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カーブアウトとは|日立22社→0社の実例に学ぶ事業切り出しの手法と実務

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カーブアウト(Carve-out)は、企業グループや会社の中から特定の事業・子会社を切り出し、売却や独立によって別組織として分離するM&A手法です。英語の「carve out」は「切り出す・えぐり出す」を意味し、会社全体ではなく事業の一部だけを取引の対象にする点が通常のM&Aとの違いです。

日立製作所はかつて22社を数えた上場子会社を2009年の経営危機以降段階的に売却・完全子会社化し、2023年にゼロにする大規模カーブアウトを断行、デジタル・エネルギー領域への集中投資で企業価値を大きく引き上げました。オリンパスは科学事業をベインキャピタルに約4,276億円で売却し、医療機器専業へ転換しています。国内のカーブアウト件数は2015年の329件から2024年には417件に増加しており(EY Japan)、東証のガバナンス改革やアクティビストの要求を背景に今後も増加が見込まれます。

本記事では、カーブアウトの定義・3つの法的スキーム・スピンオフとの違い・実施プロセス・日本企業の代表的事例・TSA(移行サービス契約)の実務まで、投資家が知っておくべき全体像を解説します。

この記事の内容(目次)

  1. カーブアウトの定義と基本構造
    1. カーブアウトが行われる典型的な場面
  2. カーブアウトの3つの法的スキーム
    1. 事業譲渡
    2. 会社分割(吸収分割・新設分割)
    3. 子会社株式譲渡
  3. スピンオフ・パーシャルスピンオフとの違い
  4. カーブアウトの実施プロセス
    1. フェーズ1:方針決定と対象事業の選定
    2. フェーズ2:事業分離の準備
    3. フェーズ3:買い手選定と交渉
    4. フェーズ4:クロージングとDay 1
  5. スタンドアロン課題とTSA——カーブアウト最大の実務論点
    1. スタンドアロン課題の5つの類型
    2. TSA(Transition Service Agreement・移行サービス契約)
  6. 日本企業のカーブアウト事例
    1. 日立製作所——上場子会社22社→0社のポートフォリオ転換
    2. オリンパス→エビデント——科学事業4,276億円でベインキャピタルへ
    3. パナソニック ヘルスケア→PHCホールディングス——KKR傘下で上場を実現
  7. カーブアウトのメリットとデメリット
    1. 売り手(親会社)のメリット
    2. 買い手(PEファンド等)のメリット
    3. デメリット・リスク
  8. PEファンドとカーブアウト
    1. PEファンドがカーブアウトに注力する理由
  9. カーブアウトに関連する制度・ガイダンス
    1. 事業再編実務指針(経済産業省・2020年)
    2. 起業家主導型カーブアウト実践のガイダンス(経済産業省・2024年)
    3. スピンオフ税制・パーシャルスピンオフ税制
  10. まとめ——投資家がカーブアウトを見る視点

カーブアウトの定義と基本構造

カーブアウトを一言でいえば、「企業が自社グループ内の事業や子会社を切り出し、第三者への売却や株式市場への上場によって分離すること」です。

企業買収(M&A)において、買い手が会社の全株式を取得する一般的な買収と異なり、カーブアウトでは売り手側が「どの事業を切り出すか」を主導する点が特徴です。売り手は非中核事業を手放すことで経営資源をコア事業に集中させ、買い手は会社全体を買うリスクを負わずに欲しい事業だけを取得できます。

カーブアウトが行われる典型的な場面

  • コングロマリット・ディスカウントの解消——多角化企業が市場から事業単体の合計より低く評価される現象を、事業の分離によって是正する

  • 事業ポートフォリオの最適化——ROICの低い事業や成長ステージの異なる事業を切り離し、資本配分を高ROIC事業に集中させる

  • アクティビスト対応——株主から低収益事業の切り離しを要求された場合に、能動的な対応策として実施する

  • 対象事業のさらなる成長——大企業の一事業部門では経営の意思決定が遅くなりがちな事業を、独立させることで成長を加速させる

カーブアウトの3つの法的スキーム

カーブアウトを実行する法的手法は大きく3つあり、それぞれ承継方法・税務・手続負担が異なります。

手法

承継方法

主なメリット

主な課題

事業譲渡

個別資産ごとに承継(契約・従業員・許認可を1つずつ移転)

不要な債務・契約を除外できる。買い手の簿外債務リスクが小さい

取引先・従業員の個別同意が必要。許認可は原則再取得

会社分割

権利義務を包括承継(債権・債務・契約がまとめて移転)

個別同意が原則不要。事業の一体性を維持しやすい

債権者保護手続が必要。不要な債務も承継するリスク

子会社株式譲渡

既存子会社の株式を第三者に譲渡

手続がシンプル。子会社がそのまま事業を継続

事業が子会社として独立していない場合は事前の分社化が必要

事業譲渡

承継する資産・負債・契約を1つずつ選べるため、買い手にとって最もリスクを限定しやすい手法です。しかし取引先との契約や従業員の雇用契約について個別の同意が必要になるため、対象事業の規模が大きいほど手続負担が増大します。許認可は原則として再取得が必要であり、業種によっては取得に数ヶ月を要することもあります。

会社分割(吸収分割・新設分割)

権利義務を包括的に承継するため、取引先や従業員の個別同意なしで事業の一体性を維持したまま移転できる点が強みです。ただし債権者保護手続(官報公告・個別催告)が必要であり、最低でも1ヶ月の公告期間を要します。また、包括承継であるため不要な債務やリスクも一緒に移転するおそれがあります。

実務では「新設分割で対象事業を新会社に移した後、その新会社の株式を第三者に譲渡する」という二段階スキームがよく使われます。

子会社株式譲渡

対象事業がすでに子会社として独立している場合、親会社が保有する子会社株式を第三者に譲渡するだけで事業の移転が完了します。日立製作所が上場子会社の株式を順次売却したケースがこれに該当します。手続は最もシンプルですが、対象事業が親会社の一部門にとどまっている場合は、先に会社分割で分社化する準備が必要です。

スピンオフ・パーシャルスピンオフとの違い

カーブアウトの手法として語られることの多いスピンオフ・パーシャルスピンオフは、第三者への売却を伴わず、既存株主に子会社株式を分配して独立させる点がカーブアウト(売却型)との最大の違いです。

カーブアウトの3つの法的スキームの比較(KabuGraph作成)

カーブアウト(売却型)

スピンオフ

パーシャルスピンオフ

分離方法

事業譲渡・会社分割・株式譲渡で第三者に売却

子会社株式の100%を既存株主に現物分配

子会社株式の80%超を既存株主に現物分配(20%未満を親会社が保有)

親会社の持分

0%(完全売却)

0%

20%未満

売却対価

あり(買い手から売り手に資金が支払われる)

なし(株主への現物配当)

なし(株主への現物配当)

税制優遇

原則なし(譲渡益課税が発生)

スピンオフ税制で譲渡損益・みなし配当課税を繰延べ(平成29年〜)

パーシャルスピンオフ税制で同様に繰延べ(令和5年〜、2028年3月末まで)

代表事例

日立金属→ベインキャピタル、オリンパス→エビデント

コシダカHD→カーブスHD(2020年、国内初の適格スピンオフ)

ソニーG→ソニーフィナンシャルG(2025年、国内初のパーシャルスピンオフ)

スピンオフは売却対価を得られない代わりに、税制優遇(譲渡損益課税の繰延べ・みなし配当課税の適用除外)を受けられるため、親会社にとって税負担なく事業を分離できます。一方、カーブアウト(売却型)は売却資金を成長投資に回せるメリットがあり、日立のように「売って→買う」ポートフォリオ転換に適しています。

パーシャルスピンオフは2023年度税制改正で創設された制度で、親会社が20%未満の持分を残せるため、分離後も一定の関与を維持しながら税制優遇を受けられる折衷案として注目されています。ソニーグループは2024年2月に経済産業省から産業競争力強化法に基づく事業再編計画の認定を取得し、2025年10月にソニーフィナンシャルグループのパーシャルスピンオフを実施しました(日本経済新聞 2024年2月14日)。

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カーブアウトの実施プロセス

カーブアウトは通常、以下の4つのフェーズで進行します。全体の期間は案件規模により半年〜2年程度です。

フェーズ1:方針決定と対象事業の選定

経営陣が事業ポートフォリオの見直し方針を決定し、どの事業を切り出すか(What)と、どの手法で切り出すか(How)を検討します。ROIC・成長性・シナジーの有無がスクリーニング基準になることが多く、経済産業省の「事業再編実務指針」(2020年)では事業ポートフォリオマネジメントの仕組みを整備する重要性が強調されています。

フェーズ2:事業分離の準備

対象事業のカーブアウト財務諸表(Carve-out Financial Statements)を作成し、親会社との共有資源をどう切り分けるかを整理するスタンドアロン分析を行います(詳細は次セクション)。この段階で法的スキームの選択、従業員の処遇方針、知的財産の帰属も決定します。

フェーズ3:買い手選定と交渉

売却型カーブアウトでは入札プロセスを通じて買い手候補を募ります。PEファンドが買い手になるケースが多いのは、事業の独立運営やバリューアップに関する知見が豊富なためです。買い手はデューデリジェンス(DD)で対象事業の財務・法務・税務・事業リスクを精査し、スタンドアロンコスト(独立運営に必要な追加費用)を買収価格に反映させます。

フェーズ4:クロージングとDay 1

最終契約(SPA)の締結、競争法審査(必要な場合)、債権者保護手続(会社分割の場合)を経てクロージングに至ります。Day 1(事業移転日)以降は、TSA(移行サービス契約)に基づいて売り手から買い手への業務移行が段階的に進むのが一般的です。

スタンドアロン課題とTSA——カーブアウト最大の実務論点

スタンドアロン・イシュー(Standalone Issue)は、カーブアウトの成否を左右する最大の実務課題です。親会社のグループ内で共有していた機能やサービスが、分離後に使えなくなることで生じるコスト増やオペレーション上の問題を指します。

スタンドアロン課題の5つの類型

  1. 管理部門機能——経理・人事・法務・総務など、親会社のシェアードサービスに依存していた業務を自前で構築する必要がある

  2. ITシステム——基幹システム(ERP)、メール、ネットワークなど、親会社のIT基盤からの切り離しは最も時間とコストがかかる領域

  3. ブランド・知的財産——親会社のブランド名を使用していた場合、移行期間後のリブランディングが必要。日立金属はプロテリアルに、オリンパスの科学事業はエビデントに社名変更した

  4. スケールメリットの喪失——親会社グループの購買力や共同物流を利用していた場合、独立後に調達コストが上昇する

  5. 施設・不動産——親会社所有のオフィスや工場を使用していた場合、移転または賃貸借契約の締結が必要になる

TSA(Transition Service Agreement・移行サービス契約)

スタンドアロン課題への対処として、売り手がクロージング後の一定期間、対象事業に対してITや管理業務などのサービスを有償で提供する契約がTSAです。買い手が自立した体制を構築するまでの「橋渡し」として機能します。

TSAの設計にはいくつかの原則があります。

  • 期限を明確に設定する——恒久的なサービス提供にならないよう、6ヶ月〜2年程度の終了マイルストーンを定める

  • 有償が原則——売り手は自社のリソースを提供するため、対価を受け取る。無償提供は売り手の撤退インセンティブを弱める

  • サービス内容を具体的に列挙する——「管理業務全般」のような曖昧な記載ではなく、会計処理・給与計算・ITヘルプデスクなどサービスごとに範囲・水準・終了条件を定める

日本企業のカーブアウト事例

ここでは、カーブアウトの代表的な成功事例を3つ取り上げます。

日立製作所——上場子会社22社→0社のポートフォリオ転換

日立は2006年時点で22社あった上場子会社を、2009年の経営危機を契機に段階的に売却・完全子会社化し、2023年にゼロとした日本のカーブアウト史上最大規模の事業ポートフォリオ転換です。

主な売却は以下のとおりです。

  • 日立化成→昭和電工(現レゾナック):2020年、約9,600億円でTOBにより売却。半導体材料や電子部品を手がけていたが、日立のデジタル戦略との相乗効果が薄いと判断

  • 日立金属→ベインキャピタル連合:2022年にTOBが成立(買収総額約8,166億円)、2023年に「プロテリアル」に社名変更して独立運営

  • 日立工機・日立国際電気→KKR:電動工具メーカーの日立工機はHiKOKIブランドに、放送・通信機器の日立国際電気はKKR傘下で独立

一方で日立は、ABBのパワーグリッド事業を約7,800億円、米GlobalLogicを約1兆円で買収し、「売って→買う」サイクルで事業構成を根本から組み替えました。2024年3月期の調整後営業利益率は約12%と、上場子会社22社体制だった2016年3月期の約5%から大幅に改善しています(日立製作所 IR)。

オリンパス→エビデント——科学事業4,276億円でベインキャピタルへ

オリンパスは2022年に科学事業を分社化し、2023年4月にベインキャピタルが新会社「エビデント(Evident)」の全株式を約4,276億円で取得しました(エビデント公式発表)。顕微鏡や非破壊検査装置で世界的シェアを持つ科学事業でしたが、オリンパスは医療機器専業への戦略集中を選択し、カメラ事業(2020年に日本産業パートナーズへ売却)に続く大型カーブアウトとなりました。

経済産業省が2023年4月に公表した「対日M&A活用に関する事例集」でも、エビデントは海外資本を活用した企業変革の成功事例として紹介されています。

パナソニック ヘルスケア→PHCホールディングス——KKR傘下で上場を実現

パナソニック(当時)は2013年、ヘルスケア事業をKKRに約1,650億円で売却しました。KKR傘下での独立運営後、2014年度のEBITDAは売却前比80%増、2020年度には約4.4倍に成長し、2021年に東証プライム市場に上場を果たしています(マクサス)。

この事例は、親会社の一部門として成長余地が限られていた事業が、PEファンドの経営支援と独立した意思決定権によって大きく成長した典型例であり、カーブアウトが対象事業にとっても売り手にとってもWin-Winになり得ることを示しています。

カーブアウトのメリットとデメリット

売り手(親会社)のメリット

  • コア事業への経営資源集中——非中核事業に配分されていた人材・資金・経営の注意力をコア事業に振り向けられる

  • 売却資金の獲得——得た資金を成長投資やM&A、株主還元に充当できる。日立はカーブアウトで得た資金をABBパワーグリッド事業やGlobalLogicの買収に投じた

  • コングロマリット・ディスカウントの解消——事業構成をシンプルにすることで、市場からの評価が改善する可能性がある

  • 資本効率の改善——ROICの低い事業を切り離すことで、全社のROICやROEが構造的に改善する

買い手(PEファンド等)のメリット

  • 簿外債務リスクの限定——事業譲渡スキームであれば、不要な債務を承継しない

  • バリューアップの余地——大企業の一部門として制約されていた意思決定の速度や投資判断を改善し、成長を加速できる

デメリット・リスク

  • スタンドアロンコスト——親会社のシェアードサービスを自前で構築する費用が、当初想定より膨らむリスクがある

  • 従業員の流出——売却先への移籍に抵抗を感じる人材が退職するリスク。特にキーパーソンの流出は事業価値を毀損する

  • 取引先・顧客の離脱——親会社のブランドや信用力に依存していた取引関係が、分離後に見直されるおそれがある

  • 売り手に残る事業への影響——切り出した事業とのシナジーが残存事業にも貢献していた場合、分離によって残存事業の収益性が低下する可能性がある

  • 税務コスト——売却型カーブアウトでは譲渡益に法人税が課されるため、手取り額は売却価格を下回る。スピンオフ税制の適用要件を満たさない場合はこの負担が大きくなる

PEファンドとカーブアウト

カーブアウト案件はPEファンドにとって中核的な投資手法の1つです。大企業の一部門として十分な経営資源を投入されていなかった事業を買い取り、独立した経営体制のもとでバリューアップを図って数年後にExitする——という投資モデルが確立されています。

PEファンドがカーブアウトに注力する理由

  • 構造的なバリューアップ余地——親会社の戦略から外れていた事業に適切な経営資源と経営陣を投入するだけで、大幅な業績改善が見込める

  • 競合が少ない——スタンドアロン課題やTSA交渉など実務が複雑なため、事業会社よりもPEファンドが買い手として有利。結果として買収価格が抑えられる傾向がある

  • LBOとの親和性——対象事業が安定したキャッシュフローを生んでいれば、LBO(レバレッジドバイアウト)による資金調達で自己資金比率を下げ、リターンを高められる

日本でもベインキャピタル(日立金属→プロテリアル、エビデント)、KKR(パナソニック ヘルスケア→PHC、日立工機→工機ホールディングス)、日本産業パートナーズ(オリンパス映像事業→OMデジタルソリューションズ)など、大手PEファンドによるカーブアウト案件が年々増加しています。

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カーブアウトに関連する制度・ガイダンス

日本では近年、政府・取引所がカーブアウトを含む事業ポートフォリオ改革を後押しする制度整備を進めています。

事業再編実務指針(経済産業省・2020年)

経済産業省が2020年7月に公表した「事業再編実務指針」は、日本企業の事業ポートフォリオ見直しが遅れている原因として「マネジメントの仕組みの不十分さ」「規模の維持・拡大を当然視する意識」「資本効率を重視する発想の希薄さ」を指摘し、取締役会が定期的に事業ポートフォリオを評価し、必要な入替えを実行する体制の構築を求めました。

起業家主導型カーブアウト実践のガイダンス(経済産業省・2024年)

2024年4月に経済産業省が公表したガイダンスで、大企業の事業を起業家が引き受けてスタートアップとして独立させる「起業家主導型カーブアウト」の実践手法を示しています(経団連タイムス 2024年7月)。経団連は2027年までにスタートアップの数と成功レベルを10倍にする「10X10X」目標の重要施策として、大企業によるカーブアウト・スピンオフの加速を掲げています。

スピンオフ税制・パーシャルスピンオフ税制

2017年度税制改正で創設されたスピンオフ税制は、適格要件を満たすスピンオフについて譲渡損益課税とみなし配当課税を繰延べる制度です。2023年度改正では、親会社が20%未満の持分を保有し続けるパーシャルスピンオフについても同様の税制優遇が認められました(適用期限: 2028年3月末)。

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まとめ——投資家がカーブアウトを見る視点

カーブアウトは売り手・買い手・対象事業の三者にとってメリットがある一方、スタンドアロン課題への対処が不十分だと価値を毀損するリスクもある手法です。投資家として以下の視点で開示情報を読むことが重要です。

  1. なぜこの事業を切り出すのか——コア事業との戦略的な距離は明確か。切り出しが「弱い事業を押し出しているだけ」なのか、「強い事業に集中するための戦略的選択」なのかで意味合いが変わる

  2. 売却資金の使途——売却で得た資金を成長投資に回すのか、負債返済に充てるのか、株主還元に使うのかで、株主価値への影響が大きく異なる

  3. TSAの内容と期間——TSAが長期にわたる場合、分離が不完全で追加コストが発生する可能性がある

  4. 残存事業への影響——切り出した事業との間にあったシナジーが失われることで、残る事業の収益性が低下しないか

  5. 売却価格の妥当性——対象事業のEBITDAやDCFベースでのバリュエーションが開示されている場合、同業の取引事例と比較して妥当かを検証する

国内のカーブアウト件数は増加傾向にあり、東証のガバナンス改革やアクティビストの影響力拡大により、今後も大型カーブアウトが続くことが予想されます。事業ポートフォリオの「引き算」がもたらす企業価値の変化を読み解く力は、投資家にとって重要なリテラシーとなるでしょう。

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コラム著者・編集者

K

KabuGraph編集部

KabuGraph編集部は、投資情報の発信と株式分析ツールの開発に携わるチームです。日本株・米国株の事業分析から、投資に役立つ情報をわかりやすくお届けします。

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