3つが表示されます。
MACD(MACDライン):EMA12−EMA26。ゼロより上なら、短期のEMAが長期のEMAより上にある
シグナル(シグナルライン):MACDをさらに9日で平均した線。日本テクニカルアナリスト協会の用語集は「MACDの平滑線で、交差判定に用いる」としている(同「用語集」)
ヒストグラム:MACD−シグナルを棒で表したもの。MACDがシグナルより上なら棒はプラス、下ならマイナス
土台になる移動平均線そのもの(単純移動平均の計算と、日本でよく使う期間)や、移動平均線どうしのゴールデンクロスは、次の記事で扱っています。

グランビルの法則とは|移動平均線の向きと株価の位置で読む8つの売買ポイント
グランビルの法則は、移動平均線の向きと株価の位置・離れ方で売買の時期を判断する買い4つ・売り4つの法則。200日線、単純移動平均の計算、日本のツールの期間、ゴールデンクロスとの違い、三菱UFJ・トヨタの月足の実例とだましを図解。
考案者はジェラルド・アペル、ヒストグラムは後から加わった
MACDは米国のジェラルド・アペル(Gerald Appel)が考案しました。アペル自身は2005年の著書『Technical Analysis: Power Tools for Active Investors』の「はじめに(Introduction)」で、MACDを「1970年代後半に考案した指標」と書いています(Pearson(InformIT)『Technical Analysis: Power Tools for Active Investors』書籍ページ、2026年10月13日閲覧)。日本テクニカルアナリスト協会も、1978年にRSIを紹介したJ・ウェルズ・ワイルダーと「同じころ」にアペルがMACDを考案し、解説書の出版はだいぶ後になってからだったとしています(日本テクニカルアナリスト協会「テクニカル分析の歴史」)。
ヒストグラムは、トーマス・アスプレイ(Thomas Aspray)が加えたものです。アスプレイは、週足ではMACDのシグナルが遅れがちなので交差を先読みする方法がほしかったとし、1986年秋にMACDのヒストグラム(MACD Histogram/Momentum)を完成させたと書いています(Thomas Aspray「MACD Momentum Part 1」Technical Analysis of Stocks & Commodities 6巻8号(1988年8月)pp.294-297)。同じ記事の冒頭では、当初のヒストグラムを「MACDの10日モメンタム(3日で平滑)を棒で表したもの」と説明しており、今の多くのツールが描く「MACD−シグナル」の棒と同じ作り方とは限りません。
MACDの計算式と計算例——まず指数平滑移動平均(EMA)から
指数平滑移動平均(EMA)の式——直近の終値ほど重く数える
単純移動平均(SMA)は、期間内の終値を同じ重さで平均します。指数平滑移動平均(EMA)は、前日のEMAに「当日の終値との差」の一定割合を足して更新する平均で、直近の終値ほど重く、古い終値ほど軽く数えます。日本テクニカルアナリスト協会の解説と、楽天証券のマーケットスピードのヘルプは、MACDの計算に次の式を示しています(日本テクニカルアナリスト協会「科学的手法(検証可能な手法)」、楽天証券「マーケットスピード オンラインヘルプ:MACD」、2026年10月13日閲覧)。
12日:α=2÷13≒0.154。当日の終値に15.4%の重み
26日:α=2÷27≒0.074。当日の終値に7.4%の重み
9日(シグナル):α=2÷10=0.2。当日の値に20%の重み
図のとおり、EMA12は当日の終値に15.4%、直近12日の終値で重みの約87%を掛け、それより前の値も少しずつ残します。単純移動平均は12日間に8.3%ずつ同じ重みを掛け、12日を過ぎた値は一度に外します。終値が1,000円から1,100円に上がった翌日、EMA12は1,015円、SMA12は1,008円と、EMAの方が先に動きます(KabuGraph算出)。
日本テクニカルアナリスト協会は、移動平均の遅れ(遅行性)を改善する方法としてEMAを挙げています(日本テクニカルアナリスト協会「科学的手法(検証可能な手法)」)。値動きの向きが変わったときはSMAより早く反応し、1日1円ずつ下げてから1日1円ずつ上げるV字の値動きでは、EMA12は底の5日後、SMA12は7日後に上向きます(KabuGraph算出)。
ただし、遅れがなくなるわけではありません。重みの重心(平均して何日前の終値を見ているか)は、α=2/(n+1)のEMAも同じ期間のSMAも (n−1)÷2 日で、12日なら5.5日前、26日なら12.5日前です(KabuGraph算出)。α=2/(n+1)は、EMAの重心をn日のSMAとそろえる値になっています。
MACD・シグナル・ヒストグラムの式
シグナルの平均の取り方は、ツールによって違います。TradingViewは、シグナルを指数平滑と単純移動平均のどちらで計算するかを設定で選べます(TradingView「MACD(移動平均収束拡散手法)」、2026年10月13日閲覧)。楽天証券のマーケットスピードと松井証券の株式チャートは、シグナルを「MACDの9日単純移動平均」で計算しています(楽天証券「マーケットスピード オンラインヘルプ:MACD」、松井証券「【お客様サイト画面説明】株式チャート設定・説明」、2026年10月13日閲覧)。
同じ12・26・9でも、シグナルの計算が違えば交差の日がずれます。この記事の模式図の値動きでシグナルを単純移動平均に替えて計算すると、交差が1日早まったところがあり、指数平滑では出なかったゴールデンクロスとその3日後のデッドクロスが1組増えました(KabuGraph算出)。交差の日をほかのチャートと見比べるときは、計算の設定をそろえましょう。
計算例:終値が1,095円に上がった日
前日のEMA12が1,030円、EMA26が1,014円、シグナル(指数平滑で計算)が15円で、当日の終値が1,095円だったとします。
EMA12=1,030+(2÷13)×(1,095−1,030)=1,030+10=1,040円
EMA26=1,014+(2÷27)×(1,095−1,014)=1,014+6=1,020円
MACD=1,040−1,020=20円(前日は1,030−1,014=16円)
シグナル=15+0.2×(20−15)=16円
ヒストグラム=20−16=4円(前日は16−15=1円)
MACDがシグナルより上にあり、ヒストグラムが1円から4円に伸びたので、上向きの勢いが強まった日と読みます。
MACDの見方——4つのシグナル
下の図は、架空の値動きから計算したMACDに、4つの見方を書き込んだものです。
①ゼロラインの上か下か——短期と長期のEMAのどちらが上か
MACDがゼロより上にあるのは、EMA12がEMA26より上にあるときです。式から、MACDがゼロを上抜けた日は2本のEMAが下から上に交差(ゴールデンクロス)した日、下抜けた日は上から下に交差(デッドクロス)した日と同じになります。TradingViewのヘルプも、MACDがゼロより上なら短期の移動平均が長期の移動平均を上回っているとしています(TradingView「MACD(移動平均収束拡散手法)」)。
大和証券の用語解説は、MACDがゼロラインを上に抜けると上昇トレンドの継続、下に抜けると下降トレンドの継続を意味するといわれる、としています(大和証券「金融・証券用語解説:MACD」)。ゼロより上か下かで今のトレンドの向きをつかみ、交差はその向きの中で使うのが基本です。
図の例では、ゼロの上抜けは底から24日後で、株価は底値(855円)から約10%上がっていました。下抜けは天井から22日後で、天井(1,212円)から約6%下げていました。向きはつかみやすい代わりに、出るのは遅めです。
上昇トレンドの途中で一時的に下げる場面(押し目)では、MACDがゼロより上を保ったまま、シグナルを割ることがあります。押し目での買い方と損切りの置き方は押し目買いの記事で扱っています。
②MACDとシグナルの交差——ゴールデンクロス・デッドクロス
MACDがシグナルを下から上に抜けると買い、上から下に抜けると売りのサインとされます(大和証券「金融・証券用語解説:MACD」)。移動平均線の交差と同じ名前で、ゴールデンクロス(GC)・デッドクロス(DC)と呼ばれます(松井証券「MACD(マックディー)とは?」、2026年10月13日閲覧)。
ただし日本テクニカルアナリスト協会の解説は、MACDがマイナス圏から0を上回ること(=EMA12とEMA26の交差)をゴールデンクロス(買いシグナル)と呼び、「MACDシグナルは、判断には使いません」としています(日本テクニカルアナリスト協会「科学的手法(検証可能な手法)」)。アプリの通知や解説の「MACDのゴールデンクロス」が、シグナルとの交差とゼロの上抜けのどちらを指しているかを確かめましょう。この記事では、シグナルとの交差をGC・DCと呼びます。
図の例では、MACDとシグナルの交差はゼロラインの交差より早く、底の4日後にGC、天井の6日後にDCが出ました。その代わり途中の小さな上下でも交差するので、上昇の途中にもDCとGCが1回ずつ出て、DCで売った値段(1,136円)より高い値段(1,161円)で買い直す形になっています。
交差とゼロラインの位置関係について、証券会社は次のように説明しています。
楽天証券のヘルプ:MACDがシグナルを上抜けた後に、両ラインがゼロラインを上回った状態を「理想的な買いシグナル」としている(楽天証券「マーケットスピード オンラインヘルプ:MACD」)
松井証券の解説:ゴールデンクロスやデッドクロスは、ゼロラインから離れたところで発生するほど売買サインとしての信頼度が高いといわれる、としている(松井証券「MACD(マックディー)とは?」)
ゼロより下で出たGCは、長期のEMAがまだ短期のEMAより上にある=下降基調の中で下げの勢いが弱まった段階、ゼロより上で出たGCは、上昇基調の中で勢いが戻った形です。どちらを重く見るかは、①のトレンドの向きと合わせて決めます(KabuGraphの見方)。
③ヒストグラムの縮み——交差の前ぶれ
ヒストグラムはMACDとシグナルの差なので、棒が短くなっていくのは、2本が近づいている=交差が近いことを表します。アスプレイがヒストグラムを作ったのも、交差を先読みするためでした(前述)。図の例では、株価はまだ上がり続けているのに、ヒストグラムは15日ほど前から縮み始め、DCにつながりました。
ただし、縮んだ棒がそのまま伸び直すこともあります(図のゼロ上抜けの直後)。縮みは「勢いが鈍った」というだけで、交差や反転が決まったわけではありません。
④ダイバージェンス(逆行)——株価は高値更新、MACDは切り下げ
株価が高値を更新しているのに、MACDの山が前の山より低い状態をダイバージェンス(逆行)と呼びます。日本テクニカルアナリスト協会の用語集は、ダイバージェンスを「価格と指標が逆行し、転換示唆となる現象」としています(日本テクニカルアナリスト協会「用語集」)。株価は上がっていても、上がる勢い(2本のEMAの開き)は前の上昇より弱い、ということです。安値で起きる逆の形(株価は安値を更新、MACDの谷は切り上げ)は、下げの勢いが弱まった形です。
図の例では、2回目の高値(1,212円)は1回目(1,165円)より高い一方、MACDの山は48円から29円に下がり、その後に天井をつけて下げました。ただしダイバージェンスは何度も続くことがあり、出たらすぐ反転するわけではありません。TradingViewのヘルプも、価格とMACDの逆行は転換点を見極める手がかりになることがある、という書き方にとどめています(TradingView「MACD(移動平均収束拡散手法)」)。
実際のチャートで見る——三菱UFJの月足とMACD
実在の銘柄ではどう見えるかを、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)で確かめます。月末の終値から月足のMACD(12,26,9)を計算しました(シグナルはEMA。2016年8月以降の月末終値で計算し、2019年6月〜2022年12月を表示)。
2019年12月のGCは、3か月後にDC:GCの月の月末終値は593円、2020年3月のDCの月は403円で、交差どおりに売買すると約32%の損。月足は1本が1か月なので、急落の中でもDCが出るまで3か月かかった
2020年12月のGCは、安値の5か月後:月末終値の安値は2020年7月の393円。GCの月の月末終値は456円で、安値から約16%上がっていた
2021年6月にゼロを上抜け、2026年9月まで5年あまりゼロより上:月末終値は2021年6月の600円から、2026年9月には3,700円になった
2022年10月のDCは、翌月にGCへ戻った:上昇トレンドの中の1か月だけのDCで、10月末の700円で売っていれば、翌月は755円で買い直すことになった
2020年12月のGCで買い、2022年10月のDCで売ると約53%の利益:月末終値で456円から700円。遅れて出ても、大きな上昇の大半は取れた。2022年11月のGCの後は2026年9月まで交差が出ておらず、その間に月末終値は755円から3,700円になった
月足のゼロライン(①)は大きな流れを長く示し続けました。交差(②)は急落にも押し目にも遅れて反応し、損やだましも出た一方で、大きな上昇の大半は取れています。同じMACDでも、ゼロラインと交差のどちらを使うかで、受け取る情報が違うことが分かります。
三菱UFJフィナンシャル・グループ
国内最大の総合金融グループ。中核の「三菱UFJ銀行」が国内外で預金・貸出・為替業務を展開し、「三菱UFJ信託銀行」が資産運用・不動産・年金・遺言信託等の信託サービスを提供。「三菱UFJモルガン・スタンレー証券」が株式・債券の引受・売買仲介を…
三菱UFJの事業と業績は、次の記事で分析しています。

三菱UFJ FG(8306)の企業分析|メガバンク初の純利益2兆円突破、利上げ局面で変貌する国内最大金融グループ
三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)の事業構造、利上げ恩恵による収益拡大、セグメント別業績、配当政策、投資リスクを個人投資家向けに解説します。
パラメータ(12・26・9)と足の期間
12・26・9が一般的な組み合わせで、大和証券の用語解説も、MACDラインに12日と26日、シグナルに9日を一般的な期間としています(大和証券「金融・証券用語解説:MACD」)。
株式のチャートでは、松井証券の株式チャートの説明も、MACDを終値の12日と26日の指数平滑移動平均の差、シグナルをその9日単純移動平均で計算するとしています(松井証券「【お客様サイト画面説明】株式チャート設定・説明」)。ただし初期設定はツールによって違い、楽天証券のFX向けツール(マーケットスピードFX)の初期設定は5・20・9です(楽天証券「マーケットスピードFX オンラインヘルプ:MACD」、2026年10月13日閲覧)。使っているツールの設定画面で数字を確かめましょう。
期間を短くする(例:5・20・9):EMAが直近の値動きに早く反応し、交差が早く・多く出る。だましも増える
期間を長くする:交差は遅く・少なくなり、小さな上下は拾わなくなる
考案者も1つの組み合わせに限っていない:アペルの著書には、異なるMACDの組み合わせでシグナルを改善する節や、デイトレードでの使い方の節がある(Pearson(InformIT)書籍ページの目次)
足の期間を変えると、同じ12・26・9でも見ている期間が変わります。日足なら12日と26日(およそ半月と1か月強の営業日)、週足なら12週(約3か月)と26週(約半年)、月足なら12か月と26か月の平均を比べることになります。日本テクニカルアナリスト協会の用語集は、時間軸の使い方の例として「週足で大局を確認し、日足で売買タイミングを詰める」を挙げています(日本テクニカルアナリスト協会「用語集」)。
MACDの弱点——遅れ、レンジ相場のだまし、検証結果
天井・底より遅れて交差する
MACDは移動平均の差を、さらに平均した線(シグナル)と比べるので、交差は値動きの転換より後に出ます。重みの重心で見ると、EMA12は平均して5.5日前、EMA26は12.5日前の終値を見ていて、シグナル(9日のEMA)はそこからさらに4日分ほど遅れます(KabuGraph算出)。急な値動きでは、交差を待つ間に値段が大きく動きます(三菱UFJの月足では、GCからDCまでの3か月で月末終値が約32%下がった)。
レンジ相場では交差が往復する
株価が一定の幅で上下する横ばい(レンジ相場)では、MACDはゼロの近くを行き来し、交差は山と谷から遅れて出ます。図の例(1,000円を中心に±5%ほど(おおむね950〜1,050円)、約22営業日の周期で上下する値動き)では、GCで買ってDCで売ると4回のうち3回が損で、損益を単純に足すと約−9%でした(KabuGraph算出)。大和証券の用語解説も、MACDは方向性を探る指標なので、ボックス相場には弱いといわれるとしています(大和証券「金融・証券用語解説:MACD」)。
MACDがゼロの近くで交差を繰り返していること自体が、レンジ相場の目安になります(KabuGraphの見方)。そうした場面では交差での売買を控えるか、後で触れるRSI(過熱感を測る指標)や、値動きの幅(ボラティリティ)を測るボリンジャーバンドと合わせて判断します。
日経平均で検証した研究では、買い持ちを上回らなかった
MACDの売買ルールを長い期間のデータで確かめた研究は多くありません。その中で Chong, Ng & Liew(2014)は、1976年1月〜2002年12月の日次の終値で、イタリア・カナダ・ドイツ・米国(ダウ平均)・日本(日経平均)の5つの株価指数にMACDとRSIの売買ルールを当てはめ、サインが出てから10日間の値動きを買い持ちと比べました(Chong, Ng & Liew(2014)「Revisiting the Performance of MACD and RSI Oscillators」Journal of Risk and Financial Management 7巻1号)。
MACDのゼロライン(12・26)での売買:イタリアとカナダでは買い持ちを上回り、往復1%の取引コストを引いても利益が残った
MACDとシグナル(12・26・9)の交差での売買:ドイツでは有意なマイナス、ほかの4つの指数では予測力が見られなかった
日経平均:調べたMACD・RSIのどのルールも、統計的に意味のある差で買い持ちを上回らなかった
著者らの結論:ルールの有効性は市場によって変わる。使う前に、自分が売買する市場の過去のデータで確かめるよう勧めている
指数での結果なので、個別銘柄や今の相場にそのまま当てはまるわけではありません。ただ、「MACDの交差どおりに売買すれば儲かる」と言える根拠は、少なくともこの研究の日本株の結果からは得られていません。移動平均を使う売買ルール全般の研究は、グランビルの法則の記事で紹介しています。
日本株で気をつけること——株式分割と決算の窓
株式分割を調整していないチャートでは、MACDが急落します。分割の権利落ち日に、株価が分割比率ぶん下がったように見えるからです。例えば株価1万円前後で推移していた銘柄が1株を5株に分けると、調整していない系列では権利落ち日の終値が約2,000円になり、MACD(12,26)は1日でおよそ640円下がります(KabuGraph算出)。売りが殺到したわけではないので、使っているチャートが分割を調整しているかを確かめましょう。分割の仕組みは株式分割の記事で扱っています。
決算発表の翌朝のように、株価が窓を開けて大きく動いた日にも、EMAが一度に動いて交差が出ることがあります。交差が出た日に、決算や業績修正の発表、権利落ちがなかったかを確かめます。窓の見方は次の記事で扱っています。

ローソク足の見方|陽線・陰線とヒゲの読み方、形の意味は位置で変わる
ローソク足は1本で始値・高値・安値・終値を表し、実体は始値から終値、ヒゲの先が高値・安値。陽線・陰線は始値との比較で前日比とは別。十字線・包み足・窓など1本・2本の形と、出た位置で意味が逆になる形、だましの注意点を図解。
交差で買うなら、外れたときに手放す値段を先に決め、逆指値(注文の種類の記事)で入れておくと、だましで損が膨らむのを防げます。損失を小さく抑える手順は次の記事にまとめています。

ロスカット(損切り)とは|プロスペクト理論が邪魔をする「損失確定」の技術
ロスカット(損切り)の意味・目安・ルールの作り方をわかりやすく解説。損切りできない心理的原因(プロスペクト理論)から、逆指値を使った自動化、信用取引の強制決済・FXの強制ロスカットまで網羅。
ほかの指標との組み合わせ——RSI・ボリンジャーバンド・長い足
考案者の著書にも、ほかのテクニカル指標でMACDを確かめる節があります(Pearson(InformIT)書籍ページの目次)。MACDは移動平均から作るトレンド系の指標なので、性質の違う指標と役割を分けて使うと、弱点のレンジ相場を見分けやすくなります。役割の分け方の例は次のとおりです(KabuGraphの整理)。
RSI(相対力指数)で過熱感を見る:RSIはJ・ウェルズ・ワイルダーが1978年の著書で紹介した指標で(日本テクニカルアナリスト協会「テクニカル分析の歴史」)、一定期間の上昇幅と下落幅の比率から強弱を測る(同「用語集」)。0〜100の範囲で動き、70を超えると買われすぎ、30を下回ると売られすぎとみる使い方がある(Chong, Ng & Liew(2014))。MACDのGCが出ても、RSIがすでに70を超えていれば追いかけて買わない、といった使い方をする
ボリンジャーバンドで値動きの幅と位置を見る:バンドの幅が狭く横ばいのときは、MACDの交差がだましになりやすい場面と考える。ボリンジャーバンドで今の値段が値動きの幅のどこにあるかを、MACDで勢いの向きを見る、という分け方ができる
長い足でトレンドの向きを確かめる:週足のMACDがゼロより上(上昇基調)のときだけ、日足のGCで買うことを考える。トレンドの判定の仕方はダウ理論の記事
出来高を確かめる:日本テクニカルアナリスト協会の用語集は、出来高を勢いの裏付けの確認に使うとしている(同「用語集」)。出来高の増加を伴わない交差は、少ない売買で値段が動いただけのこともある
ボリンジャーバンドの計算と、スクイーズ(バンドの幅が縮む状態)の見方は次の記事で扱っています。ローソク足の形とRSIを組み合わせる例は酒田五法の記事にあります。

ボリンジャーバンドとは|±2σの見方と計算式、バンドに触れても売買サインではない
ボリンジャーバンドは20期間の移動平均±2σ(母標準偏差)で描く指標。考案者はバンドへのタッチを売買シグナルとせず、±2σ内は約9割とする。日本株の実測は日足87.3%(2026年9〜10月)。計算例、スクイーズ・バンドウォーク、順張り・逆張りを図解。
よくある質問
MACDとRSIの違いは?
MACDは2本の移動平均の差で、値に上限・下限がなく、トレンドの向きと勢いの変化を見ます。RSIは上昇幅と下落幅の比率で0〜100の範囲に収まり、買われすぎ・売られすぎの目安に使われます。役割が違うので、本文「ほかの指標との組み合わせ」のように分けて使います。
MACDのゴールデンクロスと、移動平均線のゴールデンクロスは同じ?
どちらの意味で使っているかによります。松井証券などの解説は、MACDがシグナル(MACD自身の平均)を上抜けることをゴールデンクロスと呼んでいて、これは移動平均線どうしの交差とは別のものです。一方、日本テクニカルアナリスト協会の解説は、MACDがマイナス圏から0を上回ること、つまり12日と26日のEMAどうしのゴールデンクロスをそう呼んでいます(日本テクニカルアナリスト協会「科学的手法(検証可能な手法)」)。アプリの通知や解説が、どちらの交差を指しているかを確かめましょう。
12・26・9から設定を変えた方がいい?
まずは12・26・9で見て、使っているツールの初期設定がそれと違わないかを確かめるのが先です。短くすると交差は早く多く、長くすると遅く少なくなり、どちらにもだましはあります。過去のチャートに合わせて細かく調整した組み合わせが、この先も合うとは限りません。
MACDは日足と週足のどちらで見る?
売買する期間で決めます。数週間〜数か月の売買なら日足、数か月〜数年の流れなら週足・月足です。長い足の交差はさらに遅く、三菱UFJの月足では、2019年12月のGCから急落の中でDCが出るまで3か月かかりました。
MACDは会社の価値を測る指標?
いいえ。MACDは株価だけから計算するテクニカル指標で、会社の利益や資産とは関係しません。会社の価値を測るPERやPBRなどは投資指標の一覧で扱っています。
MACDだけで売買して勝てる?
日経平均の1976〜2002年の検証では、MACDやRSIの売買ルールは買い持ちを上回りませんでした(Chong, Ng & Liew 2014)。交差は遅れて出て、横ばいではだましが続くので、トレンドの向き・ほかの指標・撤退の値段と組み合わせて使います。
まとめ
MACD=EMA12−EMA26。シグナルはMACDの9日平均、ヒストグラムはMACD−シグナル
EMAは「前日のEMA+α×(終値−前日のEMA)」、α=2÷(n+1)。直近ほど重く数え、向きの変化にはSMAより早く反応するが、重みの重心は同じ期間のSMAと同じで、遅れはなくならない
ゼロラインの上下はトレンドの向き、シグナルとの交差は勢いの変化。ヒストグラムの縮みは交差の前ぶれ、ダイバージェンスは勢いの衰えだが、どちらも反転の確定ではない。「MACDのゴールデンクロス」は、シグナルとの交差を指すこともゼロの上抜けを指すこともある
MACDの単位は円で、銘柄どうしでは比べられない。シグナルの計算方法や初期設定はツールで違う
交差は天井・底より遅れ、レンジ相場では往復してだましになる。日経平均の1976〜2002年の検証でも、売買ルールは買い持ちを上回らなかった
使うときは、長い足のトレンド・RSIやボリンジャーバンド・撤退の値段と組み合わせる








