グランビルの法則とは|移動平均線の向きと株価の位置で読む8つの売買ポイント

グランビルの法則は、株価と移動平均線の関係から売買のタイミングを判断する8つの法則(買い4つ・売り4つ)です。米国のジョセフ・E・グランビルが、200日移動平均線を使う売買の方法として広めました。
見るのは、①移動平均線の向き(上向き・横ばい・下向き)②株価が線の上か下か、線を抜けたか③株価が線からどれだけ離れたかの3つです。上向きの線の近くまで下げて反発すれば「押し目」の買い、下向きの線を一時的に上回れば「戻り」の売り、というように、向きと位置の組み合わせで8つの形に分けます。
ただし、移動平均線は過去の終値の平均なので、形が出るのは底や天井を過ぎてからです。もみ合いの相場では外れが続きます。米国のダウ平均の約100年分を使った研究でも、1987〜1996年の10年間は、移動平均などの売買ルールに統計的に意味のある成果は見られませんでした。
この記事では、8つの法則の形、移動平均線の計算と期間(証券会社のツールの既定値)、ゴールデンクロス・デッドクロスとの関係、三菱UFJとトヨタの月足での実例、だましと研究結果を、架空の値動きから計算した模式図と実際の株価で図解します(2026年10月13日時点)。
この記事の内容(目次)
グランビルの法則とは——移動平均線の「向き」と株価の「位置」で読む
大和証券の用語解説は、グランビルの法則を、米国のチャート分析家ジョゼフ・E・グランビルが考案した、移動平均線と株価の乖離(かいり)の仕方や方向性から株価の先行きを判断する理論で、買い4通り・売り4通りの8つの法則からなる、と説明しています(大和証券「金融・証券用語解説:グランビルの法則」、2026年10月13日閲覧)。
移動平均線は、決めた期間の終値の平均を毎日計算し、つないだ線です。日々の細かい上下を消して、株価の流れ(トレンド)の向きを見るために使います(日本テクニカルアナリスト協会「科学的手法(検証可能な手法)」、2026年10月13日閲覧)。グランビルの法則は、この線と株価の関係を次の3つで読みます。
線の向き:上向きなら上昇の流れ、下向きなら下落の流れ。横ばいに変わりつつあるときは、流れが変わる手前
株価の位置:線の上にあるか下にあるか。線を下から上に抜けたか、上から下に抜けたか
線からの離れ方:株価が線から大きく離れたか。SBI証券の操作ガイドは、株価は移動平均線から大きく離れると、やがて線の近くまで修整される習性があるとしている(SBI証券「チャート分析をする|HYPER SBI 操作ガイド」、2026年10月13日閲覧)
考案者と原著——1960年の本で200日移動平均線を説いた
グランビルは、米国の証券会社で市況レターを書いていたアナリストです。年代順に並べると次のとおりです。
1923年:米国ニューヨーク州ヨンカーズに生まれる(CMT Association「Technically Speaking, October 2013」、2026年10月13日閲覧)
1957〜1963年:証券会社E.F.ハットンで日々の市況レターを書き(1957年10月から)、1963年の『Granville's New Key to Stock Market Profits』で出来高を使う指標OBV(オン・バランス・ボリューム)を紹介。同年8月に独立し、市況レター「Granville Market Letter」を始める(同)
1960年:最初の株式の本『A Strategy of Daily Stock Market Timing for Maximum Profit』(Prentice-Hall)を出版し、ベストセラーになる(同、米国議会図書館の書誌)。1962年の邦訳『グランビルの投資法則』(中居増吉訳、ダイヤモンド社)の目次には「200日移動平均株価線の分析」の節がある(国立国会図書館デジタルコレクション)。邦訳の原題がこの本であることは、1979年の復刻版の書誌で確かめられる(国立国会図書館サーチ「グランビルの投資法則」(1979年復刻版))
1976年:『Granville's New Strategy of Daily Stock Market Timing for Maximum Profit』を出版(Internet Archive)。日本テクニカルアナリスト協会は、この本で移動平均を用いた売買手法とグランビルの法則が紹介された、としている(日本テクニカルアナリスト協会「テクニカル分析の歴史」、2026年10月13日閲覧)
2013年9月:90歳で死去(CMT Association)
法則の言い回しや番号の振り方は、紹介する資料によって違います。売りを⑤〜⑧と通し番号で数える資料もあり、売りの並び順も資料ごとに違うので、ほかの資料と比べるときは番号ではなく形(上抜け・押し目・戻り・乖離など)で照らし合わせます。この記事の番号は、大和証券のテクニカル分析講座の振り方(買い①〜④・売り①〜④)にそろえ、形の名前を添えて説明します。
なぜ200日線なのか
大和証券の講座は、法則の発祥の地である米国では伝統的に200日移動平均線で判断するとし、線の「向き」を判断するには週や月の線では粗すぎ、200日(40週間、9〜10か月程度)の長さがちょうどよい、と説明しています(大和証券「テクニカル指標編【第2回】グランビルの法則」、2026年10月13日閲覧)。日本テクニカルアナリスト協会の用語集も、株価が200日線より上か下かで中長期の地合いを見る使い方を挙げています(日本テクニカルアナリスト協会「用語集」、2026年10月13日閲覧)。
一方、証券会社のチャートに最初から表示される日足の線は、大和証券の多機能チャートが5日・25日・75日、SBI証券のHYPER SBIが5日・25日・50日で、200日線は入っていません(2026年10月13日閲覧の各社の資料、次の章の表)。200日線で見たいときは、自分で追加します。
8つの法則——買い4つ・売り4つの形
8つの法則を、架空の値動きから計算した25日移動平均線の上に並べると、次の図のようになります。上向きの線では「押し目」の買い、下向きの線では「戻り」の売りが基本で、線の向きが変わるところが①、線から大きく離れたところが④です。
買いの4つ
買い①(上抜け):下向きだった線が横ばい・上向きに変わりつつあるところで、株価が線を下から上に抜ける。底打ちを確かめる形で、大和証券の講座はトレンドの転換点となる大切なポイントとし、1つの波の中で1回しか出ないとしている
買い②(押し目で割り込む):上向きの線に向かって株価が下げ、線を下回る。上昇の途中の押し目で、1つの波の中で何回も出る(同)
買い③(押し目で反発):線の上にある株価が線に向かって下げ、線と交わらずに再び上がる。これも押し目と判断できる(同)
買い④(大きく下に離れる):下向きの線から株価が大きく下に離れる。売られすぎの反動の上げ(自律反発)を狙う逆張りの買い(同)
大和証券の講座は、買い②を「移動平均線を下回ったら買い」としています。ただ、線を割り込んだ時点では、押し目なのか、下落の始まり(売り①)なのかは分かりません。線の上に戻ったのを確かめてから買う、割り込んだところで買うなら直前の安値を割ったら手放すと決めておく、のどちらかにすると、外れたときの損を小さくできます(KabuGraphの見方)。
強い上昇では、押し目を待っているうちに株価が上がっていくことがあり、相場の格言でも「押し目待ちに押し目なし」といわれます(株の格言の記事)。押し目の深さの目安や、押し目と下落の始まりの見分け方は、次の記事で扱っています。

押し目買いとは|押し目の目安と、下落の始まりとの見分け方
押し目買いは、上昇トレンドの途中の一時的な下げ(押し目)で買うこと。前提は高値と安値の切り上げ。目安は移動平均線・前の高値・上げ幅の1/3〜2/3で、押し目の安値を割ったら下落の始まりを疑う。損切りの置き方と株数の計算例も図解。
売りの4つ
売り①(下抜け):上向きだった線が横ばい・下向きに変わりつつあるところで、株価が線を上から下に抜ける。天井を確かめる形で、1つの波の中で1回しか出ない(同)
売り②(戻りで上回る):下向きの線に向かって株価が上がり、線を上回る。下落の途中の一時的な戻り(同)
売り③(戻りで反落):線の下にある株価が線に向かって上がり、線と交わらずに再び下がる(同)
売り④(大きく上に離れる):上向きの線から株価が大きく上に離れる。反動で大きく下げることがあるため、売りのポイントとする(同)
法則 | 移動平均線の向き | 株価の動き |
|---|---|---|
買い①(上抜け) | 下向き→横ばい・上向き | 線を下から上に抜ける |
買い②(押し目) | 上向き | 線を一時的に下回る |
買い③(押し目) | 上向き | 線の手前で反発する |
買い④(下方乖離) | 下向き | 線から大きく下に離れる |
売り①(下抜け) | 上向き→横ばい・下向き | 線を上から下に抜ける |
売り②(戻り) | 下向き | 線を一時的に上回る |
売り③(戻り) | 下向き | 線の手前で反落する |
売り④(上方乖離) | 上向き | 線から大きく上に離れる |
「大きく離れる」はどのくらい?——移動平均乖離率で測る
買い④・売り④の「大きく」は、株価が線から何%離れているかを示す移動平均乖離率で測ります。日本テクニカルアナリスト協会は、移動平均乖離率を日本で考案された指標(考案者は不詳)としています(日本テクニカルアナリスト協会「テクニカル分析の歴史」)。
例えば、株価が1,150円、25日線が1,000円なら、(1,150−1,000)÷1,000×100=+15%です。
大和証券の講座は、乖離率の山と谷の目安は銘柄や指数によって違い、値動きの大きい銘柄ほど振れ幅が大きいとし、流動性のある大型株の短期の山・谷は13週移動平均から±30%近辺になることが多い、としています(大和証券「テクニカル指標編【第1回】移動平均線」、2026年10月13日閲覧)。決まった数字はないので、自分の銘柄の過去数年の乖離率の山と谷を確かめてから使います。
強い上昇では、乖離が大きいまま上がり続けることもあります(後の章の三菱UFJの例)。また、下向きの線からの買い④は、下落の流れに逆らう買いです。下がった持ち株を買い増すナンピンと同じく、さらに下げたときにどこで手放すかを先に決めておきます。
移動平均線の基本——計算式と、日本のツールの期間
日本でよく使われる移動平均は、単純移動平均(SMA)と指数平滑移動平均(EMA)の2種類で、通常は終値で計算します(日本テクニカルアナリスト協会「科学的手法(検証可能な手法)」)。単純移動平均は、n日間の終値の合計をnで割った値です(同)。
は t 日目の終値、 は期間です。SBI証券の操作ガイドも、ある日からさかのぼって25日間の終値を合計し、25で割った値を毎日つないだものが25日移動平均線だと説明しています(SBI証券「チャート分析をする|HYPER SBI 操作ガイド」)。
計算例:5日移動平均
日 | 終値 | 5日移動平均 |
|---|---|---|
1日目 | 1,000 | — |
2日目 | 1,020 | — |
3日目 | 990 | — |
4日目 | 1,010 | — |
5日目 | 1,030 | 1,010 |
6日目 | 1,050 | 1,020 |
6日目は、新しく1,050円が加わり、5日前の1,000円が計算から外れるので、平均は(1,050−1,000)÷5=10円上がって1,020円になります。移動平均線が上を向くか下を向くかは、今日の終値が、計算から外れるn日前の終値より高いか低いかで決まります。25日線なら、今日の終値が25日前の終値より高ければ上向きです。
平均なので、線は株価に遅れて動きます。日本テクニカルアナリスト協会は、単純移動平均は理屈の上で計算期間の半分だけ遅れるとしています(同協会「科学的手法(検証可能な手法)」)。25日線なら12〜13営業日、200日線なら100営業日ほどの遅れです。
日本でよく使う期間と、ツールの既定値
日本テクニカルアナリスト協会によると、よく使われる期間は次のとおりで、1週間・1か月・3か月・半年・1年などを意識した数字です(同協会「科学的手法(検証可能な手法)」)。
日足:5日、20日または25日、75日、200日
週足:5週、13週、26週、52週
月足:6か月、12か月、24か月、60か月
大和証券の講座は、日足で5日・25日が一般的なのは、1週間の営業日が5日、1か月の営業日がおおむね20日強だから、としています(大和証券「テクニカル指標編【第1回】移動平均線」)。証券会社のチャートに最初から表示される線は、次のとおりです。SBI証券のHYPER SBI 2の値は、SBI証券「HYPER SBI 2 テクニカル指標 マニュアル」の「移動平均(3ライン)」の説明によるもので、期間は変更できます(2026年10月13日閲覧)。
ツール | 日足 | 週足 | 月足 |
|---|---|---|---|
大和証券 | 5・25・75日 | 13・26・52週 | 6・12・36か月 |
SBI証券 | HYPER SBI:5・25・50日 | — | — |
同じ会社でもツールによって既定値が違い、ツールの更新で変わることもあります。使っているチャートの設定画面で、表示されている線の期間と種類(単純移動平均かEMAか)を一度確かめておきましょう。
日足には日数の線、週足には週数の線を使うのが基本です(大和証券「テクニカル指標編【第1回】」)。グランビルにならって200日線を見るなら、日足のチャートに自分で追加します。期間を短くすると線は株価に早く反応し、長くすると滑らかになる代わりに反応が遅れます(次の章の図)。
単純移動平均と指数平滑移動平均(EMA)
指数平滑移動平均(EMA)は、直近の終値ほど重く数える移動平均です。日本テクニカルアナリスト協会は、移動平均の遅れを小さくする方法の1つとしてEMAを挙げています(同協会「科学的手法(検証可能な手法)」)。ただし、値動きの向きが変わったときの反応は早くなるものの、重みの重心(平均して何日前の終値を見ているか)は同じ期間の単純移動平均と変わらず、遅れがなくなるわけではありません(次のMACDの記事)。同じ「25日」でも、単純移動平均とEMAでは線の位置が変わるので、使っているチャートの設定がどちらかを確かめておきましょう。EMAの計算式と、EMAから作るMACDの見方は次の記事で扱っています。

MACDとは|見方と計算式、交差が遅れてだましが出る理由
MACDは12日と26日の指数平滑移動平均(EMA)の差で、その9日平均がシグナル。ゼロラインの上下でトレンドの向き、シグナルとの交差で勢いの変化を見る。EMAの式と計算例、三菱UFJの月足の実例とレンジ相場のだましを図解し、日経平均での検証結果も紹介。

新株落ちとは|株価が分割比率で下がる日と、新株をもらえる最終日
新株落ちは、株式分割などで新株を受け取る権利が付かなくなること。基準日の前営業日(権利落ち日)から株価は分割比率で割った水準になり、新株をもらうには2営業日前の権利付最終日までに買う。2026年9月29日は制度信用の調整対象だけで53銘柄が新株落ちした。
ゴールデンクロスとデッドクロス——2本の移動平均線の交差
短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から上に抜けることをゴールデンクロス、上から下に抜けることをデッドクロスといいます(日本テクニカルアナリスト協会「用語集」)。大和証券の用語解説は、ゴールデンクロスを相場の上昇期入りのシグナルとし、短期線が中期線を下から上に抜けることを「ミニゴールデンクロス」と呼んでいます(大和証券「金融・証券用語解説:ゴールデンクロス」、2026年10月13日閲覧)。
日本テクニカルアナリスト協会は、上昇トレンドでは「価格>短期線>長期線」、下降トレンドでは「価格<短期線<長期線」の並びになり、トレンドが変わるときにこの並びが入れ替わる、と説明しています。同協会は、価格が短期線を上回るタイミングもゴールデンクロスと呼ぶとしています(日本テクニカルアナリスト協会「科学的手法(検証可能な手法)」)。
2本の組み合わせは、日足ならツールに表示される25日線と75日線のように選べます。50日線が200日線を上回るものもゴールデンクロスと呼ばれます(マネックス証券「マネクリ 用語集:ゴールデンクロス」、2026年10月13日閲覧)。
遅れて出る:図のゴールデンクロスは底から35日後で、株価はすでに底から+6.8%上がっていた。デッドクロスは天井から33日後で、株価は天井から−4.2%
トレンドが続けば値幅が残る:図では、ゴールデンクロスで買ってデッドクロスで売ると+21.3%
もみ合いでは往復で損をする:クロスが何度も出て、買って売るたびに−2.1%、−2.8%。大和証券の講座も、株価がボックス圏で動いているときは、ゴールデンクロス・デッドクロスが本来と逆のサインになりやすいと注意している(大和証券「テクニカル指標編【第1回】移動平均線」)
日本テクニカルアナリスト協会も、大きなトレンドでは誰でも収益が得られる一方、移動平均の変化は価格の変化に遅れるので、トレンドの転換点を見つける目的には向いていない、としています(同協会「科学的手法(検証可能な手法)」)。
グランビルの法則とゴールデンクロスの違い
見る線の数:グランビルの法則は株価と1本の線、ゴールデンクロスは短期と長期の2本の線
出る早さ:2本の線の交差は、株価が線を抜けるより遅く出やすい。三菱UFJの月足では、株価が12か月線を上回ったのが2020年12月、12か月線と24か月線のゴールデンクロスは2021年7月だった(次の章)
外れる回数:早く出る形ほど、もみ合いで何度も出る。図のもみ合いの区間では、株価と25日線の交差が8回、25日線と75日線の交差が5回だった
MACDとシグナルの交差も、ゴールデンクロス・デッドクロスと呼ばれることがあります。こちらは移動平均線どうしではなく、2本の移動平均の差(MACD)とその平均の交差です(MACDの記事)。
実際のチャートで見る——三菱UFJとトヨタの月足
実際の株価で見てみましょう。ここでは2016年8月以降(トヨタは9月以降)の月末終値から、12か月線と24か月線(どちらも単純移動平均)を計算しました。12か月線は約1年分の平均で、グランビルの200日線(9〜10か月程度)に近い長さです。月末の終値だけで描いているので、月の途中の高値・安値は入っていません。
三菱UFJ:トレンドが長く続いた例
デッドクロスの後に大きく下げた:2018年11月のデッドクロス(株価624.5円)の後、2020年7月末の393.2円まで−37%
下向きの線を株価が上抜けた:2020年12月末に株価が12か月線を上回った(456.1円)。線はまだ下向き(前月比−11.4円)で、この時点では買い①なのか、戻りの売り②なのかは分からない。線が上向きに変わった2021年2月末(558.0円、線から+26.4%)に、買い①の形がそろった
同じ形から下げた例もある:2019年10月末にも、下向きの12か月線を株価が上回った(569.8円)。線は12月に一度わずかに上向いて買い①の形がそろいかけた(前月比+4.6円)が、翌月から再び下向きになり、2020年2月に株価は線を割り込み、3月末には403.0円(2019年10月末から−29.3%)まで下げた
ゴールデンクロスは遅れた:2021年7月のゴールデンクロス(578.5円)は、安値から+47%上がった後だった
買い②の形:2024年9月末に上向きの12か月線を割り込み(1,453.5円、線から−2.6%)、翌月末は1,628.5円で線の上に戻った
売り④は早すぎることもある:株価が12か月線から+30%前後離れた月は、2023年7月(+31.2%)、2024年2月(+32.8%)、2026年7月(+30.4%)などがある。2024年2月の後は7月の1,750円までさらに上がり、9月に1,453.5円まで下げた
三菱UFJの事業と業績は三菱UFJの企業分析で扱っています。
トヨタ:横ばいの間にクロスが4回出た例
2019年5月から2021年3月まで、トヨタの24か月線は1,362〜1,427円のほぼ横ばいでした。その間に、12か月線との交差が4回出ています(株価は分割調整後)。
デッドクロスで売ると、高く買い戻すことになった:2019年5月のデッドクロス(1,277円)から次のゴールデンクロスまでに株価は+19.9%、2020年12月のデッドクロス(1,591円)から次までに+8.3%
ゴールデンクロスの後に急落:2020年1月のゴールデンクロス(1,530円)の後、2020年7月末には1,243円(−18.8%)
株価が上がっている最中のデッドクロス:2020年12月のデッドクロスは、株価が12か月線を+14.5%上回っていた月に出た。12か月線の計算から1年前の高い株価(2019年12月末の1,543円)が外れ、24か月線からは2年前の安い株価(2018年12月末の1,281円)が外れたため、24か月線の方が大きく上がった
長期の線が横ばいのときのクロスは、トレンドの転換ではなく、もみ合いの中の上下にすぎないことがあります。トヨタの事業と業績はトヨタの企業分析で扱っています。
だましと限界——研究で分かっていること
形どおりに動かないことを「だまし」と呼びます。グランビルの法則とゴールデンクロスの外れ方は、主に次の3つです。
遅れ:線は過去の平均なので、底・天井を過ぎてから形が出る。単純移動平均は計算期間の半分ほど遅れる(日本テクニカルアナリスト協会「科学的手法(検証可能な手法)」)
もみ合い:線が横ばいの間は、株価が線を何度も上下に抜け、そのたびに買って売ると損が重なる(前の章の図とトヨタの例)
期間の選び方:過去のチャートに合う期間を後から選ぶと、過去にだけ当てはまる(同)
移動平均の売買ルールの研究
Brock, Lakonishok & LeBaron(1992):ダウ平均の1897〜1986年で、短期(1・2・5日)と長期(50・150・200日)の移動平均の組み合わせなどの売買ルールを検証し、買いシグナルの後のリターンが売りシグナルの後を一貫して上回るなど、ルールを強く支持する結果を報告した(Journal of Finance 47巻5号)。ただし、取引の手数料を差し引く前の結果だった。下のSullivanらが試したルールのうち、1897〜1996年で最も成績のよかったルールは年平均63.1回売買し、1回の売買コストが0.27%を超えると利益が消える計算だった(Sullivan, Timmermann & White の討議論文版(1998年))
Sullivan, Timmermann & White(1999):同じダウ平均の1897〜1996年で7,846通り(約8,000)のルールを試し、多くのルールを試して当たったものだけを選ぶ偏り(データ・スヌーピング)を補正した。1897〜1986年は補正後も、基準(売買しない場合)を上回るルールがあったが、1987〜1996年の10年間では、それまでで最も成績のよかったルールも統計的に意味のある成果を上げず、S&P500先物(1984年〜)でも基準を上回るルールがあるという証拠はなかった(Journal of Finance 54巻5号)
Park & Irwin(2007):テクニカル分析の収益性の研究を整理した。近年の研究は、少なくとも1990年代初めまでは様々な市場で利益が出たとするものが多く、95の研究のうち56が肯定的、20が否定的、19がまちまちだった。そのうえで、多くの研究にデータ・スヌーピングや、リスクと取引コストの見積もりの難しさといった問題があると指摘した。古い研究では、株式市場で利益が出るという結果は得られていない(Journal of Economic Surveys 21巻4号)
日本の株価指数では、Chong, Ng & Liew(2014)が日経平均の1976〜2002年で、MACDのゼロライン(12日と26日のEMAの交差と同じ)などの売買ルールを、サインが出てから10日間の値動きで買い持ちと比べ、どのルールも買い持ちを上回らなかったと報告しています(Journal of Risk and Financial Management 7巻1号。詳しくはMACDの記事)。
損失を小さく抑える手順は、次の記事にまとめています。

ロスカット(損切り)とは|プロスペクト理論が邪魔をする「損失確定」の技術
ロスカット(損切り)の意味・目安・ルールの作り方をわかりやすく解説。損切りできない心理的原因(プロスペクト理論)から、逆指値を使った自動化、信用取引の強制決済・FXの強制ロスカットまで網羅。
チャートで使うときの手順
証券会社のアプリで移動平均線を表示したら、次の順に確かめます。
足と線を決める:売買の期間に合わせて、日足なら25日線・75日線(グランビルにならうなら200日線を追加)、週足なら13週線・26週線
長い足で流れを確かめる:週足・月足で、高値と安値が切り上がっているか(上昇トレンド)、切り下がっているか(下降トレンド)
線の向き→株価の位置→離れ方の順に読む:上向きなら買い②③、下向きなら売り②③を待つ。離れ方は移動平均乖離率で、その銘柄の過去の山・谷と比べる
ローソク足と出来高で確かめる:線の近くで下ヒゲの足や陽線が出たか、出来高が増えたか
材料の日を分けて考える:決算発表・業績予想の修正・権利落ち・株式分割の日の動きは、形の読み方とは別に理由を確かめる
撤退の値段を決めて注文する:買い②③なら押し目の安値の下、買い①なら線を再び割り込んだところ、のように決め、逆指値で自動で手放せるようにしておく(KabuGraphの見方)
トレンドの定義(高値と安値の切り上げ・切り下げ)と転換の見分け方は、次の記事で扱っています。

ダウ理論とは|6つの法則と、高値・安値で判定するトレンド転換
ダウ理論は、チャールズ・ダウの考えをハミルトンらがまとめたトレンドの見方。上昇は高値・安値の切り上げ、下降は切り下げで判定し、転換のシグナルが出るまで続くとみなす。6つの法則の元の意味、転換の図解、任天堂の月末終値での実例と研究で分かる限界を解説。
ローソク足の形と出来高の読み方は、次の記事で図解しています。3本以上の足の組み合わせは酒田五法の記事にあります。

ローソク足の見方|陽線・陰線とヒゲの読み方、形の意味は位置で変わる
ローソク足は1本で始値・高値・安値・終値を表し、実体は始値から終値、ヒゲの先が高値・安値。陽線・陰線は始値との比較で前日比とは別。十字線・包み足・窓など1本・2本の形と、出た位置で意味が逆になる形、だましの注意点を図解。
移動平均線の上下に値動きの幅を重ねたボリンジャーバンドも、中心線は単純移動平均です(ボリンジャーバンドの記事)。逆指値など、値段を条件に自動で発注する注文は次の記事で解説しています。

逆指値・寄成・寄指・引指・不成注文とは|9つの注文方法と東証の取引時間を図解
株式投資の注文方法を網羅的に解説。指値・成行の基本から、東証の執行条件(寄成・寄指・引成・引指・不成・IOC)、証券会社のサービスである逆指値まで、東証の取引時間とあわせて使い分けを整理します。
よくある質問
グランビルが移動平均線を考えたの?
いいえ。日本テクニカルアナリスト協会の年表では、1916年に阿部熹作が3日移動平均を本で紹介し、1935年にリチャード・D・ワイコフがダウ平均の移動平均線を新しい手法として紹介しています。移動平均そのものは1833年にイングランド銀行が考案したという説もありますが、詳細は分かっていません(日本テクニカルアナリスト協会「テクニカル分析の歴史」)。グランビルは、200日移動平均線と株価の関係から売買の時期を判断する方法を広めた人です。
25日線と200日線、どちらを使えばいい?
グランビルが使ったのは200日線で、証券会社のチャートの既定の日足の線は、大和証券の多機能チャートが5日・25日・75日、SBI証券のHYPER SBIが5日・25日・50日です(2026年10月13日閲覧の各社の資料)。期間が短いほど早く反応しますが、もみ合いで外れる回数も増えます。売買する期間に合わせて決め、日足の線だけでなく週足の流れも確かめましょう。
8つ全部覚える必要はある?
大和証券の講座は、買い①・売り①をトレンドの転換点として重視する一方、きれいに現れるとは限らず判断が難しいとしています(大和証券「テクニカル指標編【第2回】グランビルの法則」)。まず線の向きで買いと売りのどちらの場面かを決め、押し目・戻りの②③から使い始めると混乱しにくくなります。④は流れに逆らう逆張りなので、慣れてからにしましょう。
ゴールデンクロスが出たら買い?
それだけで買うのは危険です。ゴールデンクロスは底を過ぎてから出るうえ、長期の線が横ばいのもみ合いでは、トヨタの2019〜2021年の月足のように買ってすぐ下げることがあります。長期の線の向きと高値・安値の流れを確かめ、外れたときの撤退の値段を決めてから使いましょう。
まとめ
グランビルの法則は、移動平均線の向きと株価の位置・離れ方で売買の時期を判断する8つの法則。グランビルは1960年の本で200日移動平均線を説いた
上向きの線では押し目(買い②③)、下向きの線では戻り(売り②③)を待つ。①は線の向きが変わるところでの上抜け・下抜け、④は線から大きく離れたところ
単純移動平均はn日間の終値の平均。線の向きは今日の終値とn日前の終値の比較で決まり、計算期間の半分ほど遅れる。証券会社のツールの既定は5日・25日などで、200日線は自分で追加する
ゴールデンクロス・デッドクロスは短期線と長期線の交差。底・天井を過ぎてから出て、もみ合いでは往復で損をしやすい
研究では、米国のダウ平均で1987〜1996年に移動平均などのルールの有意な成果は見られなかった。勝率を約束するものではないので、撤退の値段を決めて使う








